2025.10.14
  • 税務調査

法人は決算のみを税理士に依頼できる?費用はどのくらいかかる? 

読了目安時間:約 6分

事業規模にかかわらず、全ての法人は事業年度末に事業成果や財産状況をまとめる決算を行わなければなりません。法人の決算には複雑な処理が必要になり、決算業務には会計に関する専門的な知識が必要です。

現在、経理ができる人材は深刻な人手不足となっており、さらに決算業務まで対応できる人となるとより限定されてしまいます。そのため、法人の決算だけを税理士に依頼できないかと考えるケースもあるのではないでしょうか。しかし、税理士に依頼すると必ず費用が発生するため、決算を依頼することでどのくらいの費用がかかるのか不安になるケースも少なくありません。

そこで今回は、法人が決算のみを税理士に依頼した場合の費用や依頼によって得られるメリットなどについて解説します。

Youtubeでも様々な内容を解説しています!Youtube

法人の決算のみを税理士に依頼できる?

日本では、多くの法人が税理士と顧問契約を結んでいるとされています。その理由の一つには、法人の決算は非常に複雑であることが挙げられます。多くの企業では、手間をかけず、正しく決算を行うために、税理士と顧問契約を結んでいるのです。

では、顧問契約を結んでいない法人は、税理士に決算のみ依頼することはできないのでしょうか?

法人の決算のみを単発で依頼することは可能

顧問契約を結んでいない場合でも、単発契約を結び、決算業務のみを税理士に依頼することができます。

税理士によっては、顧問契約を結んでいる顧客の決算業務しか引き受けていないケースもありますが、顧問契約を結ばない法人の依頼にも対応している税理士も少なくありません。そのような税理士の場合、決算や税務調査など、顧客のニーズに応じ、求められる業務だけを依頼することが可能です。

決算のみを税理士に依頼する場合の流れ

決算だけを税理士に依頼する場合、単発契約に対応している税理士を探し、該当期間分の以下のような書類やデータを送付するのが基本です。

・総勘定元帳

・仕訳帳

・試算表

・売掛帳

・買掛帳

・賃金台帳

・領収書

・残高証明書

・賃貸借契約書

・リース契約書

・借入金契約書

法人が決算を税理士に依頼する場合の費用は?

顧問契約を結んでいない法人でも、決算は税理士に依頼しているケースは多く見られます。特に、中小規模の法人の場合、記帳など、自社で行える部分は自社で行い、決算など、難易度の高い業務だけを税理士に依頼するケースは少なくありません。

では、法人が決算を税理士に依頼する場合、どのくらいの費用がかかるのでしょうか。

決算のみを税理士に依頼した場合の費用

顧問契約を結ばず、決算だけを税理士に依頼した場合の費用は、15万~30万円程度が目安になるとされています。ただし、事業規模や売上高が大きく、従業員数も多い法人の場合、さらに費用が上乗せされる可能性があります。

決算のみを税理士に依頼する場合は、決算のもととなる帳簿や会計データは自社で準備をしておくことが前提です。税理士は決算業務のみを行うため、作業量が抑えられ、税理士に支払う費用も低くなります。

顧問税理士に決算を依頼する場合の費用

顧問税理士契約を締結している場合でも、決算の費用は別に設定されているケースがほとんどです。顧問契約を結んでいる税理士に決算業務を依頼する場合は、顧問料の数か月分としているケースが多く見られます。顧問料は、企業規模や税理士の訪問回数などによって変わりますが、月々1万~10万円程度と幅があります。例えば、毎月顧問料が3万円、決算料が月額顧問料の4か月だったと仮定した場合、決算料は12万円となります。

法人が決算のみを税理士に依頼するメリットとは

法人の決算のみを税理士に依頼することは可能です。顧問契約を結ばず、税理士に決算のみを依頼する場合、次のようなメリットがあります。

税理士に支払う費用を抑えられる

法人が税理士と顧問契約を結ぶ場合、毎月、顧問料を支払う必要があります。また、決算業務を依頼する際には、顧問料とは別に、決算業務のための費用が発生するケースが一般的です。

顧問税理士契約を結ばない場合、顧問契約を結んでいる場合に比べると決算業務を依頼する際の費用は高くなります。しかしながら、毎月支払う顧問契約料+決算の費用を考えれば、総合的に支払う費用は、決算だけを依頼するケースの方が低くなるでしょう。

税理士に支払う費用を抑えられる点は、顧問契約を結ばず、決算のみを依頼する大きなメリットだといえます。

手間をかけずに正確な決算書を作成できる

決算業務では、賃借対照表や損益計算書など、さまざまな書類を作成しなければなりません。そのため、決算が近づくと決算業務に膨大な時間と手間を費やす状況が発生します。さらに、決算書類を作成するにあたっては、正確性が求められます。決算書に誤りが見られる場合、決算書をもとに作成する申告書も正しいものにはなりません。

決算が正しくなかったために納税額が不足すれば、税務調査で指摘を受け、追徴課税が課される恐れがあります。反対に、決算の誤りによって納税額が多すぎた場合、不要な税金まで負担することとなり、会社の成長を阻害してしまう可能性もあるでしょう。

税理士に決算を依頼すれば、手間をかけることなく、正確性の高い決算書を作成することが可能です。正確な決算書をもとに申告を行えば税務署から指摘を受けるリスクも低く、税務調査や追徴課税のリスクも抑えられます。

税理士に決算を依頼すると、税理士に支払う費用は発生しますが、従業員の時間外労働が減り、残業代の負担が減少します。さらに、従業員の負担を軽減できれば退職のリスクも抑えられるため、退職者の補填に伴う新たな人材採用費用も抑えることが可能です。

本業に集中できる

決算書類の作成には専門的な知識が欠かせません。会計や税務などの知識がない人が、決算書を作成しようとすると、分からないことを調べながら進めるため、膨大な時間がかかります。決算業務に時間をとられることで、本業に費やせる時間が減ってしまうこともあるでしょう。

税理士に決算を依頼すれば、決算書を作成する時間や手間がかからないため、その分本業に集中することができます。また、決算書を作成するというストレスやプレッシャーから解放されるため、精神的な負担も軽減されるでしょう。

税理士との定期的なやり取りが最小限で済む

顧問税理士契約を締結すると、定期的に税務チェックのため、税理士との打ち合わせが発生します。業務が忙しく、なかなか税理士との打ち合わせの時間を確保できない場合やそれほど頻繁に相談をする必要がない場合もあるかもしれません。そのようなケースでは、顧問契約による定期的な税理士との打ち合わせが負担になる場合もあります。

顧問契約を結ばず、決算だけを税理士に依頼する場合、税理士とのやり取りが発生するのは決算時期だけに限定されます。税理士に渡したデータや帳簿などに不明点があれば問い合わせは入るものの、定期的な打ち合わせに比べればその数は少なく、税理士とのやり取りを煩わしく感じることは少ないでしょう。

法人が決算のみを税理士に依頼するデメリットもある?

法人が決算だけを税理士に依頼することで得られるメリットについて紹介してきましたが、実は、顧問契約を結ばず、決算のみを税理士に依頼する場合のデメリットもあります。

繰り返しになりますが、法人の多くは、税理士と顧問契約を締結しています。それは、税理士に税務面でのサポートを受けない場合、次のようなデメリットが生じる可能性が高いからです。

節税対策についてのアドバイスをもらえない

節税とは、合法的に納税額を低く抑えるテクニックのことです。税理士は、税法を熟知しており、顧問契約を結んでいる場合などは、法人の事業内容や規模、事業ステージに合わせた適切な節税対策のアドバイスができます。しかし、節税対策は事業年度が終了するまでに実施しなければならないものが多く、事業年度終了間近の決算のタイミングで実施できる節税対策は多くありません。また、決算業務だけを依頼する場合、短い期間の中で法人全体の事業内容や取引内容を把握することはできないこともあり、自社に適した節税のアドバイスを受けられないケースがほとんどです。

税理士から節税についてのアドバイスを受けていれば、納税額を抑えられる可能性もありますが、決算だけの依頼では適切な節税アドバイスは期待できません。顧問契約を締結すれば、月々の顧問料が発生するため、税理士に支払う費用は高くなります。しかし、自社に合った節税方法の提案を受けることで、納税額を抑えられる可能性があるのも事実です。節税のアドバイスに従うことで節税できた金額で、税理士に支払う費用を賄えるケースもあるかもしれません。

急な税務調査が入ったときに対応が間に合わない場合がある

税理士によっては、顧問契約を締結していない顧客から税務調査の依頼があっても、対応していないケースがあります。なぜなら、顧問契約を結んでいない場合、事業の状況を把握していないため、調査期間までの時間に十分なサポートを実施できない可能性があるからです。

税務調査が入る場合、原則として税務署から事前通知がなされます。事前通知とは、税務調査に入る旨や調査対象の税目などを伝えられる税務署からの電話連絡のことです。事前通知は、税務調査を実施する2~3週間程度前に行われることが多く、この間、納税者は税務調査に備えた準備を行わなければなりません。顧問税理士がいれば、顧問税理士に対応を依頼できますが、顧問税理士がいない場合はこの間に税務調査に対応できる税理士を探すか、自社で対応するかという選択に迫られます。

税理士法人松本では、顧問契約を結んでいない法人からの税務調査の依頼にもお応えしています。しかし、そもそも決算書類や申告書類が正しいものであれば税務調査の対象となるリスクも低くなり、万が一、税務調査の対象となった場合でも問題なく終了するケースがほとんどです。そのため、税務調査のリスクを最小限に抑えたいという場合は、日頃から税理士のアドバイスを受けられる顧問契約を検討した方が良いかもしれません。

資金調達のサポートが受けられない

資金繰りに悩む場合や事業拡大のために資金を調達したい場合などに、融資を申請する法人は多いはずです。しかし、融資は返済が必要であり、金融機関では返済の見込みが低い法人への融資は見送るケースが多くなります。

融資の審査では、決算書や事業計画書の提出が必要です。金融機関では事業計画書の内容を確認し、事業の採算性をチェックしたうえで融資を行います。事業計画書の精度が低く、事業の将来性に疑問が残る場合、審査には通過しない可能性があります。資金調達のサポート経験を豊富に持つ税理士の場合、決算だけでなく、事業計画書の作成についてのサポートも受けられるため、融資の際、審査に通りやすくなるでしょう。さらに、助成金や補助金などについての情報を把握しているケースも多く、顧問契約を結んでいれば適切なアドバイスを受けることが可能です。

しかし、決算だけを依頼する場合、資金調達に関するサポートを受けることはできません。

決算書が完成するまで正確な業績を把握できない

決算書の作成を税理士に依頼する場合、決算期が近づくまで、自社の損益や財務状況を正確に把握できない可能性があります。間違った処理をしていても、税理士に決算を依頼するまで間違いに気が付く人がいないため、状況を誤認してしまう恐れもあるのです。正確な損益や財務状況を把握できなければ、的確な経営判断を行うことができません。気が付かないうちにキャッシュフローが減少し、資金繰りに窮してしまうケースもあるでしょう。

日頃から税理士と打ち合わせをしていれば、税理士が試算表などを作成し、損益情報を把握しているため、状況に応じて設備投資や人材採用など、自社に合った的確な施策を実施することが可能です。

まとめ

法人の決算には、非常に複雑な作業が求められます。そのため、現状では多くの企業が税理士に決算を依頼している状況です。顧問契約を結んでいない場合でも単発依頼に対応している税理士であれば、決算のみを依頼することができます。税理士費用の負担を軽減したいという場合であれば、顧問契約を結ばず、決算だけを依頼する形でも良いでしょう。

しかし、顧問契約を結んだ場合、税理士は法人全体の状況を把握できるため、適切な節税対策のアドバイスを受けることも可能です。自社に合った適切な節税対策を実施すれば、納税額を抑えることができるため、顧問契約を結ぶと税理士に支払う費用は多くなるものの、手元に残せる額は増える可能性もあります。

決算のみを税理士に依頼することは可能ですが、費用面も含め、さまざまな側面から熟考したうえで、顧問契約を結ぶか、単発契約を結ぶかを検討した方が良いでしょう。


-免責事項-

当ブログのコンテンツ・情報について、できる限り正確な情報を提供するように努めておりますが、正確性や安全性を保証するものではありません。内容は記事作成時点の法律に基づいています。当サイトに掲載された内容によって生じた損害等の一切の責任を負いかねますのでご了承ください。

この記事の監修者

松本 崇宏

税理士法人松本 代表税理士

松本 崇宏(まつもと たかひろ)

登録者16万人以上のYouTubeチャンネル「税理士法人松本〜税金の裏のウラ〜」を運営。 代表を務める税理士法人松本では、これまでに累計5,000件を超える税務調査のご相談・対応実績があり、国税局査察部、税務署長歴任者・税務調査一筋の現場に強い国税出身のOB税理士が現在14名常駐。
国税当局側の視点を踏まえて、お客様の立場を尊重し、税務調査でお悩みのお客様に適切かつ迅速に対応。また、調査前・調査中に関わらず、あらゆる状況から最善のサポートが可能。
なお、調査結果が追徴税額なしとなる実績も多数取得。税務調査における専門性・経験則・折衝力から最善の結果を導き、お客様の笑顔とありがとうを励みに成長し続けている。

税理士法人松本は国税OB・元税務署長が所属する税理士法人です。

全国からの税務調査相談実績 年間1,000件以上

  • 現在、税務調査が入っているので困っている
  • 過去分からサポートしてくれる税理士に依頼したい
  • 税務調査に強い税理士に変更したい
  • 自分では対応できないので、税理士に依頼したい
といったお悩みを抱えている方は、まずは初回電話無料相談をご利用ください。
税務調査の専門家が対応させていただきます。

税理士法人松本の強み

  • 税務署目線、税理士目線、お客様目線の三方良しの考え方でアドバイス
  • 過去の無申告分から現在まですべて対応可能
  • 査察案件から税務署案件までの経験と実績が豊富にあります
  • 顧問税理士がさじを投げた案件も途中から対応できます

30秒で完了かんたん税務調査リスク診断

あわせて読みたい記事

税務調査ブログをもっと見る

税務調査は対応次第で結果が大きく変わります!

税務調査お悩み解決しませんか?
いますぐ電話1本で相談できます!

専門家があなたの税務調査に関する不安を一つ一つ丁寧に解決。
初回有料相談は返金保証付きで、どんな小さなご相談も全国から承ります。

税理士法人松本代表税理士 松本 崇宏

30秒で完了かんたん税務調査リスク診断