2025.11.20
  • 税務調査

認定NPO法人に寄附をした場合の税制優遇措置とみなし寄附金制度

読了目安時間:約 6分

NPO法人の中でも、所轄庁の審査を経て認定を受けた認定NPO法人には、寄附に関する税制優遇措置が用意されています。NPO法人にとって寄附は貴重な収入源であり、認定NPO法人となった場合、一般的なNPO法人に比べ、寄附を集めやすくなるといったメリットを得られます。では、認定NPO法人はなぜ、寄附を集めやすくなるのでしょうか。

今回は、認定NPO法人に寄附をした場合に得られるメリットやみなし寄附金制度について解説します。

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NPO法人に寄附をした時の税制優遇措置

寄附とは、社会貢献活動を行っている団体や募金活動を実施している組織に金銭や物品などを、無償で提供する行為のことです。寄附をした場合、寄附をした個人や法人に税制上の優遇措置が適用される場合があります。

個人と法人では、適用される優遇措置が変わってきます。また、認定NPO法人に寄附をした場合と一般のNPO法人に寄附をした場合でも、税制上の対応は異なります。NPO法人を運営するうえでは、寄附に係る税制優遇措置をしっかり把握しておくことが大切です。

NPO法人と認定NPO法人

NPO法人に寄附をした場合の税制優遇措置を理解するためには、まず、NPO法人と認定NPO法人の違いから確認しておく必要があります。

認定NPO法人とは

認定NPO法人とは、一定の基準を満たす法人として所轄庁の認定を受けたNPO法人のことです。認定NPO法人に求められる要件は次の8つです。

1.パブリック・サポート・テスト(PST)に適合すること

2.事業活動において、共益的な活動の占める割合が、50%未満であること

3.運営組織及び経理が適切であること

4.事業活動の内容が適切であること

5.情報公開を適切に行っていること

6.事業報告書等を所轄庁に提出していること

7.法令違反、不正の行為、公益に反する事実がないこと

8.設立の日から1年を超える期間が経過していること

認定NPO法人の認定期間は5年間であり、認定NPO法人になると、寄附を行った人に対する税制優遇措置やみなし寄附金制度などが適用されます。

パブリック・サポート・テスト

パブリック・サポート・テスト(PST)とは、市民から広く支援を受けているかどうかを判断するための基準です。PSTの判定は「相対値基準」、「絶対値基準」、「条例個別指定」のうちいずれかの基準を選択することができます。

相対値基準では、実績判定期間における経常収入金額のうち、寄附金等による収入金額の割合が5分の1以上であることが求められます。

絶対値基準では、実績判定期間内の各事業年度中の寄附金額の総額が3,000円以上である寄附者の数が、年平均100人以上であることが求められます。

条例個別指定では、認定NPO法人としての認定申請書の提出前日までに、事務所のある都道府県または市区町村の条例により、個人住民税の寄附金税額控除の対象となる法人として、個別に指定を受けていることが求められます。

特例認定NPO法人

特例認定NPO法人制度とは、運営組織と事業活動が適正であり、かつ特定非営利活動の健全な発展の基盤があり、公益の増進に見込まれるNPO法人を認定する制度です。設立から5年以内のNPO法人を対象とした制度であり、特例認定NPO法人制度では、PSTの要件が免除されます。

認定期間は3年間ですが、更新制度はないため、特例認定期間を経て認定NPO法人を目指すこととなります。特例認定NPO法人の場合、認定NPO法人とは異なるものの寄附に関する優遇制度が用意されています。ただし、特例認定NPO法人の場合、相続税に関する優遇措置、みなし寄附金制度は適用されません。

認定NPO法人になるメリットとは

認定NPO法人になった場合、以下のようなメリットを得られます。

寄附者の税金優遇措置がある

認定NPO法人になった場合、寄附をする個人や法人の税金を軽減する優遇措置があるため、寄附を集めやすくなります。そもそも、認定NPO法人制度は、NPO法人への寄附を促し、NPO法人の活動を支援するために設けられた制度です。

認定NPO法人となった場合、寄附者にとっては税金の負担が軽くなるというメリットがあるため、寄附を行いやすくなると期待できます。

法人税の負担を軽減できる

NPO法人でも、法人税の納税が求められます。NPO法人の場合、特定非営利活動に係る事業については課税されず、収益事業のみが法人税の課税対象となります。しかし、認定NPO法人の場合、後述する「みなし寄附金」制度が適用されます。みなし寄附金制度を適用すると、収益事業の課税所得額を圧縮でき、法人税の納税負担を軽減することが可能です。

社会的信頼が向上する

認定NPO法人になるためには、厳しい認定要件を満たさなければなりません。そのため、認定は、適切に組織を運営していることの証明ともなり、社会的信頼を向上させることができるでしょう。また、理事やスタッフは社会的責任を意識しながらNPO法人を運営することとなるため、組織運営が強化され、安定的に事業を行えるようになります。

認定NPO法人に対する寄附金の税制優遇措置とは

認定NPO法人に対して寄附を行った個人や法人には、税負担を軽減する優遇措置が適用されます。それぞれのケースについてご説明します。

個人が認定NPO法人に寄附をした場合

個人が認定NPO法人に対し、特定非営利活動に係る事業に寄附を行った場合、特定寄附金として扱われます。個人の場合、所得税、個人住民税、相続税の優遇措置を受けられます。

所得税について

所得税については、所得控除または税額控除のいずれかの控除を選択し、適用させることができます。

所得控除(寄附金控除)

寄附金の合計額から2,000円を引いた額を、その年分の総所得金額から控除することができる制度です。

特定寄附金の額の合計額-2,000円=寄附金控除額

ただし、特定寄附金の額の合計額は、所得金額の40%相当額が限度額となります。

所得控除を受ける場合、課税対象となる所得額が低くなるため、納税すべき所得税の額が軽減されます。

税額控除

寄附金の合計額から2,000円を差し引いた金額の40%相当額を、所得税額から控除できる制度です。

(特定寄附金の額の合計額-2,000円)×40%=税額控除額

この場合も、特定寄附金の額の合計額は所得金額の40%相当額が限度となります。また、税額控除額については所得税額の25%相当額が上限となっています。

所得控除と税額控除は似た言葉ですが、大きな違いがあります。まず、所得控除は所得税額を算出する前の課税所得額を軽減するものです。一方、税額控除は、算出された所得税額から直接、控除額を差し引きます。一般的には、税率をかける前の課税所得額から控除する所得控除に対し、納税する所得税額から控除する税額控除の方が、より大きな節税効果を得られます。

寄附金の所得控除または税額控除を受ける際の手続き

所得税の所得控除または税額控除を受けるためには、確定申告を行わなければなりません。その際には、寄附をした認定NPO法人が発行した、寄附金額や受領年月日が記載された受領証の提示または添付が必要です。

個人住民税について

認定NPOに寄附を行った寄附のうち、都道府県や市区町村が条例で個別に指定した寄附金については、個人住民税の控除を受けることもできます。ただし、認定NPO法人に対する寄附金が個人住民税の控除対象となるかは、寄附をした人が居住する都道府県や市区町村によって変わってくる点に注意しなければなりません。

個人住民税については、以下の式で算出した金額が税額控除額となります。

(寄附金-2,000円)×控除割合=税額控除額

ただし、寄附金の合計は、総所得金額等の30%相当額が限度となります。また、条例で指定している寄附金の控除割合は、都道府県が指定した寄附金の場合は4%、市区町村が指定した寄附金の場合は6%、双方が指定した寄附金の場合は10%です。

寄附金の税額控除を受ける際の手続き

個人住民税控除の適用を受ける場合は、所得税の確定申告によって対応できるため、特別な対応は不要です。しかし、所得税の控除は受けず、個人住民税の寄附金控除だけを希望する場合には、所得税の申告をせず、住所地の市区町村に個人住民税の申告を行ってもかまいません。

相続税について

相続や遺贈によって財産を取得した人が、相続税の申告期限までに認定NPO法人に対し、特定非営利活動に係る事業に係る事業に寄附をした場合、寄附をした財産の価額は、相続・遺贈にかかる相続税の課税価格の計算の基礎に算入されません。つまり、認定NPO法人への寄附については、相続税の課税対象とはならないということです。ただし、寄附を受けた認定NPO法人が、寄附のあった日から2年以内に認定法人に該当しなくなった場合、寄附によって取得した財産を特定非営利活動に係る事業に使用していない場合は、適用されません。

相続税の優遇措置を適用するための手続き

相続税の申告書に、この措置の適用を受ける旨を記載し、寄附をした認定NPO法人が発行する証明書の添付が必要になります。証明書には、寄附が特定非営利活動に係る事業に関連する寄附である旨、寄附を受けた年月日、財産の明細、財産の使用目的が記載されていなければなりません。

法人が認定NPO法人に寄附をした場合

法人が認定NPOに寄附を行った場合、一般寄附金の損金算入額とは別に、特定公益増進法人に対する寄附金の額と合わせ、特別損金算入限度額の範囲内で損金算入が認められます。

寄附金額の合計が、特別損金算入限度額を超える場合は、超える部分の金額を一般寄附金の額と合わせて、一般寄附金の損金算入限度額の範囲内で損金算入を行うことも可能です。

一般寄附金の損金算入限度額は次の式で計算します。

(資本金等の額×0.25%+所得金額×2.5%)×1/4

特別損金算入限度額は次の式で計算します。

(資本金等の額×0.375%+所得金額×6.25%×1/2

ただし、資本のない法人の場合、一般寄附金の損金算入限度額は、次の式で算出する額となります。

所得金額×1.25%

また、特別損金算入限度額については、次の式で算出します。

所得金額×6.25%

寄附金の損金算入を適用させるための手続き

寄附金の損金算入措置の適用を受けるためには、寄附をした事業年度の確定申告書に寄付額を記載するとともに明細書を添付しなければなりません。またその際、寄附金が認定NPO法人の行う特定非営利活動に係る事業に関連する寄附金であることを証明する認定NPO法人が発行した書類の保存が必要です。

法人が一般のNPO法人に寄附した場合

法人の場合、認定NPO法人だけでなく認定を受けていないNPO法人に寄附をした場合でも、損金算入限度額の範囲内での損金算入が認められています。この場合、損金算入限度額は、資本金のある場合とない場合によって変わってきます。

資本金のある法人の場合、損金算入限度額は次の計算で算出できます。

(期末資本金の額×0.25%+所得金額×2.5%)×1/4

資本金がない法人の場合の損金算入限度額は、次の式で算出します。

所得金額×1.25%

個人の場合は、一般のNPO法人に寄附をしても税制面での優遇措置を受けることはできません。

認定NPO法人のみなし寄附金制度とは

ここまで、認定NPO法人やNPO法人に寄附をした個人・法人に用意されている税制優遇措置をご紹介してきました。寄附者に対する税制優遇措置があることで、NPO法人は寄附を得やすくなるというメリットを得られます。加えて、認定NPO法人になると、みなし寄附金制度の適用により、NPO法人自体が税制上の優遇措置受けることが可能です。

認定NPO法人も、特定非営利活動に係る事業以外に収益事業を行うことが認められています。収益事業によって得られた収益については、法人税の課税対象となり、収益の額に応じた法人税の納税が必要です。

しかし、収益事業で得た収益を収益事業以外の事業で特定非営利活動に係る事業のために支出した場合、支出した金額は、収益事業に係る寄附金としてみなされ、損金算入が認められます。損金算入が認められれば、法人税の課税対象外となるため、法人税の納税額を軽減することが可能です。この制度をみなし寄附金制度と言います。

みなし寄附金の損金算入限度額は、所得金額の50%または200万円のいずれか多い額までの範囲となります。

まとめ

NPO法人は、社会貢献活動を主な事業としている非営利団体であり、寄附が活動資金として重要な役割を占めます。そこで、NPO法人の活動を活発化させるため、一定の要件を満たしたNPO法人への寄附者に対して税制面での優遇を行う制度が用意されています。それが認定NPO法人制度です。認定NPO法人に寄附を行った個人や法人は、所得税や個人住民税、相続税、法人税の優遇措置を受けることが可能です。

また、認定NPO法人には、NPO法人自体の法人税の優遇措置であるみなし寄附金制度を適用させることもできます。

認定NPO法人になるには厳しい要件を満たす必要がありますが、寄附金を集めやすく、さらに法人税の納税負担を軽減できるといった大きなメリットがあります。持続的な活動のために、認定取得も検討してみてはいかがでしょうか。


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この記事の監修者

松本 崇宏

税理士法人松本 代表税理士

松本 崇宏(まつもと たかひろ)

登録者16万人以上のYouTubeチャンネル「税理士法人松本〜税金の裏のウラ〜」を運営。 代表を務める税理士法人松本では、これまでに累計5,000件を超える税務調査のご相談・対応実績があり、国税局査察部、税務署長歴任者・税務調査一筋の現場に強い国税出身のOB税理士が現在14名常駐。
国税当局側の視点を踏まえて、お客様の立場を尊重し、税務調査でお悩みのお客様に適切かつ迅速に対応。また、調査前・調査中に関わらず、あらゆる状況から最善のサポートが可能。
なお、調査結果が追徴税額なしとなる実績も多数取得。税務調査における専門性・経験則・折衝力から最善の結果を導き、お客様の笑顔とありがとうを励みに成長し続けている。

税理士法人松本は国税OB・元税務署長が所属する税理士法人です。

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