2025.06.25
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競馬で当たって喜ぶだけじゃダメ。払戻金は申告しないと脱税に?

読了目安時間:約 6分

競馬で購入した馬券が当たったら、臨時収入が入ったと大喜びすることでしょう。さらに、当たった馬券が万馬券だったらその喜びは倍増します。馬券が当たったことが嬉しくて、お金が手に入ったら何に使おうか、使い道を考えてしまう人も少なくないはずです。しかし、競馬で当たった時は喜んでいるだけではいけません。当たった馬券を払い戻して得たお金は、確定申告の対象になるのです。万が一、競馬で当たって払戻金を受け取ったのに確定申告をしない場合、脱税の罪に問われる可能性があります。

今回は、競馬で大当たりした時の脱税のリスクについてご説明します。

 

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競馬を巡る脱税はニュースにも

競馬を巡る脱税は、度々ニュースとなっています。その背景一つには、競馬の払戻金は課税所得になるという認識が広がっていないという問題があるのではないでしょうか。

 

競馬で2億6,000万円の脱税疑い

2025年6月には競馬で2億6,000万円の脱税を行った容疑で2人が東京地検に告発されています。刑事告発されたのは50代と70代の男性2人です。この男性2人は、香港在住の男性が開発したコンピューターシステムを活用し、馬券を大量に購入したとされています。また競馬だけでなく、ボートレースにも投票し、2年間だけで6億1,000万円の払戻金を受け取っていたものの、正しく確定申告を行わず、2億6,000万円もの脱税容疑がかけられたというのです。

報道によると、親族や知人などの名義を使い、60人分のアカウントを使って1レースあたり100通り以上の馬券を購入していたとのことです。購入額が20億円以上に上る月もあったものの、利益はほぼ毎月出ており、利益の約1割を男性2人が受け取っていたとされています。国税局による強制調査によって脱税が発覚しましたが、競馬による利益の9割は香港に住む男性が得ていたようです。しかしながら、香港の男性は日本における所得税申告義務がないため、脱税容疑での告発は見送りとなったとされています。

 

過去にも競馬を巡る脱税が発覚するニュースが

2018年5月には、大阪の市職員が競馬で高額な払戻金を得ていたにも関わらず、確定申告を怠ったり、所得税約6,200万円を脱税し、所得税法違反の罪に問われたニュースがありました。公務員の男性は、競馬で約2億8,000万円の払戻金を受け取ったものの課税所得約1億6,000万円を申告しなかったとのことです。

この事件では、刑事裁判によって、懲役6ヶ月、執行猶予2年、罰金1,200万円の判決が言い渡されました。その後、控訴審判決もありましたが2審でも有罪が確定しています。

 

競馬の馬券の払い戻しをしたら確定申告が必要

競馬の馬券が当たり、払い戻しを受けた場合、払い戻しで得た利益は所得となり、確定申告が必要です。競馬の払戻金による利益は一時所得または雑所得として扱います。

 

競馬の払戻金が一時所得に該当するケース

一時所得とは、営利目的のための継続的行為から生じた所得ではなく、一時的に得られた所得のことを指します。具体的には次のようなものが一時所得に該当します。

 

・競馬や競輪、ボートレースの払戻金

・懸賞や福引きで当たった賞金や商品

・生命保険の一時金や損害保険の満期返戻金など

・法人から贈与された金品

・遺失物を拾得したり、埋蔵物を発見したことで受け取る報労金

・資産の移転等の費用に充てるため受けた交付金のうち、その交付の目的とされた支出に充てられなかったもの

 

一時所得の計算方法

一時所得は、次の計算式で求めます。

 

総収入金額-収入を得るために支出した金額-特別控除額(最高50万円)

 

競馬に置き換えて考えると、総収入金額とは、馬券の払戻金に該当します。また、収入を得るために支出した金額とは、馬券を購入するためにかかった金額です。しかし、馬券を購入したためにかかった金額とは、当たり馬券を買うまでに費やした馬券の購入金額ではありません。ここでいう収入を得るために支出した金額は、払い戻しの対象となった当たり馬券の購入金額に限定される点に注意が必要です。

 

一時所得の税額の計算方法

競馬の払戻金である、一時所得の税額を計算する際には、上の式で計算した一時所得の金額の2分の1を給与所得などの他の所得金額と合わせ、総所得金額を求めたうえで、税額を算出します。

 

競馬の払戻金が雑所得に該当するケースとは

馬券を買って競馬を楽しむ、一般的な競馬愛好家の場合、当たり馬券で得た払戻金は一時所得に該当します。しかし、競馬の払戻金の中には、雑所得として扱われるケースもあります。

国税庁では、競馬の払戻金の所得区分は、馬券の購入期間や階数、頻度、利益発生規模など、様々な事情を総合的に考慮して区分されるとしています。

具体的には、冒頭でご紹介した2億6,000万円の脱税疑いのニュースのように、馬券を自動購入するソフトウェアを使用し、設定した条件などに基づいて、年間を通じほぼすべてのレースで馬券を購入する場合などに得る払戻金は、雑所得として扱われます。年間を通して馬券を買い続け、回収率が馬券の購入行為の期間全体で100%を超えるように馬券を購入し続けてきたことが明らかになる場合は、雑所得に該当するとしているのです。

競馬の払戻金を巡る課税については過去に、はずれ馬券の購入費用が必要経費として控除可能かを争う裁判が行われています。裁判では、一般的な競馬の楽しみ方で馬券を購入し、払戻金を受けた場合には一時所得として、システムなどを使って年間を通じて馬券を買い続けていた場合などは雑所得として扱う判決が下されました。

 

雑所得の計算方法

雑所得とは、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得、一時所得のいずれにも当たらない所得のことです。公的年金や非営業用貸金の利子、原稿料やシェアリングエコノミーなど副業による所得が雑所得に該当します。

競馬の場合、雑所得は次の計算式で算出できます。

 

総収入金額-必要経費

 

競馬の払戻金を一時所得として扱う場合、はずれ馬券の購入費用については、経費として算入することができません。しかし、雑所得として扱う場合は、はずれ馬券も含めた馬券の購入費用を経費として扱うことが可能です。

競馬の払戻金による利益を雑所得として扱えるのは、前述のように、システムなどを使って自動的にすべてのレースの馬券を購入した場合などに限定されます。そのような場合、競馬が営利目的の業として行われていると捉えられるのです。

 

雑所得の税額の計算方法

雑所得の税額の計算方法は、給与所得などの他の所得と合計し、総所得金額を求めた後に納める税額を計算することとなります。一時所得のように2分の1の額ではない点に注意が必要です。

 

競馬で当たった後に脱税にならないために知っておきたいこと

せっかく競馬で当たっても、脱税の罪に問われた場合、行政処分として高額な重加算税の納付が求められ、刑事罰として懲役や罰金処分が下される恐れがあります。競馬を楽しむためにも、競馬に関する税金のルールについて確認しておきましょう。

 

一時所得で確定申告が必要になるのは?

競馬で当たった時には、必ず確定申告をしないと脱税になるというわけではありません。競馬で確定申告が必要になるのは、一定以上の利益を得た場合です。

 

・給与所得者の場合は、年間90万円を超える一時所得を得た場合

先ほど、一時所得の計算方法をご説明したように一時所得には、最大50万円の特別控除があります。そのため、まず、競馬で当たった金額が50万円以下の場合は、課税対象外となるため確定申告は不要です。

また、給与所得者の場合、給与所得以外に20万円を超える所得がある場合、確定申告が必要になります。一時所得の税額を算出する際は、一時所得の額に2分の1を乗じて給与などの所得と合算をするため、課税対象となる一時所得額は40万円以上になると計算できるでしょう。

一時所得の特別控除50万円を含めて考えると、1年間に競馬で90万円を超える一時所得を得ている場合に、確定申告が必要になるといえます。反対に、年間の一時所得が90万円を超えていない場合、確定申告をしなくても脱税になることはありません。

 

・給与所得者で副業による所得がある人は、年間50万円を超える一時所得を得た場合

会社員として働く人の中には、副業をしている人も少なくありません。副業をしている給与所得者は、副業で得ている所得が20万円を超えた場合に確定申告が必要です。したがって、この場合には、競馬によって50万円を超える一時所得を得た時に確定申告が必要となります。

 

・個人事業主は、事業所得と合わせて年間所得金額が48万円を超えた場合

個人事業主の場合、年間48万円を超える所得を得ている場合、確定申告をしなければなりません。そのため、競馬の一時所得も合わせて、年間48万円を超えた場合には確定申告が必要です。

 

・雑所得として年間20万円を超える所得を得た場合

競馬を事業として行っていると認められるような場合、競馬で得た利益は雑所得に該当します。雑所得の場合は、年間20万円を超えた場合に確定申告が必要です。

 

一時所得に該当する競馬の利益は、はずれ馬券の購入費用を差し引けない

事業規模で競馬を行っている場合は、利益を雑所得として扱うことができ、この場合は利益からはずれ馬券の購入費用も差し引くことが可能です。しかし、システムを使って的中率を計算し、年間を通して継続的に全レースの馬券を購入するケースを除き、競馬による利益は一時所得としては扱うこととなります。一時所得として扱う場合、払戻金から差し引くことができるのは、最大50万円の特別控除と当たり馬券の購入費用のみです。はずれ馬券の購入費用を差し引くことはできない点に注意しましょう。

 

競馬で脱税の罪に問われるとどうなる?

競馬で馬券が当たり、一定以上の収入を得たにもかかわらず、確定申告をしていなかった、または過少に申告をしていたといった場合は脱税が疑われます。脱税とみなされた場合には、次のようなペナルティが科せられます。

 

重加算税の納税が求められる

正しく納税をしなかった場合に科せられるペナルティが加算税です。加算税にはいくつかの種類がありますが、確定申告の必要性を知りながら、多額の所得を隠蔽するなどした脱税の場合には、最も税率の重い重加算税が科されます。

重加算税の税率は、確定申告をしていない場合には40%、確定申告はしていたものの申告した税額が不足していた場合には35%です。

脱税の場合、最長7年にまで遡った調査が行われます。7年に渡り、競馬で利益を得ていたにも関わらず、正しく確定申告をしてこなかった場合、重加算税の税額は多額に上る恐れがあるでしょう。

 

延滞税の納付も求められる

延滞税とは、税金の納付が遅れたことに対して科せられるペナルティです。令和4年1月1日以降の延滞税の税率は、納期限の翌日から2ヶ月までは2.4%、納期限の翌日から2ヶ月を越えた日以降は8.7%となっています。

延滞税は、納税が完了した日まで課され続ける点に注意しなければなりません。したがって、長く競馬の利益を正しく申告してこなかった場合は、延滞税の税額も高額になるでしょう。

 

刑事罰の罰金や懲役刑が科される

競馬の利益を隠蔽するなどして、脱税の罪に問われる場合、検察庁に告発がなされ、刑事裁判にかけられる可能性があります。裁判によって有罪が確定すると、刑事罰が科されます。脱税の罰則は、10年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金、または罰金と懲役の両方です。ただし、脱税額が1,000万円より大きい場合は、罰金が1,000万円を超えるケースもあるとされており、重加算税や延滞税などを加えるとかなりの負担になるでしょう。

なにより、脱税は犯罪であり、競馬の利益を正しく申告しないことで脱税の罪が確定すれば、前科が付くことになるのです。

 

まとめ

競馬が好きな方にとって、万馬券は夢のような話でしょう。しかし、競馬で当たり馬券の払戻金を受け取った場合は、利益分について正しく確定申告をしなければ、税務調査の対象となり、脱税の罪で告発される恐れがあります。

競馬を楽しむ場合には、年間の払戻金の額や馬券の購入金額などをメモし、1年間の利益を算出しておくことが大切です。正しく確定申告を行わず、脱税容疑をかけられた場合、罰金や懲役刑を科される恐れもあります。確定申告が必要となる金額は、馬券を購入した人の属性によっても変わってきますが、自身のケースに当てはめ、競馬を楽しむ際には、確定申告の必要性についても考えておくようにしましょう。

 

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この記事の監修者

松本 崇宏

税理士法人松本 代表税理士

松本 崇宏(まつもと たかひろ)

お客様からの税務調査相談実績は、累計5,000件以上。
国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。

税理士法人松本は国税OB・元税務署長が所属する税理士法人です。

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