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個人事業主は、ぶっちゃけるとどこまで経費として扱える?

読了目安時間:約 6分
個人事業主の場合、法人とは異なり、事業の収益がそのまま個人の所得につながります。そのため、個人事業主は法人に比べて、経費として計上できる範囲が曖昧になりがちな傾向にあります。経費として計上できる額が増えれば、所得を圧縮できるため、経費として認められる支出は、できるだけ計上したいと考える方が多いでしょう。では、個人事業主の場合、ぶっちゃけ、どこまでの支出を経費として計上できるのでしょうか。
今回は、個人事業主が経費として計上できる支出の範囲についてご説明します。
目次
個人事業主が経費計上に迷った場合の判断基準
個人事業主が経費を計上する場合、この費用は経費として計上できるか、計上しない方がよいのか迷うシーンがあるでしょう。経費計上の範囲に迷う場合には、次の基準に適合するかどうかで判断を行うようにしましょう。
事業に必要な支出であるか
まず、経費とは事業を営むうえで必要になるものやサービスの購入費用や利用費用に該当する支出のことです。国税庁では、所得税における必要経費について次のように示しています。
事業所得、不動産所得および雑所得の金額を計算するうえで、必要経費に算入できる金額は、次の金額です。
(1)総収入金額に対応する売上原価その他その総収入金額を得るために直接要した費用の額
(2)その年に生じた販売費、一般管理費その他業務上の費用の額
参照元:国税庁「No.2210 必要経費の知識」
難しく書かれていますが、ぶっちゃけると個人事業主が経費として計上できる(1)の支出は、売上につながった商品やサービスの製造や仕入れにかかった費用(売上原価)、売上を生み出すために直接かかった費用のことです。また(2)については、商品の販売やサービスの提供のために必要となった経費やその他、業務上で必要な支出を意味します。
つまり、個人事業主が経費として計上できる支出は、事業に必要な支出でなければなりません。
事業専用かどうかで経費計上方法は変わる
個人事業主の場合、自宅を事業所として開業しているケースも少なくありません。そのため、そのような場合は特に、経費とプライベートな支出の線引きが曖昧になりがちです。
例えば、事業のために必要な車であり、事業のためだけに使用する場合には、経費として扱うことが可能です。しかし、車を購入する場合でも、事業で使用するだけでなく、プライベートでも使用する場合があるでしょう。その場合は、購入費全額を経費計上することはできませんが、プライベートと事業で使用する比率を出し、事業で使用する分だけ経費として計上することができます。ただし、車は金額が大きいため、一括して経費計上するのではなく減価償却資産として扱います。
個人事業主の経費として認められるもの
個人事業主が経費として計上できる支出は、営む事業によって異なりますが、一般的には次のような支出であれば経費計上が可能です。
家賃や駐車場代
事務所や店舗を借りて事業を行っている場合は、事務所や店舗の家賃、駐車場代などを経費として計上することが可能です。また、自宅と事務所を兼用している場合には、事務所として使用しているスペースの割合や自宅で仕事をする時間の割合などを算出し、事業に使った分だけを按分し、経費として計上をします。
水道光熱費
水道代や電気代、ガス代など、事業のために使用する水道光熱費も経費計上ができます。ただし、自宅で事業を営んでおり、プライベートで使用する分とまとめて請求される場合には事業のために使った分だけを按分し、経費として計上するようになります。
通信費
インターネット回線や固定電話の料金、携帯電話料金なども経費として認められる支出です。事業用とプライベートの電話、インターネット回線を分けていない場合は、事業の使用割合によって按分し、経費計上をします。
事務用品や雑貨
事業で使用するコピー用紙やボールペン、ファイル、ストッカーなど、10万円未満の商品、もしくは法定耐用年数が1年未満のものは消耗品費として計上することができます。
旅費交通費
事業のためにかかった交通費は経費計上が可能です。電車やバス、タクシー、飛行機などの費用のほか、自動車で移動した場合にかかる高速道路の通行料やガソリン代なども経費として計上できます。
売上原価
販売した商品やサービスの売上にかかった原価部分は経費計上が可能です。ただし、経費として計上できるのは、売上に対応する原価部分のみである点に注意が必要となります。
広告宣伝費
商品やサービスを提供する事業を営んでいる場合、宣伝をしなければ集客ができません。集客のためのWeb広告や折り込み広告など、広告宣伝費も経費として計上することが認められています。
新聞や書籍の購入費用
飲食店や美容室などを運営しており、店舗に置き、客が読むために購入する新聞や書籍、雑誌などの購入費用は経費計上が可能です。また、事業のために必要な知識を身に付けるために購入した書籍の代金も経費として計上できます。
手数料
銀行での振込手数料や預け入れ手数料、ATMの手数料、クレジットカードの分割手数料、キャッシュレス決済の手数料などは、経費計上が可能です。
税理士報酬・弁護士報酬
税理士や弁護士などのサポートを受けている場合などは、専門家に支払う報酬も経費として計上することができます。
飲食代
取引先と会食をした場合にかかった費用や同業者との懇親会などの参加費用などは、経費として計上することができます。また、業務と業務の間に飲食店などを使用し、仕事をしながら飲食をした場合も、飲食代の経費計上が可能です。
外注費
業務を外部に委託した場合に支払う外注費も経費計上が可能です。例えば、店舗の清掃を清掃業者に委託した場合やWebサイトのデザインをWebデザイナーに依頼した場合の費用などが外注費に該当します。
修繕費や修理費用
事務所や店舗の修繕、使用している機器の修理などにかかった費用も経費として認められます。
税金
印紙税や事業用の自動車の自動車税、事務所や店舗の固定資産税など、事業に関連する税金も経費計上が可能です。
保険料
事務所や店舗の火災保険料、地震保険料、事業用自動車の自動車保険料なども経費として計上できます。事務所や自動車をプライベートと事業の両方で使用している場合は、家事按分をして事業分のみ経費に計上します。
人件費
従業員を雇用している場合は、従業員に支払う給与も経費として計上することができます。ぶっちゃけ家族に給与を支払ったら、税金を抑えられるのではと思われる場合もあるかもしれません。しかし、家族に支払った報酬を経費に計上する際は、別途手続きが必要になります。
ぶっちゃけこれは個人事業主の経費になる?
個人事業主が営む業種は多岐に渡り、業種によって事業のためにかかる費用も変わります。経費計上ができる支出であれば、経費として計上することで納める税金も低く抑えることができます。そのため、同業の個人事業主が経費計上しているのであれば自分も経費として計上したいと思う支出もあるでしょう。ここでは「ぶっちゃけこれは経費にしてもよいの?」と悩む支出についてご説明します。
仕事で使う作業着や制服は?
例えば、飲食店を営む個人事業主であれば、仕事専用のユニフォームを用意する場合があるでしょう。また、もの作りに関わる事業を営んでいる場合には作業服を着用して業務を行うケースも少なくありません。そのほか、夜のお店で働く場合に、お店だけで着用するドレスを購入する場合もあるでしょう。これらの仕事のためだけに使用する作業着や制服、衣装の購入代金は、経費として計上することができます。また、業務のために使用する靴なども経費計上が可能です。
ただし、プライベートで着用する衣服の購入費用は経費として計上できません。
クリーニング代は経費にできる?
仕事で使用した制服や作業着、衣装などをクリーニングに出す場合、クリーニング代は経費として計上が可能です。高い頻度でクリーニングに出す場合、クリーニング代もかさみますが、業務で使用する衣服のクリーニング代であれば、経費として計上しても問題ありません。その場合、クリーニング代は雑費として申告できます。
取引先に渡すご祝儀や御香典はぶっちゃけ経費になる?
個人事業主の中には、さまざまな取引先とつながりを持っている人や地域の団体に加入しているために地域社会とのつながりが強い人もいます。取引先が新たにお店をオープンしたと聞けば、付き合い上、お祝いとしてお花を出さなければならないこともあるでしょう。また、結婚した際には結婚式に出席し、ご祝儀を包まなければなりません。反対に、取引先の方が亡くなった場合には、お悔やみとして御香典を包むことになるでしょう。
付き合いが多ければ多いほど、ご祝儀や香典の額は高額になります。しかし、事業に関係する人へのご祝儀や御香典であれば、経費として計上することが可能です。ただし、ご祝儀や香典を送った際には領収書をもらうことはできません。そのため出金伝票などに記載し、招待状や会葬のお礼状などと保管し、支出を証明できるようにしておきましょう。
ヘアメイク代もぶっちゃけばかにならない
個人事業主の中には、夜の仕事をしており、出勤前に美容室でヘアメイクをしてもらう人もいるでしょう。また、モデルなどの仕事をしており、イベントや撮影の前に自費でヘアメイクを行っている人もいるかもしれません。
原則として、ヘアメイク代は経費として計上することはできません。しかしながら、仕事を行ううえで必要となる費用であれば経費計上が可能です。例えば、個人事業主としてフリーランスでモデルの仕事をしている人が、ヘアメイクアップアーティストに依頼し、撮影前にヘアメイクをしてもらった場合の費用は、経費計上ができます。しかし、気分転換のために髪型を変えようと美容室に行き、カットやカラーをしてもらった場合の費用は、経費としては認められません。
出張に行ったときの食事代は経費にできる?
出張に行くケースが多い場合、外食をしなければなりません。出張がなければ自宅で食べることができるのに、出張だから外食が必要になると、食事代も経費にできないかと思うケースもあるでしょう。
朝食が宿泊料に含まれているようなホテルであれば、朝食代を含めた宿泊料となるため、朝食代は経費に含めることができます。しかし、食事は出張に関わらず必要になるものであり、事業のために必要なものではないため、出張先の食事代は原則として経費計上はできません。もちろん、営業活動の途中で外食したランチ代なども経費として扱うことはできないため注意しましょう。
個人事業主が経費を計上する際の注意点
ぶっちゃけると、個人事業主がプライベートな費用を経費計上してもバレないのではと思う方もいらっしゃるかもしれません。しかし、個人事業主も税務調査の対象として選ばれることがあります。税務調査が実施されれば、不正な経費計上はバレてしまいます。個人事業主が経費を計上する際には、次の点に注意するようにしましょう。
領収書は必ず保管しておく
事業のための支出であると主張しても、その支出を証明するものがなければ、税務調査の際に経費として認められない可能性があります。経費計上が可能な支出であれば、必ず領収書を保管しておくようにしましょう。
また、取引先との打ち合わせに出すドリンクを自動販売機で買った場合やご祝儀や御香典を包んだ場合など、領収書が発行できないものについては出金伝票に記録を残すとよいでしょう。
プライベートな支出は経費に計上しない
個人事業主の方には、税務調査に入られたことはないから、ぶっちゃけプライベートな支出も経費に入れても問題ないと考える人もいるようです。しかし、プライベートな支出を経費として計上する行為は、経費の水増しという不正行為に該当します。
税務調査の際に不正行為が発覚すれば、ペナルティとして加算税の納税が求められ、本来支払うべき税額よりも多い税金の支払いが必要になります。税金を減らすために不正をすると、かえって負担する税金を増やすことになってしまうのです。プライベートな支出の経費計上は絶対にやってはいけません。
まとめ
個人事業主は、法人に比べると事業規模も小さいため、ぶっちゃけ税務署もそんなに厳しい目で見ないのではと思うかもしれません。しかし、事実をぶっちゃけると、個人事業主も税務調査の対象として選ばれます。令和5年度は、約60.5万件の個人事業主が税務調査の対象となっているのです。
個人事業主の場合、経費の扱いが不鮮明な場合もあるため、個人事業主に対して税務調査が実施される場合、経費について詳細に追及される可能性もあります。不正を疑われないためにも、普段から経費として計上できる支出だけを確実に経費として計上するようにしましょう。
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この記事の監修者

税理士法人松本 代表税理士
松本 崇宏(まつもと たかひろ)
お客様からの税務調査相談実績は、累計5,000件以上。
国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。
税理士法人松本は国税OB・元税務署長が所属する税理士法人です。
全国からの税務調査相談実績 年間1,000件以上
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