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税務署からの「お尋ね」が増えていることを知っていますか?税務署からのお尋ねというと、税務調査のことではと思う方も多いかもしれません。しかし、お尋ねは、税務調査とはまた異なる税務署からの問い合わせです。では、税務署からのお尋ねはどのような目的で行われるものなのでしょうか。
今回は、税務署からのお尋ねがなされる理由やお尋ねが来た場合の対応方法などについて分かりやすくご説明します。
目次
税務署からのお尋ねとはいったい何なのでしょうか。お尋ねの概要から確認していきましょう。
お尋ねとは、税務署から個人に対して実施される確定申告書の内容を尋ねる問い合わせのことです。お尋ねは、電話や書面で行われることが多くなっています。税務署から封筒が届き「〇〇についてのお尋ね」というタイトルで始まる文書が同封されていることから、お尋ねと呼ばれるようになりました。お尋ねは、電話や書面での問い合わせであって、税務調査のように税務署の調査員が自宅やオフィスなどを訪れて、調査をすることはありません。
お尋ねの目的は、申告内容に関する確認を行うことです。確定申告の内容などに何かしらの疑問があり、その確認のために電話や書面で確認したい事項を伝えるケースが多くなっています。また、中には、計算ミスなどによって納税額が正しく求められていない場合に、お尋ねによって修正の依頼が行われるケースもあります。
国税庁が公表している「令和5事務年度 所得税及び消費税調査等の状況」では、税務調査の実施数に加え、手紙や電話などで申告状況を確認する「簡易な接触」と呼ばれる調査の実施数を公表しています。この簡易な接触こそが、お尋ねです。
令和5事務年度に、税務調査が実施された数は47,528件であり、簡易な接触が実施された数は557,549件です。お尋ねの実施件数は、税務調査の11.7倍もの件数になっており、この数字からも税務署がお尋ねに力を入れていることがお分かりになるのではないでしょうか。
税務署では、限られた人数の調査員で税務調査を行わなければなりません。納税者のもとを訪れ、細かく帳簿や関連書類を調べる税務調査の場合、調査結果が出るまでには手間と時間がかかります。1人の調査官が対応できる税務調査の数には限りがあるため、税務調査ですべての不正を正したり、誤った認識を持っている納税者に正しい納税を促すことはできません。
税務調査の目的は、納税者の不正を暴くことではなく、申告納税制のもと、納税者の税に関する意識を高め、正しい納税を推進することです。電話や手紙でのお尋ねによって納税者に気付きを与えることも、正しい納税の促進につながります。電話や手紙でのお尋ねの場合、調査官が現地を訪れる必要はありません。お尋ねでは、正しく納税をしていない可能性がある多くの納税者に対して手軽にアプローチすることができ、効率よく正しい納税を促すことができるのです。
税務署からお尋ねが来る理由は、確定申告書に確認すべき点がある場合です。具体的には、次のような場合にお尋ねが来るケースが多くなっています。
高額な遺産を相続した場合、税務署からお尋ねが来るケースが多くなっています。一定額以上の資産を相続した場合、相続税の納税が必要です。しかし、中には、相続税の申告をせず、納税しない人もいます。
市区町村役場では相続人などから死亡届を受け取ると、税務署に報告を行います。この報告から税務署では、死亡した人の財産について調査し、多額の財産を保有していた場合、相続人に対し相続税についてのお尋ねを行うケースが多くなっています。
不動産を購入する場合、多額の資金が必要になります。税務署では、給与の支払報告書や確定申告書等から、不動産を取得した人の収入についてもある程度把握をしています。収入の状況を見て不相応な額の不動産を取得した場合には、贈与を受けているのではと疑いを抱く可能性があります。また、個人事業主の場合には、正しく申告をしていないのではと疑われるケースもあるでしょう。そのため、お尋ねを行い、不動産購入資金の出どころについて確認することが多くなっています。
不動産を取得したときだけでなく、不動産を売却したときにも税務署からお尋ねが来ることがあります。不動産を売却した場合、譲渡所得が発生し、譲渡所得には譲渡所得税が課せられます。税務署が不動産の登記変更を確認した際、譲渡所得税について適切な手続きが行われていないと、お尋ねが行われるケースが多くなります。
個人事業主として事業を営んでいる人の確定申告書の内容に不審な点がある場合も、税務署からお尋ねが来る確率が高くなります。例えば、1年前の所得額に比べて大幅に所得が減っていたり、同業他社と比べて経費の額が明らかに多い場合などが、お尋ねの対象になりやすい状況です。
インターネットの普及に伴い、インターネットを介したさまざまな取引が登場しており、税務署では、インターネット取引を行っている人に対して、積極的に税務調査を行っています。インターネット広告での収入やネットオークションなどでの収入、暗号資産取引などでの収入について、正しく確定申告を行っていないケースが目立ちます。そのため、インターネット取引で何らかの収入を得ている人に対してお尋ねが来るケースも多くなっています。
税務署からお尋ねが来たときは、どのように対応すべきなのでしょうか。
税務署から電話でお尋ねがあった場合、まずは、電話の相手先が税務署の職員であるかどうかを確認しましょう。最近、国税局を語る詐欺電話が横行しており、税務署の職員だと名乗る電話があった場合でも、本当に税務署からの電話かどうかは判断しにくい場合も出ています。そのため、税務署から電話があった場合でも不審に思った際には、その場で回答をせず、まずは電話をしてきた人の名前と部署、電話番号を確認し、教えられた番号に電話をかけて、実在の人物であるかを確認しましょう。
税務署からの電話であることが確認できたら、問い合わせの内容を確認し、適切に回答することが大切です。お尋ねには強制力はありませんが、虚偽の発言をした場合や曖昧な回答をした場合、真偽を確認するために税務調査が行われる可能性もあります。
その場で回答が難しい場合などは、確認後に連絡をする旨約束し、内容を調べた後で税務署に電話を入れ、報告を行うようにしましょう。
封書でお尋ねが届いた場合は、確認したい内容についての問い合わせが記載されています。また、回答期限も記されているため、質問内容に対して、必要事項を記入し、回答期限までに返答するようにしましょう。お尋ねの内容を理解できない場合やどう回答してよいのか迷う場合などは、税務署に問い合わせをすると、適切に回答できるようになるでしょう。また、確定申告をしていなかった場合など、対応に不安がある場合には税理士への相談も検討することをおすすめします。
税務署からのお尋ねに対応しないと次のようなリスクが生じる恐れがあります。
お尋ねがあっても、電話に出なかったり、封書を無視したりといった行動を続けていると、問い合わせに対する回答を求める督促のハガキが送られてきたり、再度、電話がかかってきたりします。
税務署がお尋ねを行う理由は、確定申告の内容など、納税について何かしらの疑問を抱いているからです。そのため、お尋ねに適切な対応をしない場合、回答を求めた督促が行われることを覚えておきましょう。
お尋ねを無視し続けていると、税務調査に発展する恐れもあります。お尋ねは税務調査ではないため、お尋ねに回答しない場合でも法的な罰則を受けることはありません。しかし、税務調査では、納税者に受忍義務が発生し、正当な理由なく税務調査を拒否した場合には罰則が科せられます。そのため、お尋ねへの回答は拒否していた納税者でも税務調査には対応をせざるを得ない状況となります。
税務調査が行われると、関連する書類などが詳しく調査され、納税者にもさまざまな質問がなされます。調査の結果、正しく納税をしていないことが発覚した場合、指摘箇所を修正し、納税をし直す修正申告が求められます。修正申告の際には、不足分の税金とペナルティとしての加算税の納税も求められる点に注意しなければなりません。
確定申告をしていなかった場合に課されるペナルティは、無申告加算税です。無申告加算税の税率は、税額が50万円以下の部分については15%、50万円超300万円以下の部分については20%、300万円超の部分については30%となっています。
また、確定申告をしていたものの、申告した所得額が少なかった場合も、納税額が不足した状態です。この場合は、不足分の税額に加え、過少申告加算税と呼ばれる加算税の納税が求められます。過少申告加算税の税率は、不足分の税額が50万円以下の部分については10%、50万円を超える部分については15%です。
重加算税とは、最も重い税率の加算税のことです。所得を意図的に隠蔽した場合などは、無申告加算税や過少申告加算税に変わり、重加算税が課されることになります。重加算税の税率は、無申告加算税に代わる場合は40%、過少申告加算税に代わる場合は35%です。
税務署からのお尋ねに回答しない場合、税務署では不審な点に関する調査を進めています。調査の結果、多額の所得を隠蔽していると判断された場合や何らかの仮装工作が行われていると判断された場合、予告なく、強制調査が行われ、検察へ脱税容疑で告発される可能性もあります。
告発を受けると、検察では刑事事件として捜査を始め、十分な証拠を収集できたタイミングで裁判所に告訴をします。裁判によって脱税の罪が確定すると、10年以内の懲役もしくは1,000万円以下の罰金、またはその両方が科されることになります。
税務署からお尋ねが来たときには、質問の内容について期限までに正しく回答することが大切です。お尋ねを無視していると、税務署から回答を督促するハガキが送付されたり、電話がかかってきたりします。さらに、無視を続けると、税務調査や強制調査に発展し、追徴課税がなされるリスクも出てくるでしょう。追徴課税がなされると、本来納めるべき税額だけでなく、ペナルティ分の税金の納付も求められ、税負担が高額になる恐れがあります。
税務署からのお尋ねに正しく回答し、適切な対応を取った場合、追徴課税はなされず、申告内容を正しく修正し、不足分の税額を納めるだけで指導が終わるケースも少なくありません。
令和5事務年度の税務調査とお尋ねである簡易な接触の実施件数には、大きな差がありました。しかし、税務調査によって追徴された加算税の額は171億円であるのに対し、簡易な接触によって追徴された加算税の額はわずか9億円です。1件あたりで見ると、税務調査では36万円の加算税が課されているのに対し、簡易な接触ではわずか0.2万円となっています。このことからも、税務署からのお尋ねに適切に対応した場合、加算税が課されるケースはわずかであることがわかるでしょう。
税務署からのお尋ねが来たときには、税負担のリスクを最小限に抑えるためにも期限までに適切に回答することが大切です。
税務署からのお尋ねとは、確定申告の内容についての問い合わせを指します。お尋ねは電話や文書で行われることが多く、納税者にはお尋ねに回答する義務はないものの、適切に回答しない場合、税務調査に発展する恐れがあります。お尋ねに適切に対応することは、追徴課税のリスクを減少させることにもつながるものです。税務署からお尋ねが来たときには、期限までに正しく回答するようにしましょう。
税務署からお尋ねが届いたからといって、すぐに税務調査が行われるわけではありませんが、お尋ねの内容を確認し、適切に対応することが大切です。お尋ねの内容に対し、適切な対応方法に迷うような場合は、期限までに適切な対応ができるよう、早めに税理士に相談するようにしましょう。
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この記事の監修者
税理士法人松本 代表税理士
松本 崇宏(まつもと たかひろ)
お客様からの税務調査相談実績は、累計5,000件以上。国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。
税理士法人松本は国税OB・元税務署長が所属する税理士法人です。
全国からの税務調査相談実績 年間1,000件以上
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