2025.04.8
  • 税務調査

税務調査が入る!でも領収書がないときはどうすればよい?

読了目安時間:約 6分

税務調査が行われる前には、原則として事前通知がなされます。事前通知とは、税務調査を実施することを予め納税者に伝える行為です。したがって、多くの場合、税務署の調査官がいきなり訪れ、税務調査が実施されることはありません。税務調査の際にはさまざまな資料が必要になるため、調査官は事前に調査を実施する旨を伝え、納税者に該当する資料の準備をお願いするのです。

事業のために払った支出を経費として計上するためには支払いを証明する領収書が必要です。しかし、税務調査の事前通知を受けた後に書類の準備を進めたところ「領収書が保管されていなかった」、「領収書を誤って捨ててしまった」という事態が発覚することもあります。

では、領収書がない場合、税務調査の際に経費は否認されてしまうのでしょうか。

今回は、税務調査が入るにもかかわらず領収書がない場合の対応方法などについてご説明します。

 

税務調査で領収書はチェックされる?

まず、税務調査の際に領収書をチェックされることがないのであれば、領収書がなくても問題はないだろうと思われるかもしれません。税務調査の際には、調査官は領収書も確認するのでしょうか。まずは、税務調査の目的から領収書の必要性についてご説明します。

 

税務調査の目的

税務調査とは、納税者が正しく確定申告を行い、しかるべき額の税金を支払っているかをチェックする国税局や税務署による調査です。税務調査の目的は、正しい納税の促進と納税に関する不公平を是正することです。そのため、ルールに則った正しい処理の方法などについて指導がなされる場合もあります。また、税務調査の結果、不正や誤りによって納税が不足していた場合には不足分の納税とペナルティの意味を持つ加算税の納税が求められます。

 

税務調査の具体的な内容

税務調査の前には、前述のように原則として事前通知がなされます。その際、税務調査を実施する日時とともに対象となる税目や対象となる期間、準備が必要な書類についても伝えられます。事前通知を受けた場合、納税者は調査日時までに、調査対象期間の帳簿や書類を準備しておかなければなりません。

調査当日は、指定の時間に調査官が訪れます。初めは、事業の内容や最近の事業の状況などについての質問がなされます。事業の状況を把握できたら、納税者が用意した帳簿や関係資料をチェックしながら、申告内容に問題がないかをチェックしていきます。

具体的には、売上の請求書や納品書、売上帳などと申告した売上の内容に相違がないかについてのチェックがなされます。また、経費として申告している支出もチェックの対象です。二重に計上していることはないか、架空の経費を計上することはないか、人件費は正しく計上しているかについて、仕入帳や領収書などを確認していきます。

 

税務調査で準備が必要な帳簿・書類

税務調査の際に準備をしなければならない帳簿や書類には、次のようなものがあります。

 

・総勘定元帳

・現金出納帳

・売掛帳

・買掛帳

・請求書

・領収書

・契約書

・棚卸表

・源泉徴収票

・賃金台帳

 

領収書も税務調査で準備が必要な書類の1つであり、税務調査では領収書もチェックされます。

 

税務調査では領収書の何をチェックする?

税務調査では領収書の準備も必要です。では、調査官は領収書の何をチェックするのでしょうか。

 

領収書の役割

領収書は、金銭のやり取りを伴う取引があったことを証明する信憑書類です。領収書には、2つの役割があり、1つは、お金を受け取ったことを証明することです。例えば、事業に必要な商品などを仕入れた場合、仕入先は請求書を発行し、お金を受け取ったタイミングで領収書を発行します。領収書を発行することで、お金を受領したことを証明するのです。

反対に、商品やサービスを購入した側の立場になると、領収書はお金を支払ったことを証明する役割を果たします。領収書があることで、すでにお金の支払いを済ませているという証明になるのです。

 

税務調査でチェックされる2種類の領収書

税務調査でチェックされる領収書は、2つの種類に分けられます。まず、1つは、発行した領収書の控えです。商品やサービスを提供し、取引先や顧客からお金を受け取り、領収書を発行した場合、発行した領収書の控えは保管しておかなければなりません。税務調査の際にも、領収書の控えがあることで、売上との照合ができるため、取引の証明にもつながります。

もう1つは、事業に必要な支出が発生した場合に、その支出が発生したことを証明する領収書です。例えば、事業に必要な事務用品を購入した場合の領収書やクライアントの接待をした際の飲食代に関する領収書などは、金銭の支払いが発生したことを証明する書類となります。

 

領収書の控えのチェック内容

領収書の控えは、売上に関わるものです。売上を過少に申告していた場合、納税額は低くなります。そのため、不正を行う際には、一部の売上を計上せずに売上を少なく見せかけるという手段が用いられるケースが少なくありません。したがって、税務調査時には売上帳や入金の記録などを確認しながら、領収書の発行控えと金額が合っているのか、計上漏れはないかなどについてのチェックがなされます。

 

領収書のチェック内容

調査官は全ての領収書に目を通すと考えて問題ないでしょう。税務調査では、領収書の次のような点をチェックするケースが多くなっています。

 

・内容のチェック

経費計上しているものの中に、事業に必要なものではなく、プライベートな支出が含まれている場合もあります。そのため、領収書の内容をチェックしながら、本当に事業に必要な支出であるか内容がチェックされます。例えば、本来は経費として計上できないプライベートな飲食費用を計上しているケースも少なくありません。また、業務ではなく、日常生活で使用する雑貨などの購入費用も経費計上しているケースもあります。

そのため、税務調査では必ず領収書の内容についてチェックがなされます。

 

・数字や日付などの改ざんがなされていないか

経費を増やすとその分所得を減らせるため、経費として計上する額を増やすために領収書を改ざんするケースがあります。そのため、領収書が改ざんされていないかどうかも、税務調査でチェックされるポイントです。

例えば、手書きの領収書の場合、数字を追加して金額が大きくなるように操作するという不正が行われるケースもあります。5,000円の領収書の場合、頭に数字を付け加えることで5,000円を95,000円にするといった不正ができます。また、10,000円だった領収書に手を加え、90,000円にするといったケースも見られるのです。

日付も偽装されやすいポイントです。古い領収書を使い、不正に経費計上することで経費の水増しをするケースもあります。そのため、日付部分についても不自然に書き加えられた形跡がないか、修正された形跡がないかチェックがなされます。

 

・領収書の筆跡が同じではないか

手書きの領収書の場合、筆跡もチェックされます。複数の店舗の領収書であるにもかかわらず、筆跡が同じ場合、架空の領収書を捏造している恐れがあるのです。領収書が金銭の支払いを証明する書類であることを悪用し、経費の水増し目的で、架空の領収書を作成しているケースもあります。そのため、税務調査では、手書きの領収書に書かれている筆跡についてもチェックがなされています。

 

・領収書がないにもかかわらず経費として計上されているものがないか

領収書と書類をチェックしているうちに、領収書がないにもかかわらず、経費として計上されているものがないかについても、チェックがなされます。したがって、領収書がない支出を経費として計上している場合には、税務調査時に調査官から指摘を受けることになるでしょう。

 

・資産として取り扱うべきものが混じっていないか

10万円以上の物品は、減価償却資産として扱わなければなりません。そのため、一部の例外を除き、経費として一括計上することはできず、法定耐用年数に合わせて減価償却をする必要があります。金額の大きな資産を経費として一括処理した場合、経費が大きくなるため、所得額の圧縮につながります。そのため、意図的に減価償却資産を経費として計上するケースがあるのです。

税務調査では領収書の金額にも注意し、資産計上しなければならないものが混じっていないか、チェックがなされます。

 

税務調査では領収書がないと経費としては認められない?

領収書は、お金を支払ったことまたはお金を受け取ったことを証明する書類です。では、領収書がない場合、税務調査では領収書のない支出は経費として認められないのでしょうか。

 

税務調査時に領収書がないと経費として認められない場合もある

税務調査の際に、領収書がない場合、経費としては認められない場合もあります。領収書がない場合、計上している経費が本当に発生した支出なのか、金額は正しいのかを証明する手段がありません。領収書がない経費を経費として認めると、本来は発生してない架空の支出を経費として計上したり、経費としては扱えないプライベートな支出を経費として計上することができてしまいます。したがって、税務調査の際に領収書がないものについては、経費として認めない場合があるのです。

 

税務調査で領収書がなくても経費計上が認められる場合もある

領収書は、上記のように支払いを証明する書類として使用されます。では、領収書がなければ支出を証明できず、業務のために支払った費用でも経費として計上することはできないのでしょうか。結論から言うと、領収書がない場合でも経費として認められる場合もあります。それは、領収書に変わるもので、支出を証明することができる場合です。

 

税務調査時に領収書がない場合にはどうすればいい?

領収書が残っていない場合には、次のような対策を行うことで経費計上が認められる場合があります。

 

取引先に領収書の再発行を依頼する

取引先にお願いをし、領収書の再発行ができるか依頼をしてみると、依頼に応じて領収書を再発行してくれる場合もあります。しかしながら、領収書を再発行することで、経費の水増しなどに不正に利用されるリスクがあるのも事実です。そのため、全ての取引先が領収書の再発行に応じてくれるわけではありません。

また、領収書は保管義務のある書類であり、領収書をしっかり保管していないとなると、取引先から不審に思われる可能性もあるでしょう。また、大量の領収書の再発行となると取引先にも迷惑をかけることとなります。

 

請求書や明細書などで代用する

領収書はないけれど、請求書や納品書が残っているという場合もあるかもしれません。また、クレジットカードで支払った場合には、支払いについての明細書を用意できる場合もあります。そのほか、銀行から振り込んだ場合などは通帳に記録が残っているでしょう。領収書がない場合でも、支払った日付や支払った相手、支払った金額などを証明できる書類を準備できれば、領収書の代わりに支払いの証明が可能です。そのため、その他の書類で代用ができる状態であれば、領収書がなくても税務調査時に経費が否認されることはないでしょう。

 

出金伝票を使う

出金伝票とは、取引の記録をするために使用する伝票の1つです。出金伝票には、日付や支払先、支払金額、支払い内容などを記載します。例えば、クライアントとの打ち合わせの際に自動販売機で飲料を買うケースもあるでしょう。自動販売機には領収書の発行機能がありません。その場合は、出金伝票に支払った金額や取引内容などを記載しておくのです。領収書がない場合には、出金伝票を使って支出を証明することも可能です。

 

推計課税で対応する

推計課税という方法で所得を計算する手法もあります。ただし、推計課税は白色申告を対象としたものであり、青色申告者には適用できません。しかしながら、税務調査時に青色申告を取り消して推計課税による所得計算を行う旨、税務署から指摘される場合もあります。青色申告者が推計課税を用いる場合、さまざまなリスクが生じます。そのため、一部の領収書ではなく、多くの領収書を紛失している場合などは税理士に相談することをおすすめします。

 

まとめ

税務調査が入る場合、帳簿に加え、領収書も必ずチェックがなされます。そのため、領収書がない場合は税務調査で経費が否認されるのではと不安になるケースも多いでしょう。領収書がない場合でも、請求書や納品書などで支払いを証明することができれば、経費計上が認められる場合もあります。また、出金伝票によって対応することも可能です。

しかしながら、税務調査時に領収書が保管されていない場合、調査に時間がかかってしまいます。領収書は日頃からしっかりと保管しておくことが大切です。また、税務調査の通知を受け、領収書がないと焦っている場合などは早めに税理士に相談するようにしましょう。

 

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この記事の監修者

松本 崇宏

税理士法人松本 代表税理士

松本 崇宏(まつもと たかひろ)

お客様からの税務調査相談実績は、累計5,000件以上。
国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。

税理士法人松本は国税OB・元税務署長が所属する税理士法人です。

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