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医療法人も、株式会社などの法人と同様、さまざまな税金の納付義務があります。個人事業主と医療法人では納めるべき税金が変わってくるため、医療法人を設立したばかりの場合やこれから医療法人の設立を計画している場合などは、課される税金についてしっかり把握しておくことが大切です。
今回は、医療法人に課される税金の種類とそれぞれの納付方法や納付期限などについて解説します。
目次
医療法人も他の法人と同じように、税金の納付義務があります。医療法人に課される主な税金をご紹介します。
法人税は、法人の所得に対して課される税金です。医療法人も株式会社などの会社と同じく、法人税の納税義務があります。法人税の税率は法人の種類や資本金の額、所得額によって変わります。
医療法人の場合、令和7年4月1日以降の法人税の税率は、所得額が年800万円以下の部分については15%、800万円を超える部分については23.2%です。
ただし、医療法人の形態によっては法人税の優遇措置を受けられるケースがあります。税金の優遇措置が適用される医療法人は、「特定医療法人」、「社会医療法人」、「オープン病院事業法人」、「福祉病院事業法人」の4つです。
特定医療法人の場合、年800万円を超える部分についての税率が19%に軽減されます。また、公益法人として扱われる社会医療法人は、社会保険診療に係る収益については法人税の課税対象外となる一方、駐車場賃貸等の収益事業は課税対象となります。
また、オープン病院事業法人、福祉病院事業法人については、要件を満たした場合、法人税は課税されません。
法人税は、法人の所得に対して課される税金であるため、収益が赤字になった場合、所得額はマイナスになるため法人税の納税義務は生じません。
法人住民税も、法人に課される税金の一つです。法人住民税とは、事業所をもつ自治体に納める税金であり、医療法人も地域の構成員であることから法人住民税の納税義務があります。
法人住民税には都道府県民税と市町村民税があり、それぞれ、均等割と法人割の2つで構成されています。均等割は、資本金の額と従業員数で負担すべき税金の額が変わってきますが、医療法人の場合、資本金という概念はないため、従業員数で判断をします。医療法人の法人住民税の均等割額は、都道府県民税が2万円、市町村民税は従業員数が50人を超える場合12万円、従業員数が50人以下の場合は5万円です。
また、法人税割は、法人税の額によって納付すべき税額が変わります。都道府県民税については法人税額の1%、市町村民税については法人税額の6%の納付が必要です。
法人税は収益が赤字の場合、納付する必要はありません。しかし、法人住民税には所得に関わらず納付が必要な均等割があるため、たとえ赤字であっても均等割額については納税が必要な点に注意が必要です。
医療法人も、上下水道や道路といった社会インフラを利用しています。法人事業税は、利用者がこれらの行政サービスの費用を負担する意味合いから課される税金です。ただし、法人事業税は法人住民税のように、都道府県と市町村のそれぞれに納める必要はなく、都道府県のみに納付する税金となっています。
法人事業税は、法人の業種によって付加価値割、資本割、所得割、収入割の4種類に区分されています。医療法人に課される法人事業税は、所得割のみです。また、法人事業税の対象となる所得には社会保険診療の所得は含まれません。
所得割の税率は、所得額によって以下のように変わります。
・年400万円以下の部分については3.5%
・年400万円を超え年800万円以下の部分については5.3%
・年800万円を超える部分については7.0%
消費税は、商品やサービスの提供といった取引に対して課される税金で、消費者が負担し、事業者が納付するものです。医療法人にも消費税の納税義務がありますが、社会保険医療は、消費税の課税対象外となっています。そのため、社会保険診療のみを行っているようであれば、消費税の納税義務は生じません。
しかし、保険診療ではない自費診療、公費以外で受ける任意の予防接種、健康診断、室料の差額、文書料として受け取った収入などには消費税が課されます。ただし、消費税の納税義務は基準期間・特定期間における課税売上高が1,000万円を超えなければ、納税の義務が発生しません。
固定資産税は、土地や家屋、償却資産などの固定資産の所有者に対して課される地方税です。医療法人の場合、病院や診療所などの建物、土地、医療機器、備品などが固定資産に該当します。
固定資産の対象は、大きく、土地、建物、償却資産の3つに分けられます。償却資産とは、土地や建物以外の事業用に使用する目的で保有する資産のことを指します。耐用年数が1年以上、または取得価額が10万円以上のものは償却資産として扱わなければなりません。
したがって、医療機関の場合、以下のようなものが償却資産として扱われ、固定資産税の対象となります。
・医療機器
・検査機器
・ベッド
・待合室用のソファー
・冷暖房設備
・看板
・キャビネット
・複合機
・パソコン
・デスク
・チェア
・フェンス
・門
不動産取得税は、土地や家屋の購入、贈与などによって不動産を取得した場合に課される税金です。病院やクリニックを建設する土地、病院やクリニックとして利用する建物などを取得した場合は、不動産取得税を納税しなければなりません。不動産の取得とは、不動産の所有権の取得であり、お金を支払ったかどうかに関わらず、不動産の所有権を取得した場合は不動産取得税の納税が必要となる点に注意が必要です。
不動産取得税の額は、不動産の評価額×税率で求めることができます。不動産取得税の税率は4%ですが、土地に関しては軽減税率として3%が適用されます。
給与や報酬などの支給者は、支給する額から一定額を差し引き、従業員に代わって所得税を納めなければならない仕組みがあります。この制度を源泉徴収と言い、所得税を源泉徴収して国に納付する義務がある事業者を源泉徴収義務者と呼びます。
医療法人も源泉徴収義務者に該当します。そのため、従業員に支払う毎月の給与や賞与から所得税を天引きし、国に納税をしなければなりません。
医療法人にはさまざまな税金の納付義務がありますが、それぞれ、納付方法や納付期限が変わってきます。医療法人の税金の納付方法についてご説明します。
法人は、事業年度終了日の翌日から2ヶ月以内に申告し、法人税の納税を行わなければなりません。例えば、3月31日が事業年度終了日である場合は、5月30日までに税務署に申告書を提出し、税金を納付する必要があります。
税務署の窓口で現金納付をする方法のほか、金融機関で納付する方法、クレジットカードで納付する方法、e-Taxでダイレクト納付する方法、インターネットバンキングを利用する方法などがあります。
法人住民税も、事業年度終了日の翌日から2ヶ月以内の納付が必要です。法人住民税は、自治体によって納付方法が異なるものの、市役所の窓口や金融機関の窓口で現金納付をすることができます。そのほか、地方税共同機構が運営する地方税ポータルシステム(eLTAX)を使い、インターネットバンキングやダイレクト方式、クレジットカードなどによって納付することが可能です。
法人事業税も、法人税、法人住民税と同様、事業年度終了日の翌日から2ヶ月以内の納付が必要です。法人事業税は、自治体が指定する金融機関または都道府県税事務所で現金納付ができます。また、eLTAXで電子申告を行う場合、インターネットバンキングやダイレクト方式、クレジットカードなどによって納付ができます。
消費税も、事業年度終了日の翌日から2ヶ月以内の納付が必要な税金です。ただし、消費税は特例として3ヶ月または1ヶ月ごとに区分して納税することができ、その場合は、課税期間の終了日から2ヶ月以内に申告と納税を行う必要があります。
消費税は、税務署や金融機関で現金納付をする方法のほか、金融機関の口座からの振替納税、e-Taxでのダイレクト納付、インターネットバンキング、クレジットカード、コンビニ納付などが可能です。
固定資産税は、各市区町村(東京特別区の場合は都税事務所)が定める期限までに納付しなければなりません。多くの場合は4月~6月ごろに納税通知書が届きます。年に4回に分割して納付することもできますが、第Ⅰ期の納付時に全額を納付することも可能です。
固定資産税の納付方法は、金融機関やコンビニエンスストアに納付書を持参し、現金納付をする方法のほか、クレジットカード、インターネットバンキング、口座振替などの利用が可能です。
不動産取得税は、不動産を管轄する都道府県から送付される納税書を使って納付します。納付期限は納付書に記載がありますが、不動産取得後4~6ヶ月程度してから通知書が届くケースが多いようです。
不動産取得税は、金融機関の窓口で現金納付やコンビニでの納付、eLTAXを通じたダイレクト納付やインターネットバンキング、クレジットカード納付などが可能です。
源泉所得税の納付期限は、原則として給与や賞与などを支給した月の翌月10日までです。ただし、給与を支給する従業員の数が10人未満である場合は、事前に「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を税務署に提出していれば、源泉所得税の納付を年に2回に軽減することができます。
源泉所得税の納付方法は、税務署や金融機関の窓口で現金納付をする方法、コンビニ納付、クレジットカード納付、e-Taxによる電子納税などがあります。
それぞれの税金には納付期限が定められており、納付期限までに税金を納めなかった場合は次のようなペナルティが科されます。
無申告加算税とは、期限までに申告書を提出し、法人税や消費税の納税をしなかった場合に課される加算税です。無申告加算税の税率は、納めるべき税金の額によって、次のように変わってきます。
・50万円以下の部分については15%
・50万円超300万円以下の部分については20%
・300万円を超える部分については30%
不足分の税額に無申告加算税の分も加えた税金の納付が求められるため、期限までに納税しなかった場合、本来よりも多額の税金を納めなければならなくなります。
不申告加算金とは、地方税について納税期限までに納付をしなかった場合に科されるペナルティです。法人事業税を期限までに納めなかった場合、不申告加算金を加えた額の納税が求められます。不申告加算金の額も、無申告加算税と同様、決定税額の15%~30%となります。
期日までに源泉所得税の納付を行わなかった場合に科されるペナルティが不納付加算税です。不納付加算税の額は、納付税額の10%です。
延滞税とは、税金の納付が遅れた場合に加算される税金です。納付期限の翌日から納付する日までの日数に応じて課される性質があり、納付が遅れれば遅れるほど延滞税の額は高くなります。
延滞税の税率は、納期限の翌日から2ヶ月以内の場合は年2.4%、それ以降は年8.7%です。(令和3年1月1日以降の場合)
地方税を期限までに納めなかった場合は、延滞金の納付が求められます。延滞金の割合は、延滞税と同じですが、延滞税は納期限の翌日から2ヶ月を機に割合が変わるものの、延滞金は納期限の翌日から1ヶ月を越えると割合が高くなる点に注意が必要です。
所得を隠蔽したり、書類を改ざんしたりするなど、意図的に税金を納めないよう不正を行ったことが発覚した場合は、無申告加算税や不納付加算税に代えて、より税率の重い重加算税が課されます。重加算税の税率は、無申告加算税に代わる場合は40%、不納付加算税に代わる場合は35%です。
医療法人に課される税金について説明してきました。医療法人の種類によって課される税金は変わってくる可能性があるものの、一般的には、法人税や法人住民税、法人事業税、源泉所得税などの納税が必要です。
期限までに税金を納めなかった場合は、無申告加算税や不納付加算税、延滞税などのペナルティが科されます。不要な税負担を抑えるためにも、医療法人として課される税金と納付期限をしっかり確認し、期限までに正しく納税することが大切です。
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この記事の監修者
税理士法人松本 代表税理士
松本 崇宏(まつもと たかひろ)
登録者16万人以上のYouTubeチャンネル「税理士法人松本〜税金の裏のウラ〜」を運営。 代表を務める税理士法人松本では、これまでに累計5,000件を超える税務調査のご相談・対応実績があり、国税局査察部、税務署長歴任者・税務調査一筋の現場に強い国税出身のOB税理士が現在14名常駐。国税当局側の視点を踏まえて、お客様の立場を尊重し、税務調査でお悩みのお客様に適切かつ迅速に対応。また、調査前・調査中に関わらず、あらゆる状況から最善のサポートが可能。なお、調査結果が追徴税額なしとなる実績も多数取得。税務調査における専門性・経験則・折衝力から最善の結果を導き、お客様の笑顔とありがとうを励みに成長し続けている。
税理士法人松本は国税OB・元税務署長が所属する税理士法人です。
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