2025.10.6
  • 税務調査

法人の節税対策10選!中小企業こそ実践したいテクニックを紹介

読了目安時間:約 6分

法人には、事業所得に対して法人税が課されます。法人税の納税は義務です。しかし、法人税の納税額が大きくなればなるほど会社の手元資金は減少するため、できれば節税をし、納税額を低く抑えたいと考えるケースがほとんどでしょう。特に、中小企業では、できれば税金の負担を軽くし、節税できたお金で事業基盤の強化や従業員の福利厚生の充実などを図りたいと考えるケースが多いのではないでしょうか。

そこで今回は、中小企業こそ取り入れたい節税対策を10個ご紹介します。

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法人が節税対策を実施する際の注意点

法人税に関する節税対策にはさまざまなテクニックがあります。しかし、法人が節税対策を実施する際には次のポイントに注意しなければなりません。

自社に合った節税対策を見極める

法人向けの節税対策は、すべての企業に合うわけではありません。企業の規模や事業の内容によって、効果を得られる対策もあれば、十分な効果を期待できない対策もあるのです。

また、企業のステージによっても適した節税対策は異なります。例えば、事業の成長期と事業承継の段階では、必要になる節税対策は全く変わってきます。そのため、節税対策を実施する際には、自社に適した節税対策を見極めることが重要です。

節税の目的を見失わない

税金を減らすことばかりに目が行ってしまうと、不毛な節税対策を実施してしまう可能性がある点にも注意しなければなりません。

年度末が近づき、想定以上に利益が上がっていることに気がつくと、課税所得を減らし、節税対策を実施しなければと焦ってしまうケースもあるのです。課税所得を減らすには、経費を増やすことが簡単な節税対策となります。そのため、無駄に消耗品を購入したり、必要性の高くない接待を繰り返したりといった行為におよぶケースが見られます。

経費として計上する額が多くなれば、課税所得額は低くなるため、法人税の額も低くなります。しかし、納税の負担は減ると同時に企業の手元資金も減っている点を忘れてはいけません。節税の目的は、会社にお金を残すことであり、無駄な出費を増やすことではない点をしっかり理解しておきましょう。

リスクを伴う節税対策は選択しない

節税につながる対策には、確実に合法とはいえない、判断に迷うような対策もあります。違法とも捉えかねないような節税対策の実施は、非常に危険です。節税効果を得られる方法でも、税務調査が入った際に調査官から指摘を受けると、追徴課税の対象となります。その場合、節税どころか、かえって本来よりも多い額の税金を納めなければならなくなるのです。

さらに、確実に合法とはいえない節税対策を実施し、税務調査で指摘を受ければ、社会的信頼も低下します。法人税法違反の罪に問われれば、顧客や取引先からの信頼も低下し、業績にも大きな影響を与えることとなるでしょう。

リスクを伴う節税対策は絶対に選択すべきではありません。

法人におすすめの節税対策

では、法人におすすめの節税対策を10個ご紹介します。

1.役員報酬を損金として計上する

個人事業主と異なり、法人の場合、企業の利益と個人の利益は明確に区分されます。法人では、経営者は会社から役員報酬としてお金を受け取ることになります。

役員報酬は、原則として損金として計上することが認められていません。しかしながら、定期同額給与、事前確定届出給与、業績連動給与として支給する役員報酬は損金算入が可能です。役員報酬を損金として計上できれば、その分、課税所得額が低くなるため、大きな節税効果を得られるでしょう。

ただし、定期同額給与は株主総会の決議に基づき、同じ額を毎月支給しなければならないなど、役員報酬を損金算入するためには要件を満たさなければなりません。要件を満たさない場合、損金算入は認められない点に注意が必要です。

また、役員報酬の額を高く設定すれば法人税の節税効果は高まるものの、役員個人が支払うべき所得税の額や社会保険料は高くなり、役員報酬が極度に高すぎると税務調査で指摘を受ける可能性があります。役員報酬額を決定する際には、これらの点にも注意しなければなりません。

2.決算賞与を支給する

決算賞与とは、会社の業績に応じて、臨時で支給する賞与のことです。決算賞与は、損金として算入できるため、節税効果を得られます。そのため、業績がよく、一定以上の利益が出た法人の節税対策としてよく用いられるテクニックです。

決算賞与は、次の要件を満たせば支給が次年度となっても、未払い賞与として扱い、当期の損金として算入することができます。

・事業年度終了日までに、決算賞与の支給対象者全員に支給額を通知する

・事業年度終了日の翌日から1か月以内に全員に通知した金額を支給する

・支給額を通知日の属する事業年度に損金算入をしている

決算賞与は、節税対策に有効なだけでなく、従業員の頑張りを正当に評価するものであり、従業員のモチベーションアップにも貢献します。業績が想定以上によい場合などは、決算賞与の支給も検討するとよいでしょう。

3.借り上げ社宅制度を導入する

法人では、役員や従業員の住居を社宅として扱い、社宅費用の一部を経費に計上することが認められています。社宅の費用を経費にするためには、次の要件を満たさなければなりません。

・社員や役員から一定以上の賃料を受け取っている

・会社名義で賃貸物件の契約をしている

住宅手当を支給する場合、節税効果は得られません。しかし、借り上げ社宅の制度を導入すれば、会社が支払った家賃と入居者である役員・従業員から受け取った賃料相当額の差額分を経費として計上でき、節税効果を得られます。また、借り上げ社宅制度は、従業員の家賃負担を軽減するため、福利厚生の充実にもつながり、人材の採用面でもメリットを得られるでしょう。

借り上げ社宅制度を導入する際には、社内規定で制度のルールをしっかり定めておくことが大切です。

4.旅費日当を支給する

出張時の宿泊費や交通費などは、経費として計上することが可能です。しかし、遠方への出張の場合、現地で食事を調達しなければなりません。また、家族への連絡をするための通信費などが発生する場合もあります。出張がなければ自宅で自炊ができたり、家族への連絡をする必要もないため、これらの費用は発生しなかった支出です。そのため、出張時の負担を軽減するために、旅費日当の支給が認められています。個人事業主の場合、事業主本人の旅費日当は経費に計上できませんが、法人は、役員の旅費日当も経費に計上することができます。

出張が多く発生する場合には、旅費規定を作成し、旅費日当の支給についても定めておくと節税対策として有効です。

5.赤字の繰り越しをする

法人の場合、最大10年間、赤字を繰り越すことが可能です。法人として事業を始めてすぐの場合、設備投資などにもコストがかかり、事業が安定するまでには時間がかかるケースもあるでしょう。そのような場合、黒字が出た年に赤字を相殺すると、税負担を軽減できます。

また、一定の要件はあるものの、資本金または出資金が1億円以下の中小企業の場合、欠損金の繰越還付制度を利用することもできます。この制度は、黒字の翌年に赤字になった場合、前年の黒字と当年の赤字を相殺し、前年に納めた法人税の還付を受けられるというものです。

いずれにせよ、赤字の繰り越しは黒字になった年の節税対策として有効な手段となります。

6.不要な在庫の処分をする

在庫の見直しを行い、不要な在庫を処分すると棚卸資産の減少につながるため利益を圧縮し、節税効果を期待できます。また、在庫の保管にかかるコストや在庫を管理するコストも削減できるため、節税対策のほか、経営効率の向上にもつながります。

廃棄処分をする場合は、廃棄損として損金算入ができ、値引き価格で販売した場合には、赤字部分を損金として算入することも可能です。ただし、廃棄したことの証憑として産廃業者の請求書や領収書等を保管することを忘れないようにしましょう。

7.経営セーフティ共済に加入する

経営セーフティ共済と呼ばれる「中小企業倒産防止共済制度」は、取引先企業が倒産した場合のリスクに備える共済制度です。取引先が倒産すれば、売掛金などの回収ができなくなる恐れがあります。経営セーフティ共済では、積み立てた掛金総額の10倍の範囲内であれば、回収不能となった売掛債権等の額以内の共済金の貸付けを受けられるというものです。

掛金は損金算入が認められているため、万が一の事態に備えながら、節税対策にもつながります。また、解約時には解約手当金として、納付月数に応じた掛金が返戻されるため、節税対策を兼ねて経営セーフティ共済への加入も検討するとよいでしょう。

参照:中小機構「経営セーフティ共済」      

8.少額減価償却資産の特例を利用する

少額減価償却資産の特例は、青色申告をしている中小企業が利用できる制度です。10万円以上の物品を購入した場合、通常、資産として扱い、法定耐用年数に応じた減価償却を行う必要があります。減価償却を行うと、一度に取得価額をすべて損金として計上することはできません。しかし、少額減価償却資産の特例を利用すると、30万円未満の消耗品について、購入した年度の損金として購入金額を一括して損金計上することが可能です。

少額減価償却資産の特例を受けられるのは、青色申告書を提出している、常時使用する従業員が500人以下の中小企業者となります。また、少額減価償却資産の特例の適用を受けられるのは、年間300万円までという上限があります。

確定申告の際には、少額減価償却資産の取得価額に関する明細書の添付が必要になることを忘れないようにしましょう。

9.短期前払費用を活用する

短期前払費用とは、法人が契約に基づいて、継続的に役務の提供を受けるもののうち、1年以内に支払うことが確定している費用については、支払った時点で損金算入を認めるというものです。例えば、法人の事務所や倉庫、店舗などを借りている場合、月々の支払いではなく、年払いをした場合、支払った額をまとめて経費に計上することが可能です。

ただし、短期前払費用を利用する場合、年払いとして契約を締結し、以降も継続して年払い契約を続けなければなりません。

10.賃上げ促進税制を活用する

賃上げ促進税制は、常時使用する従業員数が1,000人以下の企業が給与支給額を増加させた場合に増加額の一部を法人税から控除できるという制度です。適用期間は、令和6年4月1日~令和9年3月31日までとなっています。従業員の給与額が前年度と比べ、1.5%以上増加している場合は、支給増加額の15%、2.5%以上増加している場合には支給増加額の30%を控除することが可能です。

さらに、一定要件を満たすことで税額控除率が上乗せされます。賃上げを実施した年度に控除しきれなかった金額は、5年間の繰り越しも認められており、賃上げによる従業員のモチベーションアップと節税効果の両方を得ることができます。

少子高齢化が進む中、賃上げは優秀な人材の確保に有効な施策です。しかし、節税対策に有効だからといって安易に賃上げを実行すると、経営状況に影響が生じる可能性もあります。賃上げをすべきかどうかについては、中長期的な視野に基づき判断をすることが重要になります。

参照:経済産業省「中小企業向け賃上げ促進税制ご利用ガイドブック

法人の節税対策は税理士への相談がおすすめ

法人、特に中小企業に役立つ節税対策を10個ご紹介してきました。冒頭で述べた通り、節税対策を実施する際には、自社に合った対策を選ぶことが重要になります。しかしながら、最適な節税対策を見極めるためには税務の知識が必要不可欠です。そのため、効果的な節税対策を実施する際には、税務の専門家である税理士への相談をおすすめします。

税理士であれば、業種ごとの特徴も把握しており、最適な節税対策についてのアドバイスを受けられます。また、法に基づいた安全な節税対策の提案ができるため、税務調査で指摘を受ける心配もありません。さらに、健全な経営体制を実現するためのアドバイスを受けられる可能性もあります。節税対策を検討する際には、税理士への相談を検討してみましょう。

まとめ

法人は、個人事業主に比べて、経費として計上できる範囲が広がるため、さまざまな節税対策を実施することが可能です。ただし、グレーゾーンとも捉えられるようなリスクのある節税対策を実施すると、税務調査時に指摘を受け、追徴課税が行われるリスクがあります。税金の負担を軽減しようと行った節税対策でも、適切な手段でなければ、反対に税金の負担を増やしてしまう可能性もあるのです。

税理士法人松本では、企業規模や業種に合った最適な節税対策を提案しています。自社に適した節税対策の実施を検討されている場合は、ぜひお気軽にご相談ください。


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この記事の監修者

松本 崇宏

税理士法人松本 代表税理士

松本 崇宏(まつもと たかひろ)

登録者16万人以上のYouTubeチャンネル「税理士法人松本〜税金の裏のウラ〜」を運営。 代表を務める税理士法人松本では、これまでに累計5,000件を超える税務調査のご相談・対応実績があり、国税局査察部、税務署長歴任者・税務調査一筋の現場に強い国税出身のOB税理士が現在14名常駐。
国税当局側の視点を踏まえて、お客様の立場を尊重し、税務調査でお悩みのお客様に適切かつ迅速に対応。また、調査前・調査中に関わらず、あらゆる状況から最善のサポートが可能。
なお、調査結果が追徴税額なしとなる実績も多数取得。税務調査における専門性・経験則・折衝力から最善の結果を導き、お客様の笑顔とありがとうを励みに成長し続けている。

税理士法人松本は国税OB・元税務署長が所属する税理士法人です。

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