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税務調査というと、個人ではなく、法人を対象に行われる調査のイメージを抱く人が多いかもしれません。しかし、法人だけでなく、所得のある個人も税務調査の対象となります。個人といっても、すべての人に対して税務調査が行われているわけではなく、税務調査を受けやすい人には特徴があります。では、個人を対象とした税務調査は毎年どのくらい行われており、どのような個人が税務調査の対象になりやすいのでしょうか。
今回は、税務調査の概要や個人を対象とした税務調査の実施件数、調査の結果、調査の内容などについてわかりやすく解説します。
目次
税務調査とは、税務署や国税局が、所得や税額の申告が正しいかを確認するために、納税者への質問や帳簿・請求書・預金資料などの検査を行う手続です。法人だけでなく、個人事業主や不動産所得のある方、副業をしている会社員なども対象になります。
個人に対する税務調査には、税務署の職員が事務所や自宅などを訪問する「実地調査」のほか、文書や電話、税務署への来署依頼などによって申告内容を確認する「簡易な接触」があります。
なお、税務署から連絡があったからといって、すべてが税務調査とは限りません。単純な計算誤りや記載漏れについて自主的な修正を求める「行政指導」は、税務調査とは区別されています。行政指導に基づいて自主的に修正申告をした場合、原則として過少申告加算税は課されませんが、納付が遅れた期間に応じて延滞税が生じることがあります。
個人に対する税務署の調査では、事業所得だけでなく、所得や取引の実態に応じて幅広い項目が確認されます。
税務署は、提出された申告書だけを見て調査対象を決めるわけではありません。法定調書をはじめとする各種資料情報を収集し、AIも活用しながら、申告内容との不一致や申告漏れの可能性を分析しています。
国税庁が2025年12月に公表した令和6事務年度(2024年7月から2025年6月まで)の資料によると、所得税の実地調査と簡易な接触は、全国で合計約73万6千件行われました。このうち、申告漏れなどが確認された件数は約36万9千件です。
同年度における所得税の追徴税額は、加算税を含めて合計1,431億円でした。実地調査1件当たりの追徴税額は約241万円で、特別調査・一般調査では約299万円となっています。
また、無申告者に対する所得税の調査は4,812件で、追徴税額は252億円、1件当たりでは約524万円でした。無申告の場合は、本来納めるべき税金に加えて加算税や延滞税が生じることがあり、通常の実地調査より追徴税額が高額になりやすい傾向があります。
税理士法人松本の見解では、無申告の期間が長い方ほど「何から手を付ければよいか分からない」という段階でご相談に来られます。まずは未申告の年分、収入、経費資料、預金口座などの現状を棚卸しすることから始めれば、申告に向けて動き出せます。
個人への実地調査は、原則として税務署から電話などで事前通知が行われます。主に通知されるのは、調査の日時・場所、対象となる税目・期間、調査の目的などです。
事前通知から調査当日までの法定日数は定められていませんが、納税者が準備できる程度の時間的余裕を置く運用とされています。入院や葬儀、業務上やむを得ない事情などの合理的な理由がある場合は、調査日時や場所の変更を税務署と協議できます。変更の申出は口頭でも可能です。
一方、事前通知をすることで証拠書類が隠されたり、正確な課税が困難になったりするおそれがある場合には、事前通知なしで調査が行われることがあります。
税務調査で確認される資料は、業種や所得の種類によって異なります。一般的には、次のような帳簿や証拠書類を整理します。
電子帳簿や電子データについては、画面表示や印刷だけでなく、記録媒体へのコピー、e-Tax、オンラインストレージ、メールなどによる提出を求められる場合があります。
正当な理由なく帳簿の提示・提出を拒否したり、虚偽の帳簿を提示したりした場合は、1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金となる可能性があります。ただし、帳簿などを税務署が預かる「留置き」は、原則として納税者の承諾が必要であり、承諾なく強制的に持ち帰るものではありません。
税務署が税額を増額する更正や決定を行える期間は、2026年時点では原則として法定申告期限から5年です。偽りその他の不正行為による脱税などがある場合は、原則として7年まで遡ることがあります。
また、事前通知で示された調査対象期間より前の資料であっても、減価償却資産の取得価額など、対象年分の申告内容を確認するために必要な帳簿や書類は提示を求められる場合があります。そのため、通知された年分だけでなく、関連する契約書や固定資産の購入資料なども確認しておくことが大切です。
個人の税務調査では、税理士に資料の確認や税務署との連絡、調査当日の立会いなどを依頼できます。税務代理権限証書に必要な同意を記載しておけば、事前通知や調査結果の説明を税理士に対して行ってもらうことも可能です。
税務署から連絡を受けた段階で、対象税目や対象期間、訪問予定日、準備を求められた資料を正確に記録しておくと、その後の確認がしやすくなります。申告漏れや無申告に心当たりがある場合も、資料を破棄したり事実と異なる説明をしたりせず、現在残っている帳簿、通帳、請求書、電子データなどを整理することが重要です。
税務調査とは、納税義務のある法人や個人が正しく申告し、納税しているかを確認するために、税務署や国税局が行う調査です。調査では、申告内容についての質問や、帳簿、請求書、領収書、預金資料などの検査が行われます。
日本では、法人や個人が自ら所得額と税額を計算し、申告・納税する申告納税制度が採用されています。しかし、申告時の計算ミスや記載漏れ、売上の計上漏れ、経費の誤計上、意図的な所得隠しなどが生じる可能性もあります。そのため、税務署は申告内容が税法に沿っているかを確認し、誤りがあれば適正な申告と納税を求めるために税務調査を行います。
個人に対する税務調査では、事業所得や不動産所得、譲渡所得だけでなく、副業、ネット通販、暗号資産、海外投資、無申告、消費税の還付申告なども確認対象になります。国税庁は、各種の資料情報やAIも調査対象の選定に活用しています。
当事務所に寄せられるご相談の傾向として、「自分の規模では調査は来ない」と考えていた個人事業主や副業をしている方からのご相談が目立ちます。税務調査の対象になるかどうかは、事業規模だけでなく、申告の状況や税務署が把握している資料などを踏まえて判断されます。
税務署から電話や文書で連絡があったとしても、すべてが税務調査に該当するわけではありません。単純な計算誤りや記載漏れについて確認し、自主的な修正を求める行政指導は、税務調査とは区別されます。
行政指導に基づいて自主的に修正申告をした場合、原則として過少申告加算税はかかりません。ただし、納付が遅れた期間に応じて延滞税が生じる場合があります。税務署から連絡を受けたときは、税務調査としての連絡なのか、行政指導なのかを確認することが重要です。
税務調査は、大きく分けると強制調査と任意調査に分けられます。一般的な個人事業主や法人に対して行われるのは任意調査であり、その方法には、事業所や自宅を訪問する実地調査のほか、電話や文書などによる簡易な接触があります。
強制調査とは、国税局査察部が裁判所の令状に基づいて強制的に実施する調査です。多額の脱税や悪質な所得隠しなどが疑われる場合に行われる調査であり、納税者は調査を拒否できません。
強制調査の対象となるのは法人だけではありません。個人であっても、悪質な脱税行為などが疑われる場合には、強制調査が実施される可能性があります。
強制調査は、脱税事件の立件や告発を目的として行われる査察調査です。調査によって不正が発覚した場合は、刑事事件として告発され、刑事罰が科される可能性もあります。
任意調査は、主に税務署の調査官によって実施される税務調査です。一般に「税務調査」という場合は、この任意調査を指すケースが多くなっています。
任意調査は、強制調査のように令状に基づいて強制的に捜索するものではなく、納税者の理解と協力を得ながら進められます。ただし、調査官には法律に基づく質問検査権があり、納税者には質問への回答や帳簿書類の提示・提出に応じる義務があるため、正当な理由なく税務調査を拒否することはできません。
実地調査は原則として電話などで事前通知され、調査日時、場所、対象税目、対象期間、調査目的などが伝えられます。通知から調査日までの法定日数はありませんが、準備できる程度の時間的余裕を置く運用とされています。入院や葬儀、業務上やむを得ない事情など、合理的な理由があれば、調査日時や場所の変更を税務署と協議することが可能です。
一方、事前に通知すると証拠隠しなどが行われ、正確な課税が困難になるおそれがある場合には、事前通知なしで任意調査が行われることもあります。
実地調査とは、調査官が調査対象となる納税者の事業所や自宅などを訪問し、帳簿や書類の確認、事業主などへの質問を行う税務調査です。個人に対する実地調査では、確定申告書、総勘定元帳、請求書、領収書、預金通帳などのほか、取引に関係する電子データの提示・提出を求められることがあります。
電子帳簿や電子データについては、パソコンなどの画面表示、印刷、記録媒体へのコピー、e-Tax、オンラインストレージ、メールなどによる提出を求められる場合があります。
実地調査は、従来、一般調査、特別調査、着眼調査などに分けて説明されることがあります。
一般調査とは、確定申告の内容が正しいかを確認するために行われる通常の調査です。特別調査は、特別調査部門などの調査官によって行われ、一般調査や事前の情報収集によって不正が疑われる場合などに実施されます。国税庁の公表資料では、特別調査と一般調査を合わせた実績が示されています。
着眼調査とは、資料情報や申告内容などを分析した結果、特定の項目に申告漏れの可能性がある個人を対象として行われる調査です。確認する事項を絞って進めるため、比較的短期間で行われるものが多いとされています。
簡易な接触では、調査官が納税者の事業所や自宅を訪問せず、文書や電話で申告内容を確認したり、税務署への来署を求めて質問したりします。提出された確定申告書の記載内容や計算について確認が必要な場合などに行われます。
ただし、電話や文書による連絡であっても、税務調査として行われる場合と行政指導として行われる場合があります。連絡を受けた段階で、どちらの手続に該当するのかを確認してください。
国税庁が2025年12月に公表した令和6事務年度(2024年7月から2025年6月まで)の実績によると、所得税の実地調査と簡易な接触は合計約73万6千件行われ、そのうち申告漏れなどが確認されたものは約36万9千件でした。所得税の追徴税額は、加算税を含めて合計1,431億円で、実地調査1件当たりの追徴税額は約241万円となっています。
また、無申告者に対する所得税の実地調査は4,812件で、追徴税額は252億円、1件当たりでは約524万円でした。無申告の場合でも税務署の調査対象になり、申告している場合の実地調査より追徴税額が高額になりやすい傾向があります。
これらの数値は、国税庁「令和6事務年度における所得税及び消費税調査等の状況」で公表されています。
個人を対象にして行われる税務調査とは、税務署や国税局が申告所得や納税額の正確性を確認するため、質問や帳簿・請求書・預金資料などの検査を行う手続です。所得税の申告内容だけでなく、消費税、譲渡所得、相続税などについて行われるケースもあります。
個人の税務調査には、税務署から電話や文書などで申告内容を確認する「簡易な接触」と、調査官が事業所や自宅などを訪問する「実地調査」があります。単なる計算誤りや記載漏れについて自主的な見直しを求める行政指導は、税務調査とは区別されています。行政指導に従って自主的に修正した場合、原則として過少申告加算税は課されませんが、延滞税が発生することはあります。
税務署が個人に行う調査では、事業所得や不動産所得のほか、副業、ネット通販、暗号資産、海外投資、無申告、消費税の還付申告なども確認対象になります。国税庁は、各種の資料情報やAIも活用して調査対象を選定しています。
国税庁が2025年12月に公表した令和6事務年度(2024年7月から2025年6月まで)の実績では、所得税の実地調査と簡易な接触は合計約73万6千件で、このうち申告漏れなどが確認された件数は約36万9千件でした。加算税を含む追徴税額の合計は1,431億円で、実地調査1件当たりの追徴税額は約241万円です。
また、無申告者に対する所得税の調査は4,812件、1件当たりの追徴税額は約524万円でした。暗号資産取引や海外投資などについても調査が行われており、取引先から提出された資料、国外送金等調書、CRSに基づく金融口座情報などが活用されています。
個人を対象とした実地調査は、一般的に次のような流れで進みます。
税務調査の対象となった場合、原則として税務署から電話などで事前通知が行われます。事前通知とは、税務調査を実施する旨を知らせる連絡です。調査日時・場所、調査の目的、対象となる税目、調査対象期間、必要となる帳簿や書類などが伝えられます。
事前通知から実地調査までの日数について、法律上の一律の決まりはありません。ただし、帳簿や関係書類を準備できる程度の時間的余裕を置く運用とされています。入院や葬儀、業務上やむを得ない事情などの合理的な理由がある場合は、調査日時や場所の変更を税務署と協議できます。
なお、証拠書類が隠されるなど、事前通知をすると正確な課税が難しくなるおそれがある場合には、通知をせずに実地調査が行われることもあります。
税務調査には税理士の立ち会いが認められています。税務代理権限証書に必要な同意を記載しておけば、事前通知や調査結果の説明を税理士に対して行ってもらうことも可能です。当事務所に寄せられるご相談の傾向として、顧問税理士がいる方から税務調査対応をご依頼いただくことも珍しくありません。日常の申告業務と税務調査対応では、求められる経験が異なるためです。
実地調査の日時になると、調査官が個人の事業所や自宅などを訪問します。事前通知を受けたら、指定された対象期間の帳簿、請求書、領収書、契約書、預金通帳などを整理しておきましょう。
調査対象期間は事前通知で示され、当初は3年分を対象とするケースもあります。ただし、税務署が増額更正や決定を行える期間は、2026年時点では原則として法定申告期限から5年です。偽りその他の不正行為による脱税などが認められる場合は、原則として7年まで遡ることがあります。
また、減価償却資産の取得価額などを確認するため、通知された対象期間より前の書類が必要になる場合もあります。調査を円滑に進めるため、まずは通知された期間の帳簿や関係書類を準備し、それ以前の資料についても保存状況を確認しておくことが大切です。
帳簿が電子データで保存されている場合は、パソコンなどの画面表示、印刷、記録媒体へのコピー、e-Tax、オンラインストレージ、メールなどによる提出を求められることがあります。正当な理由なく帳簿の提示・提出を拒んだり、虚偽の帳簿を提示したりすると、2026年時点では1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金の対象となる可能性があります。
税務署が帳簿や書類を預かる「留置き」は、原則として納税者の承諾が必要です。承諾なく強制的に持ち帰る手続ではありません。
個人に対する実地調査は1日程度で終わるケースもありますが、事業規模、帳簿の量、確認事項などによって必要な日数は異なります。実地調査やその後の確認が終了すると、税務署から調査結果について説明または通知が行われます。
申告内容に問題がなかった場合は、そのまま税務調査が終了します。申告内容の誤りや申告漏れを指摘され、その内容を認める場合は、指摘された箇所を修正するための修正申告を行います。無申告だった場合は、期限後申告が必要です。
修正申告や期限後申告をすると、本来納めるべきだった税額に加え、過少申告加算税や無申告加算税などが課される場合があります。納期限の翌日から納付日までの期間に応じた延滞税が発生することもあります。
個人に対して行われる税務調査では、まず事業の内容、取引の流れ、現在の収入状況などについて質問されます。会話を通して事業の状況を確認した後、帳簿や関係書類の調査が行われます。
調査官は、売上の計上漏れがないか、売上や経費の計上時期にずれがないか、事業と関係のない支出や水増しした経費が含まれていないかなどを確認します。帳簿と請求書、領収書、契約書などを照合するほか、取引記録や資金の流れを確かめるため、預金通帳や電子メールなどの提示を求められるケースもあります。
譲渡所得に関する調査では、土地や建物、金地金、株式などが対象になるケースが多くなっています。正しく申告されているかを確認するため、譲渡契約書、資金移動の状況、売却した資産の取得価格などについて質問されたり、関係書類の提示を求められたりします。
相続税の税務調査では、亡くなった方の家族関係や相続人の状況などについて質問されます。また、預貯金、生命保険、海外資産、不動産などについても確認が行われ、資産の移動を示す通帳や関係書類などが調べられます。
税務調査で申告のミスや不正が見つかった場合は、指摘された箇所を修正し、正しい所得や税額を申告します。その結果、追加の本税だけでなく、申告状況に応じた加算税や延滞税が課される可能性があります。
確定申告が必要だったにもかかわらず申告していなかった場合は、無申告加算税の対象となります。確定申告はしていたものの、申告した税額が本来の税額より少なかった場合は、過少申告加算税が課されることがあります。
売上を意図的に除外する、架空経費を計上する、帳簿や証拠書類を改ざんするなど、事実の隠蔽や仮装があると判断された場合は、過少申告加算税や無申告加算税に代えて、より負担の重い重加算税が課される可能性があります。そのほか、納付が遅れた期間に応じて延滞税も発生するため、確定申告は期限内に正しく行い、誤りに気づいた場合は早めに見直すことが重要です。
国税庁では、毎年、個人と法人に分けて税務調査等の実施状況を公表しています。個人に対する税務調査とは、税務署や国税局が、申告した所得や税額が正しいかを確認するため、質問をしたり、帳簿・請求書・預金資料などを検査したりする手続です。
個人に対する確認には、事務所や自宅などで帳簿等を確認する「実地調査」と、電話や文書などで申告内容の見直しを求める「簡易な接触」があります。なお、単純な計算誤りや記載漏れの確認を求める行政指導は税務調査とは異なり、行政指導を受けて自主的に修正した場合、原則として過少申告加算税は課されません。ただし、納付時期によっては延滞税が生じることがあります。
2026年時点で最新となる令和6事務年度(2024年7月から2025年6月まで)の全国実績では、所得税の実地調査と簡易な接触を合わせて、約73万6千件の調査等が実施されました。このうち、申告漏れや計算誤りなどが確認された件数は約36万9千件です。
ただし、この件数には電話や文書による簡易な接触も含まれているため、すべてのケースで税務職員が自宅や事業所を訪問したわけではありません。また、税務署から個人に連絡があったからといって、直ちに申告漏れが確定しているわけでもありません。まずは、税務調査なのか行政指導なのか、対象となる税目や期間はどこまでかを確認することが重要です。
国税庁は、申告内容だけでなく、さまざまな資料情報やAIも活用して調査対象を選定しています。事業所得や不動産所得、譲渡所得のほか、副業、ネット通販、暗号資産、海外投資、無申告、消費税の還付申告なども確認対象になります。
令和6事務年度における所得税の追徴税額は、加算税を含めて合計1,431億円でした。実地調査1件当たりの追徴税額は約241万円で、このうち、より詳細な確認が行われる特別調査・一般調査では1件当たり約299万円となっています。
簡易な接触よりも実地調査の1件当たりの追徴税額が高くなる背景には、税務署が保有する資料情報や申告内容の分析を踏まえて調査対象を選定していることがあります。ただし、追徴税額は申告漏れの内容や対象期間によって大きく異なるため、公表された平均額が個々の納税者にそのまま当てはまるわけではありません。
当事務所に寄せられるご相談の傾向として、追徴税額そのものよりも「確定した税額を払えるかどうか」への不安が大きいケースが見受けられます。納付に関する相談を含め、税額確定後の対応にも検討できる道があります。
令和6事務年度には、無申告者に対する所得税の実地調査が4,812件行われ、追徴税額は252億円、1件当たりでは約524万円となりました。無申告の場合は複数年分の税額や加算税などが生じることがあり、通常の実地調査より追徴税額が高額になりやすい傾向があります。
暗号資産取引を行う個人に対しては613件の実地調査が行われ、申告漏れ所得は156億円、追徴税額は46億円、1件当たりの追徴税額は約745万円でした。また、海外投資等を行う個人に対する実地調査は2,666件で、追徴税額は231億円、1件当たりでは約866万円です。国外送金等調書やCRSによる金融口座情報も、調査対象の選定や申告内容の確認に活用されています。
個人事業主でも、年間の売上高が1,000万円を超える事業者や、インボイス発行事業者として登録している事業者は、消費税の課税事業者となり、消費税の申告・納税が必要になる場合があります。
令和5事務年度における個人事業者の消費税の調査等の件数は、特別・一般調査が21,741件、着眼調査が4,835件、簡易な接触が93,919件で、合計120,495件でした。消費税では、売上げの計上だけでなく、仕入税額控除や還付申告の内容なども確認対象になります。
令和5事務年度に個人の消費税について申告漏れ等が指摘された件数は、特別・一般調査が18,521件、着眼調査が3,493件、簡易な接触が55,533件でした。追徴税額は合計423億円で、当該事務年度の公表時点において過去最高となっています。
1件当たりの追徴税額は、特別・一般調査が158万円、着眼調査が32万円、簡易な接触が7万円です。所得税と同様に、消費税についても、簡易な接触と比べて特別・一般調査の1件当たりの追徴税額が高くなっています。
参照:国税庁「令和6事務年度 所得税及び消費税調査等の状況」 参照:国税庁「令和5事務年度 所得税及び消費税調査等の状況」
個人に対する税務調査とは、税務署や国税局が、申告した所得や税額が正しいかを確認するために、帳簿、請求書、預金資料などを調べる手続です。事務所や自宅などで行う実地調査だけでなく、電話や書面による簡易な接触もあります。
国税庁は、事業所得がある個人について、実地調査1件当たりの申告漏れ所得金額が高額だった業種を公表しています。令和5事務年度における上位10業種は、次のとおりです。
参照:国税庁「令和5事務年度 所得税及び消費税調査等の状況」
このランキングは、各業種が税務調査を受ける確率を示したものではありません。実地調査を行った事案について、1件当たりの申告漏れ所得金額が高額だった業種を示したものです。そのため、表に掲載されていない業種であれば個人の税務調査を受けない、という意味ではありません。
税務署は業種だけでなく、申告内容や各種の資料情報などを踏まえて調査対象を選定しています。国税庁は、資料情報やAIも調査対象の選定に活用しており、事業所得のほか、不動産所得、譲渡所得、副業、ネット通販、暗号資産、海外投資、無申告、消費税の還付申告なども確認対象としています。
最新の全国実績である令和6事務年度では、個人の所得税に関する実地調査と簡易な接触は合計約73万6千件で、そのうち申告漏れなどがあった件数は約36万9千件でした。したがって、税務署による個人への調査に備える際は、業種別ランキングだけで判断せず、売上の計上漏れ、必要経費の根拠、帳簿と預金資料の整合性など、申告内容を確認しておくことが重要です。
参照:国税庁「令和6事務年度 所得税及び消費税調査等の状況」
税務調査は、納税義務がある人であれば、個人事業主や会社員、副業をしている人など、誰でも対象に選ばれる可能性があります。税務調査とは、税務署や国税局が、申告した所得や税額が正しいかを確認するために、帳簿、請求書、預金資料などを調べる手続です。
税務署は、限られた人員で効率的に申告内容を確認するため、資料情報やAIなどを調査対象の選定に活用しています。そのため、すべての個人が同じ確率で選ばれるわけではなく、申告漏れや計算誤りが疑われる場合などは、税務調査の対象になりやすい傾向があります。
まず、確定申告をしていない人や、確定申告の内容に疑義が生じている人は、税務調査の対象になりやすいと考えられます。たとえば、税務署が把握している取引資料と申告内容に差がある場合や、売上・所得の変動に不自然な点がある場合などです。
国税庁が公表した令和6事務年度の実績では、所得税の実地調査と簡易な接触は合計約73万6千件で、そのうち申告漏れ等があった件数は約36万9千件でした。また、無申告者に対する所得税の実地調査は4,812件で、1件当たりの追徴税額は約524万円となっています。無申告の場合は、本来納める税額に加えて加算税や延滞税が生じる可能性があるため、申告の要否を早めに確認することが大切です。
前述したように、申告漏れ所得の金額が大きい業種を営んでいる個人事業主も、税務調査の対象になりやすい傾向があります。ただし、特定の業種に該当するだけで税務調査が行われるわけではありません。申告内容、取引規模、過去の申告状況、税務署が保有する資料情報などを踏まえて総合的に判断されます。
個人の税務調査では、事業所得や不動産所得、譲渡所得だけでなく、副業、ネット通販、暗号資産、海外投資なども確認対象になります。国税庁は、暗号資産取引や海外投資等を行う個人についても実地調査を行っており、国外送金等調書やCRS金融口座情報などを活用しています。
当事務所に寄せられるご相談の傾向として、フリマ、転売、配信、投資などのネット取引による所得が税務署に把握されるのかという不安のご相談が増えています。取引履歴や入出金記録が残る取引ほど、申告の要否を早めに整理した方がよいでしょう。
個人事業主は、基準となる期間の課税売上高が1,000万円を超えると、原則として消費税の課税事業者となります。そのため、数年にわたり売上が1,000万円をわずかに下回る状態が続いている場合には、売上の計上漏れや計上時期などを確認されることがあります。
ただし、課税売上高が1,000万円前後であるという事実だけで、不正や税務調査の対象になると決まるわけではありません。季節変動や取引先の増減など、合理的な理由によって売上が同程度で推移することもあります。調査で説明できるよう、請求書、領収書、契約書、入金記録などを適切に保存しておくことが重要です。
また、インボイス制度の開始後は、従来の課税売上高だけを見て税務調査の可能性を一律に判断することはできません。消費税の申告状況や還付申告を含め、個々の事情に応じて確認される可能性があります。
税務署から個人に連絡があっても、必ずしも税務調査とは限りません。単純な計算誤りや記載漏れについて確認や自主的な修正を求める「行政指導」は、税務調査とは別の手続です。税務署から連絡を受けた場合は、税務調査なのか行政指導なのか、対象となる税目や年分は何かを確認したうえで対応することが大切です。
インボイス制度が個人への税務調査に及ぼす影響について見ていきましょう。
個人に対する税務調査とは、税務署や国税局が所得や税額の申告内容を確認するため、帳簿、請求書、領収書、預金資料などを調べる手続です。インボイス制度への登録だけで税務調査の実施が決まるわけではありませんが、消費税の課税事業者になれば、所得税だけでなく消費税の申告内容やインボイスの保存状況なども確認対象になり得ます。
インボイス制度とは、2023年10月よりスタートした消費税に関する制度の1つです。インボイス制度の正式名は「適格請求書等保存方式」で、インボイスの正式名称は「適格請求書」といいます。
基準期間の課税売上高が1,000万円以下の個人事業主であっても、適格請求書発行事業者として登録することで、消費税の課税事業者となります。登録後は、消費税の申告と納税が必要になるため、所得税の帳簿だけでなく、消費税区分やインボイスの管理にも注意が必要です。
インボイス制度がスタートしたことによって、具体的には以下のような点が従来と変更になっています。
消費税は多くの商品やサービスの取引に対して発生するため、売上と仕入れの双方で消費税が生じます。
消費税の申告では、売上にかかる消費税額から仕入れなどにかかる消費税額を差し引いて納付税額を計算します。これを「仕入税額控除」と呼びます。
インボイス制度の開始後は、原則として、一定の事項が記載された帳簿と適格請求書などを保存しなければ仕入税額控除を受けられません。ただし、免税事業者などからの仕入れについても、一定期間は経過措置によって仕入税額相当額の一定割合を控除できる場合があります。したがって、「インボイスがなければ一切控除できない」と一律に判断せず、取引時期や保存書類を確認することが大切です。
インボイスを発行できるのは、税務署長の登録を受けた適格請求書発行事業者に限られます。適格請求書発行事業者となるためには、事前に登録申請を行う必要があります。
インボイスには一定の記載要件があり、適格請求書発行事業者の登録番号、取引年月日、取引内容、税率ごとに区分した対価の額や消費税額など、必要事項を記載しなければなりません。
インボイスを受け取った事業者は、仕入税額控除の適用を受けるため、帳簿とインボイスなどを保存する必要があります。発行した事業者にも、交付したインボイスの写しを保存する義務があります。
電子データで受領・交付したインボイスについては、電子データのまま適切に保存することが重要です。税務調査では、画面表示や印刷のほか、記録媒体へのコピー、メールなどによる電子データの提出を求められる場合があります。
適格請求書発行事業者となった事業者は、課税売上高にかかわらず消費税の課税事業者となります。一方、適格請求書発行事業者ではない免税事業者はインボイスを発行できません。
そのため、免税事業者からの仕入れは、原則として仕入税額控除が制限されます。ただし、前述した経過措置が適用される場合があるため、申告時には取引年月日や相手方の登録状況を確認する必要があります。
インボイス制度が始まったことによって、個人の税務調査に影響が及ぶ可能性があるポイントとして、以下のような点が挙げられます。
従来から、所得税については売上規模にかかわらず個人の税務調査が行われる可能性があります。一方、消費税については、原則として基準期間の課税売上高が1,000万円を超えるかどうかが納税義務を判定する基準の1つとなっていました。
適格請求書発行事業者として登録した場合は、課税売上高が1,000万円以下であっても消費税の課税事業者となります。そのため、個人の税務調査では、所得税に加えて消費税の申告内容も確認対象となることがあります。
これまで消費税の免税事業者であった個人事業主が、インボイス制度を契機に課税事業者となった場合、消費税の計算、税率区分、記帳方法、インボイスの発行・受領・保存が適切に行われているかを確認される可能性があります。
特に、売上げに適用する税率、課税仕入れと対象外取引の区分、登録番号を含む記載事項、電子インボイスの保存状況などは、日頃から整理しておく必要があります。故意ではない計算ミスや記帳漏れを防ぐためにも、申告前に帳簿と請求書、預金の入出金などを照合することが大切です。
消費税の課税事業者が、免税事業者から受け取った通常の請求書について、経過措置を考慮せず仕入税額相当額の全額を控除している場合、税務調査で仕入税額控除の一部または全部が認められない可能性があります。
また、受け取ったインボイスが記載要件を満たしているか、取引先の登録番号や取引内容に誤りがないかも確認しておきましょう。保存書類に不足がある場合は、申告前に取引先へ確認し、帳簿との整合性を見直すことが重要です。
適格請求書発行事業者として登録していない場合でも、基準期間の課税売上高が1,000万円を超えるなど、消費税の課税事業者に該当する要件を満たせば、消費税の申告と納税が必要です。
「インボイスの登録事業者ではないから免税事業者だろう」と判断していると、消費税が無申告となるおそれがあります。インボイスの登録状況と消費税の納税義務は分けて確認しなければなりません。
税務署から申告内容について連絡があった場合でも、単なる計算誤りや記載漏れの確認を求める行政指導であり、税務調査には該当しないことがあります。連絡を受けたときは、担当部署、対象税目、対象期間、連絡の目的を確認しましょう。
税理士法人松本の見解では、実際のご相談は税務署から調査の連絡が来てから始まるケースが最も多い傾向にあります。連絡が来た後からでも、対象となる帳簿やインボイスを整理し、事実関係を正確に確認するなど、初動の対応によって結果は大きく変わります。
税務調査とは、税務署や国税局が、申告した所得や税額が正しいかを確認するために、帳簿、請求書、領収書、預金資料などを調べる手続きです。個人に対する税務調査では、事業所得や不動産所得だけでなく、副業、ネット通販、暗号資産、海外投資、無申告、消費税の還付申告なども確認対象になります。
税務署が申告内容を確認し、税額を増額する更正や決定ができる期間は、2026年時点では原則として法定申告期限から5年です。偽りその他の不正行為による脱税などがある場合には、原則7年まで遡ることがあります。
実際の個人税務調査では、事前通知で特定の対象期間が示されます。ただし、減価償却資産の取得価額などを確認する必要がある場合には、通知された期間より前の帳簿や契約書を求められることもあります。
直近の申告を適正に行っていても、過去の年分に申告漏れや無申告があれば、税務調査で判明した際に本税、延滞税、加算税などが生じる可能性があります。「税務署から連絡がないから問題ない」と判断せず、心当たりがある場合は早めに申告内容を確認することが大切です。
税務調査では、過去の帳簿、請求書、領収書、契約書、預金通帳、振込明細などの提示や提出を求められます。個人事業主が保存すべき期間は、申告方法や書類の種類によって異なりますが、帳簿や決算関係書類などには7年間の保存が必要なものがあります。税務調査が最長7年まで遡る可能性も踏まえ、該当する帳簿書類を適切に保存しておきましょう。
書類は年ごと、月ごと、取引項目ごとに整理し、税務署から確認を求められた際に取り出せる状態にしておくことが重要です。電子取引データや電子帳簿については、画面表示、印刷、記録媒体へのコピー、メール、オンラインストレージなどによる提出を求められる場合があります。
特に現金取引が多い事業では、預金口座の入出金だけでは取引の流れを確認できません。売上伝票、レジ記録、領収書、仕入資料、現金出納帳などをそろえ、売上や経費の根拠を説明できるようにしておきます。
正当な理由なく帳簿書類の提示や提出を拒んだり、虚偽の帳簿を提示したりすると、2026年時点では1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金の対象となる可能性があります。一方、税務署が帳簿書類を預かる「留置き」は、原則として納税者の承諾が必要です。
実地調査は、原則として電話などで事前通知が行われます。通知される主な内容は、調査日時、調査場所、対象税目、対象期間、調査目的などです。通知から調査日までの法定日数はありませんが、準備できる程度の時間的余裕を置く運用とされています。
入院、葬儀、業務上やむを得ない事情などの合理的な理由がある場合は、調査日時や場所の変更を税務署と協議できます。都合がつかないからと連絡を放置せず、事情を説明したうえで日程を調整しましょう。
当事務所に寄せられるご相談の傾向として、調査の連絡から実際の調査日までの限られた期間に、何を準備すべきか分からないまま当日を迎えてしまう方が多く見られます。まずは通知内容を整理し、対象年分の申告書、帳簿、請求書、領収書、契約書、預金資料など、準備する資料の段取りを決めることが重要です。
なお、証拠隠しなどによって正確な課税が困難になるおそれがある場合には、事前通知なしで税務調査が行われることもあります。
税務署から連絡があっても、すべてが税務調査とは限りません。単純な計算誤りや記載漏れについて、自主的な確認や修正を求める「行政指導」の場合もあります。
行政指導に基づいて自主的に修正した場合、原則として過少申告加算税はかかりませんが、納付が遅れた期間に応じて延滞税が生じることがあります。連絡を受けたときは、税務調査の事前通知なのか、行政指導なのかを確認してください。
前年度と比べて売上が大幅に増減した、赤字が急に拡大した、経費や消費税の還付額が増えたなど、申告内容に大きな変化がある場合には、その理由を説明できるようにしておく必要があります。
業績の向上、取引先の増減、設備投資、事業所の移転など、事業上の合理的な理由があれば、それ自体が問題になるわけではありません。ただし、税務署から「売上の計上漏れがないか」「経費が事業に必要なものか」「前年までと会計処理が変わっていないか」などを確認される可能性があります。
売上の増減については請求書や入金資料、経費の増加については契約書、見積書、請求書、領収書などを整理し、変化が生じた経緯と金額の根拠を説明できるようにしておきましょう。
個人事業主、法人のいずれについても、「開業後3年で税務調査が来る」という法令上の決まりはありません。開業から3年未満で個人税務調査を受けることもあれば、長期間にわたって実地調査を受けないこともあります。
税務署は、申告内容、蓄積された資料情報、業種、取引規模、過去の申告状況などを踏まえて調査対象を選定しており、国税庁はAIも活用しています。そのため、開業年数だけを基準に税務調査の有無を予測することはできません。
開業後は早い段階から記帳方法や証憑の保存ルールを整え、毎年の申告を適正に行うことが基本的な税務調査対策になります。
過去に無申告の年分や大きな申告漏れがある場合は、税務署から連絡が来るまで放置せず、早めに状況を確認することが重要です。税務署は、支払調書、取引先への調査、預金資料、国外送金等調書、CRS金融口座情報など、さまざまな資料情報を調査対象の選定に活用しています。
国税庁が公表した令和6事務年度の実績では、無申告者に対する所得税の実地調査は4,812件で、1件当たりの追徴税額は約524万円でした。無申告に対する調査は、通常の実地調査よりも追徴税額が高額になりやすい傾向があります。
税務調査の事前通知を受ける前に自主的に申告や修正申告を行う場合と、通知後または調査で指摘された後に申告する場合とでは、加算税の取扱いが異なる可能性があります。ただし、慌てて不正確な申告をすると問題が複雑になるため、売上、経費、入出金資料などを確認し、正しい内容で手続きを進めましょう。
現在は個人事業主で、近い将来に法人成りを検討している場合には、設立手続きだけでなく、個人から法人への取引や資産の引継ぎについても整理しておくことが大切です。
個人事業主から法人成りする際には、役員報酬の設定、棚卸資産や固定資産の引継ぎ、売掛金・買掛金の処理、個人と法人の契約関係など、確認すべき事項が多くあります。個人事業の廃業日と法人の設立日前後で取引を正しく区分しなければ、売上や経費の計上時期について確認を受ける可能性があります。
法人成りの前後で売上や利益が大きく変動した場合には、その理由を説明できる資料を準備しておきましょう。特に、個人事業の期間に計上すべき売上を法人の売上にしたり、法人設立後の経費を個人事業の経費にしたりしないよう注意が必要です。
個人として申告していた帳簿と、法人設立後の帳簿との間で会計処理に一貫性がない場合も、処理を変更した理由や根拠を確認されることがあります。法人成りの時点における資産、負債、契約、請求、入金の状況を一覧にしておくと、個人と法人の区分を説明しやすくなります。
法人に対する税務調査であっても、取引の連続性を確認するため、法人成り前の個人事業の申告や帳簿について質問される場合があります。特に節税を目的として法人成りする場合は、形式だけでなく取引実態に沿った処理になっているかを事前に確認しておきましょう。
税務調査とは、税務署や国税局が、納税者の申告所得や税額が正しいかを確認するために行う手続です。申告書だけでなく、帳簿、請求書、領収書、契約書、預金資料、電子データなどを確認し、必要に応じて取引内容や経費について質問します。
税務調査には、税務署内で電話や書面などにより申告内容を確認する「簡易な接触」と、調査官が事務所や店舗、自宅などを訪問する「実地調査」があります。
個人の税務調査では、個人事業主の事業所得だけでなく、不動産所得、譲渡所得、副業収入、ネット通販、暗号資産取引、海外投資なども確認対象になります。申告をしていない方や、消費税の還付申告をした方が調査対象となる場合もあります。
税務署は、提出された申告書だけを見て調査先を決めるわけではありません。国税庁が収集した各種の資料情報や、取引先の調査で把握した情報などを照合し、AIも活用しながら調査対象を選定しています。
税務署から連絡があったとしても、すべてが税務調査とは限りません。単純な計算誤りや記載漏れについて、電話や書面で自主的な確認・修正を求める「行政指導」が行われることもあります。
行政指導に基づいて自主的に修正申告をした場合、原則として過少申告加算税は課されません。ただし、本来の納期限から納付日までの期間に応じて、延滞税が生じることがあります。税務署から連絡を受けたときは、税務調査の事前通知なのか、行政指導による確認なのかを最初に確かめることが重要です。
個人に対する実地調査は、原則として電話などで事前通知が行われます。通知される主な事項は、調査日時、調査場所、対象となる税目・期間、調査目的などです。
事前通知から調査日までの法定日数はありませんが、準備に必要な時間的余裕を置く運用とされています。入院や葬儀、業務上やむを得ない事情などの合理的な理由がある場合は、調査日時や場所の変更を税務署と協議できます。
一方、事前に知らせることで証拠書類の隠匿などが行われ、正確な課税が困難になるおそれがある場合には、事前通知なしで税務調査が行われることがあります。
調査当日は、帳簿や領収書などの紙の資料に加え、会計ソフト、電子帳簿、メール、オンラインストレージに保存された請求書などの電子データについても、提示や提出を求められる場合があります。画面への表示、印刷、記録媒体へのコピー、e-Taxなどを通じた提出が求められることもあります。
正当な理由なく帳簿書類の提示・提出を拒否したり、虚偽の帳簿を提示したりすると、2026年時点では1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金となる可能性があります。ただし、帳簿書類を税務署が預かる「留置き」は原則として納税者の承諾が必要であり、承諾なく強制的に持ち帰るものではありません。
税務署が申告内容を確認し、増額更正や決定を行える期間は、2026年時点では原則として法定申告期限から5年です。偽りその他の不正行為による脱税などが認められる場合には、原則として7年まで遡ることがあります。
また、事前通知で示された調査対象期間より前の資料であっても、減価償却資産の取得価額など、対象期間の申告内容を確認するために必要な帳簿や資料は確認される場合があります。
国税庁が2025年12月に公表した令和6事務年度の実績によると、所得税の実地調査と簡易な接触は合計約73万6千件で、そのうち申告漏れなどがあった件数は約36万9千件でした。所得税の追徴税額は、加算税を含めて合計1,431億円です。
実地調査1件当たりの追徴税額は約241万円で、無申告者に対する調査では1件当たり約524万円でした。これらは全国の平均的な実績であり、実際の追徴税額は申告漏れの内容、対象期間、加算税の種類などによって異なります。
税務署から調査の連絡を受けても、慌ててその場で詳しい説明をする必要はありません。担当者の所属・氏名、税務調査と行政指導のどちらなのか、対象税目、対象期間、予定日時・場所を確認し、提出済みの申告書と帳簿、請求書、領収書、通帳、契約書などを整理します。
税理士法人松本の見解では、調査当日の受け答え以上に、事前に帳簿や領収書を整理し、取引や経費について説明の筋道を整えておくことが重要です。申告内容に誤りや資料不足が見つかった場合は、調査官へ回答する前に税理士へ相談し、事実関係と税務上の取扱いを確認することが望ましいでしょう。
税理士へ依頼し、税務代理権限証書に必要な同意を記載している場合は、事前通知や調査結果の説明を税理士に行ってもらうこともできます。
税務調査とは、申告した所得や税額が正しいかを確認するため、税務署や国税局が質問を行い、帳簿、請求書、預金資料などを検査する手続です。法人だけでなく、個人事業主や不動産所得・譲渡所得がある方、副業、ネット通販、暗号資産取引、海外投資などを行う個人も税務調査の対象になります。
個人に対する税務署の確認には、事務所や自宅などで行われる「実地調査」のほか、電話や書面などによる「簡易な接触」があります。なお、単なる計算誤りや記載漏れについて自主的な見直しを求める「行政指導」は、税務調査とは区別されています。
国税庁が2025年12月に公表した令和6事務年度(2024年7月~2025年6月)の実績によると、所得税の実地調査と簡易な接触は合計約73万6千件行われ、このうち申告漏れなどが確認されたものは約36万9千件でした。加算税を含む追徴税額は合計1,431億円で、実地調査1件当たりの追徴税額は約241万円、特別・一般調査では約299万円となっています。
税務署は、保有する資料情報やAIなども調査対象の選定に活用しています。特別・一般調査は、申告漏れなどが見込まれる事案を対象に、相応の日数をかけて行われるため、簡易な接触よりも1件当たりの追徴税額が高くなる傾向があります。また、無申告者に対する所得税の実地調査では、令和6事務年度の1件当たりの追徴税額が約524万円となっており、通常の実地調査より高額になりやすい傾向が見られます。
税務調査で申告漏れや誤りを指摘されると、追加の本税だけでなく、内容に応じて過少申告加算税、無申告加算税、重加算税や延滞税が課される場合があります。正しく申告していない自覚がある場合は、放置せず、期限後申告や修正申告が必要かを早めに確認することが重要です。自主的に申告する時期や状況によっては、無申告加算税や過少申告加算税の取扱いが変わることがあります。
ただし、税務署からの連絡がすべて税務調査とは限りません。行政指導として自主的な修正を求められた場合は、原則として過少申告加算税は課されませんが、納付が遅れた期間に応じて延滞税が生じることがあります。まずは、実地調査の事前通知なのか、簡易な接触や行政指導なのかを確認しましょう。
税理士法人松本の見解では、税務署からの電話や書面を「様子を見よう」と置いてしまう方が少なくありませんが、連絡への応答が早いほど、その後の進め方に選択肢が残ります。税務調査の事前通知を受けた場合も、対象となる税目・期間・日時・場所を確認し、帳簿や請求書、預金資料、電子データなどを整理して対応することが大切です。
なお、税務署が増額更正や決定を行える期間は、2026年時点では原則として法定申告期限から5年です。偽りその他の不正行為がある場合には、原則として7年まで遡ることがあります。個人の税務調査では複数年分を確認されることがあるため、日頃から申告内容の根拠となる資料を適切に保存しておきましょう。
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この記事の監修者
税理士法人松本 代表税理士
松本 崇宏(まつもと たかひろ)
登録者20万人以上のYouTubeチャンネル「税理士法人松本〜税金の裏のウラ〜」を運営。 代表を務める税理士法人松本では、これまでに累計5,000件を超える税務調査のご相談・対応実績があり、国税局査察部、税務署長歴任者・税務調査一筋の現場に強い国税出身のOB税理士が現在15名常駐。国税当局側の視点を踏まえて、お客様の立場を尊重し、税務調査でお悩みのお客様に適切かつ迅速に対応。また、調査前・調査中に関わらず、あらゆる状況から最善のサポートが可能。なお、調査結果が追徴税額なしとなる実績も多数取得。税務調査における専門性・経験則・折衝力から最善の結果を導き、お客様の笑顔とありがとうを励みに成長し続けている。
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