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税務署から税務調査が入った際、資料として通帳の提示が求められるケースがあります。事業用の口座だけではなく、個人名義の通帳を見せるように言われたら、必ず見せなければならないのでしょうか。 ここでは、個人事業主に税務調査が入った際、税務署に通帳の提示を求められる可能性や対処法などについて解説しています。
目次
結論から言うと、個人事業主のもとへ税務調査が入った場合、個人名義の通帳や取引履歴を見せるように求められる可能性はあります。
税務調査で、調査官から通帳の提示を求められるケースは少なくありません。なぜ、調査官は通帳を税務調査の資料として利用するのでしょうか。それは、通帳は他の帳簿や書類と違い、改ざんしにくい資料だからです。帳簿は、個人事業主が入力する数字で作られています。そのため、事業の状況に合わせて数字を調節し、改ざんすることもできてしまうのです。 しかしながら、通帳は取引内容が自動的に印字されるもので、個人事業主が勝手に通帳の数字を操作することはできません。従って、通帳を確認するとお金の動きを把握しやすいのです。
個人事業主に対し、個人名義の口座の通帳の提示を求める場合、帳簿に記載されている額と整合性が取れているか、不審なお金の動きはないかという点を確認したいという目的があります。 申告書に記載されている所得と比べて入金されている額が大きかったり、定期的に入金があったりする場合は、所得を低く装っているか、どこか別のルートで所得を得ている可能性があると考えられるのです。
税務調査の際に通帳を見せるように言われたら、求めに応じて通帳を見せなければならないのでしょうか。通帳を提示する必要性について、ケースごとにご説明します。
事業用と個人用の口座を分けている場合、事業用の通帳の提示を求められた場合には、求めに応じて調査官に通帳を提示しなければなりません。事業用の通帳は、国税通則法第74条において定められている「その者の事業に関する帳簿書類その他の物件」に含まれるものであると考えられています。 そのため、税務調査時に調査官から、事業用の口座の通帳を見せるよう求められたら、応じなければならないのです。
事業用の通帳は、求められれば調査官に提示しなければなりません。では、個人名義の口座の通帳の場合はどうなのでしょうか。 個人名義の通帳の場合は、税務調査で提示を求められた場合に拒否できるケースがあります。それは、個人名義の口座と事業用の口座を完全に区分して管理している場合です。 そのような場合は、税務調査で個人名義の通帳や取引履歴の提示を求められたとしても、「個人の通帳は事業に使用していません」と伝えて、拒否することができます。
個人事業主に限らず、株式会社など法人企業に税務調査が入った場合でも、代表者名義の個人通帳の提示を求められるケースがあります。 そのようなケースでも、代表者名義の個人通帳は一切事業に使っておらず、事業用と個人用の口座を区別しているのであれば、通帳の提示を拒否できます。 自宅の家賃や水道光熱費、生活費に使用しているクレジットカードの引き落としなど、事業と関係のない入出金だけである場合、個人口座は税務調査でチェックするべきものではないからです。 ただし、個人の通帳に売上が入ってしまっており、どうしたらよいか不安な方は税理士法人松本までお気軽にご相談ください。
税務調査で通帳の提示を拒否できるのは、あくまでも「事業用と個人用の通帳が明確に分けられている場合」に限られます。 しかし、自分では明確に分けているつもりでも、実際にはしっかりと区分されていないケースもあるかもしれません。税務調査で個人通帳の提示を拒否できないケースはあるのでしょうか。
税務調査で個人通帳を見せる必要があるケースには、以下のようなものが挙げられます。
個人事業主の場合、自宅兼オフィスのような形で一部を仕事部屋にし、自宅の家賃を按分して地代家賃として計上している人もいるでしょう。この家賃の引き落としを個人口座から行っている場合は、該当する箇所の通帳履歴を提示する必要があります。
自宅の一部をオフィスとして使用している場合、家賃と同様に、電気代や水道代などを生活費と事業用経費で按分しているケースもあるでしょう。水道光熱費を個人口座から引き落とししている場合も、個人名義の口座を事業用に使用していることになります。この場合も、該当する箇所の通帳の履歴を提示する必要があります。
得意先によっては、振込時に手数料が発生するために事業用の口座を開設している銀行ではなく、指定の銀行に口座を開いてほしいと希望されるケースがあります。そのような場合、個人名義で指定銀行に口座を開設していれば、個人口座を振込先として利用することもあるでしょう。このような事情がある場合でも、売上が個人口座へ入金されていれば、求めに応じて該当部分の通帳を提示する必要があります。
プライベートな買い物のついでに、デビットカードなどを使用してビジネス用の備品や消耗品、文房具、書籍などを購入した場合も、口座取引の履歴確認を求められる場合があるでしょう。
売上や仕入れに現金取引が多く、事業用の口座だけでは取引の確認がしづらい場合や、所得隠しが疑わしいような場合にも、個人通帳を見せるように求められる場合があります。
税務調査で個人名義の通帳を提示するよう求められた場合、通帳の提示を拒否できるかできないかの判断のポイントは、次の2点です。 ・個人名義の銀行から事業に関連する入出金を行っていないか ・事業用と個人用で使用する口座を明確に分けているか 前述したように、自分では明確にプライベートと事業用で口座を分けているつもりでも、家賃や光熱費を按分しており、個人名義の口座から引き落とししている場合は、明確に分けているとは言えません。 個人口座の通帳はプライベートな支出や入金が分かるものでもあり、プライバシーを保護したいという気持ちが強いのであれば、事業用と個人用の口座を明確に区分しておくようにしましょう。
事業用と個人用で通帳をしっかり分けて使用しているなら、本来個人用の通帳はプライベートなものであり、税務調査で見せる必要のないものです。 しかし、税務調査にあたる調査官によっては、特に根拠がなくても個人通帳の提示を求められる可能性もあります。
税務調査を受けているときは何となく緊張したり焦ったりして、言われたことにはすべて従わなければならないような気持ちになる場合も少なくないでしょう。 とはいえ、提出するべき根拠のないものやあらぬ疑いについては、しっかりと説明した上で毅然とした態度を取ることが大切です。 個人用の通帳は事業用途に一切使っていないのであれば、その旨を伝えましょう。それでも提示を求められる場合は「提示するべき根拠はあるのでしょうか」と質問をします。根拠を要求しても調査官から明確な根拠が示されないときには、通帳の提示を拒否することもできます。
国税庁でも、調査目的で資料の提示を求める際には、しっかりと根拠を説明した上で調査対象事業者の理解を得るよう努めるといった趣旨の説明がなされています。
国税庁ホームページ:税務調査手続に関するFAQ この国税庁のQ&Aの中には、通帳の提示についての質問と回答例も掲載されています。法人税の調査と記載されていますが、個人事業主を対象とした税務調査でも同様であると解釈できる例をご紹介しましょう。
問7 法人税の調査の過程で帳簿書類等の提示・提出を求められることがありますが、対象となる帳簿書類等が私物である場合には求めを断ることができますか。
答え:法令上、調査担当者は、調査について必要があるときは、帳簿書類等の提示・提出を求め、これを検査することができるものとされています。 この場合に、例えば法人税の調査において、その法人の代表者名義の個人預金について事業関連性が疑われる場合にその通帳の提示・提出を求めることは、法令上認められた質問検査等の範囲に含まれるものと考えられます。 調査担当者は、その帳簿書類等の提示・提出が必要とされる趣旨を説明し、ご理解を得られるよう努めることとしていますので、調査へのご協力をお願いします。
つまり、個人口座の通帳の開示が必要になるのは、事業との関連性が疑われる場合に限られるわけです。個人名義の通帳と、事業との関連性が疑われるような根拠が特にないのであれば、プライベートでのみ使用している銀行口座を見せる必要はないと理解してよいでしょう。
とはいえ「個人用通帳を見せてほしい」と税務調査で言われる場合、税務署の方でも何か不明点や疑わしい点があり、その点をクリアにして早く調査を先へ進めたいと考えているケースが多いものです。 あまり頑なに拒否し過ぎることで、かえって疑惑を深めてしまう可能性もあるため、特に通帳を提示しても問題がない場合は、見せた方がスムーズだと言えるでしょう。
経営者や代表として働いていると、通常の業務や営業で忙しい中、帳簿や取引のすべてを完全に把握するのは難しいケースもあります。 事業と個人の口座はしっかりと分けているつもりでも、もしかしたらうっかり見落としていることもあるかもしれません。特に税務署との交渉においては、税金や会計に関する知識が足りないと、知らないうちに生活費と経費が混同されている場合もあるでしょう。 税務調査が入る場合、比較的丁寧に帳簿を管理している事業者ほど、重箱の隅をつつくような追及にあうことも少なくありません。個人口座と事業との関連性について、根拠の判断が難しい場合や、税務署との交渉に不安を感じるなら、一度税務調査の対応に強い税理士へ相談してみるとよいでしょう。
税務調査で個人名義の通帳を見せるように言われても、事業と完全に切り離して使用している口座であれば見せる必要はなく、提示を求められても拒否することが可能です。ただし、うっかり事業用に使っている場合や、税務署から根拠となる関連性について納得できる説明を受けた場合には、個人通帳を提示する必要があります。 個人通帳と事業とが完全に分けられているか、税務調査で指摘を受ける要素がないかなど、少しでも不安な点がある場合は、税理士事務所でアドバイスを受けてみましょう。
この記事の監修者
税理士法人松本 代表税理士
松本 崇宏(まつもと たかひろ)
お客様からの税務調査相談実績は、累計5,000件以上。国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。
税理士法人松本は国税OB・元税務署長が所属する税理士法人です。
全国からの税務調査相談実績 年間1,000件以上
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