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税理士に何らかの業務を依頼する場合は、税理士報酬が発生します。しかし、どのような業務を税理士に依頼でき、それによってどのくらいの税理士報酬が発生するのか分からなければ、税理士に業務を依頼しにくいのではないでしょうか。
また、税理士報酬を支払った場合、税理士報酬は経費として処理することができますが、どのような勘定科目を使って処理するべきなのか悩むケースも多いようです。
そこで今回は、税理士報酬の相場や、仕訳時に用いる勘定科目、税理士報酬に関する源泉徴収義務など、税理士報酬に関するさまざまな疑問について解説します。
目次
税理士報酬とは、税理士に依頼した業務の遂行に対する対価として支払う金銭のことです。税理士報酬は、顧問契約を結んだ場合に毎月発生する顧問料と特定の業務を依頼した際に発生する個別の料金があります。
かつては、税理士会によって税理士報酬規程が存在していました。税理士報酬規程は、税理士業務に関して受ける税理士報酬の最高限度額を定めるものでしたが、税理士法の改正に伴い、税理士会による報酬規程は廃止されています。したがって、現在では税理士報酬は自由化されており、税理士事務所が自由に報酬額を決定できるようになっています。
税理士に業務を依頼する際に発生する税理士報酬は、依頼の内容や事業規模、サポート頻度などによって大きく変わってきます。しかし、税理士報酬の目安を把握しておかなければ、税理士に業務を依頼すべきかどうかの判断も難しくなるかもしれません。そのため、ここでは税理士報酬のおおよその相場をご紹介します。
顧問契約を結ぶ場合は、毎月、一定額の税理士報酬を支払う必要があります。事業規模や打ち合わせの頻度、従業員数などによって税理士報酬の目安は変わってきますが、法人の場合の相場は、月額3万円~が目安です。また、個人事業主の場合は法人よりも事業規模が小さいケースが多いため、税理士報酬の相場は法人よりも低い1万~3万円程度が目安となるでしょう。
税理士には、決算業務や申告業務、年末調整業務、記帳代行、税務調査対応などの業務を依頼することが可能です。これらの業務は、顧問契約を結んでいる場合でも、別途費用が発生するケースが多くなります。税理士報酬の相場は、顧問契約を結んでいるかどうかによっても多少変わってきますが、以下のような額が一つの目安となります。
決算業務・申告業務の税理士報酬の相場:15万~30万円
確定申告業務の税理士報酬の相場(個人事業主):10万~20万円
税務調査対応の税理士報酬の相場:30万~70万円
税理士報酬は、法人の場合も個人事業主の場合も、経費として計上することが可能です。では、税理士報酬については、どのような勘定科目で仕分けるのがよいのでしょうか。税理士報酬に用いられる勘定科目ごとに特徴をご説明します。
税理士報酬を仕訳する際に最も多く用いられる勘定科目が「支払手数料」です。支払手数料は、契約や取引等に附随して生じる手数料を支払う際に用いられる勘定科目ですが、税理士報酬のほか、弁護士や司法書士など、専門家に支払う報酬を仕訳する際にも用いるケースが多くなっています。ただし、支払手数料を使って税理士報酬を仕訳する場合、銀行の振込手数料や弁護士報酬などと区別がしにくくなります。そのため、補助科目に税理士報酬であることが分かる旨を明記しておくとよいでしょう。
単発契約など、税理士報酬が一時的に発生する場合であれば、支払手数料で仕訳をしても問題ありません。しかし、税理士と顧問契約を結ぶなど、継続的に税理士報酬の支払いが発生する場合は、他の手数料と区分できるよう、別の勘定科目を使った方がよいかもしれません。
支払報酬料は、税理士や弁護士、司法書士、社会保険労務士など、専門家に報酬を支払った場合に使用することの多い勘定科目です。顧問契約を結んでいる場合などは、支払報酬料を使って仕訳をした方が、他の手数料と混同しにくくなります。また、顧問契約を結んでおらず、単発契約で税理士報酬を支払った場合でも、支払報酬料の勘定科目を使って処理して問題ありません。
支払顧問料も、税理士などの専門家と顧問契約を交わした場合に利用できる勘定科目です。支払顧問料として計上すれば、その他の費用と明確に区分でき、専門家との顧問契約でどの程度の支出が発生しているかを把握しやすくなります。
業務委託費は、業務を外部に委託した場合の費用を計上する際に利用する勘定科目です。例えば、オフィスの清掃を清掃会社に委託している場合に支払っている費用は、業務委託費として処理します。税理士に業務を委託する場合も、業務委託費の勘定科目を使用して問題ありません。しかし、複数の法人や個人事業主などと業務委託契約を結んでいる場合、税理士報酬として支払った費用を把握することは難しくなる点に注意しましょう。
税理士報酬はご紹介したような勘定科目を使って仕訳をすることが可能です。自社の状況に合わせて適した勘定科目を選択することができますが、一度使った勘定科目は、継続して使用しなければなりません。企業会計には「継続性の原則」と呼ばれるルールがあり、採用した会計処理の原則や手続きは、正当な理由がない限り、毎期、継続して適用する必要があるのです。勘定科目についてもこのルールが適用されるため、前期に税理士報酬を「業務委託費」として計上したにもかかわらず、今期は「支払顧問料」として仕訳することはできません。
継続性の原則は、事業主が恣意的に利益操作を防止する目的で設けられているルールです。自由に会計処理方法を選択できた場合、その事業年度に都合のよい方法で処理を行う恐れがあります。会計処理方法の変更を認めれば、簡単に利益を操作することができてしまうのです。
したがって、税理士報酬の仕訳をする際、勘定科目は自由に選択できますが、継続性やその他の費用の発生状況を踏まえ、長く利用できる勘定科目を使用するようにしましょう。
税理士報酬を支払う場合、依頼主は、報酬から所得税と復興特別所得税を源泉徴収しなければなりません。
源泉徴収とは、給与や報酬を支払う際に、給与や報酬の中から税金を天引きし、事業主が個人に代わって国や自治体に納税を行う仕組みです。税理士に支払う報酬は、源泉徴収の対象となっているため、税理士に報酬を支払う際に所得税と復興特別所得税を天引きし、原則として支払った月の翌月10日までに納付しなければなりません。
源泉徴収の対象となる税理士報酬には、次のようなものが含まれます。
・謝金
・調査費
・日当
・旅費
しかし、国税庁では源泉徴収の対象となる税理士報酬について、次のように示しています。
「ただし、支払者が直接、交通機関やホテル等に支払う交通費、宿泊費等で、その金額が通常必要な範囲内のものであるときは、源泉徴収の対象となる報酬・料金に含めなくてもよいことになっています。」
この文章を分かりやすく言い換えると次のようになります。税理士に交通費や宿泊費などを支払った場合は、報酬の一部と考えられるため、源泉徴収の対象に含めなければなりません。しかし、事業主が直接、新幹線のチケットを購入したり、ホテルを予約して料金を支払っており、その額が常識の範囲内であるのならば、源泉徴収の対象に含める必要はありません。
したがって、税理士に何らかの業務を依頼し、旅費を支払う場合、税理士報酬に含めて支払うときにはその額も含めて源泉徴収を行わなければならない点に注意しましょう。
また、税理士報酬に消費税が含まれている場合は、消費税の額を含めた金額を源泉徴収の対象としなければなりません。ただし、請求書で、報酬の額と消費税の額を明確に区分している場合は、報酬の額だけを源泉徴収の対象とすることできます。
税理士報酬から源泉徴収すべき所得税と復興特別所得税の額は、次のように計算をします。
・支払金額が100万円以下の場合
源泉徴収額は、支払金額×10.21%の額となります。
・支払金額が100万円超の場合
源泉徴収額は、(支払金額-100万円)×20.42%+10万2,100円の式で算出します。
また、計算結果に1円未満の端数がある場合は、切り捨てとなります。
例えば、100万円の税理士報酬を支払う場合、
100万円×10.21%=10万2,100円
となり、源泉徴収すべき額は10万2,100円となります。
次に、税理士報酬の額が150万円だった場合の源泉徴収額を計算します。この場合、支払金額が100万円超となるため、計算式に当てはめると次のようになります。
(150万円-100万円)×20.42%+10万2100円=20万4,200円
したがって、この場合に源泉徴収すべき額は20万4,200円です。
税理士報酬から源泉徴収した所得税と復興特別所得税は、原則として支払った次の翌月の10日までに納付する必要があります。納付方法は、e-Taxを利用するか「給与所得・退職所得等の所得税徴収高計算書(納付書)」を添えて、金融機関もしくは所轄の税務署の窓口で納付します。
ただし、支払者が納期の特例の適用を受けている場合には、年に2回にまとめて納付することができます。源泉所得税の納期の特例は、給与の支給人員が常時10人未満の源泉徴収義務者が申請をすることで認められる特例です。所轄の税務署に対し「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を提出すれば、提出した日の翌月に支払う給与等から適用されます。
税理士報酬についても、源泉所得税の納期の特例の適用を受けていれば、従業員の給与から源泉徴収をした所得税と復興特別所得税と合わせ、年に2回のタイミングで納付することが認められます。
特例制度を受ける際の源泉徴収所得税と復興特別所得税の納期限は次のようになります。
1月から6月までに支払った税理士報酬の源泉所得税・復興特別所得税:7月10日まで
7月から12月までに支払った税理士報酬の源泉所得税・復興特別所得税:翌年の1月20日まで
税理士報酬の源泉徴収は必ず行わなければならないわけではありません。まず、税理士報酬の支払先が、個人ではなく税理士法人の場合は、源泉徴収の必要はありません。なぜなら、法人に対して税理士報酬を支払う場合、報酬は所得税の対象ではなく、法人税の対象となるためです。つまり、税理士報酬から源泉徴収をしなければならないのは、法人を設立しておらず、個人事業主として活動している税理士に業務を依頼し、報酬を支払う場合となります。
また、従業員を雇用していない個人事業主には原則として源泉徴収義務がないため、税理士に業務を依頼して税理士報酬を支払う場合も、源泉徴収をする必要はありません。そのほか、会社員である給与所得者が税理士に確定申告業務を依頼した場合なども、源泉徴収をする必要はありません。
税理士報酬の相場は、法人であるか個人事業主であるか、どのような業務を依頼するかによって変わってきます。例えば、顧問税理士契約を結ぶ場合に発生する税理士報酬は、法人が月額3万円~、個人事業主の場合は月額1万~3万円程度が目安となります。
また、税理士報酬については全額を経費に計上することができ、仕訳をする際には支払手数料や支払報酬料、支払顧問料、業務委託費などの勘定科目を用います。使用する勘定科目については、自由に選択することができますが、一度選択した勘定科目を正当な理由なく変更することはできないため、継続して使用できる勘定科目を選ぶことが大切です。
また、個人で活動する税理士に業務を依頼した場合は、税理士報酬から所得税・復興特別所得税の源泉徴収が必要になる点にも注意しましょう。
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この記事の監修者
税理士法人松本 代表税理士
松本 崇宏(まつもと たかひろ)
登録者16万人以上のYouTubeチャンネル「税理士法人松本〜税金の裏のウラ〜」を運営。 代表を務める税理士法人松本では、これまでに累計5,000件を超える税務調査のご相談・対応実績があり、国税局査察部、税務署長歴任者・税務調査一筋の現場に強い国税出身のOB税理士が現在14名常駐。国税当局側の視点を踏まえて、お客様の立場を尊重し、税務調査でお悩みのお客様に適切かつ迅速に対応。また、調査前・調査中に関わらず、あらゆる状況から最善のサポートが可能。なお、調査結果が追徴税額なしとなる実績も多数取得。税務調査における専門性・経験則・折衝力から最善の結果を導き、お客様の笑顔とありがとうを励みに成長し続けている。
税理士法人松本は国税OB・元税務署長が所属する税理士法人です。
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