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業務で使用する衣装や服の購入代金は、経費として計上できる場合もあります。しかし、どのような衣装や服であれば経費に計上できるのか、基準を明確に把握していないと、適切に経費計上ができません。また、衣装代を経費に計上する際には、適切な勘定科目を使用する必要があります。では、どのような衣装代であれば経費として計上ができ、経費計上の際にはどの勘定科目を使用するべきなのでしょうか。
今回は、衣装代を経費計上する際のポイントや注意点などについてご説明します。
目次
業務で使用する衣装代は、経費として計上することが可能です。しかしながら、業務で使用するからと言ってすべての服の購入代金を衣装代として扱えるわけではありません。経費にできる衣装や服と経費にできない衣装や服について具体的な例を交えながらご説明します。
経費として計上できる衣装代は次のような衣装の購入代金やレンタル料金です。
・飲食店や小売店、製造業などで着用するユニフォーム代
・舞台で使用する衣装代
・イベントでコスプレを披露する場合の衣装代
・YouTube撮影のために使用する衣装代
・キャバクラやクラブ、ホストクラブなどで着用する衣装代
・広告撮影のために購入した衣装代
・イベントで着用する衣装の購入代
・講演会やセミナーで着用する衣装の購入代
仕事で使用する服と言っても、以下のような衣服の購入代は経費としては認められません。
・営業活動の際に着用するスーツやワイシャツの購入代金
・プライベートでも着用できる衣服の購入代金
・通勤のために購入した服の代金
衣装代として経費計上が認められるためには、購入した衣服がプライベートでは着用せず、業務上のみに使用するものでなければなりません。例えば、スーツやワイシャツなどは、仕事をするときだけでなく、冠婚葬祭に着用する可能性もあるでしょう。そのため、スーツやワイシャツなどは衣装代として経費計上できないケースがほとんどです。
また、YouTube撮影のためだけに着用する服であれば衣装代として経費にできますが、プライベートでも着用する可能性がある服は、全額を衣装代として計上することは認められません。
個人事業主の場合は、スーツが経費として認められるケースもないわけではありません。弁護士や税理士など、必ずスーツの着用が必要になる職業に就いている場合やセミナーや講演会などの講師としてスーツを着用するケースが多い場合もあるでしょう。そのようなケースでは、経費計上についての根拠を説明することができれば、スーツ代も経費として認められる場合があります。
ただし、プライベートでは使用せず、業務上のみで使用しているといった証明が必要になるため、スーツは事務所で保管するなどし、業務上で着用した記録などを残しておくとよいでしょう。
また、スーツが高級ブランドの商品など、常識的に考えて業務上必要な衣装としては不相応に高いと判断されると、税務調査の際に衣装代の経費計上が認められないケースもあります。スーツを経費として計上したい場合には、業務用であることの客観的な証拠や明確な説明が必要になる点に注意しましょう。
アクセサリーはプライベートでも使用できると判断されるため、経費としては認められないケースがほとんどです。しかし、事業のみで使用することが証明できる場合などは、アクセサリー代も経費として計上できるケースがあります。
また、革靴やパンプス、ハイヒールなど、業務上で使用する靴も業務上だけでなく、プライベートでも使用可能と判断されるケースが多いため、経費として認められないケースがほとんどです。しかしながらユニフォームの一環として、同じ靴を揃える場合や作業用の安全靴など、プライベートでは使用せず、仕事上でのみ使用すると考えられる場合は、経費計上が認められます。
衣装代を仕訳する際には、同じ勘定科目を使うわけではありません。経費計上が可能な衣装代であっても、衣装の内容や金額、使用シーンなどに合わせて適切な勘定科目を選択する必要があります。
経費計上が可能な衣装代ごとの適した勘定科目をご紹介します。
飲食店や小売店などで、従業員が着用するユニフォームは、仕事の場以外で着用するケースはないと考えられます。ユニフォームの代金は、福利厚生費として仕訳をします。
そのほか、次のような衣装代や衣服代も福利厚生費として処理できます。
・作業場で使用するユニフォーム代
・製造工場などで使用する社名入りのユニフォーム代
・工事現場などで使用する安全靴やヘルメットなどの購入代金
演劇などの舞台で使用するために使用する衣装代は、消耗品費として取り扱うケースが多くなります。ただし、衣装代が10万円以上になる場合には、固定資産として計上することになるため、減価償却を行わなければなりません。
そのほか、消耗品費として扱う衣装代には以下のようなものがあります。
・YouTuberが撮影のためだけに使用する衣装代
・個人事業主がキャバクラやクラブ、ホストクラブなどで着用する衣装代
・セミナーや講演会で着用する衣装の購入代
商品やサービスを宣伝するための広告を撮影する際に用意した衣装代は、売上を伸ばす目的のために使用されるため、販売促進費として扱います。また、次のような衣装代も販売促進費として処理することが可能です。
・クリスマスイベントのために準備したサンタクロースの衣装
・バレンタインデーのキャンペーンのために準備したおそろいの衣装
・新製品の宣伝イベントのために作成したスタッフTシャツの代金
・会社案内の動画撮影のために購入した衣装代
衣装代が10万円を超える場合は、工具器具備品の勘定科目で処理をし、減価償却をしなければなりません。衣装の法定耐用年数は2年です。
10万円を超える衣装代の場合、固定資産として取り扱うことになります。そのため、原則として法定耐用年数に合わせた減価償却が必要です。
減価償却法には、定率法と定額法の2種類の計算方法があります。定率法も定額法も最終的な償却額に変わりはありません。しかし、償却過程において計上できる償却額には違いがあります。定額法は、毎年同じ額を減価償却する計算方法であり、定率法は固定資産の取得初年度に最も多い額を償却する方法です。
法人の場合、自社の状況に合わせて定額法または定率法のいずれかを選択することができます。一方、個人事業主の場合は原則として、毎年同じ額を償却する定額法を使用することになります。ただし、個人事業主も事前に税務署に減価償却資産の償却方法の届出を提出すれば、定率法で計上することも可能です。
青色申告をしている中小企業の場合、10万円以上30万円未満の衣装代であれば、少額減価償却資産として処理することもできます。少額減価償却資産とは、衣装代の全額を、衣装を購入した年に計上する方法です。業績が好調で利益が大きい事業年度に高額な衣装代が発生した場合は、少額減価償却資産として扱うと、衣装代を全額経費計上でき、節税効果を得られます。
少額減価償却資産の特例が適用されるのは、青色申告をしており、常時使用する従業員の数が500人以下の法人です。また、資本金や出資金は1億円以下である必要があります。
また、少額減価償却資産の特例は、青色申告をしている個人事業主にも適用されます。
少額減価償却資産として処理する場合、一セットあたりの取得価格が30万円未満の衣装が対象となります。一セットあたりの取得価格が30万円を超えるような衣装代は、少額減価償却資産として処理することはできません。
衣装代を経費として計上する際に注意しなければならない点をご紹介します。
冒頭でご紹介したように、業務で使用する衣服をすべて、経費として計上できるわけではありません。経費として計上できる衣装代は、業務でのみ使用するもののみに限定されます。会社名が入ったTシャツや制服など、プライベートでは使用しない可能性が高いものは、問題なく経費として認められるでしょう。また、メディア出演の際に購入した衣装であっても、プライベートでは絶対に着用しないものであれば、経費計上が認められます。しかし、スーツやワンピースなど、プライベートでも使用できそうな衣装の場合には経費として計上することはできません。
そのほか、事務職や営業職が着用するスーツやワイシャツ、ビジネスシューズ、パンプスなども、業務以外では絶対に着用しないとは言い切れないでしょう。そのため、これらの衣装代を経費計上することは認められないケースが多くなっています。
業務で使用する衣装であっても、カジュアルな服装など、本当に業務だけで使用しているのかどうかを証明できないケースもあります。確実に経費であることを証明するためには、イベントや講演会などの様子を写真に残すなど、経費であることを証明できる書類を保管しておくことも大切です。
YouTuberが動画配信のために購入した衣装の中には、プライベートでも使用できると考えられるものもあるでしょう。また、メディア出演の際に着用した衣装でも、プライベートでも使用できるものがあります。個人事業主の衣装代のうち、プライベートでも使用する可能性があるものについては、全額を経費として計上するのではなく、家事按分を行い、事業で使用する分のみを経費計上しなければなりません。
例えば、YouTubeの撮影用として購入した衣服を年間100日着用したとします。そのうち、撮影のために着用した日を80日とした場合、家事按分割合は80%です。衣装の購入代金が30,000円だった場合、経費として計上できる衣装代は24,000円となります。また、着用割合を客観的に示すために、使用状況は記録しておくと安心です。
経費として計上できる衣装代であっても、領収書やレシートが保管されていない場合、支出を証明できるものがありません。法人の場合、領収書やレシートは7年間保管が必要です。また、個人事業主の場合は、青色申告をしている人は7年間、白色申告をしている人は5年間保管しておかなければなりません。
領収書やレシートがなければ、業務上でのみ使用していた衣装の代金であっても、経費として認められない可能性があります。定められた保管期間を守り、領収書やレシートをしっかり保管しておくことが大切です。
企業会計の一般原則には継続性の原則と呼ばれるルールがあります。これは、企業の会計をするにあたり、一度適用した処理の原則や手続きは毎期、継続して適用し、みだりにこれを変更してはならないというものです。
例えば、販売促進キャンペーンやイベントなどの際に、従業員が着用するTシャツを作った際、販売促進費として計上したとします。その翌年、同様の販売促進イベントで、今度は従業員が着用するスタッフジャンパーを作成したと仮定しましょう。この際、スタッフジャンパーの作成代を、福利厚生費として計上すると、前期との整合性が取れなくなってしまいます。販売促進を目的としたキャンペーンやイベントで着用するために作成した衣装代を一度、販売促進費として計上した場合には、その後も販売促進費として計上しなければなりません。
業務上、必要であると認められた衣装の購入代金は、経費として計上することが可能です。ただし、業務での使用が客観的に証明できない場合、衣装代として経費計上が認められないケースがあります。特に個人事業主の場合は、プライベートでも使用できる衣服代を経費として計上する際には、事業での使用割合を算出し、事業で使用した分のみを計上しなければなりません。
また、経費計上の際には、適切な勘定科目を使用し、一度使用した勘定科目をみだりに変えることはせず、継続して使用する必要があります。そのほか、10万円を超える衣装代は経費ではなく、減価償却資産として処理しなければならない点にも注意しましょう。
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この記事の監修者
税理士法人松本 代表税理士
松本 崇宏(まつもと たかひろ)
お客様からの税務調査相談実績は、累計5,000件以上。国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。
税理士法人松本は国税OB・元税務署長が所属する税理士法人です。
全国からの税務調査相談実績 年間1,000件以上
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