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自宅兼事務所や店舗を所有する個人事業主にとって、毎年届く固定資産税の納税通知書をどの勘定科目で処理するかは迷いやすい論点です。勘定科目の選び方だけでなく、いつ経費として計上するか、家事部分をどう按分するかまで踏まえないと、年間の所得金額が数万円単位でずれてしまうこともあります。
本記事では、固定資産税の基本的な勘定科目である租税公課の扱いから、計上時期の3つの選択肢、家事按分の具体的な計算例、償却資産税との違いまでを、確定申告の実務目線で整理します。
目次
固定資産税は個人事業主の経理処理で使われる頻度の高い税金であり、勘定科目の選び方を押さえておくと、毎年の申告作業が楽になります。ここでは以下の3点を整理します。
事業用資産にかかる固定資産税は、原則として「租税公課」という勘定科目で記帳します。租税公課は、税金や公共賦課金などを一括して処理するための費用科目であり、固定資産税のほかにも以下のような税金を含めて記載するのが一般的です。
注意が必要なのは、業務用部分が必要経費になる点であり、所得税・住民税・相続税・延滞税・加算税などは経費にならないため、租税公課に含めないよう区分けが求められます。
参考:No.2215 固定資産税、登録免許税又は不動産取得税を支払った場合|国税庁
自宅兼事務所などで家事部分と事業部分が混在する場合、事業供用割合で按分した事業部分のみを「租税公課」に計上し、家事部分は「事業主貸」で処理します。事業主貸は、事業用の現金や預金から家事費用を支出したときに使う科目で、個人事業主の簿記で頻繁に登場します。
例えば固定資産税が年15万円で事業供用割合が80%なら、仕訳は「租税公課12万円・事業主貸3万円/現金15万円」となります。家事部分を租税公課に混ぜてしまうと、税務調査で過大経費と指摘される原因になります。必ず仕訳の段階で分けるようにしましょう。
参考:個人事業者の帳簿の記帳のしかた|国税庁
確定申告書に添付する収支内訳書(白色申告)や青色申告決算書には、経費欄の先頭に「租税公課」の記載欄が用意されており、事業部分に該当する金額を合算して記入します。
記入する金額はあくまで家事按分後の金額であり、納税通知書の総額をそのまま書くわけではない点には注意が必要です。e-Taxの確定申告書等作成コーナーを使う場合も、入力画面の租税公課欄には按分後の金額を入れます。
参考:令和6年分 収支内訳書(一般用)の書き方|国税庁
固定資産税は納税通知書が届いてから実際の納付まで時間差があるため、いつの年分の経費にするかという計上時期の判断が必要となります。個人事業主には3つの選択肢があり、どれを選ぶかで所得金額が変わる場合があります。
所得税基本通達では、固定資産税のような賦課課税方式の税金について、計上時期を次の3つから選択できるとされています。
参考:所得税基本通達(租税公課)|国税庁
どれを選んでも納税額は長期的には同じですが、年度をまたぐ納期の一部が翌年の経費となるケースでは単年の所得金額に差が出るため、一度選んだ方法は継続適用するのが原則となります。毎年方法を変えると恣意的な所得操作とみなされるため、事業を始めた段階で方針を決めて毎年同じ処理を続けるのが望ましい運用となります。
固定資産税を1回で全額納付する場合の仕訳は、家事按分の有無で以下のように分かれます。いずれも年税額15万円を想定した例です。
按分率は納付書の金額に直接乗じて計算するのが基本であり、100%事業用でなければ按分率を乗じた金額が租税公課となります。按分なしで全額を経費に入れてしまうと、税務調査で過大経費として否認されるおそれがあるため、按分の根拠となる計算メモを保管しておくのが実務的な進め方です。
関連記事:過少申告加算税とは?計算方法やペナルティが課されないケース、対処法を詳しく解説
固定資産税は市町村の条例で4期の納期が定められており、4回に分けて払う方式が一般的です。この場合、計上時期の選び方によって仕訳の回数と金額が変わります。
仕訳例として、年税額15万円・事業供用割合80%で1期分37,500円を支払う場合は、租税公課30,000・事業主貸7,500・現金37,500の構成になり、納期ごと計上/まとめて計上のどちらを選ぶかは、帳簿付けの手間と継続適用のしやすさで判断することをおすすめします。
納税通知書が届いた時点で年額を一括経費計上し、実際の納付はあとから行う方法を「未払計上」といいます。青色申告の発生主義に沿った処理であり、賦課決定日を計上時期として選ぶ場合に採用されます。
未払計上の利点は、賦課決定のあった年分に全額が経費として反映され、所得金額のブレが抑えられる点です。ただし、青色申告で貸借対照表を提出する場合は未払金で計上した残高を年末時点で正確に残しておく必要があり、帳簿の複式化が前提になります。白色申告では損益計算のみで処理するため、未払計上より納付日計上のほうが実務的な場合もあります。
参考:青色申告決算書(一般用)の書き方|国税庁
自宅の一部を事業に使っている個人事業主にとって、固定資産税をそのまま全額経費に入れるのは認められず、事業供用割合で按分する作業が必要になります。ここでは按分の考え方と具体的な計算例を整理します。
家事関連費のうち必要経費になるのは、業務遂行上直接必要であったことが明らかに区分できる金額のみとされています。按分率の決め方は、事業の形態によって以下の3パターンが代表的です。
所得税法上、家事関連費のうち必要経費にできるのは「業務遂行上直接必要であったことが明らかに区分できる部分(事業供用割合)」のみです。白色申告の場合、原則として業務利用が50%を超えていないと経費計上自体が認められにくい傾向があります。
50%を超えていたとしても、経費にできるのはあくまで事業割合分のみであり、全額を経費にできるわけではありません。なお、青色申告者の場合は、事業供用割合を合理的に説明できれば、50%以下でも必要経費として認められる運用となっています。
参考:No.2210 必要経費の知識|国税庁
関連記事:税務署からのお尋ねって何?来たときにはどう対応すればよい?
自宅の一部を専用の事務所として使っている場合、床面積比で按分するのがもっとも説明しやすい基準となります。総床面積100㎡の自宅で30㎡を業務専用に使っているケースを想定すると、以下のような計算になります。
事業専用スペースとして認められるためには、業務用以外の用途に使っていない実態が伴っている必要があり、単に「仕事机がある部屋」というだけでは不十分です。打ち合わせや作業の記録、間取り図の保管など、床面積比の根拠を示せる準備をしておきましょう。
参考:所得税基本通達(家事関連費)|国税庁
同じスペースを業務用と家事用の両方で使っている場合は、使用時間比での按分が現実的な選択肢となります。リビングの一角で平日日中のみ仕事をしているようなケースを想定します。
使用時間按分は数字の根拠が主観に寄りやすいため、業務日報やスケジュール記録で実際の使用時間を裏付けられる運用が望まれます。また、床面積按分との併用も可能です。例えば「自宅1階の店舗部分は床面積比、2階の兼用スペースは使用時間比」という組み合わせでも、合理的な基準として整合していれば認められる可能性が高まるでしょう。
固定資産税の勘定科目は「租税公課」でほぼ完結しますが、以下のようなポイントでつまずくケースが目立ちます。
固定資産税は土地・家屋と償却資産の3種類に課税されますが、個人事業主が混同しやすいのが償却資産税との区別です。勘定科目はどちらも「租税公課」で同じですが、申告対象と計算対象が異なります。
土地・家屋にかかる固定資産税は市町村が自動的に課税するため、納税者は納税通知書を受け取って支払うだけで済む一方、償却資産税は事業用機械などを保有している個人事業主が毎年1月31日までに自ら申告する必要があり、申告漏れがあると過年度分も遡って課税されるケースがあります。勘定科目は同じ租税公課ですが、申告手続きは別物として覚えておくのが実務的な進め方です。
参考:地方税制度|固定資産税の概要|総務省
親や配偶者が所有する自宅や店舗を事業用に使っているケースでは、所得税法第56条の特例により、親族への家賃支払いは必要経費になりません。ただし、親族が負担している固定資産税のうち事業用部分については、事業主側の必要経費にできる余地があります。
この特例は、生計を一にする親族の間で所得を移転する節税策を防ぐための規定であり、家族内で完結する取引が対象で、納税通知書の名義が親族名義であっても、事業供用割合で按分した固定資産税を事業主の帳簿に租税公課として計上することが認められる運用となります。
固定資産税の按分率を間違えた、計上時期を間違えたという場合、気づいた時点で帳簿修正と修正申告を検討する必要があります。対応は気づいたタイミングと当初申告内容によって変わります。
特に計上時期を翌年度に変更したい場合、これまでの処理との整合性を崩すと過去年度の修正が必要になるおそれがあるため、一度選んだ方法の継続適用の維持が結果的に修正の手間を減らす近道となります。
関連記事:税務調査で申告漏れを指摘され、追徴課税を払うことになるのはなぜ?
固定資産税は毎年発生する経費の一つであり、勘定科目の選び方と家事按分の考え方を押さえておくことが、申告作業を落ち着いて進めるうえでの土台となります。計上時期や事業供用割合の決め方は事業の形態によって変わるため、自分の運用に合った方法を決めて毎年同じ処理を続ける姿勢が望まれます。按分の根拠や仕訳の記録が整っていないと事後の修正で負担が増えるため、日々の帳簿づけの段階で区分を明確にしておくことが重要なポイントです。
税理士法人松本では、確定申告の実務支援から税務調査対応まで、個人事業主・法人のお客さまをきめ細かくサポートしています。申告の進め方だけでなく、将来のリスクを減らす帳簿づくりや、税務署とのやり取りの考え方までご案内可能です。「申告が不安」「過去の処理が正しかったか心配」という段階でもお声掛けください。
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この記事の監修者
税理士法人松本 代表税理士
松本 崇宏(まつもと たかひろ)
登録者20万人以上のYouTubeチャンネル「税理士法人松本〜税金の裏のウラ〜」を運営。 代表を務める税理士法人松本では、これまでに累計5,000件を超える税務調査のご相談・対応実績があり、国税局査察部、税務署長歴任者・税務調査一筋の現場に強い国税出身のOB税理士が現在14名常駐。国税当局側の視点を踏まえて、お客様の立場を尊重し、税務調査でお悩みのお客様に適切かつ迅速に対応。また、調査前・調査中に関わらず、あらゆる状況から最善のサポートが可能。なお、調査結果が追徴税額なしとなる実績も多数取得。税務調査における専門性・経験則・折衝力から最善の結果を導き、お客様の笑顔とありがとうを励みに成長し続けている。
税理士法人松本は国税OB・元税務署長が所属する税理士法人です。
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