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自宅で仕事をしている個人事業主やフリーランスにとって、家賃や電気代、通信費は事業とプライベートの両方で使われる支出です。これらをすべて経費にすることはできませんが、業務分とプライベート分を合理的な基準で分け、業務分だけを必要経費に算入する処理が家事按分です。
本記事では、家事按分の法令上の位置づけ、家賃・電気・通信・自動車などの費目別計算、業種別の割合目安、青色申告と白色申告の違い、税務調査で指摘されないための記録方法までを整理します。
目次
家事按分の制度全体像を、定義・法令上の根拠・50%以下の取扱いの3点で押さえます。
個人事業主の支出は家事費・家事関連費・必要経費の3つに分類され、家事按分は2番目の家事関連費を業務分と家事分に分ける処理を指します。家事費(プライベート費)は経費にできず、必要経費は全額経費、家事関連費だけが按分の対象です。
参考:No.2210 やさしい必要経費の知識|国税庁 関連記事:経費で落とすとどれくらい得になる?よくある誤解や注意点を解説
家事按分は家事関連費を業務分と家事分に合理的基準で分ける処理であり、給与所得者は対象外で個人事業主・フリーランスを中心とした制度です。
家事按分の根拠は所得税法第45条と所得税法施行令第96条にあります。施行令96条第1号で「主たる部分が業務の遂行上必要であり、必要部分を明らかに区分できる場合」が要件とされ、50%基準の運用根拠となっています。
参考:所得税法|e-Gov法令検索
所得税法施行令96条が家事按分の唯一の法令上の根拠であり、青色申告者には取引記録による明確化という別ルートが用意されています。
業務上必要部分が50%以下であっても、必要部分を明らかに区分できれば必要経費に算入してよい、というのが所得税基本通達45-2の運用です。多くの実務で「50%超でないと経費にできない」と誤解されがちですが、通達上は明確に区分できれば50%以下でも算入可能です。
参考:所得税基本通達45-1・45-2 家事関連費(第1号関係)|国税庁
50%以下でも明らかに区分できれば家事按分による経費算入は可能であり、業務専用スペースが小さい在宅ライターやデザイナーでも合理的な区分があれば計上対象となります。
主要な家事関連費の按分計算を3つの観点で確認します。
家賃の按分は、業務専用スペースの面積を全体面積で割る面積按分が最も合理的で説明しやすい基準です。賃貸住宅の場合は家賃そのものを按分し、持ち家の場合は減価償却費・固定資産税・住宅ローン利息を按分対象とします。※「元本返済部分」は経費にできません。
家賃の按分は業務専用スペースの面積比率で決める方式が標準であり、共用部分(廊下・トイレ等)は使用頻度を加味して按分するのが一般的な実務です。
電気代の按分は、1日の活動時間に占める業務時間の比率で計算する時間按分が中心です。水道代は業務での使用が限定的なケースが多いため、按分割合は10〜20%程度に抑えるのが一般的です。
参考:No.2210 やさしい必要経費の知識|国税庁 関連記事:雑所得で経費として扱える費用とは?副業の確定申告の注意点を解説
電気代は業務時間÷活動時間で時間按分するのが基本であり、業務時間の根拠としてタイムカード機能のあるアプリやスケジュール管理ツールの記録が有効です。
通信費は使用日数または使用時間、自動車関連費は走行距離での按分が合理的です。自動車は私用との混在が多いため、走行距離の記録が按分割合の根拠となります。
参考:No.2210 やさしい必要経費の知識|国税庁 関連記事:個人事業主は車にかかる費用を経費にできる?仕訳や減価償却を解説
自動車は走行距離で按分するのが比較的説明しやすい方式であり、運行記録を残しておくと税務調査での説明根拠となる可能性があります。
業種ごとの按分割合の目安と、帳簿への記録・根拠保存のポイントを3つの観点で確認します。
家事按分の割合は業種・業態で大きく変動します。在宅で完結する業種は家賃・電気・通信の按分割合が高く、訪問型サービスは自動車関連費の比重が大きくなります。下表は業種別の目安レンジです。
業種別の按分割合は在宅型と訪問型で家賃と自動車費の比重が反転する傾向にあり、目安レンジを参考にしつつ自分の使用実態に基づく調整が望まれます。※あくまで目安レンジであり、実際はそれぞれの状況によって異なります。
家事按分の仕訳は、支出全額を費用計上した後で家事分を事業主貸に振り替える方法と、按分後の業務分のみを費用計上する方法の2通りがあります。会計ソフトを使う場合は前者が一般的です。
参考:No.2210 やさしい必要経費の知識|国税庁
家事按分の仕訳は事業主貸への振替で家事分を除外するのが基本であり、会計ソフトの自動按分機能を使うと月次の手間を削減できます。
家事按分で最も重視されるのは「説明可能性」であり、按分割合の計算根拠の保存が税務調査でのリスクを下げることにつながります。その際、割合だけでなく、その根拠となる資料を3年〜7年保存しておくようにしましょう。間取り図や業務時間記録は割合決定時に作成しておくのが効率的です。
青色申告と白色申告の取扱い差、税務調査の論点、按分割合の見直しタイミングを3つの観点で確認します。
所得税法施行令96条は青色申告者と白色申告者で要件を分けていますが、通達45-2の運用により実務的な取扱いの差はほぼなくなっています。両者とも合理的な区分があれば家事按分は可能です。
税務調査で家事按分が論点になるのは、按分割合に合理的根拠が示せない場合です。5つの典型的指摘パターンを押さえておくと事前対応が立てやすくなります。
按分割合に合理的根拠を示せないことが税務調査の最大の指摘ポイントであり、根拠資料の整備が指摘リスクを大きく下げることにつながります。
按分割合は一度決めたら固定ではなく、状況変化に応じて見直すのが実務的です。引越しや業態変更のタイミングで割合を再計算し、根拠資料を更新します。
按分割合は引越しや業態変更を機に翌年から見直すのが基本であり、変更時には新しい割合の根拠資料を作成して保存することがポイントです。
家事按分は所得税法と通達の運用に基づく合理的な分類処理であり、按分割合そのものよりも「業務分と家事分を区分できる根拠を示せるか」が判断の中心です。費目ごとに合理的な基準(面積・時間・日数・走行距離)を選び、計算根拠を保存しておけば、青色・白色を問わず必要経費としての算入が認められやすくなります。割合を高く設定したい場面でも、根拠資料の整備が伴っていれば過度に怯える必要はないものの、根拠なき高比率は税務調査での指摘につながりやすい点には留意が望まれます。
税理士法人松本は、税務・会計のご相談から、法人化・資金調達・事業承継まで、経営に関わるテーマを幅広くサポートしています。単なる数字の処理にとどまらず、事業の将来を見据えたご提案を大切にしてきました。今回のテーマに関してご不安がある方は、初回のご相談から承っておりますのでお気軽にお問い合わせください。
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この記事の監修者
税理士法人松本 代表税理士
松本 崇宏(まつもと たかひろ)
登録者20万人以上のYouTubeチャンネル「税理士法人松本〜税金の裏のウラ〜」を運営。 代表を務める税理士法人松本では、これまでに累計5,000件を超える税務調査のご相談・対応実績があり、国税局査察部、税務署長歴任者・税務調査一筋の現場に強い国税出身のOB税理士が現在14名常駐。国税当局側の視点を踏まえて、お客様の立場を尊重し、税務調査でお悩みのお客様に適切かつ迅速に対応。また、調査前・調査中に関わらず、あらゆる状況から最善のサポートが可能。なお、調査結果が追徴税額なしとなる実績も多数取得。税務調査における専門性・経験則・折衝力から最善の結果を導き、お客様の笑顔とありがとうを励みに成長し続けている。
税理士法人松本は国税OB・元税務署長が所属する税理士法人です。
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