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「税制改正大綱」が発表されるとニュースなどのメディアで話題となっていますが、この税制改正大綱とはどのようなものなのでしょうか。所得税や法人税などの税制が改正される場合、改正される内容について把握することが大切となります。
この記事では、税制改正大綱の概要や2026年1月時点での最新情報、税制改正大綱をチェックする際のポイントなどについてわかりやすく解説しています。
目次
そもそも税制改正大綱とは何なのか、わかるようでわからない概要についてわかりやすく解説します。
税制改正大綱(ぜいせいかいせいたいこう)とは、国の翌年度以降の税制についてまとめられた方針のことを指します。
税制は経済社会の変化に対応しつつ、税金負担の公平性を確保するため、常に見直し続ける必要があります。
税制改正大綱では、所得税や法人税といった各種税金の税率に加え、特別措置の要件や期間などについて、その時々の課題や経済的な変化なども考慮しながら、政府が方針をまとめていきます。
税制改正大綱は、例年経済状況の変化に応じて、その時々の課題について以下のように議論が進められ、検討されます。
政府税制調査会:中長期における税制のあり方
与党税制調査会:毎年度の具体的な税制改正事項・要望の審議
上記税制調査会によってまとめられた「与党税制改正大綱」を踏まえた「税制改正の大綱」が閣議に提出されます。
税制改正大綱が提出される時期は例年12月中旬から下旬頃となっており、年末にメディアで報道されるニュースなどで目にする機会が増えるのが一般的です。
参照:財務省「Q&A ~身近な税について調べる~」
税制改正大綱では、翌年度以降の税制改正に関する方針がまとめられており、閣議に提出された税制改正大綱に沿って、地方税の改正法案は総務省が、国税の改正法案は財務省が作成し、国会に提出されることとなります。
国会では、改正法案について衆議院と参議院の両方で審議され、本会議後に可決されると法案は成立となり、定められた日から改正が施行されることとなります。
2026年度の税制改正大綱は、2025年12月19日に発表され、12月26日に閣議決定されました。今後審議される税制改正について、注目するべき内容を詳しく見ていきましょう。
2026年度の税制改正大綱では、まず個人所得税の課税最低限額を160万円から178万円へ引き上げる方針が示されました。基礎控除と給与所得控除について、所得額などに応じて以下のように控除額を引き上げます。
・基礎控除
合計所得金額2,350万円以下の個人:58万円から62万円へ引き上げ
なお、2,350万円を超える所得金額の個人の場合は、それぞれ以下のようになります。
2,350万円を超え、2,400万円以下:48万円
2,400万円を超え、2,450万円以下:32万円
2,450万円を超え、2,500万円以下:16万円
また、2025年度より施行された基礎控除の上乗せ特例についても見直しが行われ、最大控除額が現行の37万円から42万円へ引き上げ、対象者も給与収入200万円相当から475万円相当まで拡充されます。
・給与所得控除
給与所得控除では、現行の最低保証額である65万円から69万円へ引き上げられる方針が示されました。
年収の壁178万円のイメージとしては
基礎控除104万円(62万円+上乗せ特例42万円)
給与所得控除74万円(69万円+上乗せ特例5万円)
104万円+74万円=178万円
となります。
改正法案の施行時期は、所得税は2026年度から(年末調整は2026年1月支払い分から)、住民税は2027年度から適用されます。
上記所得税控除額の引き上げに伴い、配偶者控除や扶養控除、ひとり親控除などについても控除額が引き上げられる方針となっています。
それぞれの改正点は以下の通りです。
配偶者控除、扶養控除対象要件:合計所得額58万円以下から62万円以下へ引き上げ
ひとり親控除対象要件(子の所得):総所得58万円以下から62万円以下へ引き上げ
勤労学生の控除所得要件:現行85万円以下から89万円以下へ引き上げ
家内労働者等の必要経費特例:現行65万円から69万円へ引き上げ
年収の壁が引き上げられることにより、扶養控除や配偶者控除のボーダーラインも引き上げられることで、扶養控除対象から外れてしまわないように見直されることとなりました。
上記改正内容は、2026年度分より適用されることとなります。
バリアフリー、省エネ、耐震、三世代同居など、特定の要件に該当するリフォーム工事を行った場合、工事費用の一部を所得税控除の対象とできる減税措置について、2028年12月31日まで延長される方針が示されています。
なお、住宅リフォームを行った住宅に対する固定資産税の減税措置については、2031年3月31日まで延長される方針となっています。
住宅リフォームローン控除については2030年まで延長され、新築から中古住宅へも対象が広がり、子育て世代も優遇措置の対象となります。
合計所得が1,000万円未満の人が対象となる床面積要件については、現行の50㎡以上280㎡以下から40㎡以上240㎡以下へ見直されます。
現行では18歳以上であるNISAの利用枠が、0~17歳も対象となる方針が示されました。
17歳までの利用枠は年間投資枠60万円、非課税保有限度額は600万円となり、原則として積み立て投資であることや、払い出しの制限といった要件があり、成人後は通常のNISAへ自動的に移行されます。
可決されると2027年1月1日より適用となります。
暗号資産取引による所得は、現行雑所得として最大55%の税率が適用される総合課税の扱いとなっていましたが、2026年の税制改正大綱では、株式取引などと同じ申告分離課税を導入する方針が示されています。
金融商品取引法の改正が前提条件となりますが、改正されれば税率は一律20%(所得税15%・住民税5%)となり、損失繰越も可能となります。
改正法案が可決されると、金融商品取引法改正が施行された日に属する年の翌年1月1日より適用されます。
株式などの金融取引における所得が多い富裕層では、一律の税率である分離課税の方が多く、一定以上の所得を得ている場合、所得に応じて税率が上がる累進課税よりも税率が低くなってしまう現象が近年問題となっていました。
この問題を解消する目的で、今回の税制改正大綱では以下のような改正方針が示されました。
・税率:現行22.5%から30%へ引き上げ
・追加課税の計算における特別控除額:現行の3.3億円から1.65億円へ引き下げ
改正されると、2027年分の所得税より適用となります。
複式簿記でe-Taxによる青色申告を行う際に適用されている現行65万円の控除について、訂正や削除などの履歴が残るといった一定の要件を満たす「優良な電子帳簿」で保存している場合に、控除額を75万円まで引き上げます。
また、紙による申告で適用されていた55万円の控除枠は廃止され、白色申告と青色申告の区別なく書面申告の控除額は10万円となります。
改正されると、2028年申告分より適用となります。
インボイス制度に関する措置として、小規模事業者への税負担増加を防ぐ目的で創設された特例措置の延長や、新たな特例の創設などの方針が示されました。
具体的には、2年前の課税売上高が1,000万円以下など、かつて免税事業者でインボイス登録をした事業者を対象とした「2割特例」の2026年9月30日終了に伴い、新たに「3割特例」を創設し、2026年10月1日より2028年9月30日まで導入します。
買い手側となる課税事業者には、仕入税相当額の控除適用期限を2年後ろ倒しとし、段階的に控除割合を下げる方針が示されています。
具体的には
2026年10月1日から2028年9月30日まで:70%
2028年10月1日から2030年9月30日まで:50%
2030年10月1日から2031年9月30日まで:30%
投資計画35億円以上(中小企業者5億円以上)、投資利益率15%以上などの要件を満たす場合に、産業競争力強化法の改正を前提として、一定の規模を有する機械装置や建物などの取得時に、100%の特別償却か最大7%の税額控除が受けられる優遇措置を創設する方針が示されました。
改正された場合、産業競争力強化法の改正法施行日から2029年3月31日までの適用となります。
事業用土地建物等を売却し、一定の期間内に別の事業用資産を購入した際、譲渡益にかかる課税を将来に繰り延べられる「9号買替え」については、要件を厳格化して3年延長する方針となっています。
土地建物を第9号の買替え資産とするには、「特定施設の用に供される建物等」や「特定施設に係る事業の遂行上必要な構築物」に限定されます。
また、買替え資産が「特定都市再生緊急整備地域」など特定の政策区域以外にある場合は、繰り延べできる割合が現行の80%から60%へと引き下げられ、2029年3月31日まで延長されます。
一定以上の賃上げを行った企業に対して、増額分の一部を法人税(個人事業主は所得税)から控除できる「賃上げ促進税制」については、企業規模に応じて改正される方針が示されています。
大企業では2026年3月31日で廃止となり、従業員数2,000人以下の中小企業では2027年3月まで適用が継続し、2026年4月1日以降2027年3月31日までは以下のような要件となります。
賃上げ率4%以上:税額控除10%
賃上げ率5%以上:税額控除15%
賃上げ率6%以上:税額控除25%
教育訓練費の増加による上乗せについては、企業規模を問わず廃止の方針となっています。
中小企業が少額の減価償却資産について即時償却できる金額について、現行の30万円未満から40万円未満へと引き上げられます。
対象は従業員数400人未満の中小企業となり、特例期間は現行から3年延長した2029年3月31日となります。
CN税制(カーボンニュートラルに向けた投資促進税制)については、要件の見直しと期間を2年間延長する方針が示されました。
中小企業の場合、現行の要件はそれぞれ以下のように見直されます。
通常要件:10%以上17%未満の炭素生産性向上率が17%以上22%未満へ引き上げ
特別償却:50%から30%へ引き下げ
税額控除:10%から5%へ引き下げ
高い要件:17%以上の炭素生産性向上率が22%以上に引き上げ
税額控除:14%から10%へ引き下げ
適用期間:2028年3月31日まで
2026年度の税制改正大綱には、このほかにも「事業承継税制に係る特例承継計画の期限延長」「農地等に係る相続税・贈与税の納税猶予制度延長」「医業継続に係る納税猶予特例延長」「防衛特別所得税(仮)創設」など、さまざまな税制に関する改正方針が盛り込まれています。
参照:財務省「令和8年度税制改正の大綱」
税制改正大綱を理解する際のポイントについて解説します。
税制改正大綱にまとめられた方針にはどのようなものがあるかをチェックし、適用される時期についても見ておきましょう。
年度や延長期間はもちろん、要件が厳格化された場合は自身のケースが該当するかどうかも確認が必要です。
税制改正大綱は12月に閣議決定された後、1月から3月にかけて国会で審議され、3月末までに成立となるのが一般的な流れです。
いつから適用となるのか、公布時期には正確な情報をチェックするようにしましょう。
自身が税制改正の適用による影響がある場合、適用が開始される時期には適正な内容で申告・納税を行うことが大切となります。
現行の税制についても今一度見直し、改正された内容で申告できているかをしっかりと確認しておきましょう。
税制改正大綱の理解が合っているのかわからない場合や、過去の税制改正について知らない点がないか不安な場合は、税金のプロである税理士へ相談してみることをおすすめします。
税理士法人松本では、個人事業主の方から企業経営者まで、幅広くご相談に応じています。申告後の不安などについても誠実に対応いたしますので、ぜひお気軽にご予約ください。
税制改正大綱とは、例年12月に発表される税制改正をまとめた方針のことです。その時々の社会状況や課題に応じて、所得税や消費税、法人税などの税金について改正が検討され、国会で審議の後に3月末頃成立します。
2026年度もさまざまな税制改正がなされる予定のため、内容や適用時期などをしっかりとチェックしておくことが大切です。
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この記事の監修者
税理士法人松本 代表税理士
松本 崇宏(まつもと たかひろ)
登録者20万人以上のYouTubeチャンネル「税理士法人松本〜税金の裏のウラ〜」を運営。 代表を務める税理士法人松本では、これまでに累計5,000件を超える税務調査のご相談・対応実績があり、国税局査察部、税務署長歴任者・税務調査一筋の現場に強い国税出身のOB税理士が現在14名常駐。国税当局側の視点を踏まえて、お客様の立場を尊重し、税務調査でお悩みのお客様に適切かつ迅速に対応。また、調査前・調査中に関わらず、あらゆる状況から最善のサポートが可能。なお、調査結果が追徴税額なしとなる実績も多数取得。税務調査における専門性・経験則・折衝力から最善の結果を導き、お客様の笑顔とありがとうを励みに成長し続けている。
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