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税務調査では、納税者が正しく申告・納税をしているのか、申告内容と実際の状況に違いはないのか、細かなチェックがなされます。税務調査で重点的にチェックされるのは、売上に関する項目と経費に関する項目です。そのため、経費を証明する書類である領収書は、税務調査で重点的にチェックされる書類の一つです。税務調査では領収書の裏取りまでするという話もありますが、実際、領収書の裏取り調査まで行われるのでしょうか。
今回は、税務調査における領収書の調査の実態や裏取り調査の有無などについて詳しくご説明します。
目次
税務調査で領収書の裏取りとは、領収書が本当に正しいものであるか、発行元に真意の確認をすることです。
税務調査では、領収書の裏取りをすることもあります。領収書を偽造したり、改ざんしたりした場合、経費として計上できる額が増えるため、架空の領収書や書き換えた領収書を使って、納税額を低く見せかけるケースがあるのです。そのため、領収書の内容を確認し、不審な点がある場合などは領収書の発行元に対し、裏取り調査が行われます。
例えば、材料や部品などを仕入れた場合、取引先企業からは領収書が発行されます。この場合の領収書の裏取りをする際には、税務調査の調査官が取引先の企業を訪れ、領収書の発行控えなどを確認し、調査対象者が保管している領収書の金額や日付などと相違ないかを確認するのです。
また、代表者や従業員などが仕事のために消耗品や備品などを購入した場合、取引先の接待をした場合なども領収書は発行されます。このような領収書も偽造される可能性がないわけではありません。そのような場合は、お店を訪れ、お店の記録などを確認しながら領収書の裏取りがなされる可能性があります。
税務調査では、領収書の裏取りをする場合もあります。しかし、全ての税務調査において領収書の裏取りをするわけではありません。では、どのような場合に領収書の裏取りをすることが多いのでしょうか。税務調査において領収書の裏取り調査がなされやすいケースをご紹介します。
次のような領収書が見られた場合、領収書の発行元に対する裏取りが行われる可能性があります。
・領収書の日付や金額が改ざんされていたように見られるケース
手書きの領収書の場合、日付や金額に手を加えている場合があります。古い領収書の日付を書き換えて、今年の経費として計上しているケースや、金額に数字を書き足して本来よりも高額な領収書に書き換えているケースなどがあります。
領収書を改ざんしたのではないかという疑いを抱いた場合、発行元に対し、裏取り調査を行う可能性が高くなります。
・同じ店の領収書が異常に多い場合
同じ店から発行されている領収書が異常に多い場合、本当は支払っていないものに関しても領収書を発行しているのではとの疑いが生じます。また、白紙の領収書をもらっているのではないかと疑われるケースがあるでしょう。そのような場合も、店を訪れて裏取りが行われます。
・他の領収書と比べると筆跡が異なっているように見える場合
同じお店から手書きの領収書を受け取っているものの、他の領収書と比べて筆跡が異なっているように見える領収書が出てきた場合、領収書の偽造が疑われます。そのため、本当にお店が発行した領収書なのかを確認するため、裏取りが行われるでしょう。
・「お品代」のみ記載されており、支出の内容が不明な場合
領収書の但し書きにお品代とのみ記載されているものの場合、何についての支払いに対する領収書なのかが把握できません。納税者に確認をしても明確な回答を得られない場合などは、裏取り調査を行い、具体的な内容を確認します。
・外注の領収書に疑わしい内容が含まれていた場合
外注の領収書は偽造や改ざんなどが行われやすい領収書です。そのため、不審な外注の領収書があった場合には、外注の領収書に記載されている住所を訪れたり、電話をしたりして、裏取りを行うケースがあります。
納税者が税務調査に協力的でない場合も、領収書の内容を確認しにくいため、領収書の発行元に対する裏取り調査が行われやすくなります。調査対象の納税者が非協力的な態度の場合、正しく税務調査を進めることができないため、取引先などに対しても裏取り調査を行い、取引の実態を確認しようとするケースが多いのです。
領収書の裏取りは、反面調査でもあります。取引先に反面調査が行われるとなると、取引先も裏取り調査に対応するための時間を取られることになり、業務に支障が生じる可能性もあるでしょう。その場合、取引先が不信感を抱く可能性があり、今後の取引にも悪い影響が生じる恐れもあります。
領収書はあるものの、取引に関連する契約書や請求書などが保管されていない場合なども、本当に取引先が発行した領収書であるのかを確認する目的で裏取りが行われるケースもあります。契約書や請求書がないにもかかわらず、領収書だけがあり、経費として計上されているような場合には、領収書を偽造したのではという疑いをもたれるのです。
税務調査では、必ずといっていいほど領収書のチェックが行われます。なぜなら、領収書は経費の額に関わる重要な証明となる書類だからです。領収書がなければ、経費として計上された額が本当に業務上で必要だった支出なのか、計上されている金額が正しいのかを判断できません。そのため、税務調査では領収書のチェックが行われるのです。
では、領収書のどのような点をチェックされるのでしょうか。税務調査で行われる領収書のチェックポイントについてご説明します。
まず、領収書の金額や日付に誤りがないかをチェックします。古い日付の領収書が混じっていないか、領収書の日付を書き換えていないか、金額を改ざんしていないかといった点が詳細に確認されます。
例えば、手書きの領収書の場合、10,000円と記載されていたものの1を4に書き換えて40,000円にしたり、1を9に書き換えて90,000円とする例などがあります。どんなに精巧に改ざんをしようとした場合でも、ボールペンなどの色合いや筆圧など微妙に異なります。そのため改ざんされた領収書は、不自然な印象を与えるものです。
数字が改ざんされていると疑われれば、発行元に対して裏取り調査が行われます。
領収書の内容も税務調査時にチェックされやすいポイントです。例えば、取引先から発行された領収書に記載されている内容が請求書の内容と異なっていたり、その領収書に紐づく契約書の内容と異なっている場合、何らかの不正が行われている可能性が高くなります。実際にはない架空の取引の領収書を偽造した場合などは、納税額を低く装うための不正行為です。領収書の内容と他の書類との整合性についても、税務調査ではチェックされます。
税務調査では、プライベートな費用を経費として計上していないかについても詳しくチェックされます。例えば、役員が個人的に付き合いのある人と楽しんだゴルフコンペの費用を経費として計上していたり、家族との旅行の費用を経費として計上しているケースもあります。
また、事業とは関係のない家族のための買い物を経費として計上していたり、子どもの学用品代や塾の代金なども経費として計上している例も見られるのです。プライベートな費用まで経費として計上していた場合、所得税額は圧縮されるため、納税額が不足します。
税務調査では、領収書の品目などを確認し、プライベートな費用に関する領収書が含まれていないかについても確認されるでしょう。
コンビニでの支払いやスーパーでの支払いなどはプライベートな買い物に使用するケースが多いため、少額でも領収書のチェックがなされる可能性があります。また、ガソリン代についても、本当に事業の用途で使用したもののみを計上しているのか、領収書がチェックされるでしょう。
税務調査では、不審な領収書が見受けられる場合、裏取り調査が行われるケースもあります。裏取り調査がなされると、取引先などにも迷惑をかけることとなり、領収書の偽造をしたのではという疑いを抱かせると今後の取引にも影響が生じるでしょう。領収書の裏取り調査はできるだけ避けたいものです。では、税務調査で領収書の裏取り調査を避けるためには、どのような対策が効果的なのでしょうか。
当たり前のことですが、領収書の偽造や改ざんは決してやってはいけない行為です。領収書の偽造や改ざんを疑われた場合、本当にその領収書が発行されているのか、発行元に対して裏取りが行われます。領収書を受け取るときには必ず金額が正しい額であるか、但し書きの内容が具体的に記載されているかを確認するようにしましょう。万が一、受け取った領収書が誤っていた場合でも、決して金額や日付などを変更してはいけません。領収書の内容に誤りが見られた場合は、領収書の発行元に連絡し、正しい内容での領収書の再発行を依頼する必要があります。
また、裏取りが行われるだけでなく、領収書の偽造や改ざんが行われた場合、脱税の罪に問われる可能性もあります。領収書の偽造や改ざんは絶対に行わないようにしましょう。
経費を水増しするために架空の領収書を作成する場合もあります。架空の領収書が疑われる場合、その領収書に関連する契約書や請求書があるのかもチェックされる可能性が高くなります。架空の領収書ではないことを証明するためには、領収書と契約書や請求書を紐づけられるよう、しっかりファイリングしておくことが大切です。また、電子領収書として保管している場合も、税務調査時にはその他の関係書類をすぐに提示できるように準備しておきましょう。
領収書の内容が分からない場合、プライベートな費用を経費として計上しているのではないかという疑いがもたれ、裏取りが行われる可能性があります。取引先に何らかの贈り物をした場合や取引先の接待をした場合などは、領収書の裏面に取引先の名前や関係性、支出の目的などを記載しておくとよいでしょう。また、接待の場合には、参加人数や参加者の名前なども記載しておくと、より不正を疑われにくくなります。
ただし、領収書の支出内容を記載する場合、領収書の表側に記載してはいけません。裏側に記載するか、メモ用紙を別途添付するようにしましょう。
税務調査で領収書が調べられる理由は、経費の水増しがなされていないかを確認するためです。領収書は、経費として計上されている金額の証明となる書類であり、そもそも領収書がない支出は、経費として計上することは難しくなります。なぜなら、領収書がない支出の計上が認められると、実際には支払っていない支出まで計上できてしまうからです。(ただし、公共交通機関の交通費や自動販売機での購入代など、領収書が発行できない支出に関しては領収書の必要はありません。)したがって、領収書は、経費を証明する書類として保管しておかなければなりません。
領収書の保管期間は、法人の場合は7年間です。また、個人事業主の場合は、白色申告をしているケースでは5年間、青色申告をしているケースでは7年間となります。
領収書の保管期間は、領収書の日付からカウントするわけではありません。確定申告書の提出期限の翌日からのカウントとなるため、事業年度ごとに分けて保管しておくことをおすすめします。
税務調査は、正しく税金を申告し、納税しているかを確認する調査です。納税額は、所得額によって変わるため、納税者の中には不正に経費を水増しして計上するケースも見られます。そのため、税務調査では、領収書もチェックされます。また、領収書の内容に不審な点が見られる場合は領収書の発行元を訪れ、領収書の内容が正しいものであるかをチェックする裏取りが行われる場合もあります。
裏取りが行われると、取引先にも調査が入るため、取引先からも不信感を抱かれる可能性もあるでしょう。領収書は、正しく計上し、保管期間内はしっかり保管しておくことが大切です。
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この記事の監修者
税理士法人松本 代表税理士
松本 崇宏(まつもと たかひろ)
お客様からの税務調査相談実績は、累計5,000件以上。国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。
税理士法人松本は国税OB・元税務署長が所属する税理士法人です。
全国からの税務調査相談実績 年間1,000件以上
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