メニュー
読了目安時間:約 6分
「相続税がかかるかもしれないけれど、きっと相続税のことが税務署にバレることはないだろうから申告しない」そんな風に思っている人はいませんか?
相続税は、相続が発生したからといって必ず納税が必要になるわけではありません。そのため、手間や納税の負担を避けるために、相続税を申告しないというケースも少なくないようです。しかし、相続税を申告しない場合、税務署に申告漏れが発覚し、ペナルティを課される恐れがあります。相続税を申告しないとどうなるのでしょうか。
今回は、相続税を申告しないときのリスクや無申告がバレる理由などについてご説明します。
目次
相続税を申告しないと、どのようなことが起きるのでしょうか。まずは、相続税を申告しないことで生じるリスクからご説明します。
相続税の申告が必要であるにもかかわらず、相続税を申告しない状態にあると、税務調査の対象となる可能性が高くなります。税務調査とは、税金の申告状況を調べる税務署の調査です。相続税の税務調査では、故人の職業や財産の状況についてヒアリングがなされ、相続した財産の内容について詳しくチェックされます。
相続税に関して税務調査の対象となりやすいのは、特に、相続税の申告が必要であるにもかかわらず、相続税の申告をしないケースです。そのほか、申告はしていたものの申告財産に漏れが見られるケースや相続財産の金額が大きかった場合なども、税務調査の実施対象として選ばれやすい傾向にあります。
税務調査では、申告していない相続財産について細かくチェックがなされ、申告漏れを指摘されます。申告漏れを指摘された場合、納税者は正しく申告をし、不足分の税金の額を納めなければなりません。しかし、税務調査で無申告状態が発覚した場合、納付が求められるのは不足分の税金だけではありません。申告が必要であったにもかかわらず、申告をしなかったことに対するペナルティとして、無申告加算税の納付も求められるのです。
無申告加算税の税率は、納めるべき税金の額によって変わってきます。税率は、納税額が50万円までの部分については15%、50万円超300万円以下の部分については20%、300万円超の部分については30%です。
例えば、相続税として500万円の納税が必要だった場合、期限までに申告をし、納税をしていれば納税額は500万円となります。しかし、相続税を申告しない状態を続け、税務調査となった場合は、500万円+50万円×15%+250万円×20%+200万円×30%の税金を納めなければならなくなるのです。
この式を計算すると、617.5万円の納税が必要になることが分かります。つまり、相続税を申告しない状態であった場合、本来よりも少なくとも117.5万円は多く税金を支払う必要が出てくるのです。
相続税を申告しない場合、ペナルティとして課されるのは無申告加算税だけではありません。申告をせず、税金を納付していなかった場合、税金の納付が遅れたことになります。延滞税は、税金の納付が遅れたことに対するペナルティとして課される税金です。
延滞税の税率は毎年変動しますが、納期限の翌日から2ヶ月を経過した日とそれ以降で大きく変わり、納税が完了する日まで1日単位で課されるという特徴があります。
したがって、相続税を申告しない状態で税務調査の対象となり、申告漏れが発覚すると、本来の納税額に無申告加算税と延滞税を加えた税金を納付しなければならなくなるのです。
重加算税は、最も税率の重い加算税です。相続税の申告の必要性を理解していながら申告をせず、相続財産を隠蔽するような悪質な行為が見られた場合には、重加算税が課されます。重加算税の税率は40%であり、重加算税が課されると、本来の1.4倍もの税金を納めなければならなくなります。
相続税の申告をしない場合、かなりの確率で税務署にバレることとなります。なぜ、税務署では相続の状況を把握しているのでしょうか。相続税の申告をしないと税務署にバレる理由についてご説明します。
まず、人が亡くなったときは、市区町村に対して死亡届を提出しなければならないルールがあります。市区町村では死亡届を受理した場合、翌月の末日までに税務署に対し、死亡届出書を受理したことを報告しなければなりません。
家族が亡くなったときに税務署に知らせていないのに、なぜ税務署では相続税を申告していないことを把握できるのか、その理由の一つは、税務署では人が亡くなった情報を把握しているためです。
KSKとは、国税総合管理システムのことです。KSKでは、国税庁事務管理センターと全国の12の国税局や524カ所の税務署とネットワークをつなぎ、納税者の情報を一元管理することができます。
例えば、被相続人が生前、会社員だった場合、税務署ではその当時の給与や退職金の額を把握しています。また、そのほか不動産所得の有無や株式投資による所得の状況、不動産取得状況などについても、過去の申告データから正しく把握しているのです。
税務署が市区町村から死亡届の通知を受け取り、KSKで被相続人の納税状況を調べれば、生前の所得額や所有不動産から、相続税の申告の必要性について簡単に把握することができます。したがって、相続税の申告が必要な状況であると考えられるにも関わらず、申告がなければ、税務署から疑いをかけられ、税務調査に発展する可能性が高くなります。
KSKの運用が開始されたのは2001年のことです。それ以降の納税者の申告情報や納税情報は記録されていることになるため、税務署では生前の情報からある程度、相続税の納税義務が生じる人を把握していると考えられるでしょう。
税務署では、調査が必要になった場合、金融機関に対して調査への協力を依頼することができます。被相続人が亡くなった際に、相続税が発生するかどうかを調べるためには、被相続人の銀行口座を調べる必要があるでしょう。また、相続が発生する場合、現金が移動されるため、相続人の銀行口座なども調べ、入出金履歴を確認しなければなりません。
例えば、被相続人が亡くなる少し前に、多額の預貯金が引き出されていることが分かれば、そのお金はどこに動いたのか、税務署では疑問に思うでしょう。相続人の口座の出入金履歴を確認し、多額の資金が入金されていた場合、どのようにして手に入れたお金なのかを疑うのは当然のことです。また、相続人の口座に現金の動きが見られない場合は、タンス預金として自宅に保管している可能性も出てきます。税務署では、相続が発生したときに現金の動きについても把握し、調査をする権利があるのです。
そのほか、税務署が調査を依頼できるのは銀行だけではありません。保険会社や証券会社に対しても調査の協力を依頼できるため、被相続人が加入していた保険や生前に購入していた株式などの情報も把握が可能です。
相続によって財産を取得した場合、相続税の申告が必要なケースと不要なケースがあります。では、どのような場合に相続税の申告が必要になるのでしょうか。
遺産の総額から基礎控除の額と葬儀にかかった費用、債務などを差し引いた額がプラスであった場合に相続税の納税義務が生じます。相続税の基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で算出することが可能です。
例えば、相続人が配偶者1人と子ども1人だった場合の基礎控除額は、4,200万円です。この場合、遺産総額が4,200万円以下であれば、相続税の申告も納税も不要となります。
また、相続人が配偶者1人と子ども3人であった場合の基礎控除額は、5,400万円となります。この場合は、遺産総額が5,400万円を超えなければ相続税の申告をする必要はありません。
相続財産の額が基礎控除額を下回る場合、相続税の申告は必要ありません。しかし、基礎控除額を超えていても、相続税に関する特例の適用を受けることで、相続税が非課税となるケースがあります。この場合は、相続税の申告をしないと、納税の軽減措置や免除を受けられなくなる点に注意が必要です。
例えば、配偶者の場合は、特例を適用させると相続した財産が1億6,000万円、または法定相続分相当額のいずれか多い金額までは、相続税は非課税となります。つまり、相続財産が1億6,000万円以下の場合、配偶者は相続税の納税は不要となるのです。また、相続遺産が1億6,000万円を超える場合でも、法定相続分に当たる金額を超えていなければ、相続税を納税する必要はありません。
相続財産の合計額が5億円であり、配偶者と子ども2人で相続する場合、法定相続分は配偶者が5億円の1/2、子ども2人が5億円の1/4ずつとなります。このとき、配偶者の相続額は5億円の1/2、つまり、2.5億円です。2.5億円は1億6,000万円を大きく超える額ですが、法定相続分の範囲内であるため、相続税はかからないのです。この特例を配偶者の税額軽減の特例と言います。
しかし、配偶者の税額軽減の特例は、相続税の申告をすることが特例適用の条件の一つとなっています。特例を受けると相続税がかからないからといって申告をしないと、そもそも特例が適用されないため、相続税の納税を求められる可能性がある点に注意しなければなりません。
このほか、小規模宅地の特例の適用を受けたい場合、公益法人などに寄附をした場合の特例を受けたい場合なども、申告が必要になります。
相続税の申告をしていても、相続税の申告内容が正しくないと、税務調査の対象になる可能性があります。相続税の申告時に特に注意しなければならない点についてご紹介します。
みなし相続財産とは、民法上は相続財産としては扱われないものの、相続税法上では相続によって取得したものとしてみなされ、相続税の課税対象となる財産のことです。具体的には生命保険金や損害死亡保険金、死亡退職金などが、みなし相続財産となります。本来の相続財産は、被相続人が生前に所有していた預貯金や不動産ですが、みなし相続財産は被相続人の死亡をきっかけに新たに発生します。
相続税を申告する際には、みなし相続財産も含めて申告をしなければなりません。みなし相続財産を申告しない事例は少なくないため、相続税の申告時にはみなし相続財産が発生していないか、十分に確認するようにしましょう。
また、みなし相続財産には、非課税措置が用意されています。生命保険金や死亡退職金の場合、500万円×法定相続人の数を非課税枠として扱うことができるのです。非課税枠分については、課税対象となる相続財産から差し引くことが可能です。
相続時精算課税制度とは、60歳以上の両親や祖父母が18歳以上の子どもや孫に生前贈与をした財産と相続財産を合算し、まとめて相続税を納めるという制度です。相続時精算課税制度を利用した場合、累計2,500万円の贈与までは、贈与税が非課税となります。また、年間110万円までの財産については贈与税がかからず、相続発生時の相続財産にも加算されません。しかし、2,500万円+年間110万円×贈与年数を超えた分については、20%の贈与税が課されます。なお、相続税の申告の際には、納付した贈与税相当額については控除することが可能です。
相続時精算課税制度は、贈与時と相続時にかかる税金を通算する制度です。そのため、相続時精算課税制度を利用し、生前贈与を受けた人から相続を受ける場合、生前贈与を受けた財産についても相続財産に加算したうえで、相続税額を計算しなければなりません。しかしながら、生前贈与財産を加えても、相続税の課税対象財産が基礎控除額以下になる場合は、相続税の納税も申告も不要です。
相続税を申告しないと、税務調査の対象となる可能性が高まります。また、調査の結果、相続税の申告と納税が必要であったことが発覚した場合、不足分の税金に加え、ペナルティとして無申告加算税や延滞税が課される点にも注意が必要です。
特例を適用させることで相続税の納税が免除される場合であっても、配偶者の税額軽減の特例などは、納税者が申告しない場合、適用されないケースもあります。相続税の申告を行う際には、みなし相続財産も含め、正しく相続財産の額を把握したうえで基礎控除額を算出し、相続税の納税が必要になるかどうかを確認することが大切です。
-免責事項-
当ブログのコンテンツ・情報について、できる限り正確な情報を提供するように努めておりますが、正確性や安全性を保証するものではありません。内容は記事作成時点の法律に基づいています。当サイトに掲載された内容によって生じた損害等の一切の責任を負いかねますのでご了承ください。
この記事の監修者
税理士法人松本 代表税理士
松本 崇宏(まつもと たかひろ)
登録者16万人以上のYouTubeチャンネル「税理士法人松本〜税金の裏のウラ〜」を運営。 代表を務める税理士法人松本では、これまでに累計5,000件を超える税務調査のご相談・対応実績があり、国税局査察部、税務署長歴任者・税務調査一筋の現場に強い国税出身のOB税理士が現在14名常駐。国税当局側の視点を踏まえて、お客様の立場を尊重し、税務調査でお悩みのお客様に適切かつ迅速に対応。また、調査前・調査中に関わらず、あらゆる状況から最善のサポートが可能。なお、調査結果が追徴税額なしとなる実績も多数取得。税務調査における専門性・経験則・折衝力から最善の結果を導き、お客様の笑顔とありがとうを励みに成長し続けている。
税理士法人松本は国税OB・元税務署長が所属する税理士法人です。
全国からの税務調査相談実績 年間1,000件以上
税理士法人松本の強み
30秒で完了かんたん税務調査リスク診断
←前の記事
相続税の納税が不要でも申告が必要になるケースがあるって本当?
あわせて読みたい記事
税務調査
税務調査は対応次第で結果が大きく変わります!
専門家があなたの税務調査に関する不安を一つ一つ丁寧に解決。初回有料相談は返金保証付きで、どんな小さなご相談も全国から承ります。