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「子どもの将来のために」と、子供名義の口座に毎月コツコツ積み立てているご家庭は珍しくありません。ところが、口座の管理方法によっては、贈与税の対象になったり、将来の相続時に「名義預金」として相続税の課税対象になったりすることがあります。
本記事では、年110万円の基礎控除の基本から、2024年改正の生前贈与加算7年ルール、そして税務調査で指摘されないための具体的な実務ポイントまでを整理します。子を持つ親世代の方が、自分のケースに当てはめて判断するポイントをお伝えします。
目次
子供名義の口座にお金を入れる行為自体は違法ではありません。問題になるのは、入金の実態が「贈与」として成立しているかどうかです。本章では以下の3点を整理します。
贈与税は、個人から財産をもらった人に課される税金です。暦年課税では、1月1日から12月31日までの1年間に受け取った財産の合計額から基礎控除額を差し引いた残額が課税対象となります。
基礎控除は受贈者単位のため、父と祖父からそれぞれ110万円ずつ受け取れる扱いではありません。年110万円を超えて贈与を受けた場合は、翌年2月1日から3月15日までに申告と納付を済ませる必要があります。期限を過ぎると、無申告加算税や延滞税が課される場合があります。
参考:No.4402 贈与税がかかる場合|国税庁
名義預金とは、口座の名義人と、実際にお金を出した人や管理している人が異なる預貯金のことを指します。法律上の正式な用語ではなく、相続税の実務で使われる呼称です。国税庁は「相続税の申告で誤りやすい事例」のなかで、被相続人以外の名義の預貯金も以下の4要素で実質判定すると示しています。
つまり名義だけ子ども、中身は親という状態の口座は、相続発生時に親の財産として相続税の計算に取り込まれることになります。
参考:相続税の申告で誤りやすい事例⑥|国税庁
身近な入金パターンの扱いを整理します。種類によって、もともと贈与税の対象外になるものと、積み立て方によっては課税リスクが出るものに分かれます。
児童手当の場合、毎月数千円〜1万円台の積立であっても、5年〜10年単位で残高が数十万円〜100万円を超えると、社会通念上の範囲を超えたと評価されやすくなります。お年玉や祝い金もまとめて高額になる年は、念のため記録を残しておくのが望ましいといえます。
参考:No.4405 贈与税がかからない場合|国税庁
関連記事:名義預金は税務調査で狙われる!相続税がかからないようにするための対処法を解説
名義預金の判定は、機械的に決まるものではなく、実務上は複数の要素を総合して判断されます。本章では現場で見られる5要素と、指摘される典型パターン、判定後の取り扱いを整理します。
税務調査の現場で預貯金の帰属を判定する際に、よく確認される項目は次の5つに整理できます。1つ欠けると名義預金になるわけではなく、5要素の総合判断となります。
5要素のうち3つ以上が「親」に振れているケース、特に「親の給与口座から毎月振替」「通帳と印鑑を親が保管」「子どもが口座の存在を知らない」の3点が揃うパターンは、贈与契約書があっても名義預金と評価されやすくなります。
税務調査で名義預金として高い確率で指摘対象に入るのは、次の4パターンが代表的です。いずれも「贈与の合意・履行・管理移行が形として残っていない」点が共通しています。
国税庁が公表する令和5事務年度の相続税調査の概要では、実地調査件数8,556件・追徴税額735億円が報告されています。申告漏れ財産の約7割が現金・預貯金と有価証券で占められており、金額の大小にかかわらず預貯金は重点的にチェックされる項目です。
参考:令和5事務年度における相続税の調査等の状況|国税庁
関連記事:相続税の税務調査が入る割合は約15%|対象になる人の特徴とは
名義預金と判定されると、口座残高が相続財産に加算され、相続税額が増えます。あわせて以下のペナルティが課される場合があります。
参考:加算税の概要|財務省
「贈与税の時効(原則6年)を超えれば逃げ切れる」と考える方もいますが、名義預金は贈与として成立していない扱いとなるため、贈与税の時効を援用できません。贈与者の相続発生時点で相続税の課税対象として丸ごと取り込まれるため、20年以上前からの積立が対象になることもあります。
参考:相続税法|e-Gov法令検索
名義預金にしないための対策は以下のようなもので、すでに口座を運用中のご家庭でも今から取り組める内容となっています。
贈与契約は口頭でも成立しますが、税務調査の場で記録のない口頭合意を立証するのは困難です。1回の贈与ごとに契約書を作り、贈与者と受贈者の双方が署名押印する運用が望まれます。記載しておきたい項目は次のとおりです。
受贈者が未成年者の場合、単独で贈与契約をすることはできず、親権者が法定代理人として受諾します。書き方は子どもの年齢に応じて2パターンに分かれます。
親権者以外(祖父母など)が代筆した場合、後日の調査で「合意が成立していない」と評価される原因となります。親権者の法定代理が形式的にも整っていることが重要です。
関連記事:生前贈与は税務調査に注意!節税効果や税務署に指摘されないための対策とは
契約書を整えても、通帳・印鑑を親が保管し続けていれば、名義預金の色は残ります。子どもが幼い間は親権者が保管していても直ちに名義預金とは評価されにくい一方、成長段階に応じて管理の移行を進めるのが実務的です。
子どもが成人後10年以上経っても親が通帳と印鑑を握り続けているケースでは、管理を子ども側へ移す実態がないと評価されることがあります。本人が口座の存在を知り、自分でお金を出し入れしている記録が積み上がる状態が望ましいといえます。
110万円ずつ毎年贈与する暦年贈与は一般的な節税策ですが、契約や実態によっては「定期贈与」と判定され、全期間分の贈与額が初年に一括課税されるおそれがあります。国税庁の見解でも、毎年100万円ずつ10年間にわたり贈与を受けることが契約されている場合、定期金給付契約に基づく権利の贈与として、初年に1,000万円相当の贈与税がかかるとされています。
毎年同じ日付・同じ金額の振込が10年以上続くと、定期贈与と評価されやすくなります。なお、過去分の贈与契約書を遡って作成する行為は文書偽造に該当する可能性があり、調査で発覚した場合は重加算税の対象となります。過去分を整理する場合は、現在の日付で「確認書」「覚書」を作成する形にとどめるのが実務的です。
令和5年度税制改正により、贈与税と相続税の関係が大きく見直されました。子供名義口座を使った生前贈与に影響が大きいのは次の3点です。
改正後は、相続開始前7年以内の暦年贈与が相続税の計算上、相続財産に加算されます。改正前は3年以内が加算対象でしたが、2024年1月以降の贈与から段階的に期間が延びていく仕組みです。
参考:令和5年度相続税及び贈与税の税制改正のあらまし|国税庁
延長された4年分(相続開始前3年超〜7年以内)は合計100万円まで加算対象外です。1年あたり100万円ではなく4年間の合計枠である点は、誤解の多い部分です。
参考:No.4161 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)|国税庁
相続時精算課税は、原則として60歳以上の父母・祖父母から、18歳以上の子・孫への贈与を対象とした制度です。令和6年1月1日以降の贈与から、累計2,500万円の特別控除とは別に基礎控除が設けられました。
基礎控除110万円の範囲内であれば贈与税が非課税で、贈与税の申告も不要です。暦年課税の7年加算ルールが適用されない点が特徴で、長期的な財産移転を計画する場合は年110万円の基礎控除の積み上げによる節税効果が期待できます。
参考:No.4103 相続時精算課税の選択|国税庁
生前贈与加算は、相続または遺贈により財産を取得した人にだけ適用されます。相続人でない孫は、原則として加算対象外となるため、祖父母から孫への贈与は7年ルールの外側に置けます。
上記3パターンに該当すると、孫は原則加算対象外の例外となり、過去7年以内の贈与が相続財産に加算されます。祖父母→孫ルートでの贈与は有効な節税策ですが、相続設計全体との整合を取るのが望ましいといえます。
具体的な税額イメージを数字で押さえます。本章は意思決定のための最小限の数値と観点に絞ります。
直系尊属から、贈与年の1月1日時点で18歳以上の子・孫への贈与には特例税率が適用されます。基礎控除後の課税価格と税率の関係は次のとおりです。
計算式:(贈与額 − 基礎控除110万円)×特例税率 − 控除額
18歳以上の子に親から贈与する場合の目安は次のとおりです。200万円なら(200万円 − 110万円)× 10% = 9万円、300万円なら(300万円 − 110万円)× 10% = 19万円、500万円なら(500万円 − 110万円)× 15% − 10万円 = 48.5万円となります。
参考:No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)|国税庁
相続時精算課税と暦年課税の主な違いを比較すると次のようになります。
参考:No.4103 相続時精算課税の選択|国税庁 / No.4161 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)|国税庁
相続時精算課税は一度選ぶと暦年課税に戻せないため、選択前に長期的な贈与計画を確認しておく必要があります。
暦年課税と相続時精算課税のどちらを選ぶかは、家族構成や贈与の規模・期間によって結論が変わります。実務でよく確認される観点は次の4点です。
選択は一度選ぶと長期にわたって影響します。早い段階で税理士に試算を依頼し、家族構成・資産規模に合わせた判断を行うことが望ましいといえます。
子供名義の口座は、口座の名義ではなく原資・口座開設・管理・入出金・果実帰属の5要素で実質判定されるため、親が通帳と印鑑を保管し続けたままでは名義預金として相続税の対象になります。是正策の柱は、贈与契約書の作成・通帳の管理移行・定期贈与回避の3つです。2024年改正で生前贈与加算が最長7年に延長され、相続時精算課税にも年110万円の基礎控除が設けられたことで、制度選択の影響もこれまで以上に大きくなっています。
税理士法人松本では、確定申告の実務支援から税務調査対応まで、個人事業主・法人のお客さまをきめ細かくサポートしています。申告の進め方だけでなく、将来のリスクを減らす帳簿づくりや、税務署とのやり取りの考え方までご案内可能です。「申告が不安」「過去の処理が正しかったか心配」という段階でもお声掛けください。
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この記事の監修者
税理士法人松本 代表税理士
松本 崇宏(まつもと たかひろ)
登録者20万人以上のYouTubeチャンネル「税理士法人松本〜税金の裏のウラ〜」を運営。 代表を務める税理士法人松本では、これまでに累計5,000件を超える税務調査のご相談・対応実績があり、国税局査察部、税務署長歴任者・税務調査一筋の現場に強い国税出身のOB税理士が現在14名常駐。国税当局側の視点を踏まえて、お客様の立場を尊重し、税務調査でお悩みのお客様に適切かつ迅速に対応。また、調査前・調査中に関わらず、あらゆる状況から最善のサポートが可能。なお、調査結果が追徴税額なしとなる実績も多数取得。税務調査における専門性・経験則・折衝力から最善の結果を導き、お客様の笑顔とありがとうを励みに成長し続けている。
税理士法人松本は国税OB・元税務署長が所属する税理士法人です。
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