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個人事業主として事業を営んでいると、事業の成長は嬉しいものの、売上の伸びとともに気になってくるのが所得税や住民税の負担です。所得税は、所得額が高くなるほど適用される税率も高くなる累進課税制度が採用されているため、事業の成長にともない、負担する所得税の額も大きくなる傾向にあります。
せっかく収益が増えても、税金の負担が大きくなれば手元に残るお金が減ってしまうため、何とか税金の負担を抑えられる有効な節税方法を実施できないかと考えている個人事業主の方も多いのではないでしょうか。
節税は、税法に則り、合法的に税金の負担を減らす行為であり、脱税のような不正行為ではありません。上手に節税を実施できれば、売上額は同じでも手元に残る資金を増やすことができます。
今回は、個人事業主の方にぜひ実践していただきたいおすすめの節税対策をご紹介します。
目次
個人事業主の方が節税をするためには、まず所得税の仕組みについて理解をしておく必要があります。
所得税は、課税所得金額に税率をかけることで算出するため、課税所得を低く抑えられれば納付する税額も低くなり、節税を実現できます。
所得税額は、以下のような流れで計算をします。
・青色申告者の場合
所得金額=収入-経費-青色申告特別控除
・白色申告者の場合
所得金額=収入-経費
課税所得金額=所得金額-所得控除
所得控除とは、所得額の合計額から一定の金額を差し引くことで課税所得を低く抑える制度です。
所得控除には、所得者全員に適用される基礎控除のほか、社会保険料控除、配偶者控除、配偶者特別控除、扶養控除、生命保険料控除、地震保険料控除、医療費控除、雑損控除、小規模企業共済等掛金控除、障害者控除、寡婦控除、ひとり親控除、勤労学生控除、特定親族特別控除、寄附金控除があります。
参照元:国税庁「No.1100 所得控除のあらまし」
所得税額=課税所得金額×所得税率-控除額
2026年時点の所得税率と控除額は以下のようになっています。
参照元:国税庁「No.2260 所得税の税率」
申告納税額=所得税額-税額控除
税額控除とは、所得税の額から一定の金額を差し引き、納税額の負担を軽減する制度です。所得控除は所得額から一定の金額を差し引くものであるのに対し、税額控除は計算された所得額から直接控除額を差し引くため、より大きな節税効果を得られます。
主な税額控除には住宅借入金特別控除、住宅耐震改修特別控除、配当控除、分配時調整外国税相当額控除、外国税額控除、政党等寄附金特別控除、認定NPO法人等寄附金特別控除などがあります。
参照元:国税庁「No.1200 税額控除」
所得税の計算方法をご紹介したように、収入金額から必要経費を引き、所得控除と税額控除を適用させることで最終的に申告納税額は決定します。したがって、個人事業主の節税の基本ポイントは以下のとおりです。
では、基本的なものから裏ワザまで、個人事業主が実践できる節税対策をまとめてご紹介します。
確定申告の方法には、白色申告と青色申告の2つの方法があります。白色申告には節税メリットはありませんが、青色申告の場合は最大65万円の青色申告特別控除を適用できます。
青色申告特別控除には10万円、55万円、65万円の3つがありますが、65万円の控除を受けるためには、以下の要件を満たす必要があります。
・不動産所得または事業所得に該当する
・複式簿記で記帳をしている
・貸借対照表、損益計算書などを添付し、期限までに申告書を提出している
・電子帳簿保存を行っているか、e-Taxで申告書を提出している
青色申告をし、65万円の青色申告特別控除を適用できれば、大きな節税効果を得られます。
青色申告の節税効果は、青色申告特別控除を受けられるだけではありません。青色申告をすると、個人事業主の場合、最大3年間、赤字を繰り越すことが可能です。
事業が赤字になった場合、所得税の負担はありませんが、黒字になれば所得税を納税しなければなりません。しかし、青色申告をした場合、最大3年にわたって、黒字から赤字を差し引くことができるため黒字化した際の所得税の負担を軽減することができます。
白色申告に比べると、複式簿記での記帳が必要になるなど、手間は増えるものの白色申告にはない節税効果を得られるため、個人事業主として継続的に事業を営む予定であれば青色申告を行った方が良いでしょう。
ただし、青色申告を行うためには、青色申告をする年の3月15日までに税務署に対し青色申告承認申請書の提出が必要です。
参照元:国税庁「No.2072 青色申告特別控除」
青色申告をすることで利用できる節税対策がもう一つあります。それが少額減価償却資産の特例です。
本来、10万円以上の資産については、法定耐用年数に合わせて減価償却をしなければならず、資産を取得した年に一括して経費化することはできません。しかし、青色申告をしている個人事業主の場合、30万円未満の資産であれば、取得した年に全額を経費として計上できる制度があります。これが少額減価償却資産の特例です。
減価償却によって一部しか経費に計上できなかったものを、一括して経費に計上できれば、年間利用額は300万円までという上限があるものの、大きな節税効果につながります。
参照元:国税庁「No.5408 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例」
事業にかかった支出を漏れなく経費に計上することも節税につながる大切なポイントです。個人事業主が経費として計上できる支出には次のようなものがあります。
・租税公課(個人事業税、印紙税、自動車税など)
・荷造運賃(運送料、梱包資材費など)
・水道光熱費(水道代、電気代、ガス代など)
・旅費交通費(電車代、バス代、タクシー代、ガソリン代、駐車場代など)
・通信費(インターネット料金、電話代、携帯電話代、はがき、切手代など)
・広告宣伝費(広告掲載料、チラシ印刷費用など)
・接待交際費(取引先との飲食代、手土産代など)
・損害保険料(事務所や車の保険料など)
・消耗品費(コピー用紙やティッシュペーパーなどの消耗品購入費用)
・給料賃金(従業員を雇用している場合に支払う給与や賞与)
・外注工賃(事業の一部を外部に委託している場合に支払っている費用)
・地代家賃(事業用の土地や事務所、駐車場などの賃料)
・修繕費(自動車や設備、建物などの修繕にかかった費用)
・雑費(上記に当てはまらない少額の支出)
・税理士報酬
・専従者給与 など
事業のためにかかった上記のような費用は経費として扱えます。ただし、支出の証明として領収書やレシートは必ず保管しておくようにしましょう。
個人事業主の場合、法人に比べると事業規模が小さいため、自宅兼事務所として営業しているケースも少なくありません。また、事業とプライベートで1台の車を使用しているケースもあるでしょう。この場合、家賃や水道光熱費、ガソリン代、自動車税、任意保険料、車検代などは、事業で使用した分の割合のみを算出し、経費に計上することが可能です。事業分のみでも経費に計上できれば、節税につながります。
事業とプライベートを兼ねた支出のうち、事業に使用した分の割合を算出する処理を「家事按分」といいます。家事按分割合を求める際には、客観的な根拠に基づく区分が必要です。例えば、自宅兼事務所の家賃を家事按分する場合、事務所とプライベート空間を完全に分けているときは、事務所使用分の面積の割合で家事按分比率を算出します。また、事務所とプライベートな空間を分けていない場合などは、仕事に従事している時間数を算出することで、家事按分割合を算出することとなります。
適用できる所得控除を漏れなく申告すれば、課税所得金額が小さくなるため節税につながります。合計所得金額が2,500万円以下であれば、誰でも適用できる基礎控除のほか、要件を満たす場合に適用できる所得控除には、次のようなものがあります。
・扶養控除
・配偶者控除
・配偶者特別控除
・特定親族特別控除
・勤労学生控除
・ひとり親控除
・寡婦控除
・障害者控除
・寄附金控除
・社会保険料控除
・医療費控除
・雑損控除
・地震保険料控除
・生命保険料控除
・小規模企業共済等掛金
また、所得控除は所得から控除をして課税所得金額を減らすのに対し、税額控除は算出した税額から直接差し引ける制度であるため、税額控除はより高い節税効果を得られる制度です。
税額控除として、住宅を取得した際にローン残高の一部を控除できる住宅借入金特別控除が知られています。そのほか、配当控除、認定NPO法人等寄附金特別控除、公益社団法人等寄附金特別控除、住宅耐震改修特別控除、住宅特定改修特別税額控除などがあります。
地震保険料控除は、事務所ではなく、自宅の地震保険料が対象です。また、社会保険料については、事業主個人ではなく、事業主が支払っている生計を一にする家族の社会保険料も控除対象となります。
所得控除も税額控除も適用できるものがあれば、忘れずに申告するようにしましょう。
参照元:国税庁「No.1100 所得控除のあらまし」、「No.1200 税額控除」
小規模企業共済制度も経営セーフティ共済も、独立行政法人である中小企業機構が運営する中小企業や個人事業主向けの制度です。まず、小規模企業共済制度は、個人事業主などを対象とした退職金の積立制度ですが、掛金は全額所得控除の対象となるため、高い節税効果が期待できます。また、個人事業主を廃業し、共済金を受け取る際には税金の優遇制度が適用される点もメリットです。
一方、経営セーフティ共済は取引先の倒産による連鎖的な倒産を防ぐ制度です。万が一、取引先が倒産し、資金繰りが難しくなった場合などは、最大で掛金の10倍を無担保・無保証人で借りることができます。掛金は全額必要経費として計上できるため、万が一の倒産危機に備えながら節税もできる制度となっています。
参照元:独立行政法人中小企業基盤整備機構「小規模企業共済とは」、「経営セーフティ共済」
iDeCoとは、個人型確定拠出年金のことで、掛金を自分で運用し、老後資金を形成する年金制度です。一方、国民年金基金は将来の額が変動しない確定給付型の年金制度です。いずれも掛金は全額所得控除になるため、節税効果を得られます。
個人事業主の場合、厚生年金を受給できないため、何らかの形で将来に備える必要があります。事業で得た利益を貯蓄に充てても節税効果は得られませんが、iDeCoや国民年金基金で運用すれば、節税効果も得られます。運用方法のほか、手数料や受け取り方法などにも違いがありますが、両者を併用することも可能です。
個人事業主の場合、掛金の上限額は、最大で月額68,000円となっています。
参照元:国民年金基金連合会「国民年金基金」、「iDeCo公式サイト」
個人事業主の節税対策では、所得税の課税の仕組みを十分に理解することが大切です。そのうえで、家事按分が必要な支出も含め、経費を漏れなく計上すること、所得控除や税額控除を活用すること、青色申告を行うことが重要になります。
また、万が一の事態や老後に備え、経営セーフティ共済や小規模企業共済制度、国民年金基金、iDeCoなど、節税対策にもつながる制度の活用も視野に入れることをおすすめします。
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この記事の監修者
税理士法人松本 代表税理士
松本 崇宏(まつもと たかひろ)
登録者20万人以上のYouTubeチャンネル「税理士法人松本〜税金の裏のウラ〜」を運営。 代表を務める税理士法人松本では、これまでに累計5,000件を超える税務調査のご相談・対応実績があり、国税局査察部、税務署長歴任者・税務調査一筋の現場に強い国税出身のOB税理士が現在14名常駐。国税当局側の視点を踏まえて、お客様の立場を尊重し、税務調査でお悩みのお客様に適切かつ迅速に対応。また、調査前・調査中に関わらず、あらゆる状況から最善のサポートが可能。なお、調査結果が追徴税額なしとなる実績も多数取得。税務調査における専門性・経験則・折衝力から最善の結果を導き、お客様の笑顔とありがとうを励みに成長し続けている。
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