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私たちが確定申告や決算を個人のスケジュール(1月〜12月)や会社の事業年度に合わせて進める一方で、税務署は独自のスケジュールや選定基準で動いています。経営者や個人事業主の方の中には、「国税調査の年(税務調査が入る年)は一体いつなのだろう?」と不安に思っている方も少なくないのではないでしょうか。 本記事では、一般にはあまり知られていない国税庁の「事務年度」の仕組みや、税務調査が実施されやすい時期・業種の客観的な傾向について、実務的な視点から分かりやすく解説します。
目次
国税調査というとその響きから、国勢調査を思い浮かべる方もいらっしゃるかもしれませんが、この2つは以下の違いがあります。
国税局や税務署が、個々の法人や個人事業主の申告内容が正しいかどうかをチェックする調査のことです。公的な法律用語ではなく、世間一般では「税務調査」と呼ばれています。
日本に住むすべての人と世帯を対象に、人口や家族構成などを把握するために「総務省」が実施する統計調査です。「5年に1回、定期的に実施される」という特徴があります。
経営者や個人事業主の皆さんが「そろそろ当たり年かもしれない」と考えるのは、前者の「個別の税務調査」にあたります。 本記事では、「国税調査の年」と呼ばれる税務調査が、一体どのような周期やタイミングでやってくるのかについて解説を進めていきます。
関連記事:国税調査って何?対象になる法人や個人、調査の流れなどを解説
結論からお伝えすると、公式に「何年おきに調査へ行く」といった一律のルールは存在しません。税務署が調査先を選ぶ基準は、単なる利益の大きさだけではないからです。
例えば、日々の取引において「現金」を直接受け取る機会が多い業種では、売上管理の正確性を確認するために定期的な確認対象に選ばれやすい傾向があります。また、近年ではSNS等で過度に利益を強調するような発信が目立っているケースや、取引先が税務署に提出した書類(支払調書)のデータとご自身の申告数字に明らかな食い違いがある場合などは、金額の規模に関わらず、前回の申告からすぐに調査の通知が届くことも珍しくありません。
反対に、どれほど事業規模が大きく利益を上げていても、業界の水準に適合した適切な利益率を保ち、過去の不明瞭な点を反映した透明性の高い申告を継続していれば、税務署側の選定基準から外れ、結果として調査の間隔が長くなることも十分にあり得ます。
いつ、どのような角度から質問を求められても、その売上や経費の正当性を自信を持って説明できる「根拠のある帳簿」を日頃から維持しておくことこそが、最大の備えとなります。
関連記事:相続税の税務調査が入る割合は約15%|対象になる人の特徴とは
税務調査の対象に選ばれやすいかどうかは、ご自身の「業種」も関係しています。ここからは、税務署がどのような視点で注目しているのかの傾向をお伝えします。
国税庁は事務年度ごとに、申告漏れ所得金額の高い業種を公表しています。その中で継続して上位に挙がりやすいのは、以下のような業種です。
不動産代理仲介 1回あたりの取引金額や手数料が大きいため、少しのズレが大きな申告漏れにつながりやすく、税務署からも注視されやすいです。
システムエンジニア 個人で高単価の業務委託契約を結ぶケースが多く、売上の計上時期のズレや、自宅の家賃・光熱費などの「経費の線引き」に対するチェックが厳しくなる傾向があります。
飲食店
「現金」でお客様からお金を受け取る機会が多い商売は、売上をそのまま正しく帳簿につけているか、シビアに確認されやすくなります。
参考:事業所得を有する個人の1件当たりの申告漏れ所得金額が高額な上位10業種|国税庁
税務署の調査活動は、納税者の事業運営に配慮し、極端な機会損失を与えないよう配慮されるのが一般的です。これは、相手方のビジネスが最も多忙を極める時期に調査を強行しても、必要書類の確認や事実関係のヒアリングが効率的に進まないためです。
例えば、年末年始や忘年会シーズンに繁忙を迎える飲食店に対しては、その期間を避けて調査日程が組まれるケースも見られます。また、年度末に向けて工期が集中する建設業に対しては、3月前後の繁忙期を回避し、比較的落ち着く夏季に実地調査を設定するなど、業界ごとの特性に応じた柔軟なアプローチがなされる傾向があります。
参考:税務調査手続に関するFAQ(一般納税者向け)|国税庁
「何月に調査が来やすいか」という月単位の波は、国税庁独自の「事務年度」というカレンダーをベースに推測することもできます。
国税庁の事務年度は、7月1日に始まり翌年6月30日に終わる1年間です。人事異動も7月のため、新しい事務年度の開始と同時に調査担当者が入れ替わり、9月以降に新規調査が動き出すサイクルになっています。
事務年度は税務署内部の運営上の単位で、納税者の暦年や事業年度とは独立して動きます。「個人の確定申告が3月15日で終わったから、税務署も新年度に切り替わる」と思いがちですが、税務署側は7月開始となり、3月〜6月は前事務年度のクロージング期にあたります。
参考:国税庁の組織|国税庁
国税庁は、1年間の調査結果を取りまとめた統計データを、翌事務年度の11月頃に公表しています。統計データでは、個人の所得税や消費税、法人の税金、相続税などがどれくらいチェックされ、どのくらいの申告漏れが見つかったのかが分かります。
そのデータを見ると、全国で毎年数万件から十万件規模の法人の実地調査(実際に足を運ぶ調査)や、個人の所得税、相続税の調査が実施されています。
特筆すべきは、調査が入った場合の「非違率(何らかのミスや申告漏れが指摘される確率)」が、所得税・相続税ともに毎年80%を超えているという点です。これは税務署が事前に調査した情報を元に行っているからこそ、高い確率で指摘が発生する仕組みになっています。
参考:国税庁統計情報 関連記事:税務調査では何年遡る?調査される期間の違いや長くなるケースを解説
万が一、税務署から税務調査の事前通知が届いた場合、ここまで解説してきた「事務年度のサイクル」を念頭に置くことで、取るべき対応のスピード感を客観的に測ることができます。
秋(9月〜10月)の段階で届いた通知は、新事務年度のスタートとともに十分な時間をかけて準備された「重点選定案件」である可能性が高く、税務署側も一定の確証を持って臨んでいると考えられます。そのため、納税者側も安易に妥協せず、過去の根拠資料を論理的に整理して対峙する必要があると言えるでしょう。
一方で、春先(4月〜5月)に届く通知は、直前の確定申告で急激な業績変動が見られた場合など、最新の申告書チェックからピックアップされた可能性があります。
6月の事務年度終盤は、税務署側が未完結案件の早期処理(クロージング)に注力しやすい時期と言われています。納税者側が求められた資料を速やかに提出するなど真摯に対応すれば、調査が長引かずに着地点が見えやすくなる場合があります。
一方で、資料提出の遅延などが重なり、事案が未完結のまま7月の人事異動を迎えてしまった場合、新たな担当者に案件が引き継がれるケースがあります。その結果、これまでの経緯の再確認や追加の質問が生じるなど、調査の長期化を招き、結果として納税者側の心理的・時間的負担が増えてしまうリスクも否定できません。
参考:国税通則法|e-Gov法令検索 関連記事:税務調査が入った後に修正申告手続きを行う流れについてわかりやすく解説
年明けから3月にかけての「確定申告期」は、税務署の多くが申告受付業務に追われるため、一般的に現地へ赴く実地調査は控えめになる傾向があります。しかし、この期間中であっても、税務署から「お尋ね」と呼ばれる書面や、内容確認の連絡が届くことは珍しくありません。
これは、現地に赴く実地調査とは異なり、提出された申告データにおける単純な転記誤りや、添付書類の過不足を確認するための内部処理の一環です。確定申告で多忙だからと放置せず、指摘された期日までに客観的な事実に基づいた回答を行うことが、将来的な本格調査への発展を防ぐことにつながります。
一般的に「国税調査の年」と呼ばれる税務調査のタイミングは、ご自身の「所得規模」による年単位の周期と、税務署独自の「事務年度(7月〜翌年6月)」という月単位のサイクルによって決定されています。
税務調査への備えとして最も重要なのは、いつ、どのような角度から確認を求められても、その正当性を法的に証明できる「根拠のある帳簿」を日頃から維持しておくことです。
税理士法人松本では、確定申告の実務支援から税務調査対応まで、個人事業主・法人のお客様のサポートを行っています。申告の進め方だけでなく、将来のリスクを減らす帳簿づくりや、税務署とのやり取りの考え方までご案内可能です。「申告が不安」「過去の処理が正しかったか心配」という段階でもお声掛けください。
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この記事の監修者
税理士法人松本 代表税理士
松本 崇宏(まつもと たかひろ)
登録者20万人以上のYouTubeチャンネル「税理士法人松本〜税金の裏のウラ〜」を運営。 代表を務める税理士法人松本では、これまでに累計5,000件を超える税務調査のご相談・対応実績があり、国税局査察部、税務署長歴任者・税務調査一筋の現場に強い国税出身のOB税理士が現在14名常駐。国税当局側の視点を踏まえて、お客様の立場を尊重し、税務調査でお悩みのお客様に適切かつ迅速に対応。また、調査前・調査中に関わらず、あらゆる状況から最善のサポートが可能。なお、調査結果が追徴税額なしとなる実績も多数取得。税務調査における専門性・経験則・折衝力から最善の結果を導き、お客様の笑顔とありがとうを励みに成長し続けている。
税理士法人松本は国税OB・元税務署長が所属する税理士法人です。
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