2025.12.3
  • 税務調査

個人事業主が確定申告で経費にできる費用は?具体例や勘定科目を紹介

読了目安時間:約 6分

個人事業主として事業を営む場合、確定申告を行わなければなりません。確定申告は1年間の所得を確定させ、所得に課される所得税額の計算をし、納税をする一連の手続きのことです。所得税は、収入から経費を差し引いた所得額に税率をかけて算出します。したがって、経費を漏れなく計上すれば、収入から差し引ける額が大きくなり、所得税の額を圧縮することが可能です。しかし、万が一、経費としては扱えないものを経費に計上した場合、不正に税金を免れようとしていると判断され、税務調査の対象になる恐れがあります。

では、個人事業主の場合、どのような費用を経費として扱うことができるのでしょうか。

今回は、個人事業主が確定申告の際に経費として取り扱える費用、経費とは認められない費用、経費計上の方法などについて詳しくご説明します。

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確定申告における「経費」とは

確定申告において、経費とは、所得金額を算出する際に必要になる金額で、事業を運営するために必要になった費用のことです。

国税庁では、確定申告時に必要経費として算入できる金額として次のように示しています。

・総収入金額に対応する売上原価、その総収入金額を得るために直接要した費用の額

・その年に生じた販売費、一般管理費、その他業務上の費用の額

また、経費になる金額はその年において、債務の確定した金額でなければなりません。債務が確定しているとは、次の3つの要件をすべて満たす場合です。

・12月31日までに契約が成立していること

・12月31日までに契約に基づいた納品が完了していること

・12月31日までに金額が確定していること

以上の3つの要件を満たしていれば、たとえ支払いが完了していない場合でも、経費として扱うことになります。

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経費を正しく計上することが重要な理由

冒頭でご説明したように、所得額は、収入の額から経費を差し引いて算出します。所得税の額も、所得額に税率をかけることで求めるため、所得額が低くなれば、当然、所得税の額も低くなります。

また、所得税の場合、所得が高くなるほど税率が高くなる累進課税の仕組みが採用されています。したがって、経費として計上できる費用を確定申告の際に経費としてしっかり申告していなければ、所得額が大きくなり、所得にかかる所得税率も高くなる恐れがあるのです。

せっかく事業で成果を上げても、納税額が多くなると手元に残るお金は減ってしまいます。つまり、個人事業主の場合、確定申告の際に、経費として計上できる支出を漏れなく経費に計上しなければ、本来よりも多くの所得税を納めなければならなくなるのです。

所得税の額が高くなれば、所得税の額をもとに計算される住民税の額も高くなり、国民健康保険の保険料の額も変わってきます。そのため、個人事業主がしっかりと経費として計上できる額を把握し、漏れなく経費計上を行うことは、節税面において非常に重要になるのです。

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確定申告で経費にできる費用の具体例と勘定科目

個人事業主が確定申告で経費として計上できる主な項目を勘定科目ごとに分けてご説明します。

租税公課

租税公課とは、税金や公共団体などから課された公課などを指します。具体的には、次のようなものが租税公課に該当するものであり、これらは経費に計上することが可能です。

・固定資産税

・登録免許税

・印紙税

・個人事業税

・自動車税

・不動産取得税

・商工会議所や商工会の会費

・協同組合、同業者組合、商店会などの会費

ただし、固定資産税や自動車税、不動産取得税のうち、経費として計上できるのは事業が関係する固定資産や自動車に関連するものです。自宅として使用している不動産の固定資産税や不動産取得税、プライベート用の車の自動車税は、経費としては扱えません。自宅で事業を行っている場合、プライベートと事業用の車を兼用している場合などは、事業の使用割合を算出し、事業使用分のみを経費に計上することは認められています。

荷造運賃

荷造運賃とは、商品を販売するために使用した包装材料の購入費用や荷づくりに要した費用、配送のためにかかった費用などです。

具体的な費用としては、次のようなものが該当します。

・段ボールやガムテープ、緩衝材などの購入費用

・宅配便など、輸送にかかる費用

水道光熱費

事業のためにかかった水道料金、電気代、ガス代、灯油などの購入費用も経費に計上することができます。たとえば、飲食店を営む場合、お店で使用した水道料金や電気代、ガス代などは全額、経費計上が可能です。一方、自宅の一部で事業を営んでいる場合などは、水道光熱費の全額を経費に計上することはできません。その場合、事業の使用割合を算出し、事業分のみを経費計上することはできます。

旅費交通費

事業のために異動した場合に発生した費用は旅費交通費として経費に計上します。自宅と事業所が離れている場合は、通勤にかかった費用も経費になります。また、出張が必要になった場合の交通費やホテル代も旅費交通費として経費計上が可能です。

具体的には次のような費用が旅費交通費に該当します。

・電車代

・バス代

・タクシー代

・宿泊代

通信費

事業のための通信にかかった費用を計上する際に利用する勘定科目が通信費です。個人事業主の場合、次のような費用を通信費として経費に計上することができます。

・スマートフォンの利用料金

・固定電話の利用料金

・インターネットの回線料金

・切手代、はがき代

通信費も、プライベートと事業用のスマートフォンを兼用しているような場合は、事業で使用している割合を算出し、事業使用分のみを経費として計上します。

広告宣伝費

商品やサービスなどを宣伝するためにかかった費用は広告宣伝費として処理します。広告宣伝費に該当するのは、次のような費用です。

・新聞、テレビ、ラジオ、雑誌などの広告出稿料金

・折り込みチラシの出稿料金

・屋号を入れたカレンダーやボールペンなどの作成費用

・ショーウィンドウの装飾にかかった費用

広告掲載費用はもちろん、広告宣伝費として経費計上できますが、プロモーションのために作成したグッズの制作費用なども広告宣伝費として扱って問題ありません。

接待交際費

接待交際費は、事業を営む上で必要となる交際にかかった費用を計上する勘定科目です。例えば、次のような経費は接待交際費として扱います。

・取引などに贈ったお中元やお歳暮の費用

・取引拡大のために取引先を招待した食事会の費用やゴルフコンペの費用

・取引先を訪問する際に購入したお土産の購入費用

個人事業主の場合、接待交際費は経費計上が認められていますが、プライベートとの線引きが難しい部分でもあります。税務調査での指摘を避けるためにも、取引先の接待のためにかかった飲食費用であれば、領収書と一緒に参加者や実施目的などを書いたメモを残すようにしておきましょう。

保険料

事業所の損害保険料や地震保険料、自動車保険料は経費に計上することが可能です。ただし、自宅を事務所として使用している場合、プライベートと事業用の車を分けていない場合などは、事業用として使用した割合に応じ、事業使用分のみの経費計上を行わなければなりません。

修繕費

店舗や事務所、自動車、機械、器具などの修理代は修繕費として経費に計上します。ただし、資産の価値が高まったり、使用できる期間を延長したりするような修繕の場合は、修繕費としては扱いません。その場合、資本的支出として扱われ、減価償却によって必要経費にしなければならない点に注意が必要です。

消耗品費

取得価額が10万円未満または使用可能期間が1年未満の什器や備品などは消耗品として経費に計上します。具体的には次のようなものが消耗品費に該当します。

・コピー用紙代、ボールペン代などの文房具代

・トイレットペーパーやティッシュペーパー、洗剤などの購入代金

・10万円未満のパソコン

減価償却費

固定資産は、取得した年に一度に経費として計上するのではなく、法定耐用年数に合わせて、分割しながら減価償却費として経費に計上します。固定資産の減価償却方法には定額法と定率法がありますが、個人事業主の場合は原則として定額法を適用して計算をします。定額法は、毎年、同じ額を減価償却費として経費に計上する方法です。

減価償却費に該当するものには以下のようなものがあります。

・10万円以上の機械

・10万円以上のパソコン

・10万円以上の事業用の自動車

給料賃金

従業員を雇用している場合、従業員に支払った給与や賃金などは経費となります。また、経費計上時には給料賃金の勘定科目を使用します。

外注工賃

従業員に支払う給与は給料賃金として処理しますが、外部の法人や個人に業務を委託し、その成果に対して報酬を支払った場合は外注工賃として経費に計上します。外注工賃に該当するのは、次のような場合の費用です。

・ホームページの制作料

・会社ロゴのデザイン料

・名刺のデザイン料

地代家賃

事務所や店舗などを借りている場合は、その家賃も経費に計上できます。その際に使用する勘定科目は地代家賃です。

・事務所や店舗の家賃

・駐車場の賃料

ただし、自宅の一部を事業に使用している場合などに経費に計上できるのは、事業に利用している割合のみに限られます。

利子割引料

事業のための借入をした際に発生する利息、報酬として受け取った手形を現金に換えるときに発生する割引料は、利子割引料として経費に計上が可能です。

雑費

ほかの勘定科目に当てはまらない、少額な支出に使用する勘定科目が雑費です。次のような費用は雑費として計上できますが、雑費が高くなりすぎる場合、経費の状況を把握しにくくなります。そのため、一時的な支出に該当するものを対象に使用し、継続して支払いが発生する費用などは、その他の勘定科目を作って管理した方がよいでしょう。

・ごみ処理費用

・制服のクリーニング費用

・書籍代

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確定申告で経費には認められない費用

確定申告では、経費には計上できない費用もあります。経費計上できない費用の具体例をいくつかご紹介しましょう。

事業とは関連性のない費用

事業のために必要と認められる取引先の接待飲食費は経費に計上が可能です。しかし、事業とは関連のない、友人同士や家族で行った食事会の代金などは経費に計上することはできません。また、当然、事業主本人の私的な食事代やスポーツジムの利用料金なども経費にはなりません。

事業主自身に課される税金

個人事業税や登録免許税など、事業に関連した税金は経費に計上ができます。しかし、事業主自身に課される所得税や住民税などは、経費に計上することはできません。

専従者給与と専従者控除

生計を一にしている配偶者やその他の親族が事業を手伝っている場合に支払う給与については、原則として給料賃金としては扱うことはできず、経費としては認められません。ただし、青色申告をしている場合は、一定要件を満たすことで青色事業専従者給与として経費に計上することが可能です。その場合、事前に青色事業専従者給与に関する届出書の提出が必要になる点に注意しましょう。また、白色申告者の場合は、一定金額を専従者控除として計上し、課税所得額を減額することが可能です。

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個人事業主が確定申告で経費計上する際の注意点

個人事業主が確定申告を行う際、経費計上をするうえで特に注意が必要なポイントを2つご紹介します。

個人事業主の経費に上限はない

個人事業主の経費に上限はありません。事業に必要な支出であれば、経費として計上することができますが、売上に対して経費が高すぎる場合、税務署から不審に思われる可能性があります。特に、接待交際費については税務調査で疑われるケースが多いため、領収書とともに参加者の名前や目的などを記載したメモも残しておくようにしましょう。

事業とプライベートの両方で兼用しているものは家事按分をする

自宅で事業を行っている場合など、事業とプライベートの両方で兼用しているものがある場合、事業で利用している分については、経費に計上ができます。例えば、賃貸住宅の半分を事務所として使用しているのであれば、家賃の半分は経費に計上することが可能です。水道光熱費や通信費などについても、事業に使用した適切な割合を求めたうえで経費に計上しましょう。

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まとめ

個人事業主が確定申告で経費として計上できる費用についてご紹介してきました。事業のためにかかった費用については、漏れなく経費に計上することで、所得税の負担を軽減することが可能です。ただし、個人事業主には経費の上限額が設定されていないことに安心し、事業とは関連のない費用まで経費として計上すると、税務調査の対象となり、ペナルティが課される恐れがあります。

確定申告を行う際には、経費計上のルールをしっかりと理解したうえで、漏れなく、かつ正しく経費計上を行うことが大切です。


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この記事の監修者

松本 崇宏

税理士法人松本 代表税理士

松本 崇宏(まつもと たかひろ)

登録者16万人以上のYouTubeチャンネル「税理士法人松本〜税金の裏のウラ〜」を運営。 代表を務める税理士法人松本では、これまでに累計5,000件を超える税務調査のご相談・対応実績があり、国税局査察部、税務署長歴任者・税務調査一筋の現場に強い国税出身のOB税理士が現在14名常駐。
国税当局側の視点を踏まえて、お客様の立場を尊重し、税務調査でお悩みのお客様に適切かつ迅速に対応。また、調査前・調査中に関わらず、あらゆる状況から最善のサポートが可能。
なお、調査結果が追徴税額なしとなる実績も多数取得。税務調査における専門性・経験則・折衝力から最善の結果を導き、お客様の笑顔とありがとうを励みに成長し続けている。

税理士法人松本は国税OB・元税務署長が所属する税理士法人です。

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