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かつて、競馬と言えば競馬場に行き、走る馬を見ながら楽しむものという印象がありました。しかし、近年では、スマートフォンなどから馬券を購入し、競馬を楽しむ人が増えています。JRAが発表しているデータによると、競馬場に入場する人の数は1990年代に比べ、大きく数を減らしているものの、馬券を購入した総参加人員は増加しているのです。このことからも、競馬場に足を運ばなくても馬券の購入ができるようになり、競馬を楽しむ層が広がったことが分かります。
オンラインで馬券の購入ができるようになり、競馬は以前よりも気軽に楽しめるようになりました。しかし、競馬を楽しむ際には注意しなければならないことがあります。それは、競馬で勝ったお金にも税金がかかるという点です。
今回は、競馬と税金、確定申告の関係を分かりやすくご説明します。
目次
競馬で当たった場合、得た利益は一時所得または雑所得となり、課税の対象となります。そのため、競馬で一定以上の金額が当たった場合、税金を納めなければなりません。
競馬で得た利益は、原則として一時所得として扱われます。一時所得とは、営利目的の事業などではない行為から得られる所得のことで、労務や役務としての対価、資産の譲渡による対価ではない性質の一時的な所得のことです。
具体的には、競馬の払戻金のほか、競輪やオートレースなどの払戻金、懸賞などの賞金、生命保険の一時金、損害保険の満期返戻金などが一時所得に該当します。
競馬での利益は原則として一時所得として扱いますが、雑所得として扱うケースもあります。一時所得と雑所得では、税金の計算方法が異なります。そのため、競馬で払戻金を受け取った場合は、利益額が一時所得に該当するのか、雑所得に該当するのかをしっかり把握しておくことが大切です。
競馬の儲けを雑所得として扱う場合は、競馬を営利目的とした継続的な行為として行っているようなケースに限られます。コンピューターなどを使って設定した購入パターンに基づき、年間を通じてほぼすべてのレースにおいて馬券を購入していたような場合は、競馬であっても営利目的としてみなされ、雑所得として扱えるようになるのです。
趣味で馬券を買って、競馬を楽しむ場合に当たった払戻金は、一時所得になります。一時所得の金額は、次の計算式で算出します。
一時所得の金額=総収入額-収入を得るために支出した金額-特別控除額(最大50万円)
しかし、一時所得にかかる税金を計算する場合は、この一時所得の金額が対象になるわけではありません。一時所得にかかる税金は単独で計算するのではなく、給与所得など、その他の所得の金額と合計して総所得金額を求めた後に、税額の計算をすることとなります。その際、給与所得などに加える額は、一時所得の1/2に相当する金額となります。
一時所得の場合「収入を得るために支出した金額」とは、当たり馬券の購入費用が該当します。他のレースの馬券購入費用は含まれない点に注意が必要です。
雑所得の課税額は次のように計算します。
雑所得の課税所得金額=総収入金額-収入を得るために支出した金額
雑所得も総合課税となるため、給与所得などの所得と合算し、課税総所得金額を求めたうえで所得税の税率をかけ、納めるべき税金の額を算出します。
雑所得の場合、収入を得るために支出した金額には、はずれ馬券の購入費も含めることができます。営利目的で競馬を行っていると認められる場合、馬券の購入費用全額が経費として認められるのです。
競馬で利益を得た場合、確定申告によって税金を納めることになります。しかしながら、競馬で当たったからと言って、かならずしも確定申告が必要になるわけではありません。競馬で当たり馬券の払い戻しを受けた場合に確定申告が必要になるケースをご紹介します。
給与所得を得ている会社員が、趣味で競馬を楽しんでいる場合、確定申告が必要になるのは、競馬の払戻金を含めた年間の一時所得金額が90万円を超えた場合です。
一時所得の場合、最大50万円の特別控除を適用できます。そのため、90万円から特別控除50万円を差し引いた額は40万円となりますが、一時所得の課税対象額はその1/2となります。
給与所得者の場合、確定申告が必要になるのは、給与所得以外の所得額が年間20万円を超える場合です。したがって、給与所得者である会社員の場合、確定申告が必要になるのは、競馬を含め、年間90万円を超える一時所得を得た場合になるといえます。
令和7年分から所得税の基礎控除の見直しが行われています。そのため、個人事業主の場合、事業所得と競馬での一時所得とを合わせた額が基礎控除額を超える場合に、確定申告が必要となります。つまり、個人事業主の場合は、競馬の儲けの額に関わらず、事業所得と競馬による一時所得の合計額が基礎控除額以上になった場合に、確定申告が必要になるのです。
尚、令和9年分以降の基礎控除は58万円となりますが、令和7年、令和8年分に関しては、合計所得金額によって基礎控除額が変わります。合計所得金額が132万円以下の方は95万円、132万円超336万円以下の方は88万円、336万円超489万円以下の場合は68万円、489万円超655万円以下の場合は63万円、665万円超2,350万円以下の場合は58万円です。
競馬の払戻金を受け取った場合に、確定申告をし、税金を納める必要があるケースについてご説明してきました。では、競馬で一定以上の払戻金を受け取っていたにも関わらず、確定申告をしていない場合、どのようなことが起きるのでしょうか。
冒頭でご説明したように、競馬場を訪れる人は減っているものの、競馬を楽しむ人は増加しています。それは、インターネットを使い、スマートフォンなどから馬券を購入する人が増えているからです。PATと呼ばれるシステムを使い、オンライン上で馬券を購入すると、的中した場合の払戻金は自動的に購入資金に反映されたり、銀行口座に振り込まれたりします。当然、システム上には払い戻しの履歴が残るため、競馬で利益を得ても確定申告をしていない場合、税務署では簡単にその情報を得られやすくなっているのです。
そのほか、税務署ではSNSなどのチェックも行っています。競馬で万馬券を当てた際、嬉しさのあまりSNSにその情報を載せるケースもあるでしょう。SNSでの情報がきっかけで、税務署に競馬の確定申告漏れが発覚するケースもあります。
給与所得の場合、年間90万円を超える一時所得を得ている場合、確定申告をし、正しい税金を納めなければなりません。年間90万円を超える一時所得があっても、確定申告をしていない場合、正しく税金を納めていない状況となります。確定申告を怠るということは、納税の義務を怠ることと同義です。そのため、確定申告をしていない場合、不足分の税額に加え、ペナルティ分の税額の納税が求められます。
確定申告をしていない場合に課せられるペナルティは、無申告加算税です。無申告加算税の税率は、納税額が50万円以下の部分については15%、50万円超300万円以下の部分については20%、300万円超の部分については30%となります。
会社員の場合、給与所得以外に所得がなければ、年収2,000万円を超えない限り、確定申告をする必要はありません。そのため、競馬で利益が出たにも関わらず、確定申告をしていない場合は、無申告加算税が課されます。
しかし、個人事業主の場合、事業所得については確定申告をしているものの、競馬の払戻金を確定申告に含めていないケースもあるかもしれません。そのような場合、納税すべき税金が不足することになります。したがって、確定申告の額が不足していた場合、過少申告加算税と呼ばれる税金の納付が求められます。過少申告加算税の税率は、不足分の税金が50万円以下の部分については10%、50万円超の部分については15%となります。
競馬が的中し、多額の払戻金を受け取っていたにも関わらず、意図的に確定申告をせず、競馬による所得を隠蔽していたような場合は、無申告加算税や過少申告加算税に代えて、重加算税が課されます。重加算税の税率は、35%または40%です。
また、重加算税を課される場合、ペナルティとして行政罰を課されるだけでなく、脱税の疑いで告発される恐れもあります。脱税は、不正に税金を納めない行為のことです。確定申告の必要性があることを知りながら確定申告をせず、納税をしてこなかった場合、不正に税金逃れをしていると捉えられる恐れもあります。
脱税の疑いが抱かれた場合、検察によって裁判所に起訴され、裁判所で有罪判決が下されると、10年以下の懲役、もしくは1,000万円以下の罰金、またはこれらの両方が科される可能性があります。脱税罪が確定すると、前科が付くことになる点にも注意しなければなりません。
競馬の払戻金の確定申告の方法と確定申告を行う際の注意点についてご説明します。
JRAでは、年間3,000回以上のレースを実施しています。競馬を楽しむ方の場合、1つのレースだけに投票するのではなく、複数日程にわたり、多くのレースを楽しむケースが多いのではないでしょうか。
競馬の払戻金について確定申告をする際には、年間の払戻金の受取額と、払戻金にかかる投票額を合計しなければなりません。そのため、馬券を購入した場合には、馬券の購入日と金額、払戻金の額を控えておく必要があります。
そのうえで、一時所得に該当する場合には、払戻金の年間合計額と払戻金の対象となった当たり馬券の購入額を算出します。次に、払戻金の年間受取額から当たり馬券の購入費と特別控除額の50万円を差し引き、さらにその額に1/2をかけた額が課税対象の一時所得額となります。雑所得に該当する場合は、年間の払戻金の合計額から年間の馬券購入費用を差し引き、雑所得の課税対象額を算出します。
確定申告は、毎年2月16日から3月15日までの間に、前年分の所得についての確定申告書を提出し、しかるべき税金を納めるルールになっています。確定申告をするには、まず、確定申告書の作成が必要です。確定申告書の作成方法は、手書きで作成する方法とパソコンなどで作成する方法があり、提出方法も紙で提出する方法とオンラインで提出する方法があります。
国税庁では確定申告書等作成コーナーを準備しており、案内にしたがって必要な項目を入力していくと、税金を自動的に計算することが可能です。また、確定申告書等作成コーナーは、スマートフォンからも操作することができます。
競馬で得た所得が、一時所得に該当するか、雑所得に該当するかによって、課される税金の算出方法が変わってきます。趣味で競馬を楽しむ人の場合、競馬で得た所得額は一時所得に該当します。また、コンピューターなどを使って予想を行い、年間を通して多額の馬券を購入している場合に得られる所得は雑所得となります。
一時所得の場合、確定申告時に経費として払戻金から差し引くことができるのは、当たり馬券の購入代金のみになります。一方、雑所得の場合は、当たりはずれに関わらず、馬券の購入金額すべてを経費として扱える点に注意しなければなりません。
これまで、競馬の払戻金に税金がかかることを知らず、確定申告をしてこなかった人もいらっしゃるかもしれません。そのような場合、税金を納めていないことが税務署に発覚する可能性が高くなります。確定申告をしていない場合でも、税務署からの指摘を受ける前に自主的に正しく確定申告を行えば、ペナルティを軽減できる可能性があります。これまで競馬の利益について確定申告をしていなかった場合は、早めに税理士に相談し、税務調査が入る前に期限後申告を行うようにしましょう。
競馬で得たお金にも税金がかかるため、給与所得者の場合、競馬の払戻金を含め、年間90万円以上の一時所得などを得ている際に確定申告が必要です。また、個人事業主の場合は、事業所得に加えて確定申告を行うようにしましょう。
オンライン上で馬券を購入する人が増える中、競馬で得た利益について確定申告をしていない事例も増えていると言われています。オンラインシステムによって、馬券の購入履歴や払戻金の情報は簡単に把握できるようになりました。万が一、競馬で利益を上げているにも関わらず確定申告をしておらず、税金を納めていない場合は、ペナルティとしての税金まで課される恐れがあります。競馬で一定以上の利益を得た場合には、必ず確定申告を行い、正しく納税をするようにしましょう。これまで確定申告をしていなかった場合は、税理士に相談し、税務調査が入る前に正しく納税を行うことが大切です。
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この記事の監修者
税理士法人松本 代表税理士
松本 崇宏(まつもと たかひろ)
お客様からの税務調査相談実績は、累計5,000件以上。国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。
税理士法人松本は国税OB・元税務署長が所属する税理士法人です。
全国からの税務調査相談実績 年間1,000件以上
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