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確定申告や届出書を税務署に提出するとき、「自分の管轄はどこの税務署だろう」と迷う場面は意外と多いものです。引越しをした直後や、個人事業を始めたばかりのタイミングでは、そもそも管轄がどのように決まるのか分からないまま手続きを進めてしまうケースも珍しくありません。
「住所地で決まるらしいけど、個人事業主は事務所がある場所の税務署でいいのだろうか」「法人を設立したら、社長の自宅近くの税務署なのか、それとも会社の住所地なのか」「引越しをしたあと、どのような届出が必要なのか」といった疑問を抱えている方も多いのではないでしょうか。管轄の基準は、個人・個人事業主・法人で異なり、住所や事業拠点の変更時には届出が求められることもあります。
本記事では、税務署の管轄を決める基本ルールから、個人・個人事業主・法人ごとの判定基準、引越し・移転時の変更手続きまでを整理します。
目次
税務署の管轄は「納税地」という概念をベースとして決まります。まずは、管轄が決まる大原則や、なぜ正しい税務署を知っておく必要があるのか、その理由を見ていきましょう。
税務手続の提出先は、すべて納税地を基準に決まります。個人の場合は「住所地」、法人の場合は「本店または主たる事務所の所在地」が納税地の原則であり、それぞれの納税地を管轄する税務署が「所轄税務署」です。
ここでいう「住所地」とは、住民票の住所ではなく、税法上は「生活の本拠」がある場所を指します。実際には住民票と生活の本拠が一致しているケースが大半ですが、単身赴任などで住民票と実際の生活拠点がずれている場合には、生活の本拠のほうが優先される点に注意が必要です。ちなみに、国内に住所がなくても居所がある場合は居所地が、住所も居所もない場合は国内源泉所得の発生地が納税地になります。
参考:No.2029 確定申告書の提出先(納税地)|国税庁
税務署は全国に約500か所あり、それぞれ担当する地域が決まっています。確定申告書の提出、届出書の受理、税務調査の実施、還付金の支払い、お尋ねへの回答など、税務署との接点はすべて所轄税務署を窓口にして行われる仕組みです。
管轄が違う税務署に書類を出しても即座に不受理になるわけではありませんが、正しい管轄税務署へ内部的に移送されるまでに1〜2週間かかることがあります。還付申告の場合は処理が遅れる原因になりますし、税務調査のやり取りも所轄税務署が窓口になるため、自分の管轄がどこかを正確に把握しておくことが手続き全体の効率を上げる出発点となります。
国税庁のホームページでは住所や郵便番号から自分の所轄税務署を検索できる「国税局・税務署を調べる」ページが公開されており、迷ったときはまずここで確認するのが確実な方法です。
参考:税務署の所在地などを知りたい方|国税庁
関連記事:所轄税務署の調べ方4選!確定申告の提出先がわからない時の特定手順と引越し後の注意点
「管轄」と「所轄」は日常会話では同じ意味で使われることが多いですが、税務の文脈では微妙に使い分けられる場面があります。「管轄」は制度全体の仕組みとして「どの税務署が担当するか」を指し、「所轄」は特定の納税者にとって「実際に担当する税務署」を指す使い方が一般的です。
たとえば「税務署の管轄はどう決まるのか」は制度の仕組みについての問いで、「自分の所轄税務署はどこか」は自分の提出先を特定する問いです。実務上はどちらを使っても通じるため、厳密に区別する必要はありませんが、国税庁のサイトや法令では「所轄税務署長」という表現が使われるため、公的書類の文脈では「所轄」が正式な用語です。
参考:組織(国税局・税務署等)|国税庁
納税地の決まり方は、個人(給与所得者)、個人事業主、法人で異なります。それぞれの具体的な基準と、実務で知っておきたい注意点を確認していきましょう。
会社員やパート・アルバイトなどの給与所得者にとって、所轄税務署は「住んでいる場所」で決まります。年末調整は会社が行うため普段は税務署と直接やり取りする場面が少ないものの、医療費控除やふるさと納税の確定申告をする場合には、自分の住所地を所轄する税務署に申告書を提出する流れになります。
勤務先の住所が別の地域にあっても、申告書の提出先は勤務先ではなく自宅住所地の所轄税務署です。たとえば、自宅が世田谷区にあり勤務先が千代田区にある場合、確定申告書は世田谷税務署に提出します。ちなみに、確定申告書を提出する際には提出時点での住所地が基準になるため、年の途中で引越しをした場合は、申告書を提出する時点の住所地の税務署が提出先になります。
個人事業主の所轄税務署も、原則は住所地を基準に決まります。ただし、自宅とは別にオフィスや店舗、サロンなどを構えている場合には、手続きをすることで「事業所の住所」を納税地に選ぶこともできます。以前は必ず届出書を提出する必要がありましたが、現在は制度が簡素化され、確定申告書にその納税地を記載すれば足りるようになりました。なお、確定申告の時期を待たずに事前に変更したい場合は、任意で「所得税・消費税の納税地の異動又は変更に関する届出書」を提出することも可能です。
事業所の所在地を納税地にする一番のメリットは、日々の仕事の合間に税務署へ足を運んだり、相談したりしやすくなる点です。税務署への来所相談や、税務調査の連絡先も事業所近くの税務署になるため、移動の手間が省けます。一方で、自宅と事業所が同じ市区町村内であれば管轄が変わらないことも多く、届出の実務メリットが小さい場合もあります。
法人の所轄税務署は、登記簿上の本店所在地で決まります。代表者の自宅住所は関係なく、支店や営業所がどこにあっても納税地は本店1か所に集約されるのがルールです。
株式会社や合同会社の場合は商業登記簿に記載されている本店所在地が基準で、一般社団法人や一般財団法人も同様に定款上の主たる事務所の所在地が納税地になります。外国法人が日本国内に事業所を持つ場合には、日本国内の主たる事務所の所在地を基準に所轄税務署が決まります。たとえば、渋谷区に本店を置く株式会社が大阪や福岡に支店を持っていても、法人税の申告先は渋谷税務署の1か所です。
ちなみに、法人税・法人住民税・法人事業税はそれぞれ管轄する行政機関が異なる点にも注意が必要です。法人税は税務署ですが、法人住民税と法人事業税は都道府県税事務所や市区町村への申告になります。「法人の管轄」という言葉が指す先が、国税なのか地方税なのかで窓口が変わることを覚えておくと混乱を防げます。
参考:C1-8 異動事項に関する届出|国税庁 関連記事:一般社団法人が納めるべき税金の種類とは。税率や注意点を解説
住所や事業拠点が動くと、所轄税務署も変わる可能性があります。本章では、個人・個人事業主・法人それぞれの変更手続きを確認します。
個人の方が引越しをした場合、以前は税務署へ専用の届出書を提出する必要がありましたが、現在は確定申告書に新住所を記載して提出するだけで納税地の変更が完了する仕組みに簡素化されています。
年の途中で引越しをして、確定申告前に税務署からの郵便物の送付先を新住所に変えたい場合には、「所得税・消費税の納税地の異動又は変更に関する申出書」を新住所地の所轄税務署に提出することもできます。この申出書は義務ではなく任意の手続きですが、確定申告の時期まで待てない事情がある場合には提出しておくと安心です。たとえば、7月に引越しをして翌年3月の確定申告まで半年以上ある場合、その間に届く税務署からの通知が旧住所に届き続けることになるため、早めに申出書を出しておくと安心です。
参考:No.2091 個人事業者の納税地等に異動があった場合の届出関係|国税庁
個人事業主が事務所を移転した場合も、基本的な手続きは個人の引越しと同じで、確定申告書に新住所を記載すれば納税地は変更されます。
ただし、従業員を雇って給与を支払っている場合は、事務所を移転した日から1か月以内に「給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書」を税務署に提出する必要があります。また、ビジネスの拠点が変わったことを伝えるため、各都道府県の税事務所(地方税の窓口)にも期限内に異動の書類を提出する流れが一般的です。
あわせて注意したいのが、税金を口座引落しで納める「振替納税」を利用しているケースです。引越しによって管轄の税務署が変わる場合は、新しい税務署へ改めて口座振替の依頼書を出すか、確定申告書にある「振替継続希望」の欄にチェックを入れて提出することで、手続きを簡素化できます。(※ただし、このチェックによる引き継ぎはe-Taxで申告する場合に限られます。紙で申告書を提出する場合は、新しい税務署へ改めて依頼書を提出する必要があるため注意しましょう)
参考:所得税・消費税の納税地の異動又は変更に関する手続|国税庁 関連記事:確定申告では領収書の提出が必要?紛失時の対応や保管ルールも解説
法人が本店を移転した場合は、「異動届出書」を移転前(旧住所)の所轄税務署に提出します。以前は移転前と移転後の両方に提出するルールでしたが、現在は「移転前の所轄税務署へ1通提出すれば自動的に処理される仕組み」に簡素化されました。
また、従業員に給与を支払っている会社の場合は、「給与支払事務所等の移転届出書」もあわせて提出する必要がありますが、こちらも提出先は移転前の所轄税務署となります。
法人の本店移転では、税務署への届出だけでなく、法務局での本店移転登記、都道府県税事務所・市区町村への届出、年金事務所・労働基準監督署・ハローワークへの届出なども必要になる場合があります。税務署への異動届出書の期限は法律上「遅滞なく」とされており、数日遅れたからといって罰則が課されることは基本的にありません。しかし、届出を出さずに放置していると、決算の案内や大切な書類が前の住所に届き続けてしまうため、登記が完了したら速やかに(目安として1〜2週間ほどで)手続きを済ませておきましょう。
万が一、管轄の違う税務署に書類を出してしまっても手続き自体は受け付けてもらえますが、処理が後ろ倒しになってしまうため、最初から正しい税務署を目指して提出するのが一番スムーズです。特に引越しや法人の移転時は、振替納税の引き継ぎやe-Taxの設定変更など、思わぬところで追加の手続きが必要になることもあります。新生活や新体制でのスタートを円滑に切るためにも、管轄の変更手続きは早めに確認し、漏れのないように進めていきましょう。
税理士法人松本では、確定申告の実務支援から税務調査対応まで、個人事業主・法人のお客さまをきめ細かくサポートしています。申告の進め方だけでなく、将来のリスクを減らす帳簿づくりや、税務署とのやり取りの考え方までご案内可能です。「申告が不安」「過去の処理が正しかったか心配」という段階でもご相談ください。
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この記事の監修者
税理士法人松本 代表税理士
松本 崇宏(まつもと たかひろ)
登録者20万人以上のYouTubeチャンネル「税理士法人松本〜税金の裏のウラ〜」を運営。 代表を務める税理士法人松本では、これまでに累計5,000件を超える税務調査のご相談・対応実績があり、国税局査察部、税務署長歴任者・税務調査一筋の現場に強い国税出身のOB税理士が現在14名常駐。国税当局側の視点を踏まえて、お客様の立場を尊重し、税務調査でお悩みのお客様に適切かつ迅速に対応。また、調査前・調査中に関わらず、あらゆる状況から最善のサポートが可能。なお、調査結果が追徴税額なしとなる実績も多数取得。税務調査における専門性・経験則・折衝力から最善の結果を導き、お客様の笑顔とありがとうを励みに成長し続けている。
税理士法人松本は国税OB・元税務署長が所属する税理士法人です。
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