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年収が2,000万円を超え始めた頃や、相続で複数の不動産を引き継いだタイミングで、知人や金融機関から「資産管理会社の設立を検討してみては」と提案されたという方も多いのではないでしょうか。資産管理会社は、不動産や株式といった資産を所有・管理するために設立する法人の総称であり、所得税の累進課税と法人税のフラット税率の差を活かした節税スキームとして広く使われています。
本記事では、資産管理会社の定義と目的、節税の仕組み、設立コストと運営コスト、設立すべき所得・資産の目安、そして失敗パターンまでを整理します。
目次
資産管理会社の全体像を、定義・目的・向き不向きの3つの観点で確認していきましょう。
資産管理会社は、所有者個人に集中している不動産・株式・知的財産などの資産を法人名義に移し、保有と運用を法人で行う目的で設立される会社です。プライベートカンパニーや持株会社と呼ばれることもあり、資産の性質によって3つの類型に分かれます。
参考:会社法|e-Gov法令検索 関連記事:一般社団法人が納めるべき税金の種類とは。税率や注意点を解説
資産管理会社は不動産・株式・知財の3類型に分類される保有目的の法人であり、本業を持つ事業会社(マイクロ法人)とは保有資産と収入によって線引きされます。
資産管理会社の設立目的は、節税・所得分散・相続対策・資産保全の4つに大別できます。所得税と法人税の税率差を主因とした節税が最大の動機となることが多いですが、相続対策や所得分散も実務的に重要な目的です。
参考:法人税法|e-Gov法令検索
節税・所得分散・相続対策・資産保全が資産管理会社の4大目的であり、いずれが主目的になるかで設立形態や運営方針も変わります。
資産管理会社の活用が向いているタイプは大きく以下のようなタイプで整理できます。一方で向かないケースもあり、設立コストを回収できない所得水準では設立しないほうがよい場合もあります。
参考:No.5759 法人税の税率|国税庁
自分のケースが当てはまるかを慎重に検討することをおすすめします。
資産管理会社の節税効果を、税率構造・所得分散・経費計上の3つの観点で見ていきましょう。
個人の所得税は累進課税で5〜45%まで段階的に上がる構造であるのに対し、法人税は中小法人で15〜23.2%のフラット税率です。住民税や事業税を加えた実効ベースで、所得900万円を超えるあたりから法人化のメリットが生じ始めます。
参考:No.2260 所得税の税率|国税庁
所得900万円を超えたあたりから法人実効税率が個人税率を下回るのが税率差が出るポイントであり、所得が大きいほど法人化による税負担差は拡大していきます。
資産管理会社では、配偶者や成人した子を役員に就任させ、役員報酬を分散して支払うことで個人の累進税率を下げる手法が一般的です。役員報酬を受け取る側は給与所得控除を別枠で使えるため、所得分散の節税効果は累積的に増えます。
参考:No.5211 役員に対する給与|国税庁
役員報酬による所得分散は累進課税を抑える有効な手段であり、各人の給与所得控除を別枠で使えるという二重の節税効果があります。
法人化により、個人事業では経費にできない項目が損金算入の対象となります。役員社宅・役員退職金・生命保険料などが代表例で、法人化後の経費計上の自由度は大きく広がります。
参考:No.5759 法人税の税率|国税庁 関連記事:経費で落とすとどれくらい得になる?よくある誤解や注意点を解説
役員社宅・役員退職金・法人保険など法人ならではの損金項目が活用できるのが経費面の利点であり、これらは個人事業では原則として経費計上できない項目です。
資産管理会社の設立費用と運営コスト、株式会社と合同会社の選択基準を3つの観点で確認します。
会社設立の実費は、株式会社で約20〜30万円、合同会社で約10万円が目安です。電子定款の活用と司法書士依頼の有無で実費は変動しますが、合同会社のほうが概ね15万円程度安く設立できます。
参考:株式会社の設立手続(発起設立)について|法務省
合同会社の設立費用は株式会社より15万円程度安いのが実費面の特徴であり、初期コストを抑えたいケースでは合同会社が選ばれる傾向にあります。
法人化後は、所得が赤字でも発生する固定費があります。法人住民税の均等割は資本金等で増減し、税理士顧問費も継続コストとしてかかる支出です。
法人維持コストは年40〜100万円程度が目安であり、節税効果がこのコストを上回らないと法人化のメリットが出にくいと言えるでしょう。
資産管理会社は事業会社のような対外的取引が少ないため、コスト面では合同会社が有利な場面が多いものの、事業承継や法的安定性を重視する場合は株式会社が選ばれます。なお、両者は後から組織変更も可能です。
参考:合同会社の設立手続について|法務省
合同会社はコスト重視・株式会社は事業承継重視で選ぶのが基本軸であり、迷う場合は将来の活用イメージから逆算して判断する流れが一般的です。
設立すべき水準の判定、年所得別のシミュレーション、失敗パターンを3つの観点で確認します。
設立判断の代表的な目安は、個人の年所得900万円超または資産規模1億円超です。法人化後の運用コストが年40〜100万円かかる前提で、節税効果がこの金額を上回るかが判定基準となります。
参考:No.2260 所得税の税率|国税庁 関連記事:178万円の壁とは?引き上げ時期や注意点を徹底解説
個人課税所得900万円超または資産1億円超が設立検討の分岐点であり、所得が一過性ではなく継続的にこの水準を超える見込みかが判断のポイントとなります。
具体的な節税額をイメージしやすくするため、3つの年所得レンジで個人課税vs法人化後の節税効果を試算します。運用コスト50万円を控除した実質節税額を併記します。
年所得3,000万円なら年間340万円程度の節税効果が見込める水準であり、所得が高いほど節税幅が拡大していく構造が読み取れます。
資産管理会社の設立で想定外の負担が生じる失敗パターンは主に5つあります。設立前にこれらを把握しておくと、運用フェーズでのトラブルを回避しやすくなります。
所得不足・実態のない役員報酬・移転コスト見落としが代表的な失敗パターンとなるため、設立前に税理士のシミュレーションを受けることをおすすめします。
資産管理会社は、所得税の累進課税と法人税のフラット税率の差を活かす節税スキームとして長く使われてきた仕組みです。所得や資産が一定以上の規模で継続する見込みであれば、節税効果が運用コストを上回り、所得分散・相続対策・経費計上の幅といった副次的なメリットも得られます。一方で設立すれば必ず得をするわけではなく、所得水準・業務実態・移転コストの見落としによって想定した効果が出ないケースも実務では一定数見られます。設立を検討する段階では、自分のケースに即した数値シミュレーションと、株式会社と合同会社の使い分けを冷静に整理することが、後悔しない判断基準となります。
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この記事の監修者
税理士法人松本 代表税理士
松本 崇宏(まつもと たかひろ)
登録者20万人以上のYouTubeチャンネル「税理士法人松本〜税金の裏のウラ〜」を運営。 代表を務める税理士法人松本では、これまでに累計5,000件を超える税務調査のご相談・対応実績があり、国税局査察部、税務署長歴任者・税務調査一筋の現場に強い国税出身のOB税理士が現在14名常駐。国税当局側の視点を踏まえて、お客様の立場を尊重し、税務調査でお悩みのお客様に適切かつ迅速に対応。また、調査前・調査中に関わらず、あらゆる状況から最善のサポートが可能。なお、調査結果が追徴税額なしとなる実績も多数取得。税務調査における専門性・経験則・折衝力から最善の結果を導き、お客様の笑顔とありがとうを励みに成長し続けている。
税理士法人松本は国税OB・元税務署長が所属する税理士法人です。
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