2025.04.13
  • 税務調査

個人事業主は携帯代やスマホ代を経費にできる?法人の場合は?

読了目安時間:約 6分

今や、日常生活においてもビジネスシーンにおいても、携帯電話やスマートフォンは必要不可欠なものとなっています。しかしながら、携帯電話を保有する場合、携帯の購入代金や月々の利用料、修理代など、さまざまな費用が発生します。そのため、携帯代やスマホ代は経費として計上できるのか気になる方も多いのではないでしょうか。

そこで今回は、法人や個人事業主の携帯代と経費の関係や、経費計上する際の注意点などについてご説明します。

 

携帯代やスマートフォンの代金は、経費にできる?

携帯代やスマートフォンを所有する際に必要となるさまざまな費用は、経費計上できるのでしょうか。個人事業主の場合と法人の場合に分けて、携帯代やスマートフォンの代金の経費計上についてご説明します。

 

個人事業主の携帯代は経費計上が可能

まず、個人事業主の場合も携帯代を経費計上することができます。ただし、経費として計上できるのは、事業のために使用した分のみとなります。

個人事業主の中でも事業用とプライベート用を分けて携帯を所有している場合、事業用専用の携帯代は、全額、経費計上が可能です。経費計上できる携帯代は次のような費用です。

・携帯電話やスマートフォンの本体代

・月額基本料金、通話料金、通信料金

・充電器などの周辺機器の代金

・携帯電話やスマートフォンの修理代

 

個人事業主の中には、1台の携帯やスマホを事業用とプライベート用の両方に使用しているケースが少なくありません。その場合は、事業で使用する分を区分し、事業用で使った分のみの携帯代を経費として計上することが認められています。事業用の使用分とプライベート用の使用分を区分する方法を、家事按分といい、その割合を家事按分割合といいます。

家事按分割合については明確なルールが決められているわけではありません。しかしながら、1日の中において事業利用とプライベート利用の割合を分けるケースや1カ月単位で事業用の使用日数を当てはめて算出する場合などが一般的です。例えば、1日のうち、事業のために使用する時間が4時間、プライベートで使用する時間も4時間の場合、家事按分比率は50%となります。つまり、この場合、携帯代の50%分は経費として計上することができるのです。

 

法人も携帯代の経費計上が可能

法人では、事業用の携帯やスマートフォンを購入する際に法人契約を締結するケースがほとんどです。また、会社から従業員に携帯電話やスマートフォンは、事業に使用する目的で支給されるものです。そのため、法人契約では、携帯の本体の代金も通信量・通話料も会社から支払うことになります。また、故障した場合の修理代も会社が負担するため、法人の場合、携帯に関連するすべての費用を経費として扱えます。

 

携帯代を経費にする場合の仕訳について

携帯代を経費計上する場合、何の費用なのかによって経費計上方法が異なります。携帯代の内訳別に、仕訳方法をご説明します。

 

携帯代のうち月額料金や通話・通信料金の経費計上方法

毎月発生する携帯の月額基本料金や通話料金、通信料金は、通信費の勘定科目を使って経費計上が可能です。事業専用の携帯の場合には、月額基本料金や通話料金、通信料金を全額経費として計上して問題ありません。また、個人事業主で事業用とプライベート用の携帯を分けていない場合は、家事按分比率に応じて、月額料金や通話・通信料金を算出し、通信費として経費計上します。

例えば、月額料金、通話料金、通信料金が1万円だった場合の仕訳の例をご紹介します。家事按分比率が50%であれば、経費計上できるのは5,000円となります。また、携帯代は口座引き落としで支払うと仮定します。この場合、借方には通信費として5,000円と記入し、プライベートで使用した分の費用については、事業主貸として借方に5,000円と記入します。一方、貸方には、普通預金1万円と記載します。さらに、摘要欄には、携帯の通信料金であることや利用年月、家事按分比率を記入することを忘れないようにしましょう。

 

携帯本体の購入代金の経費計上方法

月々の料金ではなく、携帯電話やスマートフォンの本体の購入代金も経費として計上ができます。携帯代の中でも、携帯本体の価格は高額になります。携帯の購入代金は、携帯の取得価額が10万円以上であったか、10万円未満であったかによって経費計上の処理方法が異なる点に注意しなければなりません。まず、10万円以下の携帯電話の購入代金は「消耗品費」として仕分けます。また、10万円以上の携帯電話の場合には、本体購入代金は「工具器具備品」として仕訳をします。

 

携帯の機器代によって経費処理方法が変わる理由

昨今では、携帯電話やスマートフォンの高機能化が進んでおり、10万円を超えるものも少なくありません。10万円以上かつ1年以上使用可能な備品は、固定資産に該当します。固定資産の場合、購入した年に購入代をすべて経費として計上するのではなく、指定された耐用年数に分けて減価償却しなければなりません。

携帯電話の場合、1年以上使用可能な機器です。そのため、機器代が10万円以上となる場合には固定資産として取り扱い、機器代が10万円未満の場合には消耗品として経費計上します。

 

携帯電話の法定耐用年数は?

10万円以上の携帯電話を購入した場合、耐用年数に合わせて減価償却を行います。つまり、携帯代を耐用年数に合わせて分割し、一定期間をかけて経費に計上することになるのです。

耐用年数とは使用できる期間のことですが、法定耐用年数とは国が定める固定資産の使用期間のことを指します。減価償却をする際には、この法定耐用年数に応じて減価償却費を算出しなければなりません。

国税庁では、主な減価償却資産の耐用年数を公表していますが、携帯電話についての規定があるわけではありません。しかしながら、電話設備その他の通信機器として、デジタル構内交換設備、デジタルボタン電話設備については6年、その他のものについては10年という規定があります。また、電子計算機として、パソコンの法定耐用年数は、サーバー用のものが5年、それ以外のものが4年と決められています。

したがって、携帯電話の耐用年数は10年となります。また、スマートフォンの場合は、小型の電子計算機として捉えることができるため、パソコンと同様に耐用年数は4年とするケースが一般的です。

 

個人事業主の携帯代の計上方法

携帯本体代の経費計上の仕方を、1台10万円未満の場合と1台10万円以上の場合に分けてご説明します。

 

1台10万円未満の携帯本体代の経費計上の仕方

個人事業主の場合、事業専用の携帯電話を購入したか、プライベートと兼用の携帯電話を購入したかによって経費処理方法が変わります。

 

・事業専用の携帯電話を購入した場合

1台10万円未満の携帯電話を購入した場合は「消耗品費」で仕分けます。事業専用の携帯電話であれば、購入代金を全額経費として計上して問題ありません。

 

・事業用とプライベート用を兼ねる携帯電話を購入した場合

事業用とプライベート用を分けていない場合は、家事按分割合に合わせて、事業用の分だけ消耗品費として計上します。例えば、9万円の携帯電話を現金で購入し、家事按分割合が50%の場合は、借方に消耗品費45,000円、事業主貸として45,000円、貸方に現金90,000円と記載し、摘要欄には携帯代であることと家事按分比率を記載しておきます。

 

1台10万円以上の携帯本体代の経費計上の仕方

1台10万円以上の携帯電話は、資産として扱うことになるため、法定耐用年数に合わせて減価償却をしていきます。携帯電話の場合には10年、スマートフォンの場合には4年に分けて減価償却をすることとなります。しかしながら、購入した機器の価格によっては、複数の経費処理方法から適したものを選ぶことが可能です。

まず、10万円以上20万円未満の携帯電話の場合は、一括償却資産として扱うことも可能です。一括償却資産は、法定耐用年数に関わらず、減価償却資産を3年で均等に減価償却できるという仕組みです。法定耐用年数に応じた減価償却をする場合、携帯電話は10年、スマートフォンは4年に分割し、毎年、減価償却分を経費に計上しなければなりません。しかし、一括償却資産として扱うと3年で減価償却ができるため、会計の処理を軽減するとともに、1年あたりの経費計上額を高くできるため、節税の効果も得られます。

また、携帯代が30万円未満であれば、青色申告をしている個人事業主は少額減価償却資産の特例を活用することも可能です。少額減価償却資産とは、取得価額が30万円未満の減価償却資産を指します。少額減価償却資産の特例とは、1年間の少額減価償却資産の取得価額の合計額が300万円までであれば、減価償却資産を購入した年に一括して経費計上できるという制度です。

したがって、白色申告をしている個人事業主の場合は、取得した携帯電話やスマートフォンの代金に応じ、法定耐用年数に応じた減価償却または一括償却資産として扱い、代金を経費に計上できます。また、青色申告をしている場合には、1台30万円未満の携帯電話やスマートフォンであれば、法定耐用年数に応じた減価償却資産、一括償却資産、少額減価償却資産の特例のいずれかの中から、経費計上方法の選択が可能です。

 

法人の携帯代計上方法

法人の携帯本体代の経費計上の仕方を、1台10万円未満の場合と1台10万円以上の場合に分けてご説明します。

 

1台10万円未満の携帯本体代の経費計上の仕方

法人でも1台10万円未満の携帯電話を現金で購入した場合の仕訳の仕方は、個人事業主が事業専用の携帯電話を購入した場合と同じです。消耗品費として、購入した年に購入代を一括計上します。

また、1台10万円未満の携帯電話やスマートフォンを複数台まとめて購入し、合計金額が10万円を超えた場合でも、1台あたりの携帯代金が10万円未満であれば、消耗品費として経費計上して問題ありません。

例えば、9万円の携帯電話を10台、現金で購入したときには、購入費用は90万円となります。その場合、経費として一括計上ができるため、借方に消耗品費90万円、貸方に現金90万円、摘要欄に携帯10台分と記入します。このとき、摘要欄に記載がない場合、一括計上できない経費を誤って消耗品費として計上していると捉えられる可能性もあります。複数台をまとめて購入した場合は、必ず摘要欄に購入台数を記入することを忘れないようにしましょう。

 

1台10万円以上の携帯本体代の経費計上の仕方

法人の場合も、1台の価格が10万円を超える携帯電話やスマートフォンを購入した場合は、固定資産として扱わなければなりません。1台20万円未満の携帯電話であれば、一括償却資産として扱い、3年で減価償却することが可能です。また、資本金1億円以下で青色申告をしている中小企業の場合は、少額減価償却資産の特例を活用し、携帯電話を購入した年に一括して経費計上することもできます。

法人の場合、携帯電話をまとめて購入するケースもあるでしょう。その場合、携帯代が高額になる場合もあります。少額減価償却資産の特例を活用すれば、減価償却をしないため、会計処理の負担と法人税額の負担軽減につながります。しかし、売上の状況などによっては一括で経費計上するよりも、一括償却資産の特例を利用して3年に分けて減価償却をした方がよい場合もあります。複数台の携帯電話を購入した場合は、自社の状況に合わせ、適切な方法で経費に計上するようにしましょう。

 

携帯が壊れたときの修理代は経費計上できる?

例えば、使用中に落として画面が割れてしまった場合など、携帯電話やスマートフォンを修理した場合の修理代も経費計上が可能です。個人事業主の場合も法人の場合も、修繕費の勘定科目で経費を計上しましょう。

 

まとめ

個人事業主も法人も、携帯代やスマホ代は、経費として計上することができます。ただし、事業用とプライベート用の携帯電話を分けていない個人事業主の場合は、全額を経費計上することはできません。事業とプライベートで使用する割合を算出し、事業で使用する分だけを経費として計上するようにしましょう。

また、携帯本体の機器代も経費計上は可能ですが、1台あたりの価格が10万円を超えるかどうかで処理方法が変わります。10万円未満の場合は、消耗品費として一括計上が可能ですが、10万円を超える場合には固定資産として耐用年数に応じた減価償却をしなければなりません。ただし、一定の要件を満たす場合には、少額減価償却資産の特例を活用したり、一括償却資産として扱うことも可能です。

 

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この記事の監修者

松本 崇宏

税理士法人松本 代表税理士

松本 崇宏(まつもと たかひろ)

お客様からの税務調査相談実績は、累計5,000件以上。
国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。

税理士法人松本は国税OB・元税務署長が所属する税理士法人です。

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