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個人事業主の中には、事業に車を使用している方もいるでしょう。事業に車を使用する場合、車の購入費用だけでなく、自動車税や自動車保険、車検代、ガソリン代などさまざまな費用が発生します。これらの費用は経費として計上することができるのでしょうか。
また、事業専用の車は保有していないものの、プライベートと兼用で使用するケースもあるかもしれません。その場合は経費計上することが難しいのでしょうか。
今回は、個人事業主が車にかかる費用を経費で落とす方法や経費処理の際に必要となる減価償却についてご説明します。
目次
個人事業主が車を購入する場合、車の購入費用は経費に計上することが可能です。ただし、100%事業に使用する車であるか、プライベートでも使用する車であるかによって、経費計上方法が変わってきます。
車両の購入費用は、経費として扱うことができます。ただし、経費として計上できるのは事業に使用する車の購入費用です。当然、プライベートで使用する目的で購入した車については、取得費用を経費に計上することはできません。また、新車であっても中古車であっても事業で使用する場合は、取得費用の経費計上が認められます。
事業でもプライベートでも使用する車を取得した場合は、家事按分をし、事業の使用割合のみを経費に計上することができます。事業とプライベートの使用比率を分けるためには、走行距離や使用時間など、使用状況に応じた家事按分比率を算出しなければなりません。そのためには、車を使用した日や走行距離などを記載しておくことが重要です。
例えば、年間走行距離が10,000kmでこのうち事業で使用した走行距離が6,000kmの場合、按分比率は60%となります。
個人事業主が車の取得費用を経費に計上する場合、その車が事業で使用するものであることに加え、車の名義人が事業主本人でなければなりません。他人名義の車を、経費として計上することはできないため、事業で使用する車として取得するのであれば、個人事業主本人の名義で登録するようにしましょう。
車両本体価格は高額になります。そのため、現金一括ではなく、ローンで購入する場合もあるでしょう。車をローンで購入した場合も、経費に計上することが可能です。
また、車を購入せず、リースという形で使用するケースも考えられます。カーリースの場合は、月々支払うリース料を経費として計上することができます。
車両本体価格、カーナビなどのオプション費用、引き取り運賃、購入時の手数料などは車両運搬具の勘定科目を使用します。ただし、取得価額が10万円以上の資産は、経費として一括計上することはできません。法定耐用年数に応じて減価償却し、毎年、減価償却分を減価償却費として計上しなければならない点に留意が必要です。
また、車両取得時にかかる費用のうち、リサイクル料については経費に計上することができません。リサイクル料は、廃車をする際の処理費用に該当するため、購入時には預託金として計上し、廃車時に費用として処理することとなるのです。
以下の条件で個人事業主が車を購入した場合の仕訳の例をケースごとにご紹介します。
・車両本体価格:3,000,000円
・自動車税:25,000円
・自動車重量税:36,900円
・自賠責保険料:27,180円
・検査登録代行料:30,000円
・リサイクル料:10,000円
現金一括で車を購入した場合、次のように仕訳をします。
借方
貸方
頭金を支払わず、元本10万円、利息1万円の条件でローンを利用する場合、まずは次のように仕訳します。
さらに、ローン返済時に利息を支払った分について以下のように仕訳ます。元本と利息の勘定科目を分ける点に注意が必要です。
車を購入せず、リースを利用した場合は、リース料金を全額経費に計上します。また、リースを使用した場合、自動車を保有することにはならないため、減価償却は不要です。
月々50,000円のリース料を現金で支払う場合は、次のように仕訳します。
カーリースの場合、自動車税や自賠責保険料などもリース料金に含まれているため、個別に仕訳する必要もありません。したがって、リースを利用すると経理処理が非常に簡便になります。
車の取得価額が10万円未満になるケースはほとんどないでしょう。取得価額が10万円以上のものは、固定資産として計上しなければならないため、車についても固定資産として計上し、法定耐用年数に応じて減価償却を行わなければなりません。
ケースとしては多くないと考えられますが、取得価額が10万円以上20万円未満の車であれば、一括償却資産として扱い、取得価額を3年間で均等に償却することができます。
また、青色申告者の場合、取得価額が30万円未満の車であれば、少額減価償却資産の特例を利用し、車を取得した年に一括して経費に計上することも可能です。ただし、少額減価償却資産の特例を利用する場合には、確定申告書に少額減価償却資産の取得価額に関する明細書を添付するか、青色申告決算書の「減価償却費の計算」の欄にこの制度を適用していることなど、といった事項を記載する必要があります。
参照:国税庁「中小企業者の少額減価償却資産の取得価額の必要経費算入の 特例制度」を適用する場合の明細書の添付について
減価償却の方法には、定額法と定率法の2つがあります。定額法とは、毎年同額を減価償却する方法です。また、定率法とは、償却初年度の償却額が最も高くなり、年とともに償却額が減少する形の計算方式となります。
基本的には、個人事業主の場合には定額法を用いて減価償却を行い、法人は定率法を用いた減価償却を行います。ただし、個人事業主であっても、税務署に届出をすれば車を含めた一部の資産については、定率法で減価償却をすることも可能です。
定額法の計算式は、次のように表されます。
各年の償却費の額=取得価額×定額法の償却率
定額法の償却率は、取得した資産の耐用年数によって変わってくるため、まずは車の法定耐用年数を調べなければなりません。
国税庁では、一般用の車の耐用年数を次のように定めています。
・小型車(排気量が0.66リットル以下のもの) 4年
・その他の車 6年
つまり、軽自動車の法定耐用年数は4年、普通自動車の法定耐用年数は6年となります。法定耐用年数が4年の場合の定額法の償却率は0.25、6年の場合の償却率は0.167です。
参照:国税庁「主な減価償却資産の耐用年数表」
国税庁「減価償却資産の償却率等表」
300万円の車を購入した場合、毎年の減価償却費は次のように計算できます。
3,000,000×0.25=750,000となり、4年にわたって75万円を減価償却費として計上します。
減価償却費
750,000円
車両運搬具
・300万円の普通自動車を購入した場合3,000,000×0.167=501,000となり、6年にわたって、50万1,000円を減価償却費として計上します。
501,000円
中古車を購入する場合、取得時点ですでに耐用年数の一部を経過しています。そのため、新車を購入する場合に比べて減価償却期間が短くなります。つまり、減価償却期間が短くなれば、年あたりの減価償却費が大きくなるため、節税効果も高くなるのです。
中古車の耐用年数は、新車とは異なり、次の計算式で求めます。
中古車の耐用年数=法定耐用年数-経過年数+経過年数×20%
例えば、登録から3年が経過した300万円の普通自動車を中古車として取得した場合の耐用年数は、6年-3年+3年×20%=3.6年と計算することができます。端数は切り捨てとなるため、この場合の耐用年数は3年です。耐用年数が3年の償却率は、0.334であるため、減価償却費として計上できる額は、3,000,000×0.334=1,002,000となり、3年にわたり100万2,000円を減価償却費として計上することになります。
すでに法定耐用年数を過ぎている中古車を取得した場合、耐用年数は2年として扱うことになります。4年落ちの中古車の場合、軽自動車であればすでに法定耐用年数を過ぎています。普通自動車の場合も中古車の耐用年数の式に当てはめてみると、6年-4年+4年×20%=2.8年と計算できます。端数は切り捨てとなるため、4年落ちの普通自動車から耐用年数は2年となり、法定耐用年数を過ぎた普通自動車と同じ扱いになります。
この場合、定額法で減価償却をすると償却率は0.500となるため、ちょうど半分ずつ2年に分けて減価償却費を計上することとなります。
しかし、定率法の場合、耐用年数2年の減価償却資産の償却率は1.00です。つまり、定率法で減価償却をする場合は、1年で中古車の取得価額を全額、経費として計上することができるのです。
個人事業主が4年落ちの中古車の取得価額を一括で経費計上したい場合は、定率法で減価償却を行う旨の届出が必要になります。個人事業主として新たに事業を始め、定額法以外の償却方法を選択する場合や今まで取得していなかった資産の種類について定額法以外の償却方法を選択しようとする場合に必要となる書類は資産の評価方法・減価償却資産の償却方法の届出書です。
また、すでに取得している種類の資産を新たに取得し、今までとは異なる償却方法を選択したい場合は「所得税の棚卸資産の評価方法・減価償却資産の償却方法の変更承認申請書」を提出します。
それぞれ、提出期限が違っており、「所得税の棚卸資産の評価方法・減価償却資産の償却方法の届出書」の提出期限は、車を取得した年分の確定申告期限までです。一方、車を買い替えたい場合は、「所得税の棚卸資産の評価方法・減価償却資産の償却方法の変更承認申請書」を変更しようとする年の3月15日までに提出しなければなりません。4年落ち以上の中古車に買い替え、一括で経費計上をしたい場合は、その年の3月15日までに届出を提出することを忘れないようにしましょう。
車の車両本体の取得費用だけでなく、車に関連する費用も経費として計上することが可能です。車関連の費用と仕訳の際に使用する勘定科目の例をご紹介します。
・自動車税、自動車重量税
租税公課として仕訳します。
・自賠責保険料、任意保険料
保険料として仕訳します。
・ガソリン代
車両費や旅費交通費として仕訳します。
・車検費用
車検費用は項目によって使用する勘定科目が異なります。点検や整備、備品の交換などにかかる費用は車両費もしくは修繕費で仕訳します。自賠責保険料は保険料、自動車重量税や印紙税は租税公課、車検代行手数料は支払手数料として計上するようにしましょう。
・高速道路の料金、コインパーキングの料金、洗車代
車両費として仕訳します
・駐車場代金
月極め駐車場の駐車場代は、地代家賃として仕訳します。
個人事業主が事業で使用する車の購入費用や車の維持にかかる費用は、経費として計上することが可能です。また、プライベートと事業用で車を兼用する場合は、家事按分をし、事業に使用した割合を算出することで、事業使用分を経費に計上することもできます。
取得価額が10万円以上の車は、原則として減価償却資産として扱わなければなりません。そのため、一括で経費計上するのではなく、法定耐用年数に合わせて減価償却をする必要があります。ただし、登録から一定以上の期間が経過した中古車の場合、定率法などを使うと一括で経費計上することも可能です。車を取得する予定がある場合には、事業の状況などに合わせて、より節税効果を得られるような方法で処理を行うようにしましょう。
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この記事の監修者
税理士法人松本 代表税理士
松本 崇宏(まつもと たかひろ)
登録者16万人以上のYouTubeチャンネル「税理士法人松本〜税金の裏のウラ〜」を運営。 代表を務める税理士法人松本では、これまでに累計5,000件を超える税務調査のご相談・対応実績があり、国税局査察部、税務署長歴任者・税務調査一筋の現場に強い国税出身のOB税理士が現在14名常駐。国税当局側の視点を踏まえて、お客様の立場を尊重し、税務調査でお悩みのお客様に適切かつ迅速に対応。また、調査前・調査中に関わらず、あらゆる状況から最善のサポートが可能。なお、調査結果が追徴税額なしとなる実績も多数取得。税務調査における専門性・経験則・折衝力から最善の結果を導き、お客様の笑顔とありがとうを励みに成長し続けている。
税理士法人松本は国税OB・元税務署長が所属する税理士法人です。
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