2025.06.11
  • 税務調査

赤字の個人事業主に税務調査?目をつけられやすいケースとは

読了目安時間:約 6分

個人事業主として事業を営む場合、思うように事業の売上が伸びなかったり、設備投資に思ったよりも費用がかかったりという事態があると、赤字になってしまうことがあります。赤字は収益が出ていない状態のため、所得税も課税されません。そのため、赤字だから税務調査は来ないだろうと思い込んでしまうケースがあります。しかし、赤字の個人事業主にも税務調査が入る可能性があることをご存知でしょうか。

今回は、赤字の個人事業主にも税務調査が入る理由や、税務署から目をつけられやすいケース、税務調査が入った場合の対応方法などについてご説明します。

 

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赤字の個人事業主にも税務調査は入る?

赤字の個人事業主に対しても、税務調査が入る可能性はあります。赤字の場合、課税所得額がないために、所得税はかかりません。そのため、個人事業主の中には、赤字ではないにも関わらず、赤字に見せかけて税金逃れをしようとするケースもあるのです。確定申告で赤字であることを申告していても、申告内容だけでは本当に赤字であるかを判断できない場合、税務署では税務調査を実施し、事業の実情について確認する場合があります。

 

税務調査の対象となりやすい赤字の個人事業主とは

赤字の個人事業主のうち、税務調査の対象となりやすいケースを5つご紹介します。

 

何年も赤字が続いている個人事業主

何年も赤字で申告をしている個人事業主は、税務調査の対象となりやすいです。法人の場合、会社のお金と個人のお金は明確に区分されますが、個人事業主の場合は事業で得た収益はそのまま個人事業主の収益となります。会社を営む場合は、会社の収益に対しては法人税、個人が受け取る役員報酬に対しては所得税が課せられます。しかし、個人事業主の場合は、事業の収益はそのまま個人の所得となるため、事業所得に対して所得税が課せられるのです。

したがって、個人事業主の場合、事業所得がない赤字の状態になると、事業の運営に回すお金だけでなく、個人の生活に必要なお金も得られない状況になるといえます。個人事業主として開業したばかりの頃や設備投資をしたタイミングなどでは、一時的に事業が赤字になるケースもあるでしょう。しかし、長年赤字が続くと、事業の資金繰りが悪化するだけでなく、個人の生活もままならなくなってしまうはずです。それにもかかわらず、何年も赤字で申告している場合、本当に事業で収益が出ていないのかを税務調査でチェックされることになります。

 

売上が急に下がるなど、収益の推移が大きい個人事業主

何年も赤字で申告している個人事業主も税務調査の対象となりやすいですが、急に売上が低下し、赤字になった個人事業主も税務調査の対象に選ばれやすいものです。これまで順調に売上が推移してきたにもかかわらず、突然、売上が下がり、赤字に転落しているケースなどは、売上を隠蔽しているのではと疑われる可能性が高くなります。何らかの事情によって売上が低下してしまったのであれば、税務調査の際にその旨説明をすれば問題ありません。しかし、急な売上の減少は、売上の隠蔽を疑わせるため、税務調査の対象に選ばれやすいのです。

 

同業他社に比べて経費の割合が大きすぎる個人事業主

赤字になる状態は、経費が売上を上回ったときです。そのため、わざと赤字にして税金の負担を逃れようとする個人事業主には、経費を水増しして計上するケースが多く見られます。

税務署ではさまざまな業種の確定申告書をチェックしており、業種ごとにどの程度の経費がかかるものなのか、経費のある程度の割合を把握していると考えられます。そのため、提出された確定申告書を確認し、同業他社と比べても、あまりに経費の割合が大きすぎる場合には、経費を過剰に計上しているのではという疑いを抱く可能性が高いのです。

脱税を行う人の中には、本来は経費として扱えないプライベートな支出を経費として計上したり、架空の領収書などを作成したりするケースもあります。税務署では、経費の割合が大きすぎる個人事業主がそのような不正をしていないかを確認するため、税務調査を実施するのです。

 

現金商売をしている個人事業主

現金商売をしている個人事業主も、赤字の際に税務調査の対象となりやすい傾向にあります。現金商売とは、顧客から現金で支払いを受けることが多い商売のことです。具体的には、レストランやカフェ、バー、居酒屋などの飲食店、小売店、美容室などが現金商売に該当します。

現金でのやりとりが多い場合、銀行振込などのようにお金の流れを客観的に記録するものがありません。レジを利用している場合には、レジに記録が残りますが、中にはレジを通さずにお金を受け取っている場合などもあります。レジを打たなければ、どこにも記録は残らないために、売上を過少に申告するケースがあるのです。また、伝票を破棄すれば売上を隠蔽できると考えるケースもあります。

そのため、飲食店を営む個人事業主が赤字で申告をした場合も、税務調査の対象となりやすいといえるでしょう。

 

申告漏れが多い業種を営んでいる個人事業主

申告漏れが多い業種を営んでいる場合も税務調査の対象に選ばれやすくなります。国税庁では毎年、所得税の申告漏れが多い業種をランキング形式で発表しています。令和5事務年度の場合、経営コンサルタントやホステス・ホスト、コンテンツ配信、くず金卸売業、ブリーダー、焼き鳥、太陽光発電、内科医、スナック、西洋料理が申告漏れのワースト10位です。これらの事業は、正しく確定申告をしていない可能性が高い業種であり、税務調査の対象に選ばれる確率が高くなります。

税務署は、正しい納税を促すために税務調査を実施しますが、不正を正すためには、正しく申告をしている業種ではなく、不正を行っている可能性が高い業種を選んだ方が効率よく税の不公平を解消できます。そのため、不正の多い業種を営んでいる場合は、税務調査の対象に選ばれる可能性が高くなるのです。その中でも経費として申告額が多かったり、1年前と売上額に大きな差が生じている個人事業主などは、より税務調査の対象となる可能性が高いといえるでしょう。

 

赤字の個人事業主に税務調査が入った場合の対応

赤字の個人事業主に税務調査が入った場合の対応方法をご説明します。調査の連絡が来た際、焦らずに対応できるよう、対応方法や調査の流れなどについて確認しておきましょう。

 

税務調査の前には事前通知がなされる

税務調査が実施される際には、事前に税務署から税務調査に入る旨の連絡が入ります。その際、税務調査の実施日時についても相談が可能です。もし、提示された日程の都合が付かない場合には、代替日程を提案するなどして日程調整をしてもらうこともできます。また、調査対象期間や準備が必要な書類なども伝えられるため、調査日当日までに該当の書類を準備しておかなければなりません。

ただし、事前に通知をすることで証拠を隠滅し、正しい調査を妨害するような行為が起こる可能性がある場合などは、事前の連絡なしで調査官が訪問するケースもあります。

 

調査当日までに必要書類を準備する

事前通知を受けたら、調査当日までに帳簿や書類を準備しておきます。赤字であることを証明するためには、売上と経費を正しく記録した帳簿や証憑書類の準備が必要です。また、税務調査では過去3年分の資料をチェックするケースがほとんどですが、赤字の内容に疑いを抱いた場合には、過去5年分の帳簿をチェックする可能性があります。そのため、当日、追加資料の提示を求められた際にすぐ対応できるよう、少なくとも過去5年分の帳簿や証憑書類を準備しておくとよいでしょう。

 

調査当日は誠実に対応する

税務調査当日になると、午前中に調査官が訪問します。事業の概要などについての説明を求められ、最近の状況などについて質問をしながら、場が和んだところで帳簿のチェックが開始されるケースが一般的です。

調査官も税務調査を円滑に進めるため、威圧的な態度で質問をしたり、資料の提供を求めたりすることはありません。しかし、気になる点が見つかった場合には、突っ込んだ質問もなされるため、納税者は的確に説明を行う必要があります。赤字の個人事業主に税務調査が入った場合は、売上の計上漏れはないか、期末在庫の計上漏れはないか、不正に経費を計上していないかについて詳しくチェックがなされるでしょう。調査官が不審に思った点について質問される場合がありますが、決してウソをついてはいけません。事実を正しく述べることが大切です。

 

税務調査終了後に結果が通知される

税務調査終了後、結果が通知されます。赤字であることが確認され、申告内容に問題がない場合はそのまま調査は終了です。しかし、税務調査の結果、申告内容に誤りがあると指摘された場合、指摘された箇所を修正して申告をし直す、修正申告をするように求められます。

修正申告を行う際には、不足分の税金と確定申告が誤っていたことに対するペナルティとして過少申告加算税の納税が必要です。過少申告加算税の税率は原則として不足している税金の10%です。しかし、期限内確定申告の額と50万円のいずれかよりも大きい額を超える部分については、税率が15%となります。

赤字申告をしている個人事業主の場合、納税額は0円です。したがって、修正申告により算出した税額が50万円を超える場合、50万円までの部分については10%、50万円超の部分については15%の過少申告加算税が課されることとなります。

 

不安な場合は税理士に相談を

赤字で申告をしている個人事業主の中には、正しく確定申告をしていないという自覚がある人もいるかもしれません。本当は黒字であるにもかかわらず、赤字に見せかけるために売上の一部を計上しなかったり、経費を水増しして計上していた場合などは、税理士への相談をおすすめします。

また、悪意はなかったものの、結果として処理方法に誤りがあり、黒字を赤字として処理してしまうケースもあるでしょう。そのような場合も税理士への相談がおすすめです。

税務調査で売上の過少申告を指摘されたり、経費の一部が否認されると赤字ではなく、黒字となり、不足分の税金とペナルティとして過少申告加算税や延滞税が課されます。少しでも税負担を抑えたいのであれば、税の専門家である税理士に立ち会いを依頼した方がよいでしょう。

また、税務調査の事前通知を受けてから、税務調査が実施されるまでには数週間の時間が空きます。そのため、その間に、正しく申告書を作り直し、不足分の税金を納税する期限後申告を行うことも可能です。事前通知を受けてから期限後申告を行う場合、過少申告加算税の軽減措置を受けることができます。正しく申告をすると赤字ではなくなる可能性が高い場合には、期限後申告も含めて税理士に相談してみるとよいでしょう。

 

赤字申告の個人事業主は、自主的な修正申告も検討を

赤字の個人事業主に税務調査が入り、申告の誤りを指摘された場合、修正申告が求められるとともに過少申告加算税の納税が求められます。過少申告加算税は、不足分の税金に加えて納めなければならない税金であり、過少申告加算税が課されれば、個人事業主が負担する税金は本来よりも多い額となります。

税務署はさまざまなルートから、不正に税金を逃れている人の情報を掴んでいます。そのため、本来は赤字ではないにもかかわらず、赤字に見せかけた申告書を提出している場合、税務調査に入られる確率は高くなるでしょう。その場合、本来よりも多い額の納税をしなければならなくなるのです。税金の負担を抑えたいのであれば、正しく確定申告を行うことが何より重要になります。

しかしながら、税務調査の事前通知を受ける前に、自主的に修正申告を行った場合、過少申告加算税は課されないというルールがあります。赤字で申告書を出してしまったという個人事業主の方は、税務署から事前通知を受ける前に修正申告を行うのが賢明です。

 

まとめ

赤字の個人事業主には、所得税は課せられません。そのため、個人事業主の中には税金の負担を抑えようと、帳簿上で赤字を作り出し、赤字で申告を行うケースがあります。そのため、赤字で申告をした場合でも、税務調査の対象に選ばれるケースがあるのです。

実際、事業の収益が赤字であるのであれば、税務調査時にはその旨を説明し、帳簿を提示すれば問題ありません。しかし、赤字に見せかけていたような場合には、早めに期限後申告を行うようにしましょう。また、税務調査の事前通知を受けた場合は税務調査に強い税理士への相談をおすすめします。

 

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この記事の監修者

松本 崇宏

税理士法人松本 代表税理士

松本 崇宏(まつもと たかひろ)

お客様からの税務調査相談実績は、累計5,000件以上。
国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。

税理士法人松本は国税OB・元税務署長が所属する税理士法人です。

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