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資産管理会社とは?設立の判断基準と節税効果を解説します

税務調査 法人

読了目安時間:約 7分

年収が2,000万円を超え始めた頃や、相続で複数の不動産を引き継いだタイミングで、知人や金融機関から「資産管理会社の設立を検討してみては」と提案されたという方も多いのではないでしょうか。資産管理会社は、不動産や株式といった資産を所有・管理するために設立する法人の総称であり、所得税の累進課税と法人税のフラット税率の差を活かした節税スキームとして広く使われています。

本記事では、資産管理会社の定義と目的、節税の仕組み、設立コストと運営コスト、設立すべき所得・資産の目安、そして失敗パターンまでを整理します。

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資産管理会社とは|何を管理しどんな目的で設立するか

資産管理会社の全体像を、定義・目的・向き不向きの3つの観点で確認していきましょう。

  • 資産管理会社の定義
  • 設立の主な目的
  • 向き不向きの典型ペルソナ

資産管理会社の定義|プライベートカンパニーの位置づけ

資産管理会社は、所有者個人に集中している不動産・株式・知的財産などの資産を法人名義に移し、保有と運用を法人で行う目的で設立される会社です。プライベートカンパニーや持株会社と呼ばれることもあり、資産の性質によって3つの類型に分かれます。

類型 主な保有資産 主な収入
不動産管理型 賃貸用不動産 賃料収入
株式投資型 上場株・投資信託 配当・売却益
知的財産型 特許・商標・著作権 使用料・印税

参考:会社法|e-Gov法令検索
関連記事:一般社団法人が納めるべき税金の種類とは。税率や注意点を解説

資産管理会社は不動産・株式・知財の3類型に分類される保有目的の法人であり、本業を持つ事業会社(マイクロ法人)とは保有資産と収入によって線引きされます。

設立の主な目的|節税・所得分散・相続対策・資産保全

資産管理会社の設立目的は、節税・所得分散・相続対策・資産保全の4つに大別できます。所得税と法人税の税率差を主因とした節税が最大の動機となることが多いですが、相続対策や所得分散も実務的に重要な目的です。

  • 目的1:節税(個人の最高税率 約55%(住民税含む)vs法人実効税率 24〜34%の差を活用)
  • 目的2:所得分散(親族を役員にして役員報酬で所得を分割)
  • 目的3:相続対策(不動産の現物移転を避け、株式の生前贈与で実行コストを抑制)
  • 目的4:資産保全(個人の責任範囲と法人の責任範囲を分離)
  • 副次的目的:法人ならではの経費計上の幅・退職金制度の活用

参考:法人税法|e-Gov法令検索

節税・所得分散・相続対策・資産保全が資産管理会社の4大目的であり、いずれが主目的になるかで設立形態や運営方針も変わります。

向き不向きについて|4タイプで判断

資産管理会社の活用が向いているタイプは大きく以下のようなタイプで整理できます。一方で向かないケースもあり、設立コストを回収できない所得水準では設立しないほうがよい場合もあります。

タイプ 特徴 向き
高所得サラリーマン 給与+副業所得2,000万円超 ○(副業所得分の法人化)
不動産オーナー 賃料収入1,000万円超 ◎(管理委託・所有方式)
高所得個人投資家 配当・売買益が大きい ○(受取配当益金不算入)
経営者・士業 本業の所得2,000万円超 ○(自社株対策・分散)
向かないケース 所得900万円未満 ×(コスト回収困難)

参考:No.5759 法人税の税率|国税庁

自分のケースが当てはまるかを慎重に検討することをおすすめします。

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節税の仕組み|所得税と法人税の差をどう活かすか

資産管理会社の節税効果を、税率構造・所得分散・経費計上の3つの観点で見ていきましょう。

  • 所得税vs法人税の構造差
  • 役員報酬による所得分散
  • 経費計上の幅の違い

所得税vs法人税の構造差|累進とフラットの逆転点

個人の所得税は累進課税で5〜45%まで段階的に上がる構造であるのに対し、法人税は中小法人で15〜23.2%のフラット税率です。住民税や事業税を加えた実効ベースで、所得900万円を超えるあたりから法人化のメリットが生じ始めます。

課税所得 個人(所得税+住民税) 法人(実効税率) 差分
500万円 約30% 約22% 8%
900万円 約43% 約24% 19%
1,800万円 約50% 約34% 16%
4,000万円超 約55% 約34% 21%

参考:No.2260 所得税の税率|国税庁

所得900万円を超えたあたりから法人実効税率が個人税率を下回るのが税率差が出るポイントであり、所得が大きいほど法人化による税負担差は拡大していきます。

役員報酬による所得分散|親族への分散の効果

資産管理会社では、配偶者や成人した子を役員に就任させ、役員報酬を分散して支払うことで個人の累進税率を下げる手法が一般的です。役員報酬を受け取る側は給与所得控除を別枠で使えるため、所得分散の節税効果は累積的に増えます。

  • 分散例:オーナー本人800万円/配偶者400万円/成人した子(業務関与あり)300万円
  • 給与所得控除:受取側それぞれが別枠で適用(年収400万円なら控除124万円)
  • 各個人の所得税率を下げる効果(例:本人45%→23%、配偶者は20%以下)
  • 注意点:定期同額給与または事前確定届出給与のルールに従う
  • 業務実態:名目上の役員には支給不可、業務関与の実態が必要

参考:No.5211 役員に対する給与|国税庁

役員報酬による所得分散は累進課税を抑える有効な手段であり、各人の給与所得控除を別枠で使えるという二重の節税効果があります。

経費計上の幅の違い|法人ならではの損金

法人化により、個人事業では経費にできない項目が損金算入の対象となります。役員社宅・役員退職金・生命保険料などが代表例で、法人化後の経費計上の自由度は大きく広がります。

  • 役員社宅:賃料の50〜80%程度を法人負担可(家賃の按分計算)
  • 役員退職金:法人で損金算入可(最終報酬月額×勤続年数×功績倍率)
  • 法人保険:定期保険・養老保険の一部を損金算入可
  • 出張日当:個人事業では不可、法人では旅費規程整備で損金算入可
  • 福利厚生費:人間ドック・健康診断費用等が一定範囲で損金算入可

参考:No.5759 法人税の税率|国税庁
関連記事:経費で落とすとどれくらい得になる?よくある誤解や注意点を解説

役員社宅・役員退職金・法人保険など法人ならではの損金項目が活用できるのが経費面の利点であり、これらは個人事業では原則として経費計上できない項目です。

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設立コストと運営コスト|株式会社・合同会社の選び方

夜職の副業と本業を両立させるポイント

資産管理会社の設立費用と運営コスト、株式会社と合同会社の選択基準を3つの観点で確認します。

  • 設立費用の比較
  • ランニングコスト
  • 株式会社か合同会社か

設立費用の比較|株式会社・合同会社の実費

会社設立の実費は、株式会社で約20〜30万円、合同会社で約10万円が目安です。電子定款の活用と司法書士依頼の有無で実費は変動しますが、合同会社のほうが概ね15万円程度安く設立できます。

項目 株式会社 合同会社
定款認証 3〜5万円 不要
登録免許税 最低15万円 最低6万円
電子定款 印紙税4万円不要 印紙税4万円不要
実費合計(自分で) 約20〜25万円 約6〜10万円
専門家依頼 プラス5〜15万円 プラス5〜10万円

参考:株式会社の設立手続(発起設立)について|法務省

合同会社の設立費用は株式会社より15万円程度安いのが実費面の特徴であり、初期コストを抑えたいケースでは合同会社が選ばれる傾向にあります。

ランニングコスト|法人維持に必要な年間費用

法人化後は、所得が赤字でも発生する固定費があります。法人住民税の均等割は資本金等で増減し、税理士顧問費も継続コストとしてかかる支出です。

  • 法人住民税均等割:年7万円〜(資本金等の額・従業員数で増減)
  • 顧問税理士費用:年30〜60万円(決算料込み)
  • 社会保険料:役員報酬を支給する場合は健康保険・厚生年金の加入義務
  • 登記簿謄本・印鑑証明書:随時数千円
  • 役員変更登記:株式会社は最長10年に1回(合同会社は不要)
  • 合計目安:年40〜100万円程度の維持コスト

参考:法人税法|e-Gov法令検索

法人維持コストは年40〜100万円程度が目安であり、節税効果がこのコストを上回らないと法人化のメリットが出にくいと言えるでしょう。

株式会社か合同会社か|選択基準を整理する

資産管理会社は事業会社のような対外的取引が少ないため、コスト面では合同会社が有利な場面が多いものの、事業承継や法的安定性を重視する場合は株式会社が選ばれます。なお、両者は後から組織変更も可能です。

  • 合同会社が向くケース:とにかく低コストで始めたい/対外的信用が問題にならない
  • 株式会社が向くケース:相続対策で持株を分散したい/後の上場や売却を想定/信用力を重視
  • 役員任期:株式会社は最長10年で改選が必要、合同会社は任期なし
  • 所有と経営:株式会社は分離可、合同会社は一致
  • 組織変更:合同会社→株式会社、株式会社→合同会社のいずれも可(時間と費用が必要)

参考:合同会社の設立手続について|法務省

合同会社はコスト重視・株式会社は事業承継重視で選ぶのが基本軸であり、迷う場合は将来の活用イメージから逆算して判断する流れが一般的です。

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設立すべき所得・資産の目安と失敗パターン

税務調査 2年連続

設立すべき水準の判定、年所得別のシミュレーション、失敗パターンを3つの観点で確認します。

  • 設立目安の判定
  • 法人化シミュレーション
  • 失敗パターン

設立目安の判定|所得900万円・資産1億円が分岐点

設立判断の代表的な目安は、個人の年所得900万円超または資産規模1億円超です。法人化後の運用コストが年40〜100万円かかる前提で、節税効果がこの金額を上回るかが判定基準となります。

判定軸 目安水準 理由
個人課税所得 900万円超 税率33%超で法人税率を上回る
推奨検討水準 1,200万円超が継続 運用コストを十分回収可能
資産規模 1億円超 相続対策の観点で有効
不動産賃料収入 1,000万円超 管理委託方式で効果あり

参考:No.2260 所得税の税率|国税庁
関連記事:178万円の壁とは?引き上げ時期や注意点を徹底解説

個人課税所得900万円超または資産1億円超が設立検討の分岐点であり、所得が一過性ではなく継続的にこの水準を超える見込みかが判断のポイントとなります。

法人化シミュレーション|年所得別の節税試算

具体的な節税額をイメージしやすくするため、3つの年所得レンジで個人課税vs法人化後の節税効果を試算します。運用コスト50万円を控除した実質節税額を併記します。

年所得 個人課税 法人化後 節税効果(コスト控除後)
1,500万円 約480万円 約350万円 約80万円/年
3,000万円 約1,170万円 約780万円 約340万円/年
5,000万円 約2,170万円 約1,400万円 約720万円/年

参考:No.5759 法人税の税率|国税庁

年所得3,000万円なら年間340万円程度の節税効果が見込める水準であり、所得が高いほど節税幅が拡大していく構造が読み取れます。

失敗パターン|よくある5つの落とし穴

資産管理会社の設立で想定外の負担が生じる失敗パターンは主に5つあります。設立前にこれらを把握しておくと、運用フェーズでのトラブルを回避しやすくなります。

  • パターン1:所得水準を満たさず設立コストが回収できない(所得600万円未満で設立)
  • パターン2:親族役員報酬の業務実態がなく税務調査で否認される
  • パターン3:個人資産を法人へ移す際の不動産取得税・登録免許税を見落とす
  • パターン4:法人化後に資産の自由な利用ができないストレス(法人資金の引出し制限)
  • パターン5:社会保険料の負担増(役員報酬支給で健保・厚年の加入義務)

参考:No.5211 役員に対する給与|国税庁

所得不足・実態のない役員報酬・移転コスト見落としが代表的な失敗パターンとなるため、設立前に税理士のシミュレーションを受けることをおすすめします。

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まとめ

資産管理会社は、所得税の累進課税と法人税のフラット税率の差を活かす節税スキームとして長く使われてきた仕組みです。所得や資産が一定以上の規模で継続する見込みであれば、節税効果が運用コストを上回り、所得分散・相続対策・経費計上の幅といった副次的なメリットも得られます。一方で設立すれば必ず得をするわけではなく、所得水準・業務実態・移転コストの見落としによって想定した効果が出ないケースも実務では一定数見られます。設立を検討する段階では、自分のケースに即した数値シミュレーションと、株式会社と合同会社の使い分けを冷静に整理することが、後悔しない判断基準となります。

税理士法人松本は、税務・会計のご相談から、法人化・資金調達・事業承継まで、経営に関わるテーマを幅広くサポートしています。単なる数字の処理にとどまらず、事業の将来を見据えたご提案を大切にしてきました。今回のテーマに関してご不安がある方は、初回のご相談から承っておりますのでお気軽にお問い合わせください。

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この記事の監修者

松本 崇宏

税理士法人松本 代表税理士

松本 崇宏(まつもと たかひろ)

登録者20万人以上のYouTubeチャンネル「税理士法人松本〜税金の裏のウラ〜」を運営。 代表を務める税理士法人松本では、これまでに累計5,000件を超える税務調査のご相談・対応実績があり、国税局査察部、税務署長歴任者・税務調査一筋の現場に強い国税出身のOB税理士が現在14名常駐。
国税当局側の視点を踏まえて、お客様の立場を尊重し、税務調査でお悩みのお客様に適切かつ迅速に対応。また、調査前・調査中に関わらず、あらゆる状況から最善のサポートが可能。
なお、調査結果が追徴税額なしとなる実績も多数取得。税務調査における専門性・経験則・折衝力から最善の結果を導き、お客様の笑顔とありがとうを励みに成長し続けている。

税理士法人松本は国税OB・元税務署長が所属する税理士法人です。

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