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確定申告の時期は原則として毎年決まっており、確定申告が必要な人は、確定申告期間に申告を済まさなければなりません。しかし、初めて確定申告をする人や事業が忙しかった人などは、確定申告の期限に間に合わないといった事態が発生する恐れがあります。もし、確定申告の期限に間に合わない場合、どのようなリスクが生じるのでしょうか。
今回は、確定申告の期限に間に合わない場合のリスクとその際の対処法について解説します。
目次
確定申告の期限は、個人の場合と法人の場合で異なります。
所得税の確定申告期間は、原則として2月16日から3月15日までと決まっています。しかし、2月16日や3月15日が土日祝日に重なる場合は、期限は翌平日に繰り下げとなります。例えば2026年の場合は、2月16日は月曜日ですが、3月15日は日曜日です。そのため、2026年の確定申告期間は2月16日から3月16日までとなります。
確定申告は、期限内に申告と納税を済ませることが義務付けられているため、2025年の1月1日から12月31日までに生じた所得については、2026年の3月16日までに申告と納税を済ませておかなければなりません。
法人の場合、確定申告期限は事業年度終了日(決算日)の翌日から2ヶ月以内です。例えば、3月が決算月の会社の場合は、5月31日が確定申告の期限となります。法人の場合も申告期限が土日祝日にあたる場合は、期限は翌平日に繰り下げられます。
2025年度の場合、2025年4月1日~2026年3月31日までの確定申告は、2026年の5月31日が期限ですが、31日が日曜日になるため、この場合6月1日の月曜日が期限となります。
確定申告書の提出方法には、紙の用紙を提出する方法とe-Taxで電子申告を行う方法の2つがあります。また、紙の提出方法は税務署の窓口への持参や時間外収受箱への投函、郵送などの方法を選ぶことが可能です。確定申告に間に合わない場合、後ほど説明するようなリスクが生じるため、提出方法によって異なる期限についてもしっかり把握しておきましょう。
e-Taxで提出する場合の確定申告の期限は、確定申告期間最終日の23時59分です。この時間までに送付をしていれば、期限内に確定申告を済ませることができます。2025年分であれば、2026年3月16日の23時59分が期限となります。
ただし、確定申告書を提出するだけではなく、納税も済ませておかなければならない点に注意が必要です。
税務署の窓口は、原則17時まで開庁しています。そのため、紙の確定申告書を税務署に直接持参し、窓口に提出する場合は、確定申告期間最終日の17時が期限です。
税務署の窓口は17時で終了しますが、税務署には閉庁時間であっても書類の提出ができる時間外収受箱が設置されています。時間外収受箱に投函する場合、翌日の回収時間までに確定申告書が投函されていれば、申告期限に間に合ったとみなされます。税務署の開庁時間は8時30分であるため、その時間までに投函をすれば、期限内に確定申告書を提出することが可能です。
郵送で確定申告書を提出する場合は、税務署の到着日ではなく、消印が期限となります。2025年分については、2026年3月16日の消印が押されていれば、期限内に提出したものとみなされるのです。ただし、ポストに投函される場合、ポストによって収集時間は変わってきます。収集後に投函した場合は、翌日の消印が押されることになるため、確定申告の期限に間に合いません。郵送をする場合は、郵便局の窓口に提出し、当日の消印を押印してもらえるか確認した方が安心でしょう。
確定申告は、期限内に申告書を提出し、納税を済ませなければならないルールです。そのため、確定申告の期限に間に合わない場合は、ペナルティが科される恐れがあります。確定申告が間に合わない場合に課される可能性があるペナルティは次のとおりです。
確定申告が間に合わなかった場合、無申告加算税が課される恐れがあります。無申告加算税とは、期限までに確定申告を行わず、税金を納めなかった場合に課される税金です。無申告加算税の税率は、納税額が50万円までの場合は15%、50万円超300万円までの部分は20%、300万円超の部分は30%となっています。
ただし、納めるべき税額が1万円に満たない場合や無申告加算税の額が5,000円未満の場合、無申告加算税が課されることはありません。
延滞税は、税金の納付が遅れたことに対する利息的な意味合いを持つ税金です。延滞税の税率は、納期限の翌日から2ヶ月までとそれ以降で変わってきます。
延滞税の割合は次のように決められています。
納期限の翌日から2ヶ月を経過する日まで:年7.3%と延滞税特例基準割合+1%のいずれか低い割合
納期限の翌日から2ヶ月を経過する日の翌日以降:年14.6%と延滞税特例基準割合+7.3%のいずれか低い割合
延滞税特例基準割合は、各年の前々年の9月から前年の8月までの各月における銀行の新規の短期貸出約定平均金利の合計を12で割った割合として、各年の前年の11月30日までに財務大臣が告示する割合に1%を加えた割合です。したがって、延滞税特例基準割合は、毎年変わる点に注意しなければなりません。
2025年1月1日~12月31日までの延滞税の税率は、納期限の翌日から2ヶ月までは2.4%、それ以降については8.7%となります。また、2026年1月1日から2027年12月31日までの税率は、納期限の翌日から2ヶ月を経過する日までは2.8%、それ以降については9.1%です。
延滞税の計算は、1日単位で計算されるため、納税が遅れれば遅れるほど延滞税の額も高くなっていく点に注意しなければなりません。ただし、延滞税の場合、納税額が10,000円未満の場合、延滞税の額が1,000円未満の場合は、納税が免除されます。
個人事業主が確定申告に間に合わない場合、無申告加算税や延滞税といった税金が課されるだけではありません。青色申告を行う個人事業主には、青色申告特別控除という制度が用意されています。青色申告特別控除の要件を満たすと65万円、55万円、10万円のいずれかの金額を所得額から控除して納税額を計算できます。青色申告特別控除によって課税所得額が低くなれば、当然、所得税の額も低く抑えられるため、青色申告特別控除は個人事業主にとって大きな節税メリットをもたらします。
しかし、確定申告に間に合わない場合、青色申告特別控除として適用できる額は10万円になります。なぜなら、65万円と55万円の青色申告特別控除の適用要件の一つに確定申告期限内に申告を行うことが示されているからです。
無申告加算税と延滞税が課され、さらに、青色申告特別控除を適用できる額が10万円となれば、期限までに申告をしていた場合に比べ、納税しなければならない額は大幅に高くなる可能性があります。
青色申告特別控除は、青色申告を行う個人事業主を対象とした制度です。法人については青色申告特別控除が適用されることはありません。しかし、法人の場合、より大きなペナルティが課される恐れがあります。2期連続で確定申告が間に合わない場合、青色申告の承認が取り消されるのです。
青色申告の承認が取り消された場合、赤字の繰り越しが認められません。青色申告を行う法人の場合、最大10年間の赤字の繰り越しが認められているため、黒字の年に赤字を差し引き、納税額を抑えることが可能です。しかし、青色申告の承認が取り消された場合、赤字の繰り越しを行うことはできません。
また、青色申告をしている法人は、取得価額が30万円未満の減価償却資産を購入した年に一括して経費に計上できる少額減価償却資産の特例を利用できます。青色申告の承認が取り消されれば、この特例を利用することもできません。
青色申告の承認が取り消された場合、取消通知を受けてから1年間は青色申告の承認申請書を再提出できない点にも注意が必要です。
確定申告を期限内に行うことが難しい場合は、どう対処すればよいのでしょうか。確定申告が間に合わない場合の対処法についてご紹介します。
確定申告は期限終了後でも提出することが可能です。万が一、提出期限に間に合わない場合は、期限終了後にできるだけ早く期限後申告を行い、納税をしましょう。
確定申告を行わない場合、税務調査の対象になる恐れがあります。また、税務調査の事前通知を受ける前に、自主的に期限後申告を行えば、無申告加算税の税率は、税額に関わらず一律5%に軽減されます。また、早めに期限後申告を行えば、延滞税の額も低く抑えられるため、期限に間に合わない場合であっても、できるだけ早く期限後申告を行うことが大切です。
国税を期限内に納税することが難しい場合に利用できる、猶予制度と呼ばれる制度があります。確定申告が間に合わない理由が特定の事情に由来する場合は、税務署に申請を行うことで原則として1年以内の期間に限り、納税が猶予されます。
納税の猶予の要件は、確定申告の期限前に、震災、風水害、落雷、火災など、災害によって財産に相当な損失を受けた場合です。
申請によって猶予が認められるのは、対象の国税の全部または一部です。また、相当な損失とは、原則として被害額が全資産額のおおむね20%以上であるケースを指します。その際、担保の提供は不要です。
納税の猶予が認められた場合、納税が最大1年間猶予され、猶予期間中の延滞税が免除されます。また、財産の差し押さえや換価(売却)も猶予されます。
また、国税庁では、次のような個別の事情に該当する場合は、納付ができないと認められる金額を限度として納税の猶予を受けることができるとしています。
個別の事情の具体例として挙げられているのは、次のようなケースです。
1 納税者本人が災害によって財産に被害を受けた場合、または盗難に遭った場合
2 納税者本人又は生計を同じにする家族が病気にかかった場合
3 納税者が営む事業について、やむを得ず休廃業をした場合
4 納税者が営む事業について、著しい損失を受けた場合
5 本来の期限から1年以上経過した後に、修正申告などにより納付すべき税額が確定した場合
この場合、猶予が認められる金額は、一時に納付することができない金額に限定されます。原則として担保の提供が必要になりますが、猶予を受ける金額が100万円以下の場合や猶予を受ける期間が3ヶ月以内である場合、提供できる担保がない場合、担保は不要です。
期限までに確定申告が間に合わないのではなく、全額の納税が難しいことが分かっている場合もあるでしょう。所得税の場合は、納期限までに納付すべき税額の1/2以上を納付すれば、残りの税額の納付を5月31日まで延長する制度があります。ただし、延納期間中は年0.9%の割合で利子税がかかります。
延納制度に関しては、特に申請書を提出する必要はありません。確定申告書の中にある「延納の届出」欄に、申告期限までに納付する金額、延納届出額を記載すれば、納税額の1/2未満の金額の納付日を5月31日まで延長することが可能です。
確定申告が期限までに間に合わない場合、ペナルティとして無申告加算税、延滞税が課される恐れがあります。個人事業主の場合、期限に間に合わない場合、青色申告特別控除額の適用額が10万円になってしまうため、納税額が高くなります。また、法人の場合は2期連続で確定申告が間に合わない場合は青色申告の承認が取り消されてしまいます。
確定申告が間に合わなかった場合でも、できるだけ早く期限後申告を行うことで、無申告加算税や延滞税の負担を軽減することが可能です。また、納税が難しいことが分かっている場合には納税の猶予制度や延納制度などを活用するようにしましょう。
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この記事の監修者
税理士法人松本 代表税理士
松本 崇宏(まつもと たかひろ)
登録者16万人以上のYouTubeチャンネル「税理士法人松本〜税金の裏のウラ〜」を運営。 代表を務める税理士法人松本では、これまでに累計5,000件を超える税務調査のご相談・対応実績があり、国税局査察部、税務署長歴任者・税務調査一筋の現場に強い国税出身のOB税理士が現在14名常駐。国税当局側の視点を踏まえて、お客様の立場を尊重し、税務調査でお悩みのお客様に適切かつ迅速に対応。また、調査前・調査中に関わらず、あらゆる状況から最善のサポートが可能。なお、調査結果が追徴税額なしとなる実績も多数取得。税務調査における専門性・経験則・折衝力から最善の結果を導き、お客様の笑顔とありがとうを励みに成長し続けている。
税理士法人松本は国税OB・元税務署長が所属する税理士法人です。
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