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税務調査というと、法人や個人事業主を対象とした、法人税や所得税、消費税などの税目に関する調査だと思われるかもしれません。しかし、個人が被相続人から財産を引き継いだ際に課される相続税も税務調査の対象となります。今後、相続の予定がある方や相続をしたけれどまだ申告をしていない方などは、今後、税務調査の対象に選ばれるかもしれません。
そこで今回は、相続税の税務調査を受けやすい人の特徴や相続税の3年ルールと呼ばれていた生前贈与の改正などについて解説します。
目次
まずは、相続税がどのようなときに発生し、どのような人に納税義務が生じるのか、相続税の基礎知識から確認していきましょう。
相続税は、親や配偶者が亡くなり、現金や不動産、有価証券などを引き継いだ場合に、相続した個人に課される税金です。亡くなった被相続人の血族は法定相続人となりますが、遺言がない場合の法定相続人は、被相続人との関係によって優先順位が変わります。
配偶者は常に相続人となると定められています。また、相続順位は子どもが第1順位、父母が第2順位、兄弟姉妹が第3順位となります。
配偶者と子どもがいる場合、相続割合は配偶者が財産の1/2、残りの1/2を子どもが相続することとなります。例えば、子どもが3人いる場合、それぞれの子どもが相続するのは、財産の1/6ずつです。
親や配偶者が亡くなった場合でも、必ず相続税の納税が必要になるわけではありません。相続税には法定相続人の数に応じて決まる基礎控除があり、基礎控除の額を上回った場合、相続税の納税が必要になります。
相続税の基礎控除の額は、以下の計算式で求められます。
基礎控除額=3,000万円+(600万円×法定相続人の数)
例えば、法定相続人が一人の場合、相続した財産の額が3,600万円以上であれば、相続税の申告をしなければなりません。また、基礎控除の額は、法定相続人が二人の場合は4,200万円、3人の場合は4,800万円、四人の場合は5,400万円と相続人が増えるほど金額も増える仕組みです。
遺産総額が4,000万円で相続人が一人だけのケースでは、基礎控除額3,600万円を超えているため相続税の申告をしなければなりません。しかし、相続人が二人の場合、基礎控除額は4,200万円となるため、相続税の申告は不要となります。
ただし、配偶者については税額を軽減する措置が用意されており、相続財産の額が1億6,000万円を超えなければ、相続税の納税は必要ありません。また、相続額が1億6,000万円を超えている場合でも、法定相続分の範囲内であれば、課税はされません。しかし、その場合であっても、相続税の申告は必要になる点に注意が必要です。
相続税の税務調査とは、相続税の納税義務を負う人が正しく相続税を納税しているかを確認する税務署による調査です。
国税庁では、相続税の税務調査の実施状況を公表しています。令和7年12月に公表された「令和6事務年度における相続税の調査等の状況」によると、令和6事務年度に実施された相続税の税務調査件数は9,512件です。そのうち、申告漏れ等の非違が認められた件数は7,826件となっており、何らかのミスや不正が指摘された割合は82.3%にも上ることが分かります。
また、重加算税の賦課件数も1,065件、重加算税の賦課割合も13.6%と高い数字になっている点にも注目です。税務調査1件あたりの申告漏れ課税価格は3,093万円、追徴税額は867万円となっています。
この結果から、相続税の税務調査において、税務署では、相続税を正しく申告していない人の情報を把握しており、対象者を選んだうえで税務調査に踏み切っていると考えることができるでしょう。
参照:国税庁「令和6事務年度における相続税の調査等の状況」
前述のように、相続税の税務調査ではかなりの確率で非違が指摘されています。税務調査は、適切で公平な課税を実現する目的で実施される調査です。そのため、税務署では、税務調査によって不足分の税金を徴収し、不正を正すという成果を求めています。
したがって、税務署では相続税の税務調査を実施する際、ランダムに調査対象者を選ぶのではなく、ミスや不正が行われている可能性が高い人に目星をつけて、調査を実施している可能性が高いといえるでしょう。
では、どのような人が相続税の税務調査の対象となりやすいのでしょうか。相続税の税務調査が入りやすい人の特徴をご紹介します。
人が亡くなった場合、市町村役場に死亡届を提出しますが、市町村役場では翌月末までに税務署へ死亡情報を通知しなければならないルールがあります。したがって、税務署では亡くなった人の情報は必ず把握できる仕組みです。
また、税務署では生前の納税情報や取得不動産の情報などから、保有財産の額が高い人を把握しています。そのため、高額な相続が発生している可能性がある人を事前にチェックしている可能性が高いのです。
高額な遺産相続が発生したはずであるにも関わらず、相続税の申告を行っていない場合や申告はしているものの内容に不審な点が見られる場合などは、税務調査を実施し、状況を確認することになります。
また、たとえ正しく申告をしたつもりであっても、相続財産が多い場合や相続額が大きい場合、財産の見落としや計算ミスが発生するケースが多く、その場合、不足分の税額も高くなります。この点からも高額な相続が発生している人に対しては優先的に税務調査を実施する傾向が見られます。
税務署では、調査のために必要な行為であれば、金融機関に対し、預金口座の入出金履歴の確認を依頼することができます。亡くなる前に、頻繁に現金が引き出されている場合や死の直前に多額の現金が引き出されている場合などは、相続財産を隠蔽するために預金を操作したのではと疑われます。
税務署では、故人の生前の健康状態についても簡単に確認することが可能です。入退院を繰り返すなどして、多額の現金を引き出す必要性が低かったにもかかわらず、現金が引き出されているのであれば、本人以外の誰かが意図的に現金を引き出したと考えられます。その場合、税務調査を実施し、状況を確認することとなるでしょう。
日本国内ではなく、海外に預金口座を開設している人もいます。日本円以外の通貨で資産を保有すれば、金融危機やインフレなどのリスクにも備えられます。また、日本よりも高い金利の国にお金を預ければ、高金利によるメリットを享受できるでしょう。そのほか、大きなリターンの取得を目的に今後、経済成長が見込まれる国の不動産を取得し、不動産投資を行っているケースもあります。
亡くなった人が日本に住所を置いている場合、原則として海外の財産についても相続税の課税対象となります。しかし、このような海外資産の場合、日本では資産の実態をつかみにくいという問題があり、海外に資産を保有している人が亡くなった場合は税務調査が実施されるケースが多くなっています。
税理士に依頼することなく、自分で相続税の申告をした人も税務調査の対象に選ばれやすい傾向が見られます。相続税の申告自体は、相続をした本人が行うことができます。税理士に依頼すると費用がかかるため、できれば自分で申告をしたいと思う人も少なくないようです。
しかし、相続税の申告手続きは非常に複雑であり、計算のミスや申告財産の見落としなどが発生しやすくなっています。そのため、税理士に依頼せず、申告者本人が申告書を作成した場合、ミスによって納税額が不足しているケースが多いようです。
税理士に申告を依頼した場合、税理士が署名を付したうえで申告書を提出します。税理士は税務のプロであり、税理士が作成した申告書はミスが生じている可能性が低いため、税務調査を実施するケースは少ないのです。反対に、相続人本人が作成した申告書の場合は、何らかのミスが生じている疑いが強いと判断され、税務調査の対象になるケースが多くなります。
名義預金とは、被相続人が配偶者や子ども、孫などの名義で開設した預金口座のことです。実際には、預金口座の名義人が口座を管理しているのではなく、亡くなった被相続人が口座を管理し、入金などを行っていた場合、その口座の財産は被相続人に帰属するとみなされます。
例えば、長年専業主婦をしていた配偶者名義の口座に多額の預金がある場合、まだ学生である孫の口座に多額の預金がある場合などは、名義預金や生前贈与に該当するのではないかと疑われる可能性があるのです。
そのため、名義預金が疑われる場合も、税務調査の対象となる可能性が高くなるでしょう。
相続税の申告書は提出しているものの、申告内容に不審な点がある場合や計算の誤りが見られる場合も、税務調査の対象となるケースがあります。ただし、軽微なミスの場合は、税務調査ではなく、簡易な接触と呼ばれる方法で自主的な修正を求められるケースが増加中です。その場合は、手紙や電話などで相続税の申告書に関する確認がなされ、誤りが認められた場合には修正申告を求められます。
しかし、簡易な接触を受けた場合でも、適切に対応しなかった場合は税務調査に発展する恐れがあるため、税務署から問い合わせを受けた場合は必ず対応しなければなりません。
相続税とは、財産の所有者が亡くなったことで、遺族が財産を引き継いだときに発生する税金です。一方、財産を所有している人が存命中に自分の財産を贈与するケースがあります。この場合、贈与される財産には贈与税が課税されるルールです。
相続税と贈与税では、税金の計算方法が異なります。生前に子どもや孫などに贈与をした場合、贈与税は発生しますが、亡くなったときの財産は目減りしているため、相続税の負担を減らすことが可能です。そのため、一定以上の財産を保有する人の場合、生前贈与を行い、家族の相続税の負担を軽減しようとするケースが見られます。 生前贈与を使った相続税の節税行為を防ぐために定められているのが、生前贈与加算の制度です。2023年12月31日までは、生前贈与をしてから3年以内に贈与をした人が亡くなった場合、3年間に行った生前贈与については、亡くなったときの保有財産に加えて、相続税を計算しなければなりませんでした。
法改正によって2024年1月1日からは、3年ルールが見直され、7年に延長されています。つまり、2024年1月1日から行われる生前贈与については、7年分が持ち戻しになるのです。持ち戻し期間が長くなれば、生前贈与をした財産も、相続財産に上乗せされる期間が長くなります。
ただし、生前贈与の持ち戻し期間は一気に7年に延長されるわけではありません。段階的に延長が進められ、2031年1月1日に完全に7年間に移行する形となります。
生前贈与の3年ルールが7年に延長されていることを把握しておらず、2024年1月1日以降、過去7年分の生前贈与の額を含めて相続税の申告をしない場合、税務調査で指摘を受ける可能性が高くなります。生前贈与については、7年分を持ち戻さなければならないルールに変更になっている点をしっかり理解しておくことが大切です。
令和6事務年度に実施された相続税の税務調査の件数は9,512件です。そのうち82.3%にあたる7,826件に誤りや不正が指摘されています。申告漏れ課税価格は2,942億円、追徴税額は824億円にも上っており、相続税を正しく納税していない事例が多いことが浮き彫りとなる結果となっています。
また、2024年1月1日から生前贈与の3年加算ルールは7年に延長されている点にも注意しなければなりません。今後、3年加算ルールを把握していなかったために、生前贈与の持ち戻しをせずに正しく相続税を申告しなかったことが原因で、税務調査に発展する事例も増えると考えられます。
相続が発生した場合には、相続税に関するルールを十分に理解したうえで、正しく申告を行うことが大切です。また、相続税の申告方法が分からない場合などは、税理士に依頼することも検討しましょう。正しく申告することで、税務調査のリスクを抑えることができます。
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この記事の監修者
税理士法人松本 代表税理士
松本 崇宏(まつもと たかひろ)
登録者20万人以上のYouTubeチャンネル「税理士法人松本〜税金の裏のウラ〜」を運営。 代表を務める税理士法人松本では、これまでに累計5,000件を超える税務調査のご相談・対応実績があり、国税局査察部、税務署長歴任者・税務調査一筋の現場に強い国税出身のOB税理士が現在14名常駐。国税当局側の視点を踏まえて、お客様の立場を尊重し、税務調査でお悩みのお客様に適切かつ迅速に対応。また、調査前・調査中に関わらず、あらゆる状況から最善のサポートが可能。なお、調査結果が追徴税額なしとなる実績も多数取得。税務調査における専門性・経験則・折衝力から最善の結果を導き、お客様の笑顔とありがとうを励みに成長し続けている。
税理士法人松本は国税OB・元税務署長が所属する税理士法人です。
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