2025.09.21

白色申告で経費にできるものとは?上限や計算時の注意点などを解説

読了目安時間:約 6分

個人事業主やフリーランスの方が白色申告をする場合、事業のために必要となった支出は経費として計上することが可能です。経費は、売上額から差し引くことができるため、税金が課される所得額を圧縮し、適切に経費計上を行うと節税効果を得られます。

しかし、白色申告ではどのような支出を経費にできるのか、経費として計上できる額に上限があるのか、疑問に思う方もいるかもしれません。

そこで今回は、白色申告で経費として計上できる支出や経費計上の上限額、経費を計算する際の注意点などについて解説します。

 

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白色申告で経費にできる支出と経費にできない支出

経費として申告できる支出は、事業のために支払った費用です。例えば、商品の販売やサービスの提供をするために必要となった仕入れの費用や事務所やお店の家賃など、事業運営のためにかかった費用は経費計上が可能です。

一方、事業とは関連のない支出は経費には計上できません。

 

白色申告で経費にできる支出一覧

具体的には次のような支出を経費として申告することができます。

 

・租税公課

事務所などの固定資産税、事業税、登録免許税、事業で使用する車にかかる自動車税、印紙税、行政サービスの手数料、商工会や商店会の会費など

 

・地代家賃

事業で使用している事務所や店舗、倉庫などの家賃、事業で使用する車の駐車場の料金など

 

・水道光熱費

事業のために使用した水道や電気、ガスなどの利用料金

 

・旅費交通費

移動のために使用した電車やバス、飛行機などの運賃、タクシー代、高速道路代、出張時の宿泊費など

 

・消耗品費

使用可能期間が1年未満か取得価額が10万円未満の物品の購入費用。ペンやノートなどの文房具、コピー用紙、ファイル、ラック、10万円未満のパソコン、デスク、チェアなどの購入費

 

・通信費

事業で使用する固定電話、スマートフォン、インターネット回線の料金、はがき代、切手代など

 

・荷造運賃

商品の包装のために必要になった段ボールや包装紙の購入費用、配送料金など

 

・給与賃金

従業員に支払う給与、賞与、退職金など

 

・外注工賃

システム開発やホームページの運営、電気工事などを外部業者に委託した際に支払う費用

 

・修繕費

事務所の修理や改修、パソコンの修理、機械の修理などにかかった費用

 

・広告宣伝費

チラシやダイレクトメールの印刷費用、新聞広告の掲載費用、インターネット広告の掲載費用など、事業や商品の広告に関わる費用

 

・接待交際費

取引先の接待を目的に開催した食事会の費用、取引先に送付するお中元やお歳暮の費用、ご祝儀、香典など

 

・福利厚生費

社員旅行やレクリエーション費用、忘年会など従業員の慰安のために支出した費用や健康診断の費用など

 

・減価償却費

機械やパソコン、自動車などの10万円以上の固定資産を耐用年数に応じて計上する費用

 

・損害保険料

事務所や店舗などの火災保険料、地震保険料、自賠責保険料、自動車保険料など

 

・貸倒損失

売掛金や貸付金、未収入金などのうち回収不能となった損害金額

 

・利子割引料

事業用資金の借り入れにかかる利子や受取手形の割引料など

 

・研修費

業務に関わるセミナーの受講料、イベントの参加費用など

 

・雑費

事業のために支出した費用で、他の経費に当てはまらないもの

 

白色申告で経費にできない支出とは

白色申告では、次のような支出を経費に計上することはできません。

 

・事業とは関連のない支出

家族との旅行にかかった費用やプライベートな付き合いで開催した食事会の費用など、事業とは関連のない支出を経費に計上することはできません。

 

・事業主への給与や健康診断費

白色申告では、事業主の給与を経費に計上することは認められていません。ただし、従業員を雇用し、従業員に給与を支払う場合は従業員に支払った給与を経費として計上することは可能です。また、従業員の健康診断費は福利厚生費として経費計上が可能ですが、事業主の健康診断費を経費にすることはできない点にも注意が必要です。

 

・事業主個人が負担する所得税や住民税

事業所などにかかる固定資産税や事業にかかる事業税は、租税公課として経費に計上できます。しかし、事業主個人が負担する所得税や住民税は、事業の運営のために支出した費用には該当しません。そのため、経費として計上できない点に気を付けましょう。

 

・親族への給与

白色申告の場合、配偶者や親族に給与を支払っても、給与を経費にすることはできません。

 

白色申告の専従者控除について

白色申告では、配偶者や親族への給与を経費として計上することはできません。しかし、事業専従者の条件を満たす場合には、事業専従者控除を利用することができます。

事業専従者控除を受けるための要件は次のとおりです。

 

・白色申告事業者と生計を一にしている配偶者またはその他親族である

・その年の12月31日現在で年齢が15歳以上である

・その年を通じて6か月を超える期間、白色申告者の営む事業に専ら従事している

 

事業専従者控除を適用できる額は、配偶者であるか、その他親族であるかによって変わってきます。控除額は次の①と②の金額のいずれか低い金額です。

 

  • 事業主の配偶者の場合、控除額は86万円、配偶者以外の場合、控除額は一人につき50万円
  • 事業専従者控除をする前の事業所得の金額を事業専従者の数に1を足した数で割った金額

 

生計を同じにしている配偶者や親族に事業を手伝ってもらっており、事業専従者の要件を満たす場合には事業専従者控除を適用させるようにしましょう。経費としては計上できないものの、事業専従者控除も節税につながるため、白色申告をする際には必ず、申告を行うことが大切です。

 

白色申告の経費に上限はある?

白色申告事業者の中には、経費として計上できる額に上限があるのか気になる方もいらっしゃるでしょう。例えば、法人の場合は、接待交際費として計上できる額に上限額が設定されているケースもあります。しかし、白色申告事業者の場合、接待交際費も含め、経費として計上できる額に上限はありません。事業に必要となった支出であれば、経費計上が可能です。

しかしながら、年間の売上額に対して、あまりに接待交際費として計上している金額が大きい場合などは、税務署からプライベートな支出も経費として計上しているのではと疑われる可能性があります。その場合、税務調査の対象となり、税務調査時に経費の正当性について詳しく調べられ、経費を否認されると、ペナルティを科される点に注意が必要です。

 

白色申告で経費計上の計算をする際の注意点

白色申告事業者が経費を計上する際にはいくつか注意すべき点があります。白色申告で経費計上をする際に把握しておきたいポイントをご紹介します。

 

事業とプライベートの両方で使用しているものの費用は家事按分が可能

白色申告事業者の場合、小規模なビジネスを行っているケースも少なくありません。そのため、事業専用の事務所を借りず、自宅の一部を事務所として使用するケースもあるでしょう。また、自宅の一部を店舗として使用しているケースもあるのではないでしょうか。

自宅の一部で事業を営んでいる場合、事業用として使用している分の費用を経費として計上することができます。プライベートと事業用で兼用しているもののうち、事業用の使用割合を算出することを家事按分と言います。

例えば、居住用として借りている住宅の一部を事業に使用している場合は、事業専用として使用している部屋の面積や事業に使用している時間などから事業使用分の割合を算出し、その分を経費に計上することが可能です。

また、自宅の一部で事業を営んでいる場合は、水道光熱費も、事業で使用した分のみ家事按分によって経費に計上することができます。そのほか、電話代やインターネット回線料金などの通信費も家事按分の対象となります。

家事按分の割合は、事業主が決定することができますが、事実に基づいた形で割合を算出しなければなりません。事実とは異なる割合で家事按分をしていた場合、経費計上が認められない可能性もあります。税務調査が入った場合、調査員に対して、計算の根拠を明確に示せるように準備をしておくことが大切です。

 

経費の領収書は保管が必要

経費を計上する場合、支出があったことや支出の金額を証明する領収書を保管しておかなければなりません。ただし、領収書がない場合にはレシートやクレジットカードなどの明細書で代用できる場合もあります。白色申告者の場合、領収書は5年間、保存しておかなければなりません。

 

電子取引で受け取った領収書や請求書はデータでの保管が必要

電子帳簿保存法が改正され、2022年1月から新たなルールにしたがった電子帳簿の保存が求められています。インターネットなどで事業に必要なものを購入した場合や取引先から領収書や請求書が電子データで発行された場合、それらの請求書や領収書は電子データのまま保存しなければなりません。また、受け取った場合ではなく、発行した場合にも電子データとして保存しなければならない点に注意が必要です。

さらに、電子取引データを保存するためには、改ざん防止のための措置を取り、日付や金額、取引先などで簡単に検索できる状態で保存しておかなければなりません。また、すぐにデータを確認できるようディスプレイやプリンタなどを用意する必要があります。

改ざん防止の措置には、タイムスタンプの付与や訂正や削除履歴が残るシステムでの保存といった方法もありますが、改ざんを防止する事務処理規定を定めるという形も認められています。システムの導入費用なども不要であるため、電子取引で領収書や請求書の受領や発行を受ける場合は、規定を定めて運用するようにしましょう。

 

適格請求書発行事業者の場合は領収書の保管期間が7年間に

インボイス制度の開始に伴い、白色申告事業者の中にも適格請求書発行事業者として登録を行っているケースがあるかもしれません。適格請求書発行事業者として消費税の仕入税額控除の適用を受けている場合、白色申告事業者であっても領収書の保管期間が7年間となる点に注意しましょう。

また、インボイス制度では、基準期間における課税売上高が1億円以下、または特定期間における課税売上高が5,000万円以下の事業者について、少額特例が適用されます。少額特例が適用されるのは、2029年9月30日までに行う課税仕入れです。少額特例では、税込1万円未満の課税仕入れについて、インボイスを保管していなくても、適用要件を満たす形で記載された帳簿を保管していれば、仕入額控除を受けることが可能です。

 

帳簿の保管も必要

領収書だけでなく、収入額や必要な経費を記載した法定帳簿については7年間の保存が必要です。そのほか、業務のために作成した任意帳簿については5年間、決算のために作成した棚卸表、請求書や納品書、送り状なども5年間保管しなければなりません。

 

10万円以上のものは経費として一括計上できない

10万円以上のパソコンや複合機などの備品や機器を購入した場合、購入した年に購入した額を一括して経費計上することはできません。10万円以上の備品や機器は資産に該当するため、法定耐用年数に合わせて減価償却をしなければならないのです。

しかしながら、取得価額が10万円以上20万円未満の減価償却資産については、一括償却資産として法定耐用年数に関わらず、3年間で均等償却することが可能です。3年間にわたり、毎年、同じ金額を減価償却費として計上できるため、処理も簡単になり、節税効果も得られます。そのため、10万円以上20万円未満の資産を取得した場合には、一括償却資産として扱うとよいでしょう。

 

まとめ

白色申告では、事業のためにかかった費用を経費として計上することが可能です。売上から経費を差し引いた課税所得額に対して所得税は課されます。そのため、経費を正しく計上すると、課税所得額を圧縮できるため、節税効果を得られます。しかしながら、事業に関連のない経費や事業主や親族に支払った給与、事業主の健康診断費など、経費計上が認められていない支出もある点に注意しなければなりません。

また、自宅の一部で事業を営んでいる場合など、事業とプライベートで兼用しているものがある場合などは、家事按分によって事業で使用している割合を算出し、事業使用分のみを経費に計上できます。そのほか、生計を一にする配偶者や親族に事業を手伝ってもらい、要件を満たす場合には、事業専従者控除を適用させることも可能です。

経費計上のルールをしっかり守りながら、賢く節税を行いましょう。

 


 

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この記事の監修者

松本 崇宏

税理士法人松本 代表税理士

松本 崇宏(まつもと たかひろ)

登録者16万人以上のYouTubeチャンネル「税理士法人松本〜税金の裏のウラ〜」を運営。 代表を務める税理士法人松本では、これまでに累計5,000件を超える税務調査のご相談・対応実績があり、国税局査察部、税務署長歴任者・税務調査一筋の現場に強い国税出身のOB税理士が現在14名常駐。
国税当局側の視点を踏まえて、お客様の立場を尊重し、税務調査でお悩みのお客様に適切かつ迅速に対応。また、調査前・調査中に関わらず、あらゆる状況から最善のサポートが可能。
なお、調査結果が追徴税額なしとなる実績も多数取得。税務調査における専門性・経験則・折衝力から最善の結果を導き、お客様の笑顔とありがとうを励みに成長し続けている。

税理士法人松本は国税OB・元税務署長が所属する税理士法人です。

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