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個人事業主の中には、高級車を事業用の車として購入したいと検討している方もいらっしゃるのではないでしょうか。車が好きな人にとって高級車は憧れでもあり、高級車を保有していることは一つのステータスにもつながります。高級車を購入する際には多額の費用が必要ですが、個人事業主の場合は、高級車を経費で購入できるという話を耳にしたことがある方もいらっしゃるかもしれません。では、個人事業主は、高級車の購入代金を経費として計上することはできるのでしょうか。
今回は、個人事業主の車に関する経費計上の条件や高級車の所有にあたっての注意点などについて詳しくご説明します。
目次
個人事業主が高級車を購入した場合、経費計上はできるのでしょうか。個人事業主と高級車の関係について、ケース別に考えてみましょう。
個人事業主が、業務とは関係なく、プライベートだけで使用する高級車を購入した場合、当然、高級車の購入代金を経費として計上することはできません。車両購入代だけでなく、自動車保険の料金やガソリン代、駐車場代なども経費計上は認められていません。
個人事業主として事業を営むうえで、車が必要になるケースもあります。配送業などを営んでいる場合はもちろん、配送業務に使用する車が必要ですが、他の業種であってもクライアントを訪問する際などに車を使用する場合もあるでしょう。そのような場合に、事業用の車として高級車を保有することもあるかもしれません。事業用として高級車を保有する場合、車の購入費用や維持費用などは、経費計上が可能です。
事業で車を使用するものの、それほど使用頻度が多くない場合などは、業務用とプライベート用の車を分けず、1台の車をそれぞれで使用するケースもあります。その場合、高級車の購入費用や維持費用については、家事按分し、業務で使用する分のみを経費として計上することが可能です。
個人事業主の場合、業務で使用する車であれば、高級車であっても経費として計上することが可能です。では、経費計上が可能な額や経費として扱える車種などに制限があるのでしょうか。
まず、事業で使用する車について、金額や車種、大きさなどを規定するルールはありません。そのため、高級車であっても、事業用の自動車として使用することができ、高級車の取得費用も経費計上が可能です。しかしながら、高級車が必ず経費計上できるわけではなく、常識の範囲で考えた場合に、その高級車を事業用車として使用する必要性が認められない場合などは、経費計上が否認されるケースもあります。
高級車の経費計上が認められるかどうかは、車の種類によっても変わってきます。例えば、クライアントを訪問するために使用する事業用車が、レースにも対応できるような本格的なスポーツカーである必要はありません。業務上の必要性が説明しにくい高級車を保有している場合は税務調査時に指摘を受け、経費計上が否認される可能性があることも忘れないようにしましょう。
高級車に関連する費用のうち、次のような費用は経費計上が可能です。
車両本体価格やオプションの費用、引き取り運賃、納車費用など
自動車重量税、自動車税(種別割)、自動車税(環境性能割)など
自賠責保険料、任意保険の保険料など
車検費用や法定点検費用、修理代など
ガソリン代、電気自動車の電気代、充電設備代、高速道路代、外出先での駐車場代など
ローンで購入した場合の金利、リースを利用している場合のリース代、月極駐車場の地代など
事業用の車であっても、車に関連するすべての支出を経費計上できるわけではありません。車を購入する際に発生するリサイクル料については、購入のタイミングで経費計上はできない点に注意が必要です。リサイクル料は、購入した高級車を廃車にする際に必要となる費用であり、廃車時に経費計上することになります。
取得価額が10万円以上のものは、固定資産に該当するため、法定耐用年数に応じた減価償却処理が必要になります。
普通自動車の法定耐用年数は6年、軽自動車の法定耐用年数は4年です。したがって、高級車を新車で購入した場合は、法定耐用年数である6年にわたって減価償却をします。
新車の場合、法定耐用年数は6年ですが、中古車はすでに新車登録から時間が経過した状態の車です。そのため、中古車として高級車を取得した場合には、新車登録からの経過年数に応じて、償却年数を算出しなければなりません。
経過年数が法定耐用年数を上回っていない場合の中古車の償却年数は、次の計算式で算出します。
(法定耐用年数-経過年数)+経過年数×0.2
新車登録から2年経過した高級車を取得した場合を例に考えてみましょう。
普通自動車の法定耐用年数は6年であるため、上の式に当てはめると(6-2)+2*0.2となり、耐用年数は4.4年となります。1年以下の端数は切り捨てになるため、この場合の耐用年数は4年です。
また、上の式で計算した償却年数が2以下となる場合、例えば新車登録からすでに6年経過している場合は、法定耐用年数は2年として扱います。
減価償却の計算方法には、定額法と定率法の2つの種類があります。定額法は、毎年同じ金額を償却していく方法です。また、定率法では、未償却残高に定率法の償却率をかけ、算出された金額を毎年計上していきます。定額法は毎年、同じ額を減価償却するのに対し、定率法では初年度の減価償却費が最も大きく、徐々に償却額は小さくなっていくという特徴があります。
個人事業主の場合、原則として、毎年同じ額を償却する定額法を使い、減価償却をすることになります。個人事業主であっても定率法で減価償却をすることができますが、その場合は、予め税務署に減価償却資産の償却方法の変更承認申請書を提出しておかなければなりません。
前述のように、中古車の場合、耐用年数は(法定耐用年数-経過年数)+経過年数×0.2
の式で計算します。この式に当てはめた場合、新車登録から4年を経過した車の耐用年数は、6-4+0.8=2.8となりますが、1年未満は切り捨てになるため、耐用年数2年ということになります。経過年数が5年の車も耐用年数は2年となります。
定率法で減価償却を計算する場合、耐用年数が2年の場合の償却率は1.000です。そのため、法人の場合は、4年落ちの高級車を購入した場合、初年度に購入費用の全額を経費として計上することができます。そのため、法人が高級車を社用車にする場合は、4年落ちの車を購入すると、節税につながると言われることが多くあります。
しかし個人事業主の場合、定額法での減価償却となるため、4年落ちの高級車を購入しても、初年度に自動車の取得価格をすべて経費に計上できるわけではありません。もし、大きな利益が出ることが分かっているのであれば、税務署に減価償却資産の償却方法の届出書を提出したうえで、4年落ちの高級車を購入すると良いでしょう。
個人事業主が高級車を購入し、経費として計上したい場合には次の点に注意する必要があります。
事業用として使用する車として高級車を取得しても、経費計上は可能です。しかし、車を取得した場合、法定耐用年数に合わせて減価償却をしなければならないため、取得費用を全額、一括で経費計上することはできません。普通自動車の場合、6年に分けて経費計上をしなければならないのです。
高級車の取得にあたっては、初期費用が発生します。高級車の取得によって、経費として計上できる額は増えるものの、初年度にはそれ以上の費用が発生するため、車を購入する際には事業の資金繰りに悪い影響を与える恐れがないか、十分に確認しなければなりません。
個人事業主が事業用の車の購入代金を経費にするためには、車の名義は原則として本人でなければなりません。例えば、車の名義人が離れて暮らしている父親になっていたり、生計が分かれている兄弟の名義になっていたりする場合は、取得費用を経費として計上することはできません。
また、生計を一にする家族名義の場合は、例外的に経費計上が認められる場合もありますが、特段の理由がない限り、事業用の車として使用するのであれば、個人事業主本人の名義で取得した方が賢明です。
高級車を取得したものの、事業とプライベートとの両方で使用する場合は、車の取得費用などを全額経費にすることはできません。事業で使用した割合を算出し、家事按分をして、事業で使用した分のみを経費に計上する必要があります。
家事按分割合の算出方法は、法律などで示されているわけではありません。しかし、根拠をもとに、納得できる割合でプライベートと事業を区分する必要があります。
事業で車を使用した際、乗車時と降車時に総走行距離を示すオドメーターの距離を記録しておくと、事業で使用した走行距離を算出できます。運行記録簿などを作成し、自動車の使用日と乗車時の数値、降車時の数値を記録しておくと、税務調査の際などにも家事按分割合が適正であることを証明しやすくなるでしょう。
事業用とプライベートの両方で高級車を使用している場合、正しい家事按分比率に合わせて、事業用として使用した分のみを経費に計上しなければなりません。例えば、年間走行距離が20,000km、事業用で使用した距離が15,000kmであると仮定した場合、事業用として計上できる割合は、75%です。1年間の減価償却費やガソリン代、税金、車検代など車関連費用が100万円かかった場合、経費計上できるのは75万円となります。
税務調査時に家事按分比率が実態にそぐわないと指摘された場合、経費として計上していた額が否認される恐れがあります。経費計上が否認されると、その分、課税所得額が増えるため、納税額が不足し、追徴課税がなされる可能性があるのです。また、正しく確定申告を行っていなかったとして、過少申告加算税の納税が求められる可能性もあるでしょう。
家事按分比率は、実態に基づいた合理的な基準で算出しなければなりません。
事業用の車として高級車を取得した場合、訪問先の企業にも事業が安定しているのではといった良い印象を与えられるかもしれません。また、高級車を事業用に使用することが仕事へのモチベーションにつながるケースもあるでしょう。
しかしながら、高級車の取得には初期費用がかかります。事業が不安定な場合や高額な支出によって資金繰りに影響を与える恐れがある場合などは、無理に高級車を取得するべきではありません。
車に関連する費用を経費に計上したい場合は、カーリースを利用するという選択肢もあります。カーリースの場合、車を所有しているわけではないため、減価償却の必要はなく、月々のリース料は全額経費計上が可能です。また、自動車税や保険料、車検などもリース料金に含まれているケースが多く、経費の管理負担も軽減できます。
事業で車を使用する場合は、カーリースの利用も検討してみると良いでしょう。
個人事業主が事業で使用する車の車種や大きさ、価格などに制限はありません。そのため、高級車を事業用の車として取得し、経費計上することも可能です。しかしながら、常識の範囲から逸脱し、事業用の車としては不相応な高級車を取得した場合などは、経費計上が認められない場合もある点に注意しなければなりません。
また、個人事業主の場合、事業用の車とプライベートの車を1台の車で兼用しているケースも少なくないでしょう。その場合、オドメーターを管理するなどして、事業用の使用割合を明確に算出し、事業で使用した分のみを経費計上しなければなりません。プライベートの利用分まで経費計上をした場合、税務調査で指摘され、追徴課税がなされる恐れもあるため、正しく家事按分割合を算出し、適正な額を経費計上するようにしましょう。
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この記事の監修者
税理士法人松本 代表税理士
松本 崇宏(まつもと たかひろ)
お客様からの税務調査相談実績は、累計5,000件以上。国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。
税理士法人松本は国税OB・元税務署長が所属する税理士法人です。
全国からの税務調査相談実績 年間1,000件以上
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