メニュー
読了目安時間:約 6分
政府では2001年以降、「貯蓄から投資へ」というスローガンを掲げ、個人の資産形成を推進しています。記憶に新しいところでは2024年1月にNISAの制度を大幅に拡充した新NISAがスタートし、大きな話題となりました。
会社員の場合、原則として確定申告をする必要はありません。そのため、NISAに興味はあるものの、投資をしたら確定申告が必要になるのではと不安な人もいるのではないでしょうか。実は、NISAは原則として確定申告が不要です。なぜNISAは確定申告が不要なのでしょうか。
今回は、NISAの概要や確定申告が不要な理由、例外として確定申告が必要になるケースについて解説します。
目次
NISAは原則として、確定申告が不要です。
本来、投資で得た利益は譲渡所得や配当所得に該当し、所得税と住民税が課されます。後述するように、一部の証券口座は、税金は課されるものの源泉徴収がなされるため確定申告が不要です。しかし、NISAについては、そもそも得た利益に税金が課されないため、確定申告が不要になります。
NISAは「少額投資非課税制度」と呼ばれる制度です。Nippon Individual Savings Accountの頭文字をとってNISAと名付けられました。
金融商品の売買や管理をする証券口座には「一般口座」「特定口座」「NISA口座」の3つがあります。
まず、一般口座は確定申告が必要です。一年間の損益計算を自分で行い、自分で確定申告をしなければなりません。配当所得の場合も譲渡所得の場合も20.315%の税金が課されます。税率の内訳は、所得税と復興特別所得税が合わせて15.315%、住民税が5%です。
また、特定口座には、源泉徴収ありと源泉徴収なしの2つのパターンがあります。源泉徴収ありの場合、口座から自動的に所得税・復興特別所得税、住民税が天引きされるため、確定申告は不要です。しかし、源泉徴収なしの特定口座の場合は、確定申告をしなければなりません。ただし、一般口座とは異なり、証券会社から年間取引報告書が発行されるため、書類をもとに確定申告をすることができます。また、源泉徴収ありの場合も源泉徴収なしの場合も、配当所得と譲渡所得に課される税率は、一般口座と同じ20.315%です。
一方、NISAの場合は、所得税も復興特別所得税も、住民税も非課税です。そのため確定申告をする必要はありません。ただし、配当金を非課税にするためには株式比例配分方式と呼ばれる方法で配当金を受け取る必要があります。
証券口座のうち、確定申告が不要なものはNISAと「源泉徴収あり」の特定口座での取引です。両者には確定申告が不要という共通点はありますが、大きな違いもあります。それが前述したような課税の有無です。
源泉徴収ありの特定口座に関しては、証券会社が損益を計算し、利益が出た場合には税金を口座から差し引き、口座の持ち主に代わって納税してくれるため確定申告が不要になるという仕組みです。つまり、特定口座の場合は、源泉徴収ありの場合でも利益には税金が課されます。
NISAも確定申告は不要ですが、それは、NISA口座の取引で得た利益については税金が課されないからです。
一般口座や「源泉徴収なし」の特定口座で投資信託や株式投資を行い、利益を得た場合は原則として確定申告が必要です。また、複数の課税口座(一般口座・特定口座)で運用している場合、利益と損失を相殺する「損益通算」を行うことで、税負担を軽減できます。「源泉徴収あり」の特定口座で税金が差し引かれている場合でも、確定申告をして他口座の損失と損益通算をすれば、納め過ぎた税金が還付されます。
しかし、NISAはもともと利益が非課税であるため、この損益通算の対象外となります。NISA口座で損失が出たとしても、他の課税口座の利益と相殺するための確定申告を行う必要はありません。この損益通算の手続きが発生しないという点からも、NISAは確定申告が不要であるといえます。
以下の記事では、株式投資の利益について確定申告をしなかった場合のリスクについて解説しています。合わせてご一読ください。
<関連記事>株式投資で得た収益を無申告にした場合のリスクをわかりやすく解説
NISAは個人の安定した資産形成を国が支援するために設けられた制度です。投資は、貯金のように元本が保証されることはありません。貯蓄から投資に国民の考えを移行させるためには、何らかのメリットを用意する必要があります。そこで、投資の利益について税金を課さないNISAの制度をスタートしたのです。
NISAがスタートしたのは、2014年1月のことです。2023年までは一般NISAと呼ばれる制度があり、これは最長5年間、年間最大120万円の投資枠に対して税金を課さないという仕組みでした。
2018年1月にはつみたてNISAが開始されます。つみたてNISAは、最長20年間にわたって、年間最大40万円まで積み立てることができる投資法です。投資の対象は、金融庁が指定した投資信託やETFで、利益には税金がかかりませんが、この制度も2023年で終了しています。
2024年以降は、新NISAに変更され、旧一般NISAは成長投資枠に引き継がれました。一般NISAでは、非課税期間は最長で5年間、年間投資枠の上限は120万円でしたが、新NISAの成長投資枠は非課税期間が無期限に、年間投資枠は240万円に拡大しています。また、つみたてNISAは新NISAのつみたて投資枠に引き継がれ、最長非課税期間は20年から無期限に、年間投資額は40万円から120万円まで広がりました。さらに、一般NISAとつみたてNISAは併用できませんでしたが、新NISAでは成長投資枠とつみたて投資枠の併用が認められており、生涯投資限度額も800万円から合計1,800万円にまで拡大しています。
NISAが非課税である理由は、国が国民一人ひとりに自ら将来に向けた資金の準備を進めてもらいたいという思惑があるからです。現在、想定以上のスピードで少子高齢化が進んでいます。今後、公的年金だけではリタイア後の生活を維持することは難しく、国民が能動的に老後資金を形成しなければ国のさらなる財政悪化は免れない状況です。そのため、国では利益に対して税金が課されないNISAの制度を導入し、投資を進めていると考えられます。
また、銀行預金が増えるとお金が循環しなくなり、消費が活性化せず、企業の成長も見込めません。投資によって成長企業に現金を供給できれば、新たな技術やサービスの開発が進み、社会全体が活性化する可能性があります。
これが非課税口座であるNISAの誕生背景です。
NISAは原則として確定申告が不要です。それは、NISA自体が非課税口座であるからですが、例外としてNISAであっても確定申告をした方がよいケースがあります。
配当金とは、上場企業が得た利益の一部を株主に分配するお金のことです。
NISAで生じた配当金や分配金の受け取り方法には、株式数比例配分方式、登録配当金受領口座方式、個別銘柄指定方式、配当金領収証方式の4つがあります。このうち、配当金を非課税で受け取るためには株式数比例配分方式で受け取る必要があります。
・株式数比例配分方式
株式数比例配分方式とは、保有している株数に応じて配当金や分配金を、証券口座で受け取る方法です。
・登録配当金受領口座方式
証券口座ではなく、指定した金融機関口座で配当金や分配金を受け取る方法です。
・個別銘柄指定方式
保有する銘柄ごとに受け取りの金融機関を指定し、配当金や分配金を受け取る方法です。
・配当金領収証方式
郵送される配当金領収証をゆうちょ銀行などの窓口に持参し、現金と引き換える方法です。
NISAで発生した配当金を非課税にするためには、受け取り方法を株式数比例配分方式に指定しておかなければなりません。株式数比例配分方式以外の方法で配当金を受け取る場合は、配当金が課税対象となり、源泉徴収がなされるため、源泉徴収された税金の還付を希望する場合は確定申告が必要です。
新NISAの場合は、非課税期間に期限はありません。しかし、2023年までの旧NISAには非課税期間が設定されています。非課税期間は、一般NISAが5年間、つみたてNISAが20年間です。旧NISAで保有していた商品は、非課税期間終了とともに課税口座に移管されることとなります。
課税口座の移管先が「源泉徴収あり」の特定口座であれば、売却益が出た場合でも源泉徴収がなされるため確定申告は不要です。しかし、「源泉徴収なし」の特定口座や一般口座に移管した場合は、売却益が出た際に確定申告が必要です。
NISAは原則として確定申告が不要ですが、株式数比例配分方式以外の方法で配当金を受け取った場合は還付を求める際に、確定申告が必要です。また、「源泉徴収なし」の特定口座や一般口座で資産運用をして運用益が発生した場合、複数の課税口座間で損益通算をしたい場合も確定申告をする必要があります。
NISAや資産運用の確定申告は次のステップで行います。
特定口座の場合は、証券会社から年間取引報告書が発行されるため、年間取引報告書をもとに確定申告書を作成します。しかし、一般口座の場合、年間取引報告書は発行されないため、取引報告書などから損益を計算しなければなりません。
そのほか、確定申告には次の書類の準備が必要です。
・確定申告書
・源泉徴収票(会社員の場合)
・マイナンバーまたはマイナンバーが確認できる書類
確定申告の期間は2月16日から3月15日までです。この間に前年の1月1日から12月31日までの所得について申告をしなければなりません。ただし、3月15日が土・日・祝日にあたる場合は、翌平日が期限となります。
確定申告書の作成方法には手書きで作成する方法とスマートフォンやパソコンから作成する方法があります。
手書きで作成する場合は、税務署の窓口で配布されている確定申告書を入手するか、国税庁のホームページにある確定申告書をダウンロードします。スマートフォンやパソコンから作成する場合は、国税庁のホームページにある確定申告書等作成コーナーが利用できます。確定申告書等作成コーナーは質問に回答していく形で必要事項を入力していくと、納付税額が自動的に計算されるため便利です。
確定申告書が完成したら、確定申告書を期限までに管轄の税務署に提出します。確定申告書等作成コーナーを利用してパソコンで作成した場合は、確定申告書を印刷し、紙の確定申告書を提出することも可能です。紙で確定申告書を作成した場合は、税務署に郵送するか窓口に持参します。また、税務署の開庁時間は月曜~金曜の8時30分~17時までです。この時間以外、窓口は開いていませんが、税務署の外に設置されている時間外収受箱に確定申告書を投函することもできます。
また、パソコンやスマートフォンで確定申告書を作成した場合は、e-Taxと呼ばれるシステムを利用し、オンライン上で提出が可能です。e-Taxの利用には原則としてマイナンバーカードが必要となります。ただし、以前に税務署でID・パスワード方式の登録を済ませており、IDを保有している場合は、マイナンバーカードが無くてもe-Taxを利用できます。なお、ID・パスワード方式は2025年9月末で新規発行が停止されているため、新たにIDの発行を受けることはできません。
確定申告書を提出し、納税の必要がある場合は税金を納付します。還付金がある場合は、確定申告書に記載した金融口座に入金されます。
NISAは原則として確定申告が不要です。それは、NISAは非課税口座であり、売却益に対しても税金が課されないためです。ただし、配当金の受け取り方法を株式数比例配分方式以外にしてしまうと、配当金が課税対象となるため、源泉徴収がなされます。源泉徴収された分の税金の還付を求めるためには確定申告が必要です。
通常、金融商品の売却時には20.315%の税金が課されます。NISAはこれらの税金が課されない点、確定申告も不要な点で大きなメリットがある資金運用法だといえます。NISAを始める際には、配当金の受け取り方法として、必ず株式数比例配分方式を選択することを忘れないようにしましょう。
-免責事項-
当ブログのコンテンツ・情報について、できる限り正確な情報を提供するように努めておりますが、正確性や安全性を保証するものではありません。内容は記事作成時点の法律に基づいています。当サイトに掲載された内容によって生じた損害等の一切の責任を負いかねますのでご了承ください。
この記事の監修者
税理士法人松本 代表税理士
松本 崇宏(まつもと たかひろ)
登録者20万人以上のYouTubeチャンネル「税理士法人松本〜税金の裏のウラ〜」を運営。 代表を務める税理士法人松本では、これまでに累計5,000件を超える税務調査のご相談・対応実績があり、国税局査察部、税務署長歴任者・税務調査一筋の現場に強い国税出身のOB税理士が現在14名常駐。国税当局側の視点を踏まえて、お客様の立場を尊重し、税務調査でお悩みのお客様に適切かつ迅速に対応。また、調査前・調査中に関わらず、あらゆる状況から最善のサポートが可能。なお、調査結果が追徴税額なしとなる実績も多数取得。税務調査における専門性・経験則・折衝力から最善の結果を導き、お客様の笑顔とありがとうを励みに成長し続けている。
税理士法人松本は国税OB・元税務署長が所属する税理士法人です。
全国からの税務調査相談実績 年間1,000件以上
税理士法人松本の強み
30秒で完了かんたん税務調査リスク診断
←前の記事
減価償却とは?計算方法や税務調査で指摘されやすいポイントを解説
次の記事→
暗号資産は確定申告をしないとバレる?税務調査の流れやリスクを解説
あわせて読みたい記事
税務調査
税務調査は対応次第で結果が大きく変わります!
専門家があなたの税務調査に関する不安を一つ一つ丁寧に解決。初回有料相談は返金保証付きで、どんな小さなご相談も全国から承ります。