メニュー
読了目安時間:約 6分
個人事業主としてコンサルタント業を営んでいる場合、確定申告が必要です。コンサルタントといってもさまざまな種類がありますが、経営コンサルタントは正しく確定申告を行っていない、不正の多い業種として知られています。
不正の多い業種は、税務調査の対象として選ばれやすい傾向にあるため、コンサルタントとして活動しているのであれば、しっかりと確定申告を行うことが大切です。しかしながら、コンサルタント業の場合、確定申告時にどこまでを経費として計上できるのか、不明確なケースもあります。
そこで今回は、コンサルタントが確定申告時に経費にできる費用を中心にご説明します。
目次
個人事業主としてコンサルタント活動を行っている場合、確定申告をしなければなりません。
会社員の場合、会社から支払われる毎月の給与や賞与から、所得税や住民税が天引きされています。企業は従業員から天引きした税金を、納税者に代わって国や自治体に納めているのです。そのため、年収2,000万円を超えない限り、会社員は確定申告をする必要はありません。
しかし、個人事業主としてコンサルタント業を営む場合、コンサルタント業で得た収入から税金が引かれることはないため、一定以上の所得を得ている場合には確定申告が必要になるのです。
所得税は、1年間の所得に課される税金です。所得税には、所得額に応じて税率が変わる累進課税制度が採用されているため、まずは所得額を算出しなければ、納税額を決定することができません。この所得額を算出する際には、収入と経費が必要です。
所得は、収入から事業のためにかかった費用、つまり経費を差し引くことで算出します。確定申告では、収入から経費を差し引くことで所得を算出し、所得額に応じた所得税率をかけて納税額を決定するのです。
所得額は「収入-経費」で算出し、納税額は所得額によって変わるため、確定申告時には経費を漏れなく計上することが節税のポイントとなります。コンサルタント業を営む場合も、クライアントを訪問する際に発生する交通費をはじめ、さまざまな経費が発生しているはずです。経費に含めることができる支出は、しっかり経費として計上しないと、所得額がふくれ、納税額が大きくなる恐れがあります。反対に、経費として計上できない支出まで計上すると、確定申告の内容に疑義を抱かれ、税務調査の対象となる可能性が出てきます。そのため、コンサルタント業ではどのような支出を経費計上できるのか、正しく把握しておくことが大切です。
では、コンサルタント業を営む個人事業主が確定申告時に経費として計上できる費用についてご説明します。
オフィスを借りてコンサルタント業を営んでいる場合、オフィスの家賃は経費として計上することが可能です。
また、自宅の一部をオフィスとして使っている場合も、家賃の一部を経費にすることが可能です。この場合、オフィスとして使用している部屋の割合やオフィスとして利用している時間などから、事業用の使用分のみを経費計上します。ただし、賃貸物件の場合は家賃を経費計上することができますが、持ち家の場合、家賃を計上することはできません。
地域によっては、クライアントを訪問する際に車が必要になるケースもあるでしょう。事業用の自動車を保有しており、駐車場も借りている場合は、駐車場代も経費として計上できます。また、自家用車を事業用にも使用しており、駐車場を借りている場合には、事業用として使用する割合によって駐車場代も経費計上が可能です。
コンサルタント業を営むうえで必要となる、デスクやチェア、照明、来客用のソファー、テーブル、棚など、什器の購入費も経費として計上できます。また、業務で使用するパソコンやプリンター、マウス、コピー用紙、ペン、ファイルなどの備品や文房具なども経費計上が可能です。
ただし、什器やパソコンなど、取得価額が10万円以上のものについては、固定資産として扱わなければならない点には注意しなければなりません。
コンサルタント事務所としてオフィスを構えている場合は、オフィスの水道光熱費は、経費として計上できます。自宅でコンサルタント業を行っている場合は、家賃同様、オフィスとして使っている部分やオフィスとして使用している時間の割合に応じて電気代を経費として計上することは可能です。
例えば、1ヶ月の電気代が10,000円だった場合、独立したオフィスを構えている場合は水道光熱費として10,000円をそのまま経費に計上できます。しかし、自宅の一部をオフィスとした場合は自宅の電気代全てを経費に計上することはできません。経費計上できるのは、コンサルタント業務で利用した部分のみに限定しなければならないのです。
自宅で1日8時間、月間22日間、業務にあたっていた場合、労働時間は176時間となります。1日は24時間であるため、1ヶ月を30日として計算すると、1ヶ月は720時間となります。仕事をしていた時間の割合は176/720、すなわち、24%と計算できます。そのため、電気代が10,000円だった場合、コンサルタント事業の経費として計上できるのは、10,000円の24%分である2,400円分となります。
クライアントを訪問する際に発生した移動費やコンサルタント業のために出張が必要になった場合の宿泊費などは、旅費交通費として経費計上が可能です。具体的には電車やバスの料金、新幹線の料金、タクシー代、ガソリン代、高速道路代、出先で使用したコインパーキング代、宿泊費などを経費として計上できます。遠方のクライアントを訪問する際に発生したホテル代も宿泊費として経費計上することができますが、認められるのは宿泊費のみです。出張時の飲食代などは、経費に計上できない点に注意しなければなりません。また、不相応に高額なホテル代などが計上されていた場合、税務調査で否認される恐れもあるため注意しましょう。
電話代や携帯電話代、インターネット回線の料金など、通信費も経費計上が可能です。コンサルタント業専用の連絡先として携帯電話を保有している場合は全額を経費として計上できます。しかし、プライベートと業務用の携帯電話を分けていない場合、経費として認められるのはコンサルタント業に使用した部分のみです。プライベートと業務での使用割合を明確に算出し、業務で使用した分のみを計上しなければなりません。
また、自宅でコンサルタント業を開業している場合は、インターネット回線の料金なども全額は経費に計上できない点に注意が必要です。
コンサルタントとは、クライアントの相談に乗りながら、クライアントが抱える課題を解決するための方策を提案する仕事であり、その分野の専門家であるということができます。クライアントが抱える課題を見出すためにも、課題解決のための具体的な戦略を立案するためにも、関連分野の知識が必要です。そのため、コンサルタントは開業してからも、継続的な学びが必要となり、関連する書籍を購入するケースも少なくありません。コンサルタント業に関連する書籍の購入代金は、経費に計上することができます。ただし、経費とは関係のない小説や雑誌など、趣味で購入した書籍の代金を経費とすることはできません。
知識を深めることを目的に、セミナーに参加するケースもあるでしょう。会場型のセミナーに参加する場合もオンラインセミナーに参加する場合もコンサルタント業に関連するセミナーの費用であれば、経費として計上して問題ありません。また、情報交換を目的としたコンサルタント同士の交流会などが開催される場合もあります。事業に関連した交流会の参加費用についても経費計上が可能です。
コンサルタント業の顧客を獲得するためには、広告や宣伝を行う必要があります。例えば、ホームページを開設した場合のサイト作成費用は広告宣伝費に該当します。また、事業を案内するパンフレットなどの作成費用も広告宣伝費として経費計上が可能です。そのほか、Web広告の出稿費用や地域のタウン誌などへの出稿費用なども広告宣伝費に該当します。
クライアントと食事をした際の飲食代金やクライアントに贈るお中元やお歳暮などの費用も経費として計上できます。ただし、プライベートな食事会の飲食費用や家族や友人のために購入したプレゼントの購入代金などを経費にすることはできません。
税務調査で指摘を受けることがないよう、接待交際費として経費計上する場合には、対象となったクライアントの名称や参加者の名前、参加人数、目的など、内容が分かるメモを残しておくことが大切です。
契約書などに貼付する印紙税や事業用の自動車にかかる自動車税や自動車重量税などは、経費計上が可能です。また、コンサルタント業は法定業種に該当しているため、年間290万円以上の所得を得ている場合に納税の義務が生じる個人事業税も、経費に計上できます。
そのほか、証明書などを発行する際の手数料なども経費に計上することが可能です。
コンサルタント業用の車で加入している自動車保険の料金やオフィスを借りる際に契約した火災保険料や地震保険料などは、経費として計上することができます。また、自宅とコンサルタントオフィスを兼ねている場合は、確定申告時に事業に使用している割合のみを経費に計上することが可能です。
コンサルタント業の人が確定申告をする際には、次の点に注意する必要があります。
確定申告時に経費として計上する支出については、支出の証明となる領収書が必要です。領収書がない場合、本当にその費用を支払ったのか、支払金額が正しいのかを証明することができません。
確定申告時に領収書の添付は必要ありませんが、個人事業主の場合、領収書は5年間または7年間保管する義務があります。経費として計上する費用については、領収書を必ず保管しておくようにしましょう。
また、領収書が発行されないものなどについては、出金伝票を記載して記録を残しておくことが大切です。
確定申告時に、経費としては計上できない費用まで経費計上していると、税務調査の対象になる可能性が高くなります。例えば、コンサルタント業務に使用する自動車の自動車税や個人事業税、契約書に貼付する収入印紙代などは、経費計上が可能です。しかし、所得税や住民税などは経費に含めることはできません。また、国民健康保険料や国民年金保険料は、確定申告の際、社会保険料控除の対象となります。しかし、経費として計上することはできない点に注意が必要です。
自宅の一部をコンサルタントオフィスとしている場合や自家用車を事業でも使用している場合などは、家賃や駐車場代、通信費、電気代などを全て経費にすることはできません。ただし、コンサルタント業務に使用した分のみは経費計上が可能です。事業用とプライベート用の経費を割合で分けることを家事按分といいます。
家事按分を行う際には、使用している部屋の面積や使用時間などをもとに家事按分比率を算出しなければなりません。家事按分比率が高すぎたり、税務調査時にその算出根拠を明確に説明できなかった場合は、経費が否認される恐れがあるため事業分の使用割合を正しく算出することが大切です。
コンサルタントの中でも経営コンサルタントは、正しく確定申告をしていない業種として国税庁から発表されています。そのため、税務調査の対象になる可能性が高くなります。
税務調査時に経費の過剰計上など、確定申告内容の不備を指摘された場合、不足分の税額に加え、ペナルティ分の税金についても納税が求められます。また、税務調査で不正が指摘されたとなれば、顧客との信頼関係にも亀裂が生じ、事業にも悪影響が生じる恐れもあるでしょう。
今回、コンサルタント業を営む個人事業主の方が経費として計上できる費用と確定申告時の注意点についてご説明しました。今回の記事を参考に、正しく確定申告を行いましょう。
免責事項
当ブログのコンテンツ・情報について、できる限り正確な情報を提供するように努めておりますが、正確性や安全性を保証するものではありません。内容は記事作成時点の法律に基づいています。当サイトに掲載された内容によって生じた損害等の一切の責任を負いかねますのでご了承ください。
この記事の監修者
税理士法人松本 代表税理士
松本 崇宏(まつもと たかひろ)
お客様からの税務調査相談実績は、累計5,000件以上。国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。
税理士法人松本は国税OB・元税務署長が所属する税理士法人です。
全国からの税務調査相談実績 年間1,000件以上
税理士法人松本の強み
30秒で完了かんたん税務調査リスク診断
←前の記事
税務調査で領収書はどこまでチェックされる?裏取りもされるの?
次の記事→
税務調査の対象になりやすい個人や法人の特徴とは?対策や対象となる申告書の例も解説
あわせて読みたい記事
税務調査
税務調査は対応次第で結果が大きく変わります!
専門家があなたの税務調査に関する不安を一つ一つ丁寧に解決。初回有料相談は返金保証付きで、どんな小さなご相談も全国から承ります。