2025.01.20
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無申告のペナルティ「無申告加算税」と「延滞税」はどう違う?

読了目安時間:約 6分

法人の場合は、事業年度終了日の翌日から2ヶ月以内に法人税の申告を行わなければなりません。また、一定の所得を得た個人の場合は、毎年2月16日から3月15日までの間に確定申告を行う必要があります。何らかの理由で期限までに申告を行わなかった場合は、無申告の状態となり、無申告が発覚した場合にはペナルティとして無申告加算税と延滞税と呼ばれる税金が課せられます。では、無申告加算税と延滞税はどのような性格の税なのでしょうか。

今回は、無申告時に課される無申告加算税と延滞税の違いについてご説明します。

 

無申告加算税とは

無申告加算税とは、期限までに申告・納税をしなかった場合に課せられる税金です。加算税には、過少申告加算税、無申告加算税、不納付加算税、重加算税の4つがあります。このうち、無申告加算税は、仮装・隠蔽等による脱税が認められた場合に課される重加算税の次に重い税率の加算税です。

 

無申告加算税の税率

無申告加算税の税率は、どのような状況で無申告の状態が発覚したのかによって変わります。

無申告加算税の税率は、原則として納めるべき税額が50万円までの部分については15%、50万円を超え300万円以下の部分までは20%、300万円を超える部分については30%です。

これは、税務署による税務調査の際に、無申告であることが発覚した場合に課せられる税率です。

 

無申告加算税の税率が軽減されるケースも

税務調査では、納税者に対して、事前通知を行うケースがほとんどです。事前通知とは、税務署が電話などで納税者に連絡をし、税務調査を行う旨と税務調査の実施日時、調査対象期間などについて説明する連絡のことを指します。

一般的な税務調査は任意調査と呼ばれるものであり、納税者の同意を得て実施されるものです。そのため、調査日程などについても事前に連絡をし、円滑に調査を終了できるよう、納税者にも協力をお願いしながら調査を進めることになります。税務署から提案された税務調査の日時は、経営者や担当者、税理士などが立ち会えない場合には、納税者の都合に合わせて日時を調整してもらうことも可能です。

事前通知は、税務調査の2~3週間程度前に行われるケースが多くなっています。そのため、申告の必要があるにもかかわらず、確定申告をしていなかったという自覚がある場合には、税務調査が実施される前までの間に自主的に期限後申告をすることができます。期限後申告とは、申告期限を過ぎてからの申告のことです。

税務調査の事前通知を受けてから、実際の調査が実施される間に自主的に期限後申告を行った場合、無申告加算税の税率が5%ほど軽減されます。この場合の無申告加算税の税率は、50万円までの部分については10%、50万円を超え300万円以下の部分までは15%、300万円を超える部分については25%です。

 

事前通知を受ける前の期限後申告ではさらに税率が軽減される

税務調査の事前通知を受ける前に、自ら無申告状態であることに気が付き、期限後申告を行った場合は、さらに税率が軽減されます。

税務署からの通知を受けずに、期限後申告をした場合の無申告加算税の税率は、納めるべき税額の5%です。

 

延滞税とは

延滞税は、定められた納期限までに正しく納税が行われていなかった場合に課せられる付帯税の1つです。延滞税は、納期限の翌日から納付が完了するまでの間、1日単位で計算されるという特徴があります。したがって、無申告の期間が長くなり、納税しない期間が長くなればなるほど、延滞税の額は高くなります。

 

延滞税が課されるケース

延滞税が課されるのは、期限内に申告を行わなかった無申告の場合だけではありません。期限内に申告書は提出したものの、法定納期限までに税金を納めなかった場合も延滞税の課税対象となります。また、期限内に申告した内容に誤りがあり、納税額が不足していた場合も、正しく納税しなかったことに対して延滞税が課せられます。

 

無申告加算税と延滞税の違い

無申告加算税とは、申告を怠っていた場合に、納税していなかった税額に対して税率が課せられる性質のものです。一方、延滞税は日数に応じて加算される税金で、納税が遅れたことに対する利息的な性格を持っています。

前述のように、無申告加算税の場合、税務調査で指摘を受けるか、事前通知を受けて自主的に期限後申告を行うか、事前通知を受ける前に自主的に期限後申告を行うかによって税率が変わります。しかし、延滞税の場合は、納税が遅れたことに対するペナルティであるため、どのような状況で申告を行ったかという点は考慮には含まれません。延滞税の税率は、納期限の翌日から2ヶ月を経過する日までか、2ヶ月を経過しているかというポイントで変更されます。

 

延滞税の税率

納期限の翌日から2ヶ月を経過する日までと2ヶ月を経過して以降の延滞税の税率は、次のとおりです。

 

・納期限の翌日から2ヶ月を経過する日まで

延滞税の税率は原則として年7.3%です。ただし、2021年1月1日以降の期間は、年7.3%と延滞税特例基準割合+1%のいずれか低い割合が適用されるとしています。

延滞税特例基準割合とは、各年の前々年の9月から前年の8月までの各月における銀行の新規、短期貸出約定平均金利の合計を12で割ったものとして、財務大臣が告示する割合に年1%の割合を加算した割合のことです。

具体的には、延滞税の割合は次のようになります。

 

2022年1月1日から2025年12月31日までの期間は、年2.4%

2021年1月1日から2021年12月31日までの期間は、年2.5%

 

・納期限の翌日から2ヶ月を経過して以降

納期限の翌日から2ヶ月を経過して以降の延滞税の割合は、原則として年14.6%です。ただし、2001年1月1日以降の期間は、年14.6%と延滞税特例基準割合+7.3%のいずれか低い方の割合となります。

具体的な延滞税の割合は次のとおりです。

 

2022年1月1日から2025年12月31日までの期間は、年8.7%

2021年1月1日から2021年12月31日までの期間は、年8.8%

 

延滞税の計算の基となる納期限について

延滞税の計算は、納期限の翌日から2ヶ月以内であるかどうかによって、適用される割合が変わってきます。納期限というと、法定納期限を思い浮かべるケースが多いかもしれません。しかし、納期限は法定納期限とは限らず、実際には申告のタイミングによって納期限が変わってくる点に注意が必要です。

まず、法定期限内に申告を行った場合の納期限は、法定納期限のことです。法人税の法定納期限は、事業年度の翌日から2ヶ月以内、所得税の法定納期限は原則として3月15日(15日が土曜や日曜の場合には、次の平日)となります。

また、期限後申告や修正申告をした場合の納期限とは、期限後申告書や修正申告書を提出した日のことです。税務署による更正や決定を受けた場合は、更正通知書などが発行された日から1ヶ月後が納期限となります。

ただし、上記で説明した納期限とは、延滞税の割合が上がるタイミングの算定のベースとなる納期限のことです。納期限の翌日から2ヶ月以内か、2ヶ月を超えるかによって延滞税の割合は変わりますが、延滞税自体は法定納期限の翌日から、納税が完了するまで発生する点に注意しなければなりません。

 

延滞税の計算方法

延滞税は、次のような方法で計算します。

 

延滞税の計算式

延滞税の額は、次の①と②の計算式によって算出した額を足した額です。納付すべき本税の額については、10,000円未満の端数は切り捨て、①・②で算出した金額については1円未満の端数を切り捨て、延滞税の額については100円未満の端数が切り捨てとなります。

 

  • 納付すべき本税の額×延滞税の割合×納期限の翌日から2ヶ月を経過するまでの日数÷365日
  • 納付すべき本税の額×延滞税の割合×2ヶ月を経過して以降の日数÷365日

 

延滞税の額=①+②

 

所得税の延滞税の計算は国税庁のウェブサイトも利用可能

国税庁のウェブサイトには、所得税と個人事業主の消費税・地方消費税の延滞税の計算ができるページが用意されています。対象となる納税年ごとに、期限内申告分、期限後申告分、修正申告部の延滞税の計算が可能です。

納付する日や申告する日、納税額などを入力するだけで簡単に延滞税の額が表示されます。

国税庁:延滞税の計計算方法

https://www.nta.go.jp/taxes/nozei/entaizei/keisan/entai.htm

 

延滞税の計算期間の特例

延滞税は、納税が完了するまで加算され続ける付帯税です。したがって、申告を行う必要があることに気が付いていないケースや納税額が不足していたことに気が付かないケースもあるでしょう。その場合、法定納期限から税務調査によって、無申告または過少申告を指摘されるまでに時間がかかり、その間の延滞税の額は高額にのぼります。

しかし、一方で無申告の状態や過少に申告している状態であっても、税務署によって早めに税務調査の対象になるケースもあるでしょう。その場合、早いタイミングで期限後申告や修正申告などを行うことになるため、延滞税が加算される期間も短くなり、課せられる延滞税の額も軽くなります。

したがって、いつ、税務調査の対象に選ばれたのかによって延滞税の額に差が生じることかあるのです。そのため、納税者ごとの不公平性を解消する目的で、延滞税には計算期間の特例が設けられています。

具体的には、意図的に申告や納税を行わなかった場合や納税額を少なく見せかけた場合など、不正が行われた場合などを除き、次の期間は延滞税の計算期間に含まれません。

 

・期限内申告書が提出されており、法定申告期限後1年を経過してから修正申告または更正があったとき

修正申告とは、申告書を提出した後に申告額に誤りがあった場合、正しく申告をし直し、不足分の税金を納税する行為のことです。また、更正とは税務調査によって不備を指摘されたものの納税者が応じず、税務署が不備の箇所を修正して正しい税額を算出する手続きを指します。

つまり、期限内に申告書を提出し、申告は行っていなかったものの法定期限から1年以上が経過した後に修正申告を行ったり、更正が行われた場合は、延滞税の計算期間の特例が適用されます。この場合、法定申告期限から1年を経過する日の翌日から、修正申告書の提出日、または更正通知書が発行された日までの期間は、計算期間に含まれません。

 

・期限後申告書が提出されており、申告書提出後1年を経過してから修正申告または更正があったとき

法定申告期限を過ぎてから期限後申告書を提出したものの、期限後申告書を提出してから1年以上が経過した後に間違いに気が付き、修正申告をするケースもあるでしょう。また、税務調査が実施され、修正申告をしたり、更正が行われるケースもあります。その場合は、期限後申告書を提出した日の翌日から起算して1年を経過する日の翌日から修正申告書を提出した日、または更正通知書が発行された日までの期間は、計算期間に含まれません。

 

・確定申告書を提出した後に減額更正され、その後、さらに修正申告または更正があったとき

2017年1月1日以降に法定納期限が訪れる国税について適用されるものです。当初の申告が行われた後に納付すべき税額を減少させる減額更正が行われたとします。ところが、その後再び修正申告や更正が行われた場合は、計算期間の特例が適用されます。

この場合、当初の申告による納税日の翌日から減額更正の更正通知書が発行された日までの期間、税務署から更正通知書が発行された日の翌日から修正申告書の提出または増額更正に関する更正通知書が発行される日までの期間、それぞれについては延滞税の計算期間には含まれません。

 

無申告の場合には早めの期限後申告を

ご説明してきたように、期限までに申告・納税を行っていない場合、無申告の状態となり、無申告加算税と延滞税が課せられる恐れがあります。無申告加算税は自主的に期限後申告を行った場合、税率を本税の5%に軽減できます。また、延滞税も未納期間が長くなるほど負担は大きくなるため、早めに納税を行った方が延滞税の額も軽くなります。

税務調査では過去にさかのぼった調査も実施されるため、無申告の期間が長かった場合、課される無申告加算税や延滞税の負担も高額になるはずです。多額の追徴課税に悩む前に、無申告の場合には早めに税理士に相談し、自主的に期限後申告を行うことをおすすめします。

 

まとめ

法定期限までに申告を行わず、税金を納めていない状態を無申告といいます。無申告の場合、税金を納めなかったことに対するペナルティとして無申告加算税、税金の納付が遅れたことに対するペナルティとして延滞税が課されます。

延滞税の割合は、無申告加算税の割合に比べると小さくなりますが、納付が完了するまで課され続ける税金となるため、無申告の期間が長くなるほど、課される延滞税の額は大きくなる恐れがあります。

これまで申告をしていなかった期間がある場合には、無申告加算税や延滞税の負担を軽減するためにも、できるだけ早く期限後申告を行うようにしましょう。

 


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この記事の監修者

松本 崇宏

税理士法人松本 代表税理士

松本 崇宏(まつもと たかひろ)

お客様からの税務調査相談実績は、累計5,000件以上。
国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。

税理士法人松本は国税OB・元税務署長が所属する税理士法人です。

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