2025.09.12

按分比率が50パーセント以下だと経費計上ができないって本当?

読了目安時間:約 6分

個人事業主として業務を営んでいる方の場合、自宅を事務所として事業を営んでいたり、プライベートと事業用で一台の車を使用したりといったこともあるでしょう。事業用とプライベートで兼用しているものがある場合、その費用は家事按分することで経費に計上できます。しかし、按分比率が50パーセント以下の場合は、経費として認められないという話を耳にしたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。

そこで今回は、按分比率の求め方や按分比率と50パーセントの関係についてご説明します。

 

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家事按分とは

家事按分とは、プライベートでも、業務でも使用しているものにかかる費用を、プライベートの使用分と事業用の使用分に区別し、事業用で使用した分のみを経費に計上することです。

個人事業主の場合、法人に比べると事業規模が小さいことが多く、事業専用の事務所を保有せず、自宅の一部を使って事業を行っているケースも少なくありません。本来、事務所を借り、事業を営む場合、事務所の家賃や光熱費などは経費として計上することができます。同様に、自宅の一部を使用して事業を営んでいたり、プライベートと事業で兼用のものを使用している場合なども、事業のためにかかった費用であれば、経費に計上することができるのです。ただし、プライベートと事業の支出が混在している場合は、全体のうち、事業に使用する分の割合を算出しなければなりません。この事業使用分の割合のことを按分比率といいます。

 

按分比率が50パーセント以下だと経費計上できない?

按分比率が50パーセント以下だと経費に計上することができないといわれる場合があります。では、なぜ按分比率が50パーセント以下だと経費に計上できないといわれているのでしょうか。

 

家事按分の要件

家事按分ができる要件として国税庁では、〔家事関連費(第1号関係)〕のページで次のように示しています。

 

(主たる部分等の判定等)

45-1 令第96条第1号《家事関連費》に規定する「主たる部分」又は同条第2号に規定する「業務の遂行上直接必要であったことが明らかにされる部分」は、業務の内容、経費の内容、家族及び使用人の構成、店舗併用の家屋その他の資産の利用状況等を総合勘案して判定する。

 

これによると、主たる部分または業務を遂行するうえで必要であったと証明できる部分については、内容に応じて家事按分の対象となるか総合的に判断すると読み取ることができます。

 

さらに、按分比率が50パーセントを超えるか超えないかについても次のように示しています。

 

(業務の遂行上必要な部分)

45-2 令第96条第1号に規定する「主たる部分が不動産所得、事業所得、山林所得又は雑所得を生ずべき業務の遂行上必要」であるかどうかは、その支出する金額のうち当該業務の遂行上必要な部分が50%を超えるかどうかにより判定するものとする。ただし、当該必要な部分の金額が50%以下であっても、その必要である部分を明らかに区分することができる場合には、当該必要である部分に相当する金額を必要経費に算入して差し支えない。

 

青色申告者の按分比率が50パーセント以下の場合

青色申告をしている人の場合、按分比率に関わらず、業務にかかった費用であれば、家事按分をして経費に計上することが認められています。つまり、青色申告の場合は、按分比率が50パーセント以下であっても、業務上必要であった支出であることを証明できれば、経費として計上ができるのです。

 

白色申告者の按分比率が50パーセント以下の場合

一方、白色申告者の場合、按分比率が50パーセント以下の場合は、経費として計上することができないといわれる場合があります。そのため、白色申告をしている人は、按分比率が50パーセント以下の場合、経費計上ができないと思われるケースがあります。

しかし、家事関連費(第1号関係)の45-2では「ただし、当該必要な部分の金額が50%以下であっても、その必要である部分を明らかに区分することができる場合には、当該必要である部分に相当する金額を必要経費に算入して差し支えない」と示されています。

これは、白色申告者であっても、業務上使用している割合を明確に示すことができれば、家事按分比率が50パーセントを超えてなくても、経費として計上できることを意味しています。

したがって、青色申告者か白色申告者かに関わらず、按分比率が50パーセント以下であっても、按分比率の正当性を示すことができれば、経費に計上することは可能なのです。

 

家事按分が認められる支出と按分比率の求め方

家事按分が認められるのは、事業とプライベートと両方で使用しているものにかかる支出です。具体的に、以下のような支出が、家事按分の対象となるケースが多いでしょう。按分比率の求め方の例とともにご紹介します。

 

家賃

賃貸住宅に入居しており、自宅で事業を営んでいる場合、事業使用分に合わせて家賃を経費計上することが可能です。家賃を家事按分する場合の按分比率の算出法は、事業に使用しているスペースの割合から算出する方法と事業に費やした時間の割合から算出する方法があります。

例えば、家賃10万円の50㎡の部屋を借り、そのうち10㎡を事業用の部屋として使用している場合、按分比率は10㎡÷50㎡×100=20%となります。したがって、経費として計上できる金額は、10万円×20%=2万円です。

また、同じ家賃10万円の部屋を借りている場合、事業に費やした時間と生活で使用する時間の割合によって按分比率を算出することができます。例えば、1日8時間、週5日間、仕事をしている場合、1週間の業務使用時間は40時間です。1週間は168時間であり、1週間の総時間数のうち、業務に使用した割合は、40時間÷168時間×100≒23.8%となります。この場合、経費として計上できる額は10万円×23.8%=2万3,800円と算出できます。

 

水道光熱費

事業で使用する水道や電気、ガスなどの料金も家事按分によって経費とすることが可能です。例えば、自宅のキッチンを使って料理教室を使用している場合は、水道料金やガス代は経費計上が認められます。しかし、事務的な事業を営んでいる場合など、事業で水道やガスを使用する可能性が低い事業については、水道料金やガス代を経費として計上することはできません。ただし、その場合であっても、仕事をするためには照明やパソコン、エアコンなどを使用し、電気料金が発生します。事業に使用した部分の電気料金は、経費として計上することが可能です。

電気料金を家事按分する方法は、事業に費やした時間で算出する方法とコンセントの数から算出する方法などがあります。1日8時間、週に5日仕事をしている場合の電気料金が1万円であったと仮定します。この場合、按分比率は23.8%となり、経費にできる電気料金は2,380円です。また、コンセントの数から算出する場合、自宅のコンセントが20個あり、そのうち5つを事業で使用している場合、按分比率は25%となります。したがって、計上できる電気料金は2,500円です。

 

通信費

固定電話やスマートフォンの利用料金、インターネット回線費用などの通信費も家事按分することが可能です。通信費の按分比率については、使用日数から算出する方法や使用時間から算出する方法があります。

週に5日、8時間、インターネット回線を使用して業務を行っている場合、1週間の家事按分比率は23.8%です。したがってインターネット回線料金が1万円の場合は2,380円を経費に計上することが可能です。また日数から算出する場合、週に5日間で算出すると、按分比率は71.4%となり、7,140円を経費として計上することができます。

スマートフォンや固定電話についても、同様の計算方法によって家事按分し、事業分を経費計上することが可能です。

 

自動車関連費

自動車に関わる費用も、家事按分の対象となります。事業専用の自動車を保有している場合は、事業用の車にかかるすべての費用を経費として扱うことが可能です。しかし、プライベートと事業の両方で一台の車を使用している場合は、事業に使用する分の割合を算出し、家事按分をしなければなりません。

家事按分の対象となり得る自動車関連費には次のようなものがあります。

 

・車両購入費用

・駐車場代

・ガソリン代

・自動車税

・車検費用

 

自動車関連費用についても、使用日数や走行距離などから按分比率を出すことができます。例えば、週5日、事業で車を使用した場合の家事按分比率は71.4%です。月々のガソリン代が15,000円になる場合、経費として計上できる金額は10,710円となります。

一方、走行距離から考える場合、1ヶ月の総走行距離が500kmでそのうち、事業で走行した距離が400kmであった場合、家事按分の比率は80%となり、ガソリン代として12,000円を経費として計上することが可能です。

ガソリン代以外の費用についても、按分比率を算出し、事業使用分のみを経費に計上します。自動車の費用を家事按分する場合、事業に使用した分を明確に示すためにも、車の使用日時や走行距離、訪問先などを記載した運転日報を作成することをおすすめします。

 

50パーセント以下の家事按分でも税務調査で指摘を受けないためのポイント

白色申告でもしっかりと事業使用分の割合を説明することができれば、たとえ家事按分比率が50パーセント以下でも経費として計上することができます。しかし、白色申告者の家事按分比率が50パーセント以下の場合、税務調査時に指摘を受けやすくなります。また、青色申告者であっても、家事按分比率については税務調査時に指摘を受けやすいポイントです。家事按分をし、経費計上を行う際には次のポイントに注意するようにしましょう。

 

家事按分比率の計算根拠を明確に示せるよう準備する

家事按分が認められるのは、事業として使用している分を明確な根拠をもとに示せる場合のみに限られます。家事按分によって家賃の一部を経費にするのであれば、使用時間や使用面積など、計算の根拠を示しながら、その比率について説明できなければなりません。状況に応じた適切な計算方法を採用し、税務調査時には調査官が納得できる説明を行えるよう準備をしておきましょう。

 

家事按分比率は正しく算出する

計算根拠をしっかりと説明できることも大切ですが、まずは、按分比率が正しい割合で算出されているものでなければなりません。按分比率が極端に高すぎる場合、プライベートの使用分も経費として計上し、不正に経費を水増しすることで、税金逃れを画策しているのではと疑われる可能性があります。按分比率が高すぎる場合、税務調査時に経費計上が否認される恐れもあるため、家事按分をする際には、事実に基づき、客観的な方法で按分比率を算出し、適した金額を経費として計上することが大切です。

 

家事按分できない支出を経費として計上しない

個人事業主の中には、事業で使用する面積に応じて、生計を一にする家族に家賃を支払い、負担した家賃分を経費に計上しているケースもあるようです。しかし、家族に支払う家賃を経費として計上することはできません。家族に支払う家賃を経費として計上していた場合、税務調査時には、不正な処理をしているとして指摘されることになるでしょう。

また、経費として計上できるのは、事業のために必要となった支出のみです。例えば、飲食業を営む人が制服の購入代を経費にすることはできますが、事務的な仕事をする人が、仕事中も着ているからといって衣服代を家事按分し、経費に計上することはできません。

 

まとめ

個人事業主の場合、自宅の一部で事業を行っているケースも多くあるでしょう。事業とプライベートの両方で使用しているものにかかる支出については、家事按分を行い、事業用の使用分のみを経費に計上することが可能です。

白色申告者の場合、家事按分比率が50パーセント以下の場合、経費に計上することができないといわれることがありますが、しっかり按分比率の計算根拠を示すことができれば、経費として計上することができます。大切なのは50パーセントを超えるかどうかという点ではなく、明確な根拠のもと、正しく按分比率を算出しているかという点です。

不正に按分比率を高めていた場合、税務調査時に否認され、ペナルティを課される恐れもあります。家事按分を行う際には、実態に基づいた明確な按分比率の算出を行い、正しく経費計上を行うようにしましょう。

 


 

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この記事の監修者

松本 崇宏

税理士法人松本 代表税理士

松本 崇宏(まつもと たかひろ)

登録者16万人以上のYouTubeチャンネル「税理士法人松本〜税金の裏のウラ〜」を運営。 代表を務める税理士法人松本では、これまでに累計5,000件を超える税務調査のご相談・対応実績があり、国税局査察部、税務署長歴任者・税務調査一筋の現場に強い国税出身のOB税理士が現在14名常駐。
国税当局側の視点を踏まえて、お客様の立場を尊重し、税務調査でお悩みのお客様に適切かつ迅速に対応。また、調査前・調査中に関わらず、あらゆる状況から最善のサポートが可能。
なお、調査結果が追徴税額なしとなる実績も多数取得。税務調査における専門性・経験則・折衝力から最善の結果を導き、お客様の笑顔とありがとうを励みに成長し続けている。

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