2025.05.17
  • 税務調査

税務調査の調査官が優しいと、ミスも大目に見てくれる?

読了目安時間:約 6分

税務調査と聞くだけで、調査官は厳しくて怖い人が多いのではと思う方も多いかもしれません。しかし、調査官の中には優しい、穏やかな性格の人も少なくありません。税務調査が入ると身構えていたときに、担当の調査官が優しい口調で話しかけてくると、緊張がほぐれて安心するケースも多いでしょう。また、優しい人だったら税務調査で何かしらミスが見つかっても大目に見てくれるかもしれないと思う方もいらっしゃるかもしれません。

では、税務調査の調査官が優しいと、調査の厳しさにも影響するのでしょうか。

今回は、税務調査時の担当調査官が優しい理由や優しい調査官が調査をする際の注意点などについてご説明します。

 

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税務調査の調査官が優しいのはなぜ?

税務調査時、調査官が怖いとそれだけで萎縮してしまうため、調査官が優しいことは納税者にとってはうれしいことでしょう。では、昨今の調査官が優しいといわれるのはなぜなのでしょうか。

 

強制調査と任意調査

税務調査は大きく分けると強制調査と任意調査の2種類があります。このうち、強制調査は国税局査察部が裁判所の令状を持って強制的に行う調査です。ドラマや映画などで、調査官が突然訪れ、有無をいわさず資料を押収するような調査は、強制調査に該当します。

一方、任意調査とは税務署に所属する調査官が実施する税務調査です。任意調査を実施する前には原則として、納税者に対し、税務調査に入る旨と調査日時などを伝える事前通知が行われます。一般的に、税務調査というと、強制調査ではなく任意調査を指すケースが多くなっています。

 

税務調査の調査官が怖いのはドラマや映画の影響?

税務調査の調査官というと、優しいというよりも怖いというイメージを抱く方の方が多いようです。それはドラマや映画で強制調査の場面が描かれる際には、緊迫した雰囲気の中、現場に突然調査官が現れるという演出がなされるケースが多いからでしょう。多くの場合、調査官は厳しい表情で資料の押収などを行っています。そのため、税務調査の調査官は怖いと認識されることが多いようです。

 

税務調査の調査官が優しい理由

強制調査は、多額の脱税が疑われる場合に実施される調査です。裁判所に令状を請求していることもあり、強制調査では刑事事件として立件することも視野に入れ、調査を行います。したがって、不正な税金逃れを暴くため、厳しい調査が行われます。

しかし、任意調査は、納税者の同意・協力のもとで実施される税務調査です。税務調査の対象となる納税者は、何らかの不正やミスなどが疑われる場合が多いものの、任意調査である以上、調査を進めるうえでは納税者の協力が欠かせません。

もし、威圧的な態度で税務調査への協力を求められた場合、納税者の中には調査官の態度に反発を覚える人もいるでしょう。そのような場合、納税者の協力を得にくくなるため、調査をスムーズに進められない可能性があります。税務調査が長引き、1つの調査に時間を取られてしまうと、ほかの納税者に対する税務調査を実施できなくなる恐れもあるでしょう。また、調査官の態度が悪い場合、税務署に対し納税者からクレームが入る可能性もあります。

いずれにしろ、横柄な態度で税務調査を実施した場合、調査官にとっても不利益が生じるのです。

かつては、態度の大きな調査官もいたようですが、そのような態度を取ると納税者にとっても自分にとってもデメリットしか生まれません。そのため、昨今では税務調査時には優しい言葉遣いや優しい雰囲気で納税者と対話をしようと心がける調査官が多いのです。

 

税務調査で調査官が優しい態度で接する際の注意点

税務調査というと、厳しい調査が行われるイメージが強いため、訪れた調査官が優しい雰囲気の場合、納税者は安心感を抱くことが多いようです。しかし、調査官が優しい場合でも、税務調査の内容が変わるわけではありません。優しい調査官であっても、調査は厳しく行われます。調査官が優しいために安心していると、次のようなリスクが生じる恐れがあるため注意が必要です。

 

調査官が優しいために余計なことまで話してしまう

税務調査の際には、まず、事業を始めたきっかけや事業の状況などについてヒアリングがなされます。その際、納税者が本音で話しやすくなるよう、調査官は優しい口調で話しかけます。また、納税者の不安を解消するために、趣味や家族に関する話題など、納税とは関係のないような雑談が行われる場合もあります。

調査官が優しい雰囲気で話しかけ、話が弾むと気を許してついつい余計なことまで話してしまう恐れがあります。しかし、税務調査では、調査官は何気ない会話の中からも調査すべきポイントを探っているケースが少なくないのです。

例えば、趣味の話を聞かれた場合、経費として計上されている領収書の中に、会話に出てきた趣味に関する領収書が多数含まれているとプライベートな支出を経費にしているのではないかと疑われる可能性があります。また、家族の話をしている場合に子どもは全員、小学校から私立に通わせているといった発言があった場合に所得額がそれほど高額でなければ、学費をどのように捻出しているのかといった疑問に繋がるケースもあるでしょう。

調査官の優しい態度に安心し、心を許しすぎてしまうと余計なことまで話してしまい、調査官に要らぬ疑念を抱かせてしまう恐れがあります。世間話のような会話であっても、調査官は無駄な話をしているわけではありません。軽い会話をきっかけに、納税に関するミスや不正が発覚するケースもあります。調査官が話しやすい優しい雰囲気の人であっても、税務調査であることを忘れず、余計なことまで話すと調査が長引く恐れがある点を理解しておきましょう。

 

求められていない資料まで提出してしまう

税務調査に訪れた調査官が事業内容や事業の状況に関心を示し、親身な態度で話を聞いてもらえると、より事業の内容を知ってもらった方がよいのかと思うケースもあるようです。そのため、追加の資料の提出を求められた場合などに、対象の資料だけでなく、他の資料も含めて提出してしまう場合があります。

税務調査が進められる中で、調査のために必要な書類の提示を求められた場合、納税者は該当する書類を提示しなければなりません。しかし、調査官が求めていない資料についても提示する必要はないのです。

求められていない資料まで提示した場合、調査官が調べたいと思った箇所以外にも疑問点が生じ、新たな指摘を受ける可能性があります。調査官が優しい態度であったために、調査官に対し全幅の信頼を寄せてしまい、結果、税務調査終了後に多額の追徴課税を招いてしまうケースもあるのです。

 

調査官が優しい場合でも、調査の厳しさに変わりはない

優しい調査官であっても、税務調査は正しく納税を行っているのかを調べる調査です。そのため、優しい態度で接していても、調査内容が緩くなることはありません。調査官が優しい場合でも怖い場合でも、調査内容が変わることはなく、申告内容に不備やミスが発覚した際には当然、修正が求められることになるでしょう。

税務調査時には、事前通知によって調査日時などが告げられます。この事前通知は、電話で行われるケースが一般的です。人当たりのよい調査官は、税務調査の事前通知を行う際にも、電話でも丁寧な口調で調査への協力依頼を伝えるでしょう。このとき、調査官の口調が優しいと、担当する調査官が優しそうだから厳しい調査は行われないだろうと思ってしまうケースもあります。口調が優しいことに安心し、税務調査の準備を怠ると、税務調査が長引く可能性があります。事前通知を受けた際には、税理士にも相談しながら、準備を進めるようにしましょう。

 

税務調査の実施件数

税務調査と聞いても、これまで税務調査を受けたことがない人は、自分が調査の対象になることはないのではと軽く考えるケースがあります。税務調査は、正しく申告し、正しく納税をしているかをチェックする調査です。そのため、納税の義務がある個人や法人であれば、誰でも税務調査の対象となる可能性があります。では、実際、税務調査の実施件数はどのくらいになるのでしょうか。

 

所得税の税務調査の実施件数

個人に対して行われる所得税の税務調査の実施件数は、令和5事務年度は47,528件、令和4事務年度は46,306件です。また、後述する簡易な接触も、令和5事務年度は557,549件、令和4事務年度は591,517件実施されており、合わせると毎年約60万件の税務調査が実施されていることとなります。

 

法人税の税務調査の実施件数

一方、法人に対して行われる法人税・消費税の税務調査の実施件数は、令和5事務年度は59,000件、令和4事務年度は62,000件、簡易な接触の実施数は令和5事務年度が70,000件、令和4事務年度が66,000件です。合わせると毎年、約13万件の法人に対し、税務調査が実施されていることになります。

 

簡易な接触と税務調査の関係

税務調査といえば、調査官が事務所などを訪れ、帳簿書類を実際に確認しながら調査を進める税務調査を指すケースが一般的です。しかしながら、昨今では「簡易な接触」の頻度が高まっています。

 

簡易な接触とは

確定申告書が提出されると、税務署ではその内容をチェックします。その際、申告書の内容に誤りがあると疑われるケースも出てきます。明らかに金額の桁を間違えて入力していると疑われる場合や控除額が間違っている場合など、軽微なミスや申告漏れがある場合に実施されるのが簡易な接触です。簡易な接触では申告書に何らかの不備が見られるものの、現場を訪れて調査をするほどではない場合などに、電話や文書で納税者に連絡をし、自主的に申告書の修正を促す取り組みです。

 

簡易な接触の数は増加傾向に

簡易な接触は、電話や書面による連絡によって納税者の自主的な修正を促す取り組みです。簡易な接触で正しい納税を促進できるのであれば、税務署はより大きな申告漏れや申告ミスの疑いがある納税者への調査に注力できます。そのため、昨今では簡易な接触による税務調査の割合が増加しています。

令和5事務年度における所得税と消費税に対する税務調査の場合、現場を訪れて税務調査を行う実地調査の実施件数は47,528件でしたが、簡易な接触の実施数は557,549件にも上っています。実際、簡易な接触による税務調査は、実地調査の12倍ほども実施されているのです。

また、簡易な接触による税務調査は、個人だけを対象に実施されているわけではありません。令和5事務年度の法人税の調査実績によると、法人を対象とした簡易な接触の実施数は7万件だったと報告されています。実地調査の件数である59,000件と比較した場合、法人を対象とした税務調査でも、実地調査より簡易な接触による調査の数が多くなっているのです。

 

簡易な接触による申告漏れ金額と追徴課税額

所得税の場合、簡易な接触による税務調査の実施件数は557,549件ですが、このうち約半数に当たる271,133件に申告漏れが発覚し、申告漏れ所得金額は4,448億円に上っています。また、合わせて332億円の追徴課税がなされています。

また、法人の場合、簡易な接触によって発覚した申告漏れ金額は92億円、追徴課税額も92億円となっています。

 

簡易な接触があった場合にも適切な対応を

簡易な接触の場合、税務署から電話や書面による連絡が行われます。また、場合によっては税務署への来署を依頼され、面接によって申告内容の確認が行われるケースもあるようです。

調査官が実際に訪れる調査に比べると、調査官と対面しない簡易な接触は気が楽かもしれません。しかし、簡易な接触があっても適切な対応をせず、放置していると、実地調査に発展する可能性があります。簡易な接触も税務調査の1つであり、税務署から電話や文書によるお知らせがあった場合には、適切に対応するようにしましょう。

 

まとめ

かつては、税務調査の調査官が横柄な態度で納税者に質問をしたり、書類の提出を求めたりといったことがあったようです。しかし、昨今では、ほとんどの調査官は優しい態度で納税者に接します。なぜなら、優しい態度で接すると納税者からより詳しい情報をヒアリングできるようになり、調査をスムーズに進められるからです。

調査官が優しい場合、会話が弾むために必要以上に情報を提供してしまうケースもあります。雑談のような会話の中でも調査官は、重点的に調査すべき事項がないか、調査との関連性を考えながら話題を提供しているはずです。どんなに調査官が優しい態度で接してきた場合でも、税務調査は正しく納税をしているかを調べるための調査であることを忘れてはいけません。

また、近年、調査官が現場を訪れずに書面や電話で申告内容のミスを確認する簡易な接触も増えています。簡易な接触であっても適切に対応しない場合、実地の税務調査に発展する恐れがあります。税務署から何かしらの問い合わせなどがあった場合は、適切に対応するようにしましょう。

 

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この記事の監修者

松本 崇宏

税理士法人松本 代表税理士

松本 崇宏(まつもと たかひろ)

お客様からの税務調査相談実績は、累計5,000件以上。
国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。

税理士法人松本は国税OB・元税務署長が所属する税理士法人です。

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