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税務調査は、申告内容が正しいかを調べる調査です。そのため帳簿はもちろん、売上の入金が記録されている銀行口座についても提示を求められるケースがあります。しかしながら、事業専用の口座だけではなく、個人の銀行口座に関する通帳の提示を求められるケースもあるようです。税務調査時に求められれば、個人の銀行口座の情報も開示する必要があるのでしょうか。
ここでは、税務調査時に個人の銀行口座が調べられる理由や提示義務の有無、対処法などを解説します。
目次
税務調査では、個人の銀行口座が調査の対象となるケースがあります。では、なぜ税務調査で銀行口座を調べるのでしょうか。
税務調査で銀行口座を調査するケースは珍しくはありません。なぜなら、事業を営んでいる場合、銀行の通帳には売上の入金状況や経費の支払い状況などが記録されているからです。事業者が作成する帳簿に比べ、銀行を通じた入金や出金は改ざんしにくく、取引の内容を裏付ける客観的な資料として利用できます。そのため、税務調査時には事業用口座は高い確率で調査がなされます。
また、事業者の中には、売上の一部を事業用の銀行口座ではなく、個人の口座に入金させているケースや経費として計上されている支出を個人口座から支払っているケースも見られます。このような場合、事業用と個人の双方の銀行口座を調べないと正確なお金の流れを把握できません。そのため、事業用口座に加え個人用口座も調査の対象となるのです。
相続税や贈与税の税務調査では、個人の銀行口座が調査の対象となります。相続の際に、被相続人の口座から家族名義の口座に預金が移動されていたり、相続発生直後にまとまった額が入金されているようなケースでは、相続税の申告漏れが疑われます。国税庁が公表している「令和6事務年度における相続税の調査等の状況」を見ても、現金・預貯金の申告漏れは多額に上っています。
相続税や贈与税の税務調査で申告漏れを調べるためには、個人の銀行口座のチェックは欠かせないポイントだといえるでしょう。
参考元:国税庁「令和6事務年度における相続税の調査等の状況」
すべての調査において、個人の銀行口座まで調査の対象になることはありません。個人の銀行口座が税務調査の対象となるのは、お金の動きについて何らかの疑いが生じているケースです。税務調査で個人の銀行口座が調査対象に選ばれやすい6つのケースについて解説します。
本来、事業用の資金とプライベートな資金は明確に区分されるべきです。しかしながら、小規模な法人や個人事業主では、個人の銀行口座に売上が入金されていたり、個人の口座から経費を支払っているようなケースも少なくありません。また、個人事業主の場合は、事業用口座から事業主の個人口座に資金を移し、生活費に充てている場合も見られます。
しかし、事業用と個人用の資金管理が曖昧な状態では、正確な所得状況を把握できません。そのため、事業資金と個人資金の混同が疑われる場合は、事業用だけでなく、個人用の銀行口座も調査の対象になる可能性があるのです。
帳簿に記載された内容と、事業用口座の入出金の記録に食い違いがあると判断された場合も個人の銀行口座が税務調査の対象となるケースの一つです。
例えば、帳簿上では事業の売上が月30万円と記載されているにもかかわらず、個人口座に毎月70万円以上の入金が継続的に確認されるといったケースでは、その差額の性質が問題視されるでしょう。
税務署は、「帳簿に記載されていない資金は、申告されていない所得ではないか」という観点で調査を進めるため、帳簿と通帳の整合性は非常に重視されます。記帳内容と現実の資金移動にズレが見られる場合は、個人口座の調査が必要になると理解しておいた方が良いでしょう。
申告内容と取引実績の乖離が疑われた場合も、個人の銀行口座の調査に発展しやすいケースです。同業他社に比べて明らかに利益率が低すぎる場合や経費率が高すぎる場合などは、売上の過少申告または経費の水増しなどが疑われます。
このような疑惑の下で実施された税務調査時に、帳簿には記載されていない請求書の控えや領収書などが発見されると、個人の銀行口座の調査が実施されるのです。また、定期的に外部から個人口座に振り込みがなされている場合などは、振込元を確認した結果、振り込まれた金額が売上に相当すると判断される可能性があります。
相続税や贈与税の税務調査では、関係者の個人口座も調査の対象となります。相続や贈与が発生した場合でも必ず税務調査が実施されるわけではありません。税務調査を招きやすいのは以下のような状況が見られる場合です。
前述のとおり、相続税や贈与税の税務調査では、現金・預金の多額の申告漏れが指摘されています。税務署ではKSKシステム(国税総合管理システム)などにより、納税者の財産情報や過去の申告情報などを把握しており、税務署が把握している情報と申告内容に乖離が見られる場合、個人の銀行口座を調査し、申告漏れがないかを確認するのです。
また、相続税や贈与税の申告は計算が複雑になりやすく、税理士が関与せず、納税者自身が作成した申告書では誤った処理が見られるケースが少なくありません。そのため、税理士が関与していない申告書が提出された場合も、事実関係の確認のため、個人の銀行口座を調査するケースが多くなっています。
飲食業や小売業など、売上や仕入れに現金取引が多い業種もあります。このような事業を営んでいると事業用の口座だけでは取引全体の確認がしにくい場合があります。
帳簿や信憑書類だけでお金の動きを十分に把握できないときには、個人の銀行口座を含め、資金動向を確認する必要があると判断されるケースがあるのです。
特に、収支に不自然な点が見られる場合や所得隠しが疑われる場合は、調査対象が個人口座にまで及ぶ可能性が高まるでしょう。
申告書の内容は赤字が続いているにも関わらず、高額な不動産を取得した場合などは、申告漏れの疑いが強まります。法人名義で土地を購入した場合、個人名義で住居を取得した場合などは法務局で登記を行いますが、登記データは税務署に共有されます。
事業で十分な収益を上げていれば、不動産を取得したからといって税務調査につながることはありません。しかし、マイナス収支を続けている法人や個人事業主が不動産を取得すると、資金の出どころが疑われ、個人の銀行口座も含めた調査が実施される可能性があるのです。
税務調査で個人の銀行口座にまで調査が及ぶケースについてご紹介してきました。では、個人の銀行口座情報の提示を拒否することはできるのでしょうか。
税務調査で個人の銀行口座の情報開示を拒否できるのは、調査内容とプライベートの口座と全く関連性がないと言い切れる場合のみです。例えば、相続税の税務調査であれば、故人の現金や預金は、関係者に相続される可能性が高くなります。そのため、個人の銀行口座が調査の対象になるのは当然の事態と考えられます。しかし、個人用の口座に事業の売上を振り込んでいない場合や、個人の口座やクレジットカードを使って経費の支払いを行っていない場合などは、プライベートな銀行口座の情報を提示する必要はありません。
国税庁の公式サイトには「税務調査における資料の提示要請については、調査目的や根拠をきちんと説明したうえで、納税者の理解を得るよう努めるべきである」という趣旨の記載があります。
参照:国税庁「税務調査手続に関するFAQ 問7」
したがって、個人名義の通帳を提示する必要があるのは、あくまで事業との関連性が疑われる場合に限られます。そのため、私的な用途にのみ使用しており、事業と関係がないことが明確であれば、提示する義務はないと理解して差し支えありません。
税務調査でプライベートな口座の情報まで提示を求められた場合、調査内容と関連がないのであれば拒否することはできます。しかし、納税者が個人口座の情報提示を拒んでも税務署では金融機関に口座の取引記録を開示するよう求める権利があります。つまり、納税者が個人口座の情報開示を拒否しても、税務署では金融機関に口座情報の照会を求め、情報を取得することができるのです。
個人の銀行口座の情報提供を頑なに拒むと、かえって調査官に不審な印象を与える恐れがあります。個人の銀行口座の情報開示を求められたのであれば、その場で情報を提示した方が調査はスムーズに進むかもしれません。
税務署が個人の銀行口座を調査する際、単に直近のお金の動きだけを調べるわけではありません。本章では、個人口座が調査対象となる場合の注意点をご紹介します。
個人の所得税や法人税の場合、税務調査の対象となるのは原則として過去3年分の申告内容です。しかし、不備や申告漏れが多い場合、申告をしていなかった場合などは過去5年分、仮装や隠蔽などの不正行為が見られる場合は過去7年分が調査対象となる可能性があります。
また、相続税に関しては過去10年分の入出金の履歴などを調査するケースもある点に注意が必要です。過去の入出金記録を操作することはできませんが、税務調査では最大10年分の口座の動きを確認される可能性がある点を踏まえ、慎重に資金を管理することが重要になります。
税務調査では、納税者だけでなく、家族名義の銀行口座も調査の対象となる場合があります。これは、事業者の中には、売上の一部やキックバックを家族名義の口座に入金させるような事例も見られるからです。また、架空の従業員に給与を支払ったと見せかけ、実際には家族名義の口座にお金を振り込んでいるケースなどもあります。
そのほか、贈与税や相続税の調査では名義預金が疑われ、家族名義の口座が調査の対象になるケースも少なくありません。親が子ども名義で作成した口座や祖父母が孫のために作成した口座など、資金の拠出者と管理者が名義人とは異なる場合、その財産は被相続人の財産とみなされるのです。
日本よりも税率が低い国や地域に資金を移動させて税負担の軽減を狙う法人や海外投資を行う投資家も増加しています。また、海外に開設した銀行口座であれば、資金を移転させてもバレないのではと思うケースもあるかもしれません。しかし、海外の保有資産も日本の居住者であれば、日本において確定申告をし、税金を納める必要があります。
日本は世界各国と租税条約を締結しています。そのため、税務署では日本国内だけでなく、海外に保有する銀行口座の状況についても把握している点を理解しておかなければなりません。
税務調査時には、事業用だけでなく、個人の銀行口座まで調査対象となるケースがあります。特に、個人用口座に売上が入金されている場合や個人用のクレジットカードで経費の支払いをしている場合などは、事業資金と個人資金の区別が明確でないと判断され、調査につながるケースが多くなっています。また、相続税や贈与税の調査でも申告漏れがないか、個人の銀行口座がチェックされます。
調査と全く関連のない銀行口座であれば、情報の開示を求められても拒否することは可能です。しかしながら、税務署では金融機関に対し、情報の提供を求める権利を保有しているため、納税者が情報開示を拒否しても不審な動きは発覚することとなります。
税務調査を避けるためには、事業用口座と個人用口座をはっきり区分する、相続税や贈与税は税理士を介して正しく申告するなどの対策が必要です。
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この記事の監修者
税理士法人松本 代表税理士
松本 崇宏(まつもと たかひろ)
登録者20万人以上のYouTubeチャンネル「税理士法人松本〜税金の裏のウラ〜」を運営。 代表を務める税理士法人松本では、これまでに累計5,000件を超える税務調査のご相談・対応実績があり、国税局査察部、税務署長歴任者・税務調査一筋の現場に強い国税出身のOB税理士が現在14名常駐。国税当局側の視点を踏まえて、お客様の立場を尊重し、税務調査でお悩みのお客様に適切かつ迅速に対応。また、調査前・調査中に関わらず、あらゆる状況から最善のサポートが可能。なお、調査結果が追徴税額なしとなる実績も多数取得。税務調査における専門性・経験則・折衝力から最善の結果を導き、お客様の笑顔とありがとうを励みに成長し続けている。
税理士法人松本は国税OB・元税務署長が所属する税理士法人です。
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