2025.04.16
  • 税務調査

個人事業主の経費には上限がある?計上できる範囲や注意点を解説

読了目安時間:約 6分

個人事業主として事業を営む場合、事業のために必要となった費用は経費として計上することができます。しかし、事業を立ち上げるタイミングや設備などの入れ替えをするタイミングなど、思ったよりも支出が増えたときなど、個人事業主の経費には上限があるのか、不安に感じることもあるかもしれません。では、個人事業主の経費には上限はあるのでしょうか。

今回は、個人事業主の経費の上限額や経費として計上できる範囲、経費計上時の注意点などについてご説明します。

 

個人事業主の経費の上限はいくら?

では早速、個人事業主の経費の上限はいくらなのかという点からご説明していきます。

 

個人事業主の経費に上限はない

実は、個人事業主の経費に上限は設定されていません。法人の場合、接待交際費には上限が設定されています。しかし、個人事業主の場合は、接待交際費であっても経費計上できる額に上限は設定されていないのです。

ただし、個人事業主の経費に上限がないからといって、事業と関連しない支出まで経費計上している場合、税務調査時に経費が否認される可能性があります。そのため、上限のあるなしに関わらず、経費は適正な額を計上しなければなりません。

 

個人事業主と経費の関係

個人事業主の場合、事業の利益がそのまま個人の所得につながります。また、所得額が高くなるほど所得税や住民税、国民健康保険料の負担は大きくなります。所得額は売上から経費を差し引いて算出できるため、経費として計上できる支出であれば、できるだけ経費として計上したいと考える方が多いのではないでしょうか。そのため、中には個人事業主の経費計上額に上限がないことを悪用し、経費を不正に計上する人がいるのも事実です。

したがって、確定申告書を提出した際、売上金額に対して経費の額が明らかに大きすぎる場合や同業者と比較しても経費の額が多すぎる場合などは、税務調査の対象に選ばれる可能性が高くなります。

 

 

個人事業主が経費として計上できる費用

個人事業主が経費として計上できる費用は、事業のために必要となった支出です。たとえば、事業の拡大のために必要だと認められれば、取引先を接待した費用も上限なく、経費として認められます。その他、出張にかかった交通費、取引先に贈ったお中元やお歳暮など、事業に関わる支出であればすべて経費計上が可能です。

個人事業主が経費として計上できる費用を勘定科目別に分けると次のようになります。

 

・仕入高

販売する商品や販売する製品を作るために必要な原材料などの購入費用は、当然経費として計上できます。

 

・租税公課

個人事業税、不動産取得税、固定資産税、自動車税、登録免許税、印紙税など、事業に関連した税金も経費計上が可能です。ただし、事務所や店舗と自宅が同じ場合、事業用の車とプライベートで使用する車を兼用している場合などは、経費として計上できる税金の上限額は、事業のために使用した分のみとなります。

 

・接待交際費

取引の拡大や継続などを目的とし、取引先をもてなすために開催した食事会などで発生した飲食費、ゴルフコンペの開催費用なども経費計上が可能です。また、取引先に贈るお中元やお歳暮、ご祝儀、ご香典なども接待交際費として計上することができます。接待交際費にも上限はありません。

 

・通信費

事業で使用している固定電話やスマートフォンの料金、インターネット回線の利用料金は通信費として経費計上が可能です。また、自宅兼事務所の場合には、事業で使用している分だけを経費として計上します。そのほか、切手代やはがき代も通信費として計上します。

 

・荷造運賃

商品などを発送する際にかかった費用は、荷造運賃の勘定科目で経費計上をします。配送料はもちろん、梱包する段ボール、ガムテープ、緩衝材などの資材も経費として計上が可能です。

 

・広告宣伝費

事業や商品を宣伝するための広告掲載料やチラシの印刷代金、ポスターの印刷代金などは広告宣伝費として計上できます。昨今では、インターネットを使った広告宣伝手段も増えており、インターネット広告の出稿に関わる費用も広告宣伝費として経費計上が可能です。

 

・消耗品費

使用期間が1年未満か取得価額が10万円未満のものは、消耗品費として経費計上します。具体的には、コピー用紙や封筒、名刺、ボールペンなどの事務用品、1台あたり10万円未満のパソコンやスマートフォンなどの電子機器、デスクやチェアなどの家具、などが消耗品費となります。

 

・減価償却費

取得価額が10万円以上で使用期間が1年以上の備品などは、固定資産となります。固定資産は法定耐用年数に合わせて分割し、減価償却費として経費計上をします。具体的には、事務所や店舗として使用している建物、自動車、10万円以上のスマートフォンやパソコン、機械、複合機などが該当します。

 

・地代家賃

事務所や店舗、駐車場などを借りている場合の家賃や月々の使用料金、礼金なども経費計上が可能です。ただし、自宅を事務所として使用している場合や事業用とプライベートで使用する車を兼用している場合、経費として計上できるのは事業のために使用している割合分だけです。

 

・水道光熱費

事業のためにかかった水道代、電気代、ガス代、灯油代などの水道光熱費も経費計上が可能です。

 

・旅費交通費

仕事のために移動が発生した場合の電車やバス、飛行機の運賃、タクシー代、車で移動した場合のガソリン代、高速道路の通行料金などが旅費交通費となります。そのほか、出張時の宿泊費や外出先で使用した駐車場の料金なども旅費交通費として計上ができます。

 

・修繕費

事務所や店舗などの修繕にかかった費用や事業で使用する機械や器具の修理代金なども修繕費として経費計上が可能です。

 

・給料賃金

従業員を雇用している場合、従業員に支払っている給料や賞与などは、給料賃金として経費に計上することができます。

 

・専従者給与

青色申告をしている個人事業主が親族や家族などに青色事業専従者給与を支払った場合も、専従者給与として経費計上が可能です。家族に支払う給与を経費として計上できれば、所得の分散により節税の効果を期待できます。青色事業専従者給与の経費計上額に上限はありません。

また、白色申告をしている個人事業主の場合も、事業専従者に支払う給与を経費として計上することが可能です。しかしながら、白色申告者の事業専従者控除には上限額が定められています。白色申告者の事業専従者控除額の上限は次の金額のいずれか低い方です。

・配偶者の場合上限86万円、15歳以上のその他の親族の上限は50万円

・控除をする前の事業所得の金額を事業専従者の数に1を足した数で割った金額

 

・福利厚生費

従業員の健康や慰安などのために支払った費用は、福利厚生費として計上が可能です。具体的には、従業員への慶弔費、忘年会や新年会の費用などが福利厚生費に該当します。ただし、忘年会や新年会の費用を福利厚生費として計上できるのは、全員が参加できる場合のみに限定される点に注意が必要です。

 

・外注費

外部に仕事を発注した際に支払った費用は外注費として経費計上をします。ホームページのデザインをフリーランスのWebデザイナーに発注した場合などが該当します。

 

・貸倒金

取引先が倒産し、売掛金や貸付金など、回収ができなくなった損害金額は貸倒金として経費に計上することができます。

 

・支払利息割引料

事業用の借入金の支払利息や分割払いの手数料、手形の割引料なども経費として計上できます。

 

・支払手数料

銀行の振込手数料や代引き手数料、証明書などを発行した場合に必要となった手数料、仲介手数料などは、支払手数料として処理します。また、税理士や弁護士に支払う報酬も支払手数料として計上することがあります。

 

・損害保険料

事務所や店舗などで加入する火災保険料や地震保険料なども損害保険料として経費計上が可能です。自宅と事務所や店舗が併設されている場合は、事業に関連する割合のみ、経費として計上することができます。

 

・雑費

上にご紹介したような経費には当てはまらないものの、事業のためにかかったその他の費用は雑費として計上します。

 

個人事業主が経費として計上できないもの

個人事業主が経費として計上できないものは次のような費用です。

 

・プライベートな買い物の費用

プライベートで使用する衣服の購入費、ゴルフクラブの代金、趣味の書籍代などは、当然、経費に計上することはできません。ただし、衣服であっても仕事で使用する制服や作業着、衣装などについては、経費として計上することができます。

 

・プライベートな飲食費や交際費など

個人の食事代、事業とは関係のない友人たちとの食事代、出張ではないプライベートな旅行の費用など、私用で移動した場合のタクシー代など、事業とは関係のない飲食費や交際費、交通費を経費計上することはできません。

 

・自宅の家賃や駐車場代

自宅に事務所や店舗を併設している場合、事業で使用している分については家賃も経費として計上できます。しかし、自宅として使用している分の家賃や事務所や店舗を併設していない自宅の家賃を経費に計上することはできません。また、事業用とプライベートの両方で使用している車の駐車場代は、事業で使用した割合に応じて経費計上が可能ですが、プライベートだけで使用する車の駐車場代は経費には計上できません。

 

・個人で納める税金や保険料

事務所や店舗にかかる固定資産税や事業で必要な収入印紙代など、事業に関連する税金は経費として計上できます。しかし、個人事業主に課せられる所得税や住民税、健康保険料、国民年金保険、生命保険料などを経費として計上することはできません。

 

個人事業主が経費を計上する際の注意点

個人事業主の経費には上限が設定されるわけではありません。しかし、不正に経費を計上している場合、税務調査で経費を否認される恐れがあります。したがって、個人事業主が経費を計上する際には次の点に注意しなければなりません。

 

個人の支出と事業に関連する支出を明確に区分しておく

プライベートな支出は経費として認められません。万が一、プライベートな支出を経費に計上していたことが税務調査で発覚した場合、修正申告が求められ、不足分の税金の納税が求められます。また、正しく申告をしなかったことのペナルティとして過少申告加算税が課される可能性があります。過少申告加算税は、不足分の税額の50万円以下の部分に対して10%、50%を超える部分に関して15%の税率が課せられるものです。

また、帳簿を改ざんしたり、架空の領収書を作って経費を水増ししていたりといった悪質な行為が見られた場合、重加算税が加算される可能性もあります。過少申告加算税に変わる重加算税の税率は、35%です。不足分の税金に加え、重加算税として35%も加えられた税金となると、本来よりもかなり多くの税金を納めなければならなくなります。税務調査で不要な疑いを抱かれないためには、日頃から個人の支出と事業の支出を分け、正しく経費計上をすることが大切です。

 

領収書は必ず保管しておく

税務調査では、経費の水増しがなされていないか、詳しくチェックが行われます。なぜなら、経費を水増しすれば、所得額を圧縮でき、所得税の納税を不正に抑えることができるからです。したがって、税務調査の際には、経費として計上した金額が本当に支払ったものなのか、また金額が正しいものであるかを証明する書類として領収書やレシートもチェックされます。

領収書やレシートを紛失した場合などは、経費計上が認められない場合もあります。スムーズに調査を終えるためにも領収書は必ず保管しておくようにしましょう。また、領収書は帳簿書類に属する書類であり、白色申告をしている個人事業主の場合は5年間、青色申告をしている個人事業主の場合は7年間、領収書を保管する義務があります。無用なトラブルを避けるためにも領収書は必ず保管しておくようにしましょう。

 

まとめ

個人事業主に経費の上限はありません。しかし、経費として計上できるのは、事業のために必要となった支出に限られます。事業用に使用した費用であれば、経費として漏れなく計上することで、節税につなげることが可能です。

しかしながら、事業とは関係のない支出を経費として計上している場合や事業との関連性を証明できない支出などは、税務調査時に否認される恐れがあります。

税務調査をスムーズに終えるためにも、事業とプライベートの支出は明確に区分し、事業に必要だった支出のみを正しく計上するようにしましょう。

 

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この記事の監修者

松本 崇宏

税理士法人松本 代表税理士

松本 崇宏(まつもと たかひろ)

お客様からの税務調査相談実績は、累計5,000件以上。
国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。

税理士法人松本は国税OB・元税務署長が所属する税理士法人です。

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