2025.09.3
  • 税務調査

ダブルワークで確定申告が必要な人とは。不要なケースもある?

読了目安時間:約 6分

かつては、多くの企業がダブルワークを禁止していました。しかし、働き方改革の推進によって副業を認める企業も増加し、働く人の中にもダブルワークをする人が増加中です。

ダブルワークには、本業以外にも収入を得られる、新たな経験を積めるといったメリットがありますが、ダブルワークをしていると確定申告をしなければならない場合があります。

会社員として働いている場合、確定申告をするケースは少ないため、ダブルワークをしたときにどのようなケースで確定申告が必要になるのか把握していない方もいらっしゃるでしょう。

そこで今回は、ダブルワークで確定申告が必要なケース、ダブルワークをしていても確定申告が不要なケースなどについてご説明します。

 

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ダブルワークとは

ダブルワークとは、複数の仕事を掛け持ちし、2か所以上から収入を得ている状態のことです。

 

ダブルワークの主な種類

ダブルワークの働き方には、主に次のような種類があります。

 

・会社員として働いている人が仕事帰りにアルバイトをしている

・平日は会社員、休日はアルバイトをしている

・アルバイトとして2つの職場を兼務している

・会社員が空いている時間を使って個人事業を営んでいる

・会社員やアルバイトで働く人が、株式投資や不動産投資で収入を得ている

・会社員をしながらSNSのインフルエンサーとして活動している

 

ダブルワークで確定申告が必要になるのはなぜ?

ダブルワークをしている人は、確定申告をしなければならないケースがあります。なぜなら、所得税や住民税は、1年間の合計所得に対して課される税金だからです。複数箇所で得ている所得を合計しなければ、正しい納税額を算出できません。そのため、たとえ1か所の就業先で源泉徴収を受けている場合でも、1年間に支払う所得税の額は、ダブルワークの所得額をすべて合算しないと算出できないのです。

 

ダブルワークで確定申告が必要なケース

ダブルワークをしていても、必ずしも確定申告をしなければならないわけではありません。ダブルワークで確定申告が必要になるのは、次のケースに該当する場合です。

 

・2か所以上の会社から給与の支払いを受けており、1社で年末調整を受けた人

・2か所以上の会社から給与の支払いを受け、それぞれの会社で年末調整を受けた人

・掛け持ちで複数のアルバイトをしており、年末調整を受けていない人

・副業として給与以外に20万円以上の収入を得ている人

・事業所得の合計額が95万円以上の人

 

2か所以上の会社から給与の支払いを受けており、1社で年末調整を受けた人

会社員は、給与から所得税や住民税を天引きし、会社が個人に代わって納税をしています。そのため、年末調整を行い、1年間の所得税額を確定し、過不足の調整を行います。しかし、年末調整を実施する場合、自社が支払った給与の分のみを対象に所得税額を確定するため、ダブルワークで他の会社から受け取っている給与については考慮されていません。

そのため、会社員をしながらアルバイトをしている場合など、2か所以上から給与所得を受けており、1か所で年末調整を受けた場合には、納税者自身が確定申告をしなければなりません。

 

2か所以上の会社から給与の支払いを受け、それぞれの会社で年末調整を受けた人

ダブルワークで2か所以上の会社から給与の支払いを受け、それぞれの会社で年末調整を受けた場合も、確定申告が必要です。

本来、年末調整は1か所でしか受けられないルールとなっています。年末調整時には、給与所得控除や基礎控除後、所得税額を確定し、さらに、社会保険料や生命保険料の控除、配偶者控除などを適用させ、所得税額を確定します。複数の会社で年末調整を受けた場合、年間の総所得額ではなく、それぞれの会社が支払った額のみを対象としており、さらに控除が重複してしまうため正しい税額を算出できないのです。

したがって、2か所以上で年末調整を受けた場合も確定申告をし、正しい税額を確定させなければなりません。

 

掛け持ちで複数のアルバイトをしており、年末調整を受けていない人

複数の会社から給与を受け取り、いずれの会社でも年末調整を受けていない人も確定申告をしなければなりません。ただし、2025年度分から、所得税の課税対象となるのは年間160万円以上の所得を得ているケースに限定されます。したがって、ダブルワークで複数のアルバイトをし、年末調整を受けていない年間の合計所得額が160万円以上の人は、確定申告が必要です。

 

副業として給与以外に20万円以上の収入を得ている人

ダブルワークの中には、副業をしている人も含まれます。会社員をしながら、フリーでWebデザイナーの仕事を受けたり、講師の仕事を受けたりしているような人は、年間20万円以上の所得を得ている場合に確定申告が必要です。

 

事業所得の合計額が95万円を超える人

給与所得を得ておらず、個人事業主としてダブルワークをしている方の場合、年間所得が95万円を超えるときに確定申告が必要です。2024年まで、個人事業主の場合、年間48万円以上の所得を得ている場合に確定申告が必要でした。しかし、2025年の税制改正により基礎控除額の見直しが行われ、確定申告が必要になるのは、年間95万円以上の所得を得ている場合に変更されています。

 

ダブルワークでも確定申告が不要なケースとは

ダブルワークをしていても、確定申告が不要なケースもあります。それは、以下のようなケースに該当する場合です。

 

・アルバイトの掛け持ちをしているものの年間所得額が160万円以下の場合

・1か所で年末調整を受け、それ以外の所得が年間20万円以下の場合

・ダブルワーク先の所得も合算して年末調整を受けたとき

・事業所得額の合計が95万円以下のとき

 

アルバイトの掛け持ちをしているものの年間所得額が160万円以下の場合

複数箇所でアルバイトを掛け持ちしていても、年間の合計所得額が160万円に満たず、どの勤務先でも年末調整を受けていない場合には確定申告をする必要はありません。ただし、年間所得額が160万円以下であっても、給与から源泉徴収を受けている場合は、確定申告を行うと税金の還付を受けられます。

 

1か所で年末調整を受けており、それ以外の所得が年間20万円以下の場合

ダブルワークの場合、1か所の勤務先で年末調整を受けており、それ以外の会社から得ている所得や事業所得などが年間20万円以下の場合、確定申告は不要です。

 

ダブルワーク先の所得も合算して年末調整を受けたとき

1か所の勤務先に、他の勤務先の源泉徴収票を提出するなどして、年間の所得額を合算し、年末調整を受けた場合は、確定申告は不要です。例えば、年の途中で一つの勤務先からは退職している場合もあるでしょう。その場合、退職済みの勤務先から源泉徴収票が発行されれば、年末に在籍している企業に源泉徴収票を提出し、両方の所得を合算し、年末調整をしてもらえるのであれば、確定申告をする必要はありません。

 

事業所得額の合計が95万円以下のとき

2025年から、基礎控除額が見直され、年間所得が95万円以下であれば確定申告は不要となります。個人事業主やフリーランスとして複数の仕事をした場合、年間の所得額の合計が95万円を超えなければ確定申告をする必要はありません。

 

ダブルワークをしている方の確定申告の方法

ダブルワークをしており、確定申告が必要な方は、次のような流れで確定申告を行います。

 

必要書類を準備する

ダブルワークの確定申告では次のような書類が必要です。

 

・確定申告書

・給与所得がある人は本業、副業の源泉徴収票

・個人事業主の場合は支払い調書や領収書

・マイナンバーカード

 

会社員として勤務している人やアルバイトとして勤務している人が勤務先から受け取るお金は給与になります。そのため、給与の支払先である会社から、それぞれ源泉徴収票を受け取らなければなりません。また、個人事業主としての事業所得がある場合は、業務委託先から発行される支払い調書を準備しましょう。

 

確定申告書を作成する

書類の準備が整ったら確定申告書を作成します。確定申告書は以下の4つの方法で作成することが可能です。

・確定申告書作成コーナーを利用する

・確定申告書作成ソフトを利用する

・手書きで作成する

・税理士に依頼する

国税庁のWebサイトには、ガイダンスに従いながら必要事項を入力することで確定申告書を作成できる確定申告書作成コーナーを用意されています。源泉徴収票に記載されている額や支払い調書の額、経費などを入力すると自動的に納税額が計算され、手軽に確定申告書の作成が可能です。

また、確定申告書作成ソフトを使っても確定申告書を作成できます。確定申告書作成コーナーに比べると、帳簿も作成できるものが多く、直感的に分かりやすい仕様となっていますが、費用がかかる可能性もあります。そのほか、確定申告書の用紙を入手し、手書きで確定申告書を作成する方法もあります。

確定申告のやり方が分からない場合や複雑な処理が必要な場合などは、税理士に確定申告書の作成を依頼してもよいでしょう。

 

確定申告書を提出して納税するまたは還付を受ける

確定申告書が完成したら、紙の申告書の場合は税務署に持参するか郵送して提出をします。また、インターネット上で作成した場合には、e-Taxを使って電子申告をすることも可能です。

確定申告の結果、納税が必要になる場合には、3月15日までに納付し、税金の還付がある場合には指定した預金口座などで還付金を受け取り、手続きは終了となります。

 

ダブルワークの確定申告のポイント

ダブルワークをしており、確定申告が必要な場合には、次のポイントに注意するようにしましょう。

 

確定申告の期間内に申告を終える

確定申告を行える期間は決まっています。確定申告の期間は、原則として毎年2月16日から3月15日までの間です。ただし、申告期間の開始日や終了日が土日祝日にあたる場合は、翌平日に変更されます。

確定申告のタイミングに遅れた場合、ペナルティが科され、本来よりも多い税金を課される恐れがあります。特に会社員の方がダブルワークをする場合、本業では確定申告の必要がないために、確定申告を忘れがちになる傾向が見られます。自身が確定申告の対象となるかどうかを確認したうえで、該当する場合には確定申告期間中に忘れずに申告書を提出するようにしましょう。

 

確定申告は不要でも住民税の申告が必要な場合がある

年末調整を受けた給与所得以外の所得が20万円以下の場合など、確定申告が不要なケースもあります。しかし、所得税の課税対象とならない場合でも、住民税の課税対象となる可能性がある点に注意しなければなりません。住民税はダブルワークも含め、総所得額に課される税金となるため、所得が確定申告の基準に満たなかった場合でも、1月1日時点で住民票のある自治体に個人住民税の申告書を提出する必要があるのです。確定申告をしない場合でも、住民税の申告を忘れずに行うようにしましょう。

 

住民税の徴収方法は「自分で納付」を選択する

会社で副業を認めているもののダブルワークを会社に知られたくない場合は、確定申告時に注意が必要です。住民税は原則として、給与から天引きされ、会社から自治体に納付されています。この徴収方法を特別徴収といいます。

ダブルワークで確定申告した場合、住民税の徴収方法として特別徴収を選択していると、本業の会社にダブルワークの所得も含めて計算された住民税決定通知書が送付されます。会社側では、住民税決定通知書に記載されている額をもとに給与から天引きをしますが、自社が支払っている給与に比べ、課される住民税が高い場合、ダブルワークをしていることが発覚する恐れがあるのです。

ダブルワークをしていることを会社にバレないようにしたいと考えている方は、確定申告をする際、住民税の徴収項目の箇所で「自分で納付」を選択するようにしましょう。自分で納付を選択した場合、給与所得以外の住民税の徴収方法については普通徴収が適用され、会社にダブルワーク分も含めた住民税の決定通知書が送付されることはありません。

 

まとめ

所得税は、1年間の総所得額に応じて課される税金です。そのため、ダブルワークをしている場合、年間160万円を超える給与所得がある場合、給与以外に20万円以上の所得がある場合は、確定申告をしなければなりません。また、個人事業主やフリーランスとして所得を得ている方も、年間95万円を超える所得を得ている場合、確定申告が必要です。

条件に該当しない場合はダブルワークをしていても確定申告は不要ですが、その場合でも住民税の申告書の提出が必要になる可能性がある点には十分注意しなければなりません。また、ダブルワークをしていることを本業の会社に知られたくない場合は確定申告書の作成時に、住民税の徴収方法として自分で納付を選択することを忘れないようにしましょう。

 


 

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この記事の監修者

松本 崇宏

税理士法人松本 代表税理士

松本 崇宏(まつもと たかひろ)

登録者16万人以上のYouTubeチャンネル「税理士法人松本〜税金の裏のウラ〜」を運営。 代表を務める税理士法人松本では、これまでに累計5,000件を超える税務調査のご相談・対応実績があり、国税局査察部、税務署長歴任者・税務調査一筋の現場に強い国税出身のOB税理士が現在14名常駐。
国税当局側の視点を踏まえて、お客様の立場を尊重し、税務調査でお悩みのお客様に適切かつ迅速に対応。また、調査前・調査中に関わらず、あらゆる状況から最善のサポートが可能。
なお、調査結果が追徴税額なしとなる実績も多数取得。税務調査における専門性・経験則・折衝力から最善の結果を導き、お客様の笑顔とありがとうを励みに成長し続けている。

税理士法人松本は国税OB・元税務署長が所属する税理士法人です。

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