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個人事業主が合同会社や株式会社などの会社組織を立ち上げ、個人事業主として行っていた事業を法人に移行することを「法人化」といいます。法人化には節税対策や社会的信用力の向上など、さまざまなメリットがあります。
一方で、法人と個人事業主では課される税金が異なります。そのため、法人化の際には、申告のルールも変わってくる点には注意しなければなりません。事前に個人事業主と法人の課税や申告のルールの違いを把握しておかなかった場合、無申告や脱税の罪に問われる恐れも出てくるのです。
今回は、法人化の前に把握しておきたい、無申告や脱税にもつながる危険な行為や注意点、無申告や脱税のリスクなどについて解説します。
目次
個人事業主が法人化する際には、個人事業主として営んでいた事業を法人組織で継続するケースが一般的です。事業を運営する体制が変わるものの事業内容に変化は生じないため、個人事業主のときと同じような感覚で税務関連の手続きも進めてしまう可能性があります。しかし、個人事業主と法人では、確定申告において次のような違いがある点を理解しておかなければなりません。
個人事業主の場合、事業主に課される主な税金は所得税、住民税、事業税です。一方、法人化すると、事業所得をそのまま個人の所得として扱うことはできません。事業主は役員報酬という形で法人から報酬を受け取る形とし、事業で得た所得と個人の所得は明確に区分する必要があるのです。
したがって法人化後は、法人には、法人税、法人住民税、事業税などの納付が求められ、事業主個人には所得税、住民税などの納付が求められることとなります。
法人税と所得税では、申告の対象となる期間と申告期限も変わります。個人事業主の場合は、毎年1月1日から12月31日までの1年間の所得を、翌年の2月16日から3月15日までに申告し、所得税の納税を済ませるルールです。一方、法人の場合は、法人が定めた事業年度の所得について、事業年度終了日の翌日から2ヶ月以内に申告と納付を済ませなければなりません。
個人事業主の場合、事業所得にかかる所得税は0円となるため、確定申告の義務はありません。ただし、青色申告をしている場合は、最大3年間、損失の繰り越しが認められるため、赤字であっても確定申告をしておくと黒字化した場合の税金の負担を減らすことが可能です。つまり、個人事業主の場合は赤字の際の確定申告の義務はないものの、確定申告をすると将来、節税につながる可能性があるといえます。
一方で、法人は赤字でも法人税の申告は必ず行わなければなりません。青色申告をしている法人の場合、赤字は最大10年間にわたって繰り越しが認められます。個人事業主の場合に比べると、赤字の繰り越しができる期間が長く設定されていますが、この制度を利用するためには赤字の事業年度にも申告をし、申告書によって赤字の金額を税務署に報告する必要があるのです。
個人事業主と法人の確定申告についての違いをご紹介しましたが、3つ目にご紹介した「赤字のときの対応」の違いをしっかり理解しておかないと、無申告や脱税を疑われるリスクが高まります。
法人化をする際には、名刺や会社案内のパンフレット、ホームページなどを作り変えなければなりません。また、法人化にあたって事業所を新たに借り換えた場合などは、敷金や礼金、テナント料などの負担も増加するでしょう。そのため、設立1期目については経費が売上を上回り、赤字になることも少なくありません。しかし、その場合であっても法人税の申告は必要です。もし、赤字だから、1期目は期間が短かったからといった理由で法人税の申告を怠った場合、無申告状態とみなされることとなります。
法人化後は、たとえ赤字であっても期日までに申告を済ませなければなりません。赤字だからといって申告書を提出していない場合、無申告状態とみなされます。
また、赤字の場合、法人税の納税額は0円となりますが、法人住民税の均等割については、所得額が0円であっても納付が必要になります。
消費税の課税事業者である場合、赤字であっても消費税の申告が必要です。なぜなら、消費税は、消費者から預かっている税金であり、消費者から消費税を預かった事業者が納税をする仕組みになっているためです。そのため、赤字であるか黒字であるかにかかわらず、預かった消費税の額が支払った消費税の額よりも多ければ、その差額について申告をし、納税をしなければなりません。
個人事業主が法人化した場合、資本金が1,000万円以下であれば原則として、法人化から2期までは消費税が免除されます。しかし、インボイス登録事業者として登録した場合は消費税の課税事業者となるため、法人化後の1期目から消費税の申告と納税が必要です。この点を理解していなかった場合、無申告とみなされる可能性が出てきます。
法人と個人事業主では、確定申告の期限も異なります。法人化した場合は、事業年度終了日の翌日から2ヶ月以内の申告が必要です。たとえば、12月を決算期としている法人では、申告対象期間は1月1日~12月31日までと個人事業主の場合と同じですが、申告は2月末日までに済ませなければなりません。個人事業主のときと同じように3月15日が期限だと誤って認識していると、無申告期間が生じてしまう点にも注意しなければなりません。
法人化した後に無申告が発覚した場合、さまざまなリスクが生じます。無申告が発生した場合に起こり得る主なリスクは以下のとおりです。
税務調査とは、納税の義務がある個人や法人に対して実施される税務署による調査です。納税義務者であれば、個人、法人を問わず、調査の対象になる可能性はありますが、個人事業主と法人をみると、法人の方が税務調査の対象となる確率は高くなっています。
法人化をしたばかりの法人に対して税務調査が実施されるケースはそれほど多くはありません。それは、法人化直後はまだ売上も低く、所得額が低いことから納税額もそれほど大きくはならないケースが多いからです。
税務調査の目的は、正しく申告が行われているかの確認と不正な税金逃れの是正や防止です。税務署でも税務調査を実施するからにはある程度の結果を求めています。したがって、正しく申告をしている可能性が高い納税者や納税の不足額がわずかな納税者に対して、積極的に調査を行うわけではありません。調査の目的を達成するためには、正しく申告をしていない可能性が高い納税者や高額な申告漏れが予想される納税者に対して調査を実施することが重要となります。そのため、法人化してすぐではなく、ある程度、課税所得額が大きくなったタイミングで税務調査が入るケースが多いのです。
税務調査によって無申告であることが発覚すると、本来納めるべき納税額に加え、次にご紹介するような無申告加算税や延滞税などの納付が求められることとなります。
無申告は、期限内に申告をせず、税金の納付を怠っている状態です。そのため、無申告者には行政罰として無申告加算税の納付が求められます。
無申告加算税の原則税率は、納付すべき税額が50万円以下の部分は15%、50万円超300万円以下の部分は20%、300万円を超える部分は30%です。しかし、税務調査前に納税者が自主的に期限後申告を行った場合、無申告加算税の税率は軽減されます。
まず、税務調査が実施される前には税務署から税務調査に入る旨の事前通知がなされるケースが一般的です。事前通知を受けてから調査が実施される前までの間に期限後申告を行った場合、無申告加算税の税率は、50万円以下の部分については10%、50万円超300万円以下の部分は15%、300万円超の部分については25%に軽減されます。
また、税務調査の事前通知を受けずに、自主的に期限後申告を行った場合の税率は、税額にかかわらず一律5%となります。
参照元:財務省「加算制度の概要①」
無申告加算税は、期限内に申告を済ませなかったことに対して課されるペナルティです。一方、延滞税は税金の納付が遅れたことに対する意味合いを持つ付帯税です。
延滞税の税率は、法定納期限の翌日から2か月までとそれ以降で大きく変動します。また、延滞税は納期限の翌日から完納する日までの日数に応じて計算されるため、無申告期間が長くなるほど負担は大きくなる仕組みです。
延滞税の税率は毎年変わりますが、令和8年1月1日~令和8年12月31日までの期間については、法定納期限の翌日から2ヶ月までは2.8%、それ以降は9.1%となっています。
参照元:国税庁「延滞税の割合」
無申告状態が2期連続で続いた場合、青色申告の承認は取り消されます。法人化すると、個人事業主のような青色申告特別控除の制度は用意されていません。しかしながら、青色申告が取り消されると、法人の場合は最大10年間利用できる赤字の繰り越し控除が適用されなくなります。また、30万円未満の固定資産を購入した場合に、購入費用を一括して経費に計上できる少額減価償却資産の特例も適用できません。
青色申告が取り消された場合、取り消し通知書を受けてから1年間は再申請ができません。したがって、少なくとも1期分は白色申告での対応が必要となります。
税務調査によって無申告が発覚した場合、無申告加算税や延滞税が課される恐れがあります。しかし、無申告状態ではなく、脱税行為だとみなされた場合には、より重いペナルティが課されます。
申告が必要であることを理解したうえで、売上を隠蔽するなどし、所得がないように見せかけ、申告をしていない場合は、脱税としてみなされます。脱税とみなされると、無申告加算税よりもさらに重い重加算税が課されます。無申告時の重加算税の税率は40%です。
また、課されるペナルティは重加算税だけではありません。税金の納付が遅れたことに対するペナルティとして延滞税の納付も求められるため、脱税時の金銭負担は非常に大きいものとなります。
さらに、脱税の罪が確定した場合は、刑事罰も科されます。法人税法違反の場合に科される罰は、10年以下の懲役または1,000万円以下の罰金、もしくはその併科です。また、脱税額が1,000万円を超える場合、罰金の額も1,000万円以上となるケースが多くなっています。
税務調査で脱税が発覚した場合、取引先や金融機関にも、その情報は伝わります。正しく申告をしていなかったことが発覚すれば、取引先や金融機関からの信頼は著しく低下するでしょう。取引先によっては、取引停止の判断を下す可能性もあります。また、金融機関からは融資を受けにくくなるため、資金繰りが悪化するかもしれません。
脱税ではなく、無申告であった場合も、金融機関からの融資を受けることが難しいでしょう。なぜなら、融資の申請時には決算書や納税証明書などの提出を求められるケースが多く、無申告の場合、決算書や納税証明書の提出ができないからです。
法人化してすぐに取引先からの信頼を失えば、売上を拡大していくことは難しくなります。また、金融機関からの融資を受けられなければ、設備投資などを進めることも難しく、早々に事業が暗礁に乗り上げる恐れも出てくるでしょう。
法人化の際には、さまざまな書類の作成や提出が必要となります。さらに、名刺やパンフレットの準備、ホームページのリニューアルなど、さまざまな手続きが必要になり、法人化後の税務関連の手続きについてはおろそかになってしまう場合もあります。
法人化すると、個人事業主のときとは申告期間が変わってきます。うっかり申告期限を忘れてしまうと、無申告状態となります。また、個人事業主の場合、赤字であれば確定申告の義務はなかったものの、法人になると赤字でも必ず申告をしなければなりません。赤字だからといって申告を怠ったことで、無申告の指摘を受けるリスクもあります。
法人化後、無申告や脱税が発覚すると、無申告加算税や重加算税、延滞税などのペナルティが課されるほか、取引先からの信頼も大きく失うこととなります。ビジネスの拡大において、取引先との信頼関係の構築は最も重要な要素の一つです。法人化を検討する際には、無申告や脱税につながる個人事業主との税務関連の手続きの違いを把握し、正しく申告を行うようにしましょう。
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この記事の監修者
税理士法人松本 代表税理士
松本 崇宏(まつもと たかひろ)
登録者20万人以上のYouTubeチャンネル「税理士法人松本〜税金の裏のウラ〜」を運営。 代表を務める税理士法人松本では、これまでに累計5,000件を超える税務調査のご相談・対応実績があり、国税局査察部、税務署長歴任者・税務調査一筋の現場に強い国税出身のOB税理士が現在14名常駐。国税当局側の視点を踏まえて、お客様の立場を尊重し、税務調査でお悩みのお客様に適切かつ迅速に対応。また、調査前・調査中に関わらず、あらゆる状況から最善のサポートが可能。なお、調査結果が追徴税額なしとなる実績も多数取得。税務調査における専門性・経験則・折衝力から最善の結果を導き、お客様の笑顔とありがとうを励みに成長し続けている。
税理士法人松本は国税OB・元税務署長が所属する税理士法人です。
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