2025.12.14
  • 税務調査

相続税は自分で申告できる?必要書類や手順を分かりやすく解説

読了目安時間:約 6分

親や配偶者が亡くなり、遺産を相続した場合、相続税の納税が必要になるケースがあります。相続税は税務署から納税通知書等が送られてくるわけではなく、相続を受けた人が自分で申告をする仕組みです。税金の手続きというと複雑なイメージがありますが、相続税は税理士に依頼しなくても、自分で申告できるのでしょうか。

今回は、相続税を自分で申告する際のポイントや必要書類、手続きの手順などについて分かりやすく解説します。

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相続税は自分で申告できる?

相続税は、自分で申告することも可能です。ただし、複雑な場合などは税理士に依頼した方が安心かもしれません。

相続税を自分で申告する人の割合は?

国税庁が公表している「令和6事務年度国税庁実績評価書」によると、相続税の税理士関与割合は令和6年度の場合86.5%です。過去5年分の実績が掲載されていますが、それによると相続税に関して税理士が関与した割合は85.9%~86.5%となっています。したがって、相続税を自分で申告した人の割合は、14%程度にとどまっていることが分かります。

相続税を自分で申告する人は少数派ではありますが、全くいないわけではないため、相続税を自分で申告することは不可能ではないといえるでしょう。

参照元:国税庁「令和6事務年度国税庁実績評価書」

相続税を自分で申告するべきかの判断目安

相続税を自分で申告する人の割合は約14%であることを考えると、やはりそれは難しいのではないかと思うかもしれません。相続税の申告においては、相続する額や相続する財産の種類などによって、難易度が変わってきます。そのため、相続税を自分で申告すべきか悩む場合は、以下のポイントから判断することをおすすめします。

<相続税を自分で申告できる可能性が高い人>

・相続する財産がそれほど多くない

・相続財産には土地が含まれていない

・亡くなった被相続人が生前贈与をしていない

・申告書を作成する時間的な余裕がある

<相続税の申告を税理士に依頼すべき人>

・相続する財産の額が億単位である

・相続財産に土地がある

・亡くなった被相続人が生前贈与をしていた

・申告書を作成する時間の余裕がない

相続税の計算において、土地の評価は非常に複雑です。土地を相続した場合には、土地の評価額を求め、相続評価額を算出しなければなりません。また、被相続人が生前贈与をしていた場合、相続開始前の一定期間に行われた生前贈与を相続財産に加算する、生前贈与加算なども考慮しなければならないため、複雑な計算が必要です。

したがって、相続財産がそれほど多くはなく、土地を相続していない、生前贈与がないといった場合であれば、比較的手間をかけずに自分で相続税の申告ができる可能性があります。

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相続税を自分で申告する際に準備すべき必要書類

相続税の申告にあたっては、必要書類を準備しなければなりません。相続税の申告にあたって必要となる書類は、以下のとおりです。

相続人のマイナンバー確認のための書類

相続税の申告書を税務署に提出する際には、税務署で本人確認を行うため、以下の書類の添付や提示が必要になります。ただし、e-Taxで申告をする場合は、本人確認書類は不要です。

・マイナンバーの写しまたは、マイナンバーの記載がある住民票の写し

・身元確認書類の写し(マイナンバーカードの表面、運転免許証、パスポートなど)

相続税の申告書に添付が必要な書類

・被相続人の戸籍謄本の写し(相続開始日の日から10日を経過した日以降に作成されたもの)

・法定相続情報一覧図の写し

被相続人の戸籍謄本の写しについては、本籍地の役所で取得することになりますが、出生から死亡までの連続した戸籍謄本の写しが必要になります。また、法定相続情報一覧図は、自分で作成し、法務局に申請することで写しを法務局から入手することが可能です。いずれか一方の提出でかまいません。

・遺言書の写し

・遺産分割協議書の写し

公証役場や法務局で保管されていない遺言書は、開封の前に家庭裁判所の検認を受けなければならない点に注意が必要です。また、遺言書がない場合は、法定相続人全員で遺産分割協議を行い、取り決めの内容を遺産分割協議書としてまとめる必要があります。

 

そのほか、特例を受ける場合には別途必要になる書類があります。主な提出書類については、税務署が公表している以下のサイトでも確認することが可能です。

参照元:税務署「相続税の申告のしかた」

提出義務はないものの準備しておくとよい書類

相続税の申告にあたって提出が義務付けられているわけではないものの、相続財産を示す書類があると、相続税の計算根拠を明確に示すことができます。

預貯金の評価のための必要書類

・預貯金の残高証明書

・過去5年分程度の入出金履歴が確認できる通帳のコピーなど

相続財産に預貯金がある場合、預貯金の評価を行うために、被相続人の死亡日時点での残高証明書や通帳などの添付が必要です。通帳では生前贈与の有無の確認や死亡日直前の出金、相続人などの口座への資金移動がないかなどについて確認する目的で添付が求められます。

不動産の評価のための必要書類

・固定資産評価証明書

・登記事項証明書(登記簿謄本)

・公図

・測量図

・賃貸借契約書

固定資産評価証明書は、市区町村役所などで取得できる書類です。登記事項証明書(登記簿謄本)、公図、測量図については、不動産の所在地を管轄する法務局から入手できます。また、インターネットを通じ、登記情報提供サービスから取り寄せることも可能です。賃貸借契約書は、不動産を賃貸に出している場合のみに必要となります。

有価証券の評価のための必要書類

・残高証明書

・配当金の支払通知書

被相続人の死亡日時点の残高証明書や配当金について通知する書類が必要です。株式の保有によって配当金が生じる場合、配当期待権や未収配当金は相続財産に含めなければなりません。

保険金の評価のための必要書類

・保険証券

・契約内容のお知らせ

・支払通知書

保険証券や契約内容のお知らせなど、契約者や被保険者、保険金受取人などを確認する書類を準備します。また、死亡保険金の支払金額を確認できる支払通知書も必要です。

その他の財産の評価のための必要書類

・ゴルフ会員権証書

・自動車の車検証

・書画や骨董などの査定書や鑑定書

・老人ホームの退去時清算金に関する書類 など

その他、相続財産に該当するものがあれば、評価の証明となる書類の準備が必要になります。

債務の金額を確認するための書類

・借入金の残高証明書

・葬儀代の領収書

・住民税や固定資産税の領収書

・医療費や水道光熱費の領収書 など

相続時には、財産だけでなく、債務も相続することになります。したがって債務の金額を確認できる書類も準備した方がよいでしょう。

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相続税を自分で申告する場合の流れ

相続税を自分で申告する際の手続きの基本的な流れをご紹介します。

法定相続人の確定

まず、相続税を自分で申告する際には、法定相続人を確定する必要があります。被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本を収集すると、法定相続人が誰になるのかを把握できます。法定相続人とは、被相続人の財産を相続できる権利を持つ人です。被相続人に配偶者がいた場合、配偶者は必ず法定相続人となります。法定相続順位は、第1順位が子(子が亡くなっている場合は孫)、第2順位が父母(父母がすでに亡くなっている場合は祖父母)、第3順位が兄弟姉妹(兄弟姉妹がすでに亡くなっているときは、甥または姪)となります。

相続財産の調査と財産目録の作成

法定相続人が決定したら、相続財産の調査をします。

相続財産には、次のようなものが含まれます。

・現金

・預貯金

・有価証券

・保険金

・不動産

・自動車

・骨董品

・貴金属

・債務 など

また、これらの財産を評価するために書類を準備します。評価に必要な書類は前項で説明したとおりです。

相続財産を評価し、財産をまとめた財産目録を作成します。

遺産分割協議と遺産分割協議書の作成

遺言書がある場合は、遺言書に則って遺産分割をしますが、遺言書がない場合には、法定相続人で遺産分割協議を開き、誰が、どの財産を相続するのかを決定します。遺産分割協議には、法定相続人全員が参加しなければなりません。

遺産分割協議の結果は遺産分割協議書にまとめます。遺産分割協議書には、相続人全員が同意したものであることを証明するため、相続人全員の署名と実印の押印をします。

相続税申告書の提出と相続税の納付

遺産分割協議によって、相続遺産が決定したら相続税申告書を作成し、相続税を納付します。相続税申告書は最寄りの税務署で入手するか、国税庁ホームページからダウンロードすることが可能です。申告書の様式は、相続が発生した年のものを使用します。

相続税申告書は第1表から第15表までありますが、第1表から作成していくわけではありません。まずは、第9表から第15表までを作成した後、第1表と第2表で課税価格の合計と相続税の総額を計算します。次に、第4表から第8表までを作成したら第1表と第8の8表に税額控除額を転記し、各人の納付すべき相続税額を算定します。相続税申告書の記載する順番については、税務署が公表している「相続税の申告のしかた」に詳しく記載されています。

相続税申告書を作成することで、相続人が納付すべき総税額が把握できるようになります。相続税は、電子納税、クレジットカード納付、金融機関または税務署の窓口で納付のいずれかの方法で納税しなければなりません。納税期限は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヶ月以内です。

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相続税の申告が遅れた場合や納税額が不足した場合のリスク

相続税を自分で申告しようと思っていても、何かと慌ただしく、期限までに申告書を作成できない場合があるかもしれません。また、自分で申告したものの、相続税の計算にミスがあり、納税額が不足する可能性もあるでしょう。そのような場合、以下のようなペナルティが科されます。

相続税の申告をしなかった場合

相続税の申告をしなかった場合は、申告義務を怠ったとして無申告加算税の納税が求められます。無申告加算税の税率は、税額によって異なり、税額が50万円以下の部分については15%、50万円超300万円以下の部分については20%、300万円超の部分については25%となります。

ただし、期限が過ぎた場合でも、税務調査の事前通知を受ける前に自主的に申告をし、納税をした場合は、税率は軽減されます。その場合の税率は、税額に関わらず一律5%です。

相続税の納税額が不足していた場合

相続財産の評価が誤っていた場合など、期限内に申告はしたものの、相続税の納税額が不足した場合には過少申告加算税の納税が求められます。過少申告加算税の税率は10%ですが、当初の納税額と50万円のうち、多い方を超える部分についての税率は15%となります。

また、税務調査の事前通知前に自主的に修正申告をした場合、過少申告加算税は課されません。

延滞税の納税も

期限までに申告をしなかった場合、納税額が不足していた場合、いずれの場合も、納付が遅れたことに対するペナルティとして延滞税が課されます。延滞税の額は、納期限の翌日から2ヶ月目とそれ以降で大きく変わります。また、納税が完了するまで1日単位で加算され続ける点に注意が必要です。

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自分で申告することが難しい場合は税理士に相談を

相続税の申告と納税には期限があり、期限までに申告ができなかった場合や申告内容に誤りがあった場合、ペナルティが科され、本来よりも多くの税金を支払わなければなりません。複雑でなければ、相続税は自分で申告することも可能です。しかし、思っていたより手続きに時間がかかる場合や自分での申告が難しい場合などは、期限内に確実に申告を終えられるよう税理士に相談することをおすすめします。

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まとめ

配偶者や親などが亡くなり、相続が発生した場合には、相続税の申告が必要になるケースがあります。相続税の申告は自分で行うことも可能ですが、その割合はわずか14%ほどです。この背景には、所得税などの確定申告に比べ、相続税の申告は難度が高いという問題が隠れています。また、所得税のように自動で納税額を計算できる確定申告書コーナーなども用意されていないため、自分で申告する際には、手書きで申告書を作成するか、相続税の申告ができる市販のソフトなどを利用しなければなりません。

税理士法人松本では、相続税のご相談も承っています。相続税の申告についてお悩みの場合は、お気軽にご相談ください。


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この記事の監修者

松本 崇宏

税理士法人松本 代表税理士

松本 崇宏(まつもと たかひろ)

登録者16万人以上のYouTubeチャンネル「税理士法人松本〜税金の裏のウラ〜」を運営。 代表を務める税理士法人松本では、これまでに累計5,000件を超える税務調査のご相談・対応実績があり、国税局査察部、税務署長歴任者・税務調査一筋の現場に強い国税出身のOB税理士が現在14名常駐。
国税当局側の視点を踏まえて、お客様の立場を尊重し、税務調査でお悩みのお客様に適切かつ迅速に対応。また、調査前・調査中に関わらず、あらゆる状況から最善のサポートが可能。
なお、調査結果が追徴税額なしとなる実績も多数取得。税務調査における専門性・経験則・折衝力から最善の結果を導き、お客様の笑顔とありがとうを励みに成長し続けている。

税理士法人松本は国税OB・元税務署長が所属する税理士法人です。

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