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「農業所得が少額なら確定申告は不要?」「20万円以下なら申告しなくてもよい?」と疑問に感じる方もいるでしょう。
農業所得があっても、必ず確定申告が必要になるわけではありません。専業農家か兼業農家かによって判断基準が異なり、所得金額や控除の状況によっても申告の要否が変わります。
この記事では、農業所得で確定申告が不要になるケースや必要になるケース、所得の計算方法、2025年・2026年の税制改正について解説します。
目次
農業による収入があっても、所得やほかの収入の状況によっては、所得税の確定申告が不要となる場合があります。
しかし、「農業の売上が○万円以下なら申告不要」という一律の基準があるわけではありません。
専業農家なのか、会社員として給与を受け取っている兼業農家なのか、年金を受給しているのかによって判断方法が異なります。主な考え方を整理すると以下のとおりです。
それぞれ詳しく確認していきましょう。
農業を主な仕事としており、農業所得以外に所得がない場合は、農業所得から基礎控除をはじめとする所得控除を差し引いた結果、所得税が発生するかどうかを確認します。
2025年分では、合計所得金額132万円以下の場合の基礎控除額は95万円です。
そのため、ほかに所得がなく、農業所得が95万円以下であれば、基礎控除だけでも課税される所得がなくなるため、所得税が生じないのが基本です。
2026年分については、税制改正により、合計所得金額489万円以下の場合の基礎控除額が104万円となります。
したがって、ほかに所得がない専業農家の場合、農業所得104万円以下が、基礎控除だけを考えたときに所得税が生じない一つの目安となります。
しかし、2026年分の基礎控除に関する改正規定は2026年12月1日に施行されます。2026年11月30日以前に死亡または出国に伴う準確定申告を行う場合などは適用関係が異なるため、申告時期や申告の種類に注意が必要です。
また、95万円や104万円は、あくまでも基礎控除だけを考えた場合の目安です。実際には社会保険料控除や生命保険料控除、扶養控除などの所得控除もあるため、農業所得がこれらの金額を超えていても所得税が発生しない場合があります。
反対に、農業以外にも所得がある場合には、その所得も含めて判定する必要があります。
【出典元】 国税庁|基礎控除
会社員として給与を受け取りながら農業をしている兼業農家には、いわゆる「20万円ルール」があります。
たとえば、1か所から給与を受け取っており、給与収入が2,000万円以下で、その給与について源泉徴収や年末調整が行われている場合、給与所得・退職所得以外の所得金額の合計が20万円以下であれば、原則として所得税の確定申告は必要ありません。
したがって、給与以外の所得が農業所得だけで、その農業所得が15万円だった場合などは、一定の条件を満たせば所得税の確定申告を省略できます。
しかし、判断の基準となるのは「農業の売上が20万円以下かどうか」ではありません。農産物の販売収入などから必要経費を差し引いた農業所得で判断します。
また、農業所得以外にも副業による雑所得や不動産所得などがある場合は、それらを合計して20万円を超えるかどうかを確認する必要があります。
【出典元】 国税庁|給与所得者で確定申告が必要な人
年金を受給しながら農業をしている方にも、確定申告不要制度があります。
公的年金等に係る雑所得がある方で、次の条件を満たす場合には、原則として所得税の確定申告は必要ありません。
農業所得は「公的年金等に係る雑所得以外の所得」に含まれます。そのため、ほかに対象となる所得がなく、農業所得が20万円以下であれば、上記の条件を満たすことで確定申告が不要となる可能性があります。
しかし、源泉徴収の対象とならない一定の外国年金などを受け取っている場合は、この確定申告不要制度を利用できません。
また、所得税の確定申告が不要でも、住民税の申告が必要になる場合があるため注意しましょう。
【出典元】 国税庁|公的年金等の課税関係
農業所得がある場合、所得の金額や給与・年金などの状況によって確定申告が必要になります。
「売上が少ないから大丈夫」と判断するのではなく、収入から必要経費を差し引いて所得を計算したうえで申告の要否を判断することが重要です。
専業農家など給与所得者の20万円ルールが適用されない方は、基本的に1年間の所得を計算し、所得控除などを差し引いたうえで所得税額が発生するかを確認します。
大まかな流れは次のとおりです。
農業所得が基礎控除額を超えていたとしても、社会保険料控除や扶養控除などを適用することで、最終的に納める所得税が生じない場合もあります。
そのため、農業所得だけを見て申告が必要かどうかを判断するのではなく、所得全体と利用できる控除を確認することが大切です。
会社員の兼業農家で一定の条件を満たす場合でも、給与所得・退職所得以外の所得金額の合計が20万円を超えると、原則として確定申告が必要です。
たとえば、農業所得が25万円ある場合には、20万円を超えているため申告が必要になる可能性があります。
農業所得が15万円でも、ほかに副業による雑所得が10万円あれば、合計25万円となるため同様です。
20万円の判定では、それぞれの副業収入を個別に見るのではなく、給与所得・退職所得以外の対象となる所得を合計します。
なお、給与収入が2,000万円を超える方などは、農業所得の金額にかかわらず確定申告が必要となる場合があります。
農業以外にも収入がある方は、ほかの所得との関係にも注意しましょう。
個人の所得には給与所得、事業所得、不動産所得、雑所得、譲渡所得など複数の種類があり、原則として対象となる所得を合算して所得税を計算します。
たとえば、農業を行いながらアパートを貸している場合には、農業所得だけでなく不動産所得も発生する可能性があります。
また、農業以外の個人事業を営んでいる場合には、その事業による所得についても申告が必要です。
特に兼業農家の20万円ルールでは、農業所得だけが20万円以下だからといって必ず申告不要になるわけではありません。ほかの所得も含めて判定することが重要です。
農業の確定申告を考える際には、「売上」ではなく「所得」を把握する必要があります。
年間100万円の農産物を販売したからといって、農業所得が100万円になるわけではありません。
農業所得は、農業によって得た収入から、その収入を得るために必要だった経費を差し引いて計算します。
農業所得の基本的な計算式は次のとおりです。
たとえば、年間の農業収入が300万円あり、肥料費や農薬費、燃料費などの必要経費が220万円だった場合、農業所得は80万円です。
会社員の兼業農家で、ほかに給与・退職所得以外の所得がなく、20万円ルールの要件を満たす場合には、この80万円と20万円を比較して申告の要否を判断します。
つまり、確定申告が必要かを判断するときに重要なのは入金額や売上高ではなく、収入と必要経費を正しく集計した後の所得金額です。
農業の収入となるのは、農協などへの出荷による販売代金だけではありません。
主な収入には次のようなものがあります。
特に忘れやすいのが、自分で生産した米や野菜などを家庭で食べた「家事消費」です。現金を受け取っていなくても、農産物を自家消費した場合には収入金額への計上が必要です。
農産物の家事消費については、収穫時の生産者販売価額などを基に金額を計算します。また、知人などへ無償で渡した農産物についても、家事消費等として取り扱われる場合があります。
農業による収入を得るために必要となった支出は、必要経費として農業収入から差し引くことができます。
代表的な経費としては、次のようなものがあります。
しかし、支払った金額がすべてその年の経費になるとは限りません。
たとえば、一定額以上のトラクターやコンバインなどを購入した場合は、原則として購入した年に全額を必要経費とするのではなく、耐用年数に応じて減価償却します。
また、自家用と農業用の両方で使用している車両や通信費などは、農業で使用した部分を合理的に区分する必要があります。
所得税の確定申告が不要と判断できた場合でも、何もしなくてよいとは限りません。
住民税の申告や帳簿の保存など、所得税とは別に確認しなければならない手続きがあります。
会社員の兼業農家で農業所得などが20万円以下となり、所得税の確定申告をしなかった場合でも、住民税の申告が必要になることがあります。
いわゆる20万円ルールは所得税の確定申告に関する制度であり、「20万円以下の所得には税金が一切かからない」という制度ではありません。
住民税には所得税と同じ20万円の申告不要制度がないためです。公的年金等の確定申告不要制度を利用する場合にも、住民税の申告が必要になることがあります。
具体的な手続きは自治体によって異なるため、所得税の確定申告をしない場合には、お住まいの市区町村に確認しておくと安心です。
農業所得が20万円以下であっても、会社員であれば必ず申告しなくてよいわけではありません。
20万円ルールは、一定の給与所得者について確定申告を不要とする制度です。確定申告をする場合に、20万円以下の所得を申告対象から除外できる制度ではありません。
そのため、農業所得が10万円で通常は20万円ルールによって確定申告が不要となる場合でも、医療費控除などを受けるために確定申告をするのであれば、その農業所得も含めて申告する必要があります。
「20万円以下の所得なら、確定申告書に記載しなくてもよい」という意味ではない点に注意しましょう。
所得税の確定申告が不要だったとしても、農業を事業として行い、事業所得がある場合は、帳簿の記帳や書類の保存が必要です。
国税庁によると、白色申告者は所得税の確定申告が必要ない場合も記帳・帳簿等保存制度の対象となります。
主な保存期間は以下のとおりです。
したがって、「今年は所得が少なく確定申告をしないから、領収書は捨ててもよい」と考えないようにしましょう。
農産物の販売記録や農協の精算書、直売所の売上明細、肥料・農薬の領収書、農機具の購入明細、通帳などを整理して保存しておくことが大切です。
【出典元】 国税庁|白色申告者の記帳・帳簿等保存制度
農業では、農協への出荷だけでなく、直売所やインターネット通販、個人への直接販売など販売経路が複数になるケースがあります。
販売先が増えるほど、売上の計上漏れにも注意が必要です。
税務調査では帳簿や預金口座、各種取引資料などから申告内容を確認される可能性があるため、日頃から正確に記帳しておきましょう。
農業所得を計算する際には、農協への出荷額だけを収入として集計しないように注意しましょう。
たとえば、次のような売上も確認が必要です。
また、農業に関連して受け取る補助金や奨励金、共済金などについても、農業所得の雑収入として計上するものがあります。
しかし、補助金や給付金は制度によって税務上の取扱いが異なることがあります。「補助金だから税金はかからない」と自己判断せず、交付された制度の内容を確認することが重要です。
農業特有の注意点の一つが、農産物の自家消費です。
生産した農産物を家庭で食べた場合、販売していないため「売上ではない」と考えてしまうかもしれません。
しかし、農産物を家事のために消費した場合には、その分についても農業の収入として計上します。
たとえば、収穫した米の一部を1年間の家庭用として使用した場合には、その数量と金額を把握しておく必要があります。
農業所得の記帳では、家事消費等について年末に種類別の数量と金額を見積もり、一括して記載する方法も認められています。
自家消費は実際のお金の入金がないため、計上漏れが起こりやすい項目です。毎年どの程度を家庭で消費しているのか、記録を残しておくと計算しやすくなります。
本来確定申告をしなければならなかったにもかかわらず申告期限までに申告しなかった場合は、後から本来の所得税を納付するだけでは済まないことがあります。
期限後申告となった場合には、状況に応じて無申告加算税が課される可能性があります。
さらに、納付期限の翌日から実際に税金を納めるまでの期間に応じて、延滞税が発生する場合もあります。
無申告加算税の割合は、税務署から調査の事前通知を受ける前に自主的に期限後申告した場合と、事前通知を受けた後などで異なります。
また、2024年1月1日以後に法定申告期限が到来するものについては、税務調査で帳簿の提示・提出を求められたにもかかわらず提示等をしなかった場合や、帳簿に記載された売上金額が本来記載すべき金額より大幅に少ない場合、無申告加算税が加重されることがあります。
具体的には、帳簿の提示等をしなかった場合や、売上金額の記載が本来記載すべき金額の2分の1未満だった場合は10%、3分の2未満だった場合は5%が無申告加算税に加算されます。
申告漏れに気付いた場合は、そのまま放置せず、できるだけ早く対応することが重要です。
【出典元】 国税庁|確定申告を忘れたとき
農業所得の確定申告を判断する際には、税制改正にも注意が必要です。
特に2025年分と2026年分では所得税の基礎控除が変更されているため、専業農家が「いくらまでなら所得税が生じないのか」を考える際の目安も変わります。
2025年分の所得税から基礎控除が見直されました。
2024年分までは、合計所得金額2,400万円以下の方の基礎控除は原則48万円でしたが、2025年分については合計所得金額に応じて基礎控除額が変わります。
主な金額は以下のとおりです。
そのため、ほかに所得がない専業農家で農業所得が95万円以下であれば、2025年分は基礎控除だけでも課税所得が0円となります。
以前の「農業所得が48万円を超えたら申告が必要」という情報を、そのまま2025年分以降に当てはめないよう注意が必要です。
なお、実際の申告要否は基礎控除だけではなく、ほかの所得や所得控除なども含めて判断します。
2026年度税制改正によって、2026年分の所得税についても基礎控除などが見直されています。
2026年分では、合計所得金額489万円以下の場合の基礎控除額が104万円となります。そのため、ほかに所得のない専業農家であれば、農業所得104万円以下が、基礎控除だけを考えた場合に所得税が生じない一つの目安です。
2025年分は合計所得金額132万円以下の場合に基礎控除95万円でしたが、2026年分は合計所得金額489万円以下の場合に104万円となるため、申告する年分を確認することが重要です。
しかし、この2026年分の基礎控除に関する改正規定は2026年12月1日に施行されます。
2026年11月30日以前に死亡または出国に伴う準確定申告書を提出する場合には、原則として改正前の基礎控除額が適用されます。該当する場合は、通常の確定申告とは適用関係が異なる点に注意しましょう。
また、2026年分・2027年分の給与所得控除については、最低保障額が74万円に引き上げられます。この改正についても2026年12月1日に施行されます。
一方、一定の給与所得者について、給与所得・退職所得以外の所得金額の合計が20万円を超える場合に確定申告が必要となるルールは、基礎控除とは別の制度です。
そのため、「基礎控除が104万円になったため、農業所得の20万円という基準も104万円になった」と考えないようにしましょう。
【出典元】 国税庁|基礎控除 国税庁|給与所得控除
農業所得がある場合でも、必ず所得税の確定申告が必要になるわけではありません。
専業農家では、農業所得から基礎控除や社会保険料控除などを差し引き、所得税が発生するかどうかを確認します。
一方、会社員として働きながら農業をする場合は、一定の条件のもと、給与所得・退職所得以外の所得が20万円以下であれば確定申告が不要となる場合があります。
しかし、所得税の確定申告が不要でも、住民税の申告が必要になるケースがあるため注意が必要です。また、農業所得を計算する際は、農産物の売上だけでなく、自家消費や補助金なども正しく計上しなければなりません。
農業所得の申告が必要か判断に迷う場合や、過去の申告漏れが気になる場合は、税理士法人松本までお気軽にご相談ください。
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この記事の監修者
税理士法人松本 代表税理士
松本 崇宏(まつもと たかひろ)
登録者30万人以上のYouTubeチャンネル「税理士法人松本〜税金の裏のウラ〜」を運営。 代表を務める税理士法人松本では、これまでに累計5,000件を超える税務調査のご相談・対応実績があり、国税局査察部、税務署長歴任者・税務調査一筋の現場に強い国税出身のOB税理士が現在15名常駐。国税当局側の視点を踏まえて、お客様の立場を尊重し、税務調査でお悩みのお客様に適切かつ迅速に対応。また、調査前・調査中に関わらず、あらゆる状況から最善のサポートが可能。なお、調査結果が追徴税額なしとなる実績も多数取得。税務調査における専門性・経験則・折衝力から最善の結果を導き、お客様の笑顔とありがとうを励みに成長し続けている。
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