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タンス預金が脱税につながると聞くと、ドキッとする方もいらっしゃるのではないでしょうか。2024年に新札が発行されたことにより、古いお札と新しいお札を入れ替えようとする人が現れ、タンス預金の額は減少したといわれています。しかし、それでもなお、かなりの額の現金がタンス預金になっているようです。では、タンス預金は脱税とどのように関係するのでしょうか。
今回は、タンス預金をしていると脱税が疑われる理由やタンス預金が税務署にバレる理由などについてご説明します。
目次
タンス預金がなぜ脱税に関係してくるのでしょうか。まずは、タンス預金と脱税の関係を確認しましょう。
タンス預金とは、金融機関にお金を預けず、自宅で現金を保管することです。かつては、現金はタンスにしまうというケースが多かったため、自宅で現金を保管する行為をタンス預金と呼ぶようになりました。クローゼットが設置されている住宅が増え、タンスを置く家は減っている今でも、預貯金として預けず、自宅で保管する現金をタンス預金と表現しています。
タンス預金をしていても、金融機関に預けているときのように利子が付くことはありません。また、自宅が火災になってしまった際には消失してしまったり、盗難被害にあったりといったリスクも想定されます。それでもタンス預金をする人が減らないのはなぜでしょうか。タンス預金が多い背景には次のような理由が考えられます。
タンス預金をする理由の一つは、万が一、金融機関の倒産があっても被害を受ける心配がないからです。金融機関が倒産した場合でも、預金保険制度によって、金融機関ごとに1人あたり1,000万円までの元本と利息は保証されます。
しかし、1,000万円を超える部分については保証されません。例えば、ある銀行に2,000万円の預金をしていたときにその銀行が倒産してしまうと、1,000万円は保証されず、失ってしまうことになるのです。
低金利が続く今、多額のお金を金融機関に預けても得られる利息はわずかな額となります。そのため、預金を失う恐れがあるのであれば、タンス預金として自宅に保管しておいた方が安心だと考えるケースが多いのでしょう。
亡くなった後、家族が金融機関に連絡をすると、亡くなった人の預金口座は凍結されます。実際には、死亡届を出すことで自動的に預金口座が凍結されるということはありませんが、死亡すると預金口座が凍結されると認識されているケースが多いようです。
亡くなったときには葬儀や遺品の整理にまとまった額のお金がかかります。しかし、亡くなった後に預金口座が凍結されてしまうと、遺族に金銭的な負担をかけてしまうと考え、タンス預金として自宅に現金を置くケースも少なくないようです。
また、家族にかかる相続税の負担を軽減するために、相続税対策として資産を金融機関に預けず、タンス預金として自宅で保管するケースも見られます。
政府ではキャッシュレス決済を推進しており、将来的にはキャッシュレス決済比率80%を目指すといったキャッシュレスビジョンを掲げています。また、経済産業省では2024年のキャッシュレス決済比率は42.8%に達したと発表しました。
キャッシュレス化は順調に推移しているものの、まだまだ日本では現金決済が多く、現金が手元にあるということは大きな安心感につながるようです。タンス預金として自宅にお金を置いておくと、銀行やコンビニなどに足を運ぶ必要がなく、手数料を取られることもありません。お金が手元にあれば、いつでも必要なときにお金を使えるといった理由からタンス預金をしている人も少なくないのです。
参照元:経済産業省「2024年のキャッシュレス決済比率を算出しました」
銀行などの金融機関に預金を預けている場合、所有している資産の状況が記録されます。ポイントの付与などによって、マイナンバーの公金受取口座の登録をしている割合は増加したものの、まだ60%程度だとされています。マイナンバーカードと銀行口座を紐付けることで、国や自治体に資産の状況を把握されるのではと恐れる人は少なくないのです。
タンス預金であれば、金融口座のようにお金を預けたり、下ろしたりする履歴が残らないため、資産の状況を第三者に把握されたくないと考え、タンス預金をしている人もいるのです。
タンス預金をしているとなぜ脱税につながるのでしょうか。
タンス預金をしているだけ、つまり、金融機関に預けず、自宅で現金を保有しているだけで脱税になるわけではありません。キャッシュレス決済を利用しておらず、現金で支払うことが多い人などは、まとまった額を出金し、自宅に置いておく場合もあるでしょう。これだけで脱税になることはありません。
脱税とは、納税の義務があることを理解しつつ、さまざまな手段で税金をごまかし、納めない行為のことです。したがって、タンス預金=脱税となるわけではありません。
親などが亡くなり、遺産を相続した場合、相続税を納めなければならない場合があります。相続税の基礎控除は3,000万円+600万円×法定相続人の数で算出できます。例えば、法定相続人が2人だった場合、基礎控除の額は3,000万円+1,200万円=4,200万円です。相続財産の額が4,200万円を超えると、超えた分についての相続税の納税が必要ですが、4,200万円までは相続税はかかりません。
タンス預金も相続税の課税対象となる財産です。しかし、自宅で保管していたタンス預金であれば、税務署は把握できないはずだと考え、タンス預金の相続について相続税の申告をせず、相続税の納税を逃れようとするケースがあります。タンス預金の存在を隠し、不正に相続税の納税負担を逃れようとする行為は、脱税行為に該当します。
また、年間110万円以上の財産を個人から受け取った場合、贈与税の課税対象となります。贈与税の納付が必要であることに気が付きながら、タンス預金から年間110万円以上の財産の贈与を受け取っていた人が贈与税の申告をしない行為も脱税です。
タンス預金による相続や贈与を受けている場合、税務調査時に、タンス預金についての指摘がなされるケースが多くなっています。では、なぜ、自宅で保管しているタンス預金が税務署にバレるのでしょうか。
税務署がタンス預金を把握できる理由をご紹介します。
税務署がタンス預金の情報を把握できる理由の一つがKSKシステムの存在です。誰かが亡くなった場合、役場には死亡届が提出されます。死亡届を受け取るとその情報は税務署に通知される仕組みとなっています。
KSKシステムとは国税総合管理システムのことで、全国の国税局と税務署をネットワークで結び、地域や税目を越えて情報を一元管理できるようにしたシステムのことです。KSKシステムには、亡くなった被相続人のデータが蓄積されています。被相続人の毎年の所得税の納税情報、保有している不動産に課される固定資産税、不動産を取得した際の不動産取得税などの情報が蓄積されているため、生前、どの程度の資産を保有していたのかを把握できるのです。
納税者に何らかの疑わしい行為が認められる場合、税務署は、納税者の預貯金口座の取引記録をチェックする権利を持っています。そのため、被相続人が多額の現金を引き出していた記録が残り、不動産や有価証券などの取得履歴がない場合、タンス預金として自宅で保管しているのではという疑いを抱くのです。
また、税務署がチェックできるのは被相続人の口座だけではありません。被相続人の家族の口座もチェックできるため、家族が被相続人が亡くなる前に、自分の口座などにタンス預金を入金した場合でも、その履歴を把握することが可能です。
保険会社は保険金を支払った場合、税務署に対し、誰に、どのような内容で、いくらの額を支払ったのかを記載した支払い調書を提出しなければなりません。被相続人の死亡保険金についても、支払われた保険金の額や受け取った人の情報を税務署では把握しています。また、証券会社が株式や投資信託の売買によって代金を顧客に支払った場合も、税務署には支払い調書が提出されます。
これらの情報と相続税の申告内容と比較し、申告額が少ないと判断された場合、税務署はタンス預金を疑うことになるでしょう。
KSKシステム、預貯金口座のチェック、支払い調書との比較などから、税務調査ではタンス預金があるのではという疑いを抱きます。税金を不正に逃れようとすれば、個人の場合でも税務調査の対象になります。調査官が、被相続人の自宅などを訪れ、関係者にさまざまな質問をしながら、金庫などを確認し、申告していないタンス預金がないか、事実を調査することとなるのです。
税務署は多様な手段を使って情報を収集しています。自宅で保管しているからバレないと思っていても、タンス預金の存在はバレるケースがほとんどです。
タンス預金を申告していないことがバレると、次のようなリスクが生じます。
タンス預金として自宅で保管していた一定額以上の資産を相続した場合や贈与を受けた場合、相続税や贈与税の申告が必要です。納税の義務を怠った場合、ペナルティとして加算税の納税が求められます。
確定申告はしていたものの、タンス預金を含めずに申告していたケースでは納税額が不足した状態です。この場合は、確定申告の内容が正しくなかったことに対するペナルティとして過少申告加算税が課されます。過少申告加算税は10%ですが、申告税額と50万円のいずれか大きい方を超えた部分については15%が適用されます。
また、タンス預金を含め、確定申告をしていなかった場合に課される加算税は無申告加算税です。無申告加算税の税率は、税額が50万円以下の部分については15%、50万円超300万円以下の部分については20%、300万円超の部分については30%となっています。
さらに、故意に多額のタンス預金からの相続や贈与を隠蔽した場合などは、より税率の重い重加算税が課される恐れがあります。重加算税の税率は、確定申告をしていなかった場合は40%、確定申告をしていたものの申告額が不足していた場合は35%です。
タンス預金を正しく申告していなかった場合、加算税だけでなく、延滞税の納税も求められます。延滞税は税金の納付が遅れたことに対する利息の意味合いを持つ税金であり、納税を完了する日まで日割りで計算されるという特徴があります。延滞税は利息的な性質を持つことから、税率は金利と連動しています。令和7年1月1日~12月31日までは、納期限の翌日から2ヶ月間は年2.4%、納期限の翌日から2ヶ月を経過した日の翌日以降からは8.7%となります。
多額のタンス預金がバレないように何らかの工作をして隠蔽するなど、悪質な行為が見られる場合は、行政罰である重加算税が課されるだけでなく、脱税の罪に問われる可能性があります。裁判によって脱税が確定した場合、10年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金、またはその両方が科されます。つまり、タンス預金を正しく申告しない場合脱税犯として懲役や罰金に処される可能性があるのです。
行政罰だけでなく、刑事罰も科され、前科が付くと、その後の日常生活にも大きな影響が生じるでしょう。
タンス預金とは、金融機関に預けず、自宅にお金を置いておくことです。タンス預金をするだけで脱税の罪に問われることはありません。しかし、相続税を免れる目的でタンス預金をしている場合、遺された家族が相続税の申告を適切に行わないと、脱税の罪に問われる恐れもあります。
タンス預金だからといって、相続財産の情報が税務署に伝わらないわけではありません。税務署では、生前の収入などの状況から被相続人の財産状況を把握しており、適切に相続税の申告がなされていない場合、税務調査が実施されることになります。
資産を保有している場合、タンス預金をしていても、金融機関に預けても問題はありませんが、相続財産となった場合は正しく申告を行うことが大切です。
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この記事の監修者
税理士法人松本 代表税理士
松本 崇宏(まつもと たかひろ)
お客様からの税務調査相談実績は、累計5,000件以上。国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。
税理士法人松本は国税OB・元税務署長が所属する税理士法人です。
全国からの税務調査相談実績 年間1,000件以上
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