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司法書士として独立して仕事をする場合、確定申告に向けて売上や経費を正しく記帳する必要があります。
特に、司法書士報酬と登録免許税などの立替金の区分や、源泉徴収された報酬の処理には注意が必要です。また、事務所家賃や司法書士会費、パソコンなども、事業との関連性に応じて適切に経費計上しなければなりません。
この記事では、司法書士の確定申告における売上・経費の考え方や源泉徴収、立替金、消費税・インボイスの注意点について解説します。
目次
個人で司法書士事務所を経営している場合、司法書士業務から生じた所得について所得税の確定申告を行います。
一方、司法書士法人として事業を行っている場合は、個人の所得税とは異なり、法人税などの申告が必要です。
まずは、個人と法人の違いや青色申告・白色申告の基本を確認しておきましょう。
個人で継続的に司法書士業務を行っている場合、司法書士報酬などから生じる所得は、基本的に事業所得として計算します。
事業所得は、次のように計算します。
たとえば、登記手続きや相続手続きのサポートなどによって得た司法書士報酬を売上として計上し、事務所家賃や通信費、司法書士会費など、業務上必要となった費用を必要経費として差し引きます。
個人事業では、1月1日から12月31日までの所得を集計し、原則として翌年の確定申告期間に申告・納税を行います。
そのため、年末になって慌てて取引を整理するのではなく、日頃から売上や経費を記帳しておくことが大切です。
司法書士法人として事業を行っている場合、法人と所属する司法書士個人は税務上別の主体として扱われます。
司法書士法人が得た報酬は法人の売上となり、事業年度ごとに所得を計算して法人税などの申告を行います。
司法書士本人が法人から受け取る役員報酬などについては、原則として個人の給与所得として扱われます。
そのため、個人事務所から司法書士法人へ移行した場合には、個人事業時代と同じ方法で経理を続けるのではなく、法人として帳簿や銀行口座、経費などを明確に分けて管理することが重要です。
個人の司法書士が確定申告をする方法には、青色申告と白色申告があります。
青色申告では、一定の要件を満たすことで青色申告特別控除を受けられるほか、青色事業専従者給与や純損失の繰越しなどの制度を利用できる場合があります。
2026年時点では、正規の簿記の原則に従って記帳するなど一定の要件を満たすと55万円、さらにe-Taxによる申告または一定の要件を満たす電子帳簿保存を行うと最高65万円の青色申告特別控除を受けられます。
一方、白色申告には青色申告特別控除などの特典はありません。しかし、白色申告であっても記帳や帳簿書類の保存は必要です。
司法書士は売上や立替金の件数が多くなりやすいため、会計ソフトなどを利用して日頃から取引を整理しておくと確定申告時の負担を軽減できます。
【出典元】 国税庁|No.2072 青色申告特別控除
司法書士の確定申告では、銀行口座に入金された金額だけを集計すればよいわけではありません。
源泉徴収された税額や、登録免許税などの立替金が含まれているケースがあるため、請求書の内訳を確認しながら処理する必要があります。
司法書士が登記や相続などの業務を行って受け取る報酬は、事業の売上として計上します。
個人事業の売上は、原則として実際に入金された日ではなく、収入すべき権利が確定した時点で計上します。
人的役務の提供による収入については、原則として役務の提供が完了した日が収入時期となります。契約内容などによって期間の経過や業務の進捗に応じて報酬を受け取る場合には、その内容に応じて売上を計上します。
そのため、12月に業務が完了し、報酬が翌年1月に振り込まれた場合でも、12月時点で収入すべき権利が確定していれば、その年の売上になる可能性があります。
年末には請求済みで未入金となっている報酬がないか確認しましょう。
司法書士報酬は、支払者が源泉徴収義務者に該当する場合、所得税等を源泉徴収したうえで支払われます。
2026年時点では、司法書士への報酬について、同一人に1回に支払われる金額から1万円を差し引いた残額に10.21%を乗じて源泉徴収税額を計算するのが基本です。
重要なのは、源泉徴収された後の振込額を売上にするのではなく、源泉徴収される前の報酬額を売上として計上することです。
源泉徴収税額は経費ではなく、所得税等をあらかじめ納めているものとして、確定申告で最終的な所得税額と精算します。請求金額と実際の入金額が異なる場合は、源泉徴収税額が正しく処理されているか確認しましょう。
なお、依頼者が個人で源泉徴収義務者に該当しない場合など、司法書士報酬であっても源泉徴収されないケースがあります。
【出典元】 国税庁|No.2801 司法書士等に支払う報酬・料金
司法書士業務では、依頼者が本来負担すべき登録免許税や登記に関する手数料などを、司法書士がいったん立て替える場合があります。
依頼者が負担すべき登録免許税等について、司法書士報酬とは明確に区分して請求・受領している場合には、司法書士自身の売上ではなく立替金として処理できます。
たとえば、次のように分けて管理します。
立替金であることを明確にするためには、請求書や領収書でも「司法書士報酬」と「登録免許税等」を分けて表示しておくことが重要です。
報酬と立替金をまとめて売上に計上すると、所得税だけでなく消費税の課税売上高にも影響する可能性があるため注意しましょう。
司法書士業務のために必要となった費用は、事業所得を計算する際の必要経費にできます。
しかし、支出したものがすべて経費になるわけではありません。事業との関連性や使用状況を説明できるようにしておくことが重要です。
司法書士事務所を運営するために直接必要となる費用は、必要経費として計上できます。
代表的なものには、次のような費用があります。
司法書士会に支払う費用でも、業務との関係がない支出まで無条件に経費になるわけではありません。
「司法書士業務を行うために必要な費用か」という観点から判断することが基本です。
業務用のパソコン、プリンター、複合機、事務所の備品、車両などを購入した場合は、購入した年に全額を経費にできるとは限りません。
取得価額や使用可能期間などによっては固定資産として計上し、法定耐用年数に応じて減価償却を行います。
一方、少額の資産については、取得価額や申告方法など一定の条件に応じて、購入した年に経費として処理できる制度を利用できる場合があります。
高額なパソコンや車両などを購入した際には、単純に消耗品費として処理せず、減価償却が必要か確認しましょう。
また、車両を仕事と私生活の両方で使用している場合は、事業で使用した割合に応じて経費を計算する必要があります。
司法書士事務所を開業する前に支払った費用でも、開業準備のために特別に支出した費用は「開業費」として処理できる場合があります。
たとえば、開業前の広告宣伝費や名刺作成費、打ち合わせのための交通費など、開業準備に関連する支出が該当する可能性があります。
所得税では、開業費は繰延資産として扱われ、60か月で均等に償却する方法のほか、任意償却によって必要経費に算入する方法があります。
そのため、開業初年度にすべてを必要経費にするのではなく、利益が出た年度に償却することも可能です。
しかし、パソコンや事務所設備など資産そのものを取得した費用は、開業費ではなく固定資産として処理する場合があります。開業前の支出は、領収書や請求書を保管し、何のために使った費用なのか分かるように整理しておきましょう。
【出典元】 国税庁|償却期間経過後における開業費の任意償却
自宅の一部を司法書士事務所として利用している場合や、自家用車やスマートフォンを仕事でも利用している場合には、事業用と私用の費用が混在します。
このような費用は、事業で使用した部分のみを必要経費として計上します。たとえば、次のような基準で家事按分する方法があります。
重要なのは、合理的な基準を決め、継続して同じ考え方で処理することです。
税務調査で確認された場合にも、なぜその割合で経費計上したのか説明できるよう、計算根拠を残しておきましょう。
司法書士の確定申告では、所得税だけでなく消費税についても確認が必要です。
特に、法人や不動産会社など事業者から登記業務を受任することが多い場合、インボイスの発行を求められる可能性があります。
個人の司法書士は、原則として基準期間である前々年の課税売上高が1,000万円を超えると、消費税の課税事業者になります。
たとえば、2026年分の消費税については、原則として2024年の課税売上高を基準に判定します。
前々年の課税売上高が1,000万円以下であっても、前年の1月1日から6月30日までの特定期間の課税売上高が1,000万円を超える場合などには、課税事業者となることがあります。
また、適格請求書発行事業者としてインボイス登録をしている場合は、基準期間の課税売上高が1,000万円以下であっても、登録中は原則として消費税の申告が必要です。
所得税の売上と消費税の課税売上高では判定方法が異なる場合もあるため、売上が1,000万円前後になったときは早めに確認しておきましょう。
【出典元】 国税庁|No.6501 納税義務の免除
免税事業者だった司法書士がインボイス発行事業者として登録すると、原則として消費税の課税事業者となります。
そのため、所得税の確定申告だけでなく、消費税及び地方消費税の申告も必要です。
消費税の計算では、原則課税の場合、売上に係る消費税額から仕入れや経費に係る消費税額を控除して納付税額を計算します。
なお、インボイス制度を機に免税事業者からインボイス発行事業者となった一定の事業者については、2026年分まで、納付税額を売上に係る消費税額の2割とする「2割特例」を利用できる場合があります。
2割特例は、2023年10月1日から2026年9月30日までの日の属する課税期間が対象で、個人事業者の場合は2026年分まで適用対象となります。
適用できる制度は売上規模や課税事業者となった理由などによって異なるため、申告前に条件を確認することが重要です。
【出典元】 国税庁|2割特例(インボイス制度)
消費税の課税事業者で、基準期間の課税売上高が5,000万円以下などの条件を満たす場合には、簡易課税制度を選択できる場合があります。
簡易課税制度では、実際に支払った経費の消費税額を一件ずつ計算するのではなく、業種ごとに決められた「みなし仕入率」を使って仕入税額控除を計算します。司法書士業務は通常、サービス業として第5種事業に区分され、みなし仕入率は50%です。
しかし、簡易課税制度を利用するには原則として事前の届出が必要です。原則課税と簡易課税のどちらが有利になるかは、事務所家賃や設備投資、外注費などの状況によって変わるため、税額を比較してから選択しましょう。
【出典元】 国税庁|No.6505 簡易課税制度
国税庁|No.6509 簡易課税制度の事業区分
司法書士は法律に関する国家資格ですが、登記と税務では専門分野が異なります。
司法書士であれば確定申告まで代行できるというわけではないため、相談先を間違えないようにしましょう。
司法書士の資格だけでは、依頼者に代わって所得税や法人税などの確定申告書を作成したり、税務相談に応じたりすることはできません。
税務代理、税務書類の作成、税務相談は、原則として税理士の専門業務です。司法書士は、不動産登記や商業・法人登記などを専門としています。
たとえば相続の場合であれば、相続登記は司法書士、相続税申告は税理士というように、手続きによって担当する専門家が異なります。
なお、司法書士が税理士資格も有している場合には、税理士として税務業務を行うことができます。
司法書士自身の確定申告について相談したい場合は、税理士への依頼を検討しましょう。
特に、次のような場合には専門家へ相談するメリットがあります。
司法書士業務に専念するためにも、記帳や申告にかかる時間と税理士へ依頼する費用を比較しながら検討するとよいでしょう。
司法書士の税務調査では、一般的な個人事業主と同様に売上や経費などが確認される可能性があります。
特に司法書士は、源泉徴収された報酬や登録免許税等の立替金など、入出金の内容が複雑になりやすいため、帳簿と請求書を対応させておくことが重要です。
確定申告では、通帳への入金額だけを見て売上を集計すると、正しい売上額にならない場合があります。
司法書士報酬から源泉徴収されている場合は、実際の振込額よりも報酬の総額が大きくなります。また、年末までに業務が完了しているものの、翌年に入金された報酬についても注意が必要です。
年末には、請求書、売掛金一覧、預金口座などを照合し、売上の計上漏れや二重計上がないか確認しましょう。
登録免許税や登記に関する手数料等を立替金として処理する場合は、依頼者が本来負担すべき金額であることや、司法書士報酬とは別の金額であることが分かるようにしておくことが重要です。
請求書上で報酬と登録免許税等がまとめて記載され、帳簿上でも区分されていない場合には、どこまでが司法書士自身の売上なのか分かりにくくなります。
請求書、領収書、帳簿のいずれでも区分を明確にし、立替金の残高が不自然に残っていないか定期的に確認しましょう。
司法書士の確定申告では、事業との関係が薄い私的な支出を経費として計上していないかも確認しておく必要があります。
特に、自宅兼事務所の家賃、車両費、通信費などは、私用部分と事業用部分を適切に区分することが重要です。
また、報酬から差し引かれた源泉徴収税額を必要経費として処理してしまうミスにも注意しましょう。
源泉徴収税額は必要経費ではなく、確定申告で所得税等から精算する税金です。売上、経費、源泉徴収税額をそれぞれ分けて記帳することで、申告内容を確認しやすくなります。
確定申告が終わった後も、帳簿や請求書、領収書などは法令で定められた期間保存する必要があります。
白色申告の場合、収入金額や必要経費を記載した法定帳簿は7年間保存する必要があります。また、業務に関して作成した任意帳簿や、請求書・納品書・領収書などの書類は原則として5年間の保存が必要です。
青色申告の場合も、帳簿や決算関係書類などについて原則として一定期間の保存が必要です。
司法書士の場合は、次の資料を申告後も整理しておきましょう。
日頃から帳簿と証拠資料をセットで整理しておけば、確定申告だけでなく、税務署から確認を求められた場合にも対応しやすくなります。
【出典元】 国税庁|個人で事業を行っている方の記帳・帳簿等の保存について
司法書士として個人で事業を行う場合、司法書士報酬などから生じた事業所得について確定申告が必要です。
特に、報酬の売上計上や源泉徴収税額、登録免許税等の立替金は、正しく区分して処理することが重要です。
また、事務所家賃や司法書士会費などは経費にできますが、パソコンや車両は減価償却や家事按分が必要になる場合があります。
インボイス登録をしている場合などは、所得税だけでなく消費税の申告も必要です。日頃から帳簿や請求書を整理し、適切な税務処理を心がけましょう。
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この記事の監修者
税理士法人松本 代表税理士
松本 崇宏(まつもと たかひろ)
登録者30万人以上のYouTubeチャンネル「税理士法人松本〜税金の裏のウラ〜」を運営。 代表を務める税理士法人松本では、これまでに累計5,000件を超える税務調査のご相談・対応実績があり、国税局査察部、税務署長歴任者・税務調査一筋の現場に強い国税出身のOB税理士が現在15名常駐。国税当局側の視点を踏まえて、お客様の立場を尊重し、税務調査でお悩みのお客様に適切かつ迅速に対応。また、調査前・調査中に関わらず、あらゆる状況から最善のサポートが可能。なお、調査結果が追徴税額なしとなる実績も多数取得。税務調査における専門性・経験則・折衝力から最善の結果を導き、お客様の笑顔とありがとうを励みに成長し続けている。
税理士法人松本は国税OB・元税務署長が所属する税理士法人です。
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