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個人事業主やフリーランスとして所得が伸び始めると、6月頃に税務署から「予定納税額の通知書」が届くことがあります。前年の所得税額が一定以上の方を対象に、その年の所得税の一部を前払いで納める制度であり、初めて通知を受け取った方の中には「いつ払うのか」「いくらなのか」「払えないときはどうするのか」という疑問を抱いた方も多いのではないでしょうか。
本記事では、所得税の予定納税の基本から、通知書が届いたあとの動き方、減額申請、払えないときの猶予制度までを、初めての方向けに整理します。
目次
所得税の予定納税は、前年の所得税額を基準にその年の所得税の一部を前払いする制度です。本章では仕組みの全体像を以下の3点で整理します。
前年分の所得税額に基づいてその年の所得税および復興特別所得税の一部をあらかじめ納付する制度であり、納税者の負担を分散させる目的で設けられています。源泉徴収されるサラリーマンとは異なり、個人事業主やフリーランスは確定申告でまとめて所得税を納める仕組みになっているため、前年の納税額が一定以上の方には予定納税の前払いが課されることになります。一括での納付負担を抑え、その年の収入水準に合わせて段階的に納める設計です。
参考:No.2040 予定納税|国税庁
予定納税の対象となるのは、その年の5月15日時点で確定している前年分の所得をもとに計算した予定納税基準額が一定額以上の方です。対象者には税務署から自動的に通知書が送付されます。
予定納税基準額は、前年分の課税総所得金額に対する所得税額から源泉徴収税額等を差し引いた金額として計算され、15万円以上になると予定納税の対象となります。通知書が届かない場合は、対象外の可能性が高いものの、念のため所轄税務署に確認するのが望ましいでしょう。
参考:所得税法|e-Gov法令検索
予定納税は、その年の確定申告で必ず精算される前払いの位置づけであり、確定税額より多く前払いした場合は還付、少なかった場合は追加納付となります。
予定納税は確定申告で精算されるため、長期的に見れば納税額が増えるわけではない一方、確定申告で精算されるまでは資金が国に預けられた状態となるため、資金繰りの観点では事前のキャッシュフロー計画が望まれます。
予定納税の納期と金額は所得税法で定められており、迷うところはありません。本章では納期と金額、通知書の見方、納付方法を整理します。
予定納税は年に2回、第1期と第2期に分けて納付する仕組みであり、各期の金額は予定納税基準額の3分の1ずつとなります。令和8年分の納期と振替納税の振替日は次のとおりです。
※振替日は国税庁の正式発表により変更となる場合があります。
例えば前年分の予定納税基準額が45万円となった場合、第1期は7月に15万円、第2期は11月に15万円という納付になります。基準額の1/3が機械的に各期に割り振られる仕組みのため、納期と金額の予測は通知書到着前から立てておけます。
予定納税額の通知書は税務署から6月中旬に送付され、予定納税基準額・各期の納付額・納期・納付場所などが記載されています。同封の納付書を使えば、金融機関や税務署窓口でそのまま納付することが可能です。
通知書を受け取ったら、まず記載内容と前年の確定申告の控えを照らし合わせ、基準額の計算に間違いがないかを確認するようにしましょう。同封の納付書は窓口納付以外にも、QRコード化してコンビニ納付に使うことができますが、ペーパーレス化が進む中でも通知書そのものは引き続き大切な書類となります。
参考:所得税及び復興特別所得税の予定納税(第1期分)の納税をお忘れなく|国税庁
予定納税の納付方法は7種類あり、それぞれ手数料・上限額・事前手続きが異なります。自分の納付スタイルに合った手段を選んでおくと、納期ごとに迷わずに済みます。
7種類の納付方法のうち比較的多く選ばれるのは、手数料無料で手続きが自動化される「振替納税」または「ダイレクト納付」です。特に振替納税の場合、第1期は7月末、第2期は11月30日の自動引き落としとなるため、納期限当日の手続きを忘れる心配が減るでしょう。
参考:キャッシュレス納付|国税庁
関連記事:過少申告加算税とは?計算方法やペナルティが課されないケース、対処法を詳しく解説
通知された予定納税額は前年の所得をベースにしているため、その年の所得が下がる見込みのときは、予定納税額の減額申請が認められます。本章では事由・手順・申請後の流れを整理します。
減額申請は、その年の申告納税見積額が予定納税基準額に満たないと見込まれる場合に認められます。所得税法第111条に基づく手続きで、対象事由は次のように整理できます。
6月30日または10月31日の現況をもとに判断され、業況不振を主張する場合は、売上推移や取引先の動向など客観的に説明できる資料を整えておく運用が望まれます。また、廃業の場合は廃業届の写しが添付資料となります。
参考:A1-3 所得税及び復興特別所得税の予定納税額の減額申請手続|国税庁
減額申請には期限があり、判断時点と提出期限が次のように対応します。第1期と第2期で別々に申請するか、一度にまとめて申請するかを選べます。
提出書類は「予定納税額の減額申請書」と「申告納税見積額の計算書」の2点が基本で、減額の事実を裏付ける書類を添付します。e-Taxによる電子申請にも対応しています。
提出期限を過ぎると当該期分の減額は認められなくなる点には注意してください。第1期分の減額を見送った場合でも、11月15日までに第2期分のみの減額申請が可能で、状況の見直しは2回のタイミングで行うことが可能です。
参考:所得税法基本通達 第111条関係|国税庁
関連記事:無申告のペナルティ「無申告加算税」と「延滞税」はどう違う?
減額申請書を提出すると、税務署で書類審査が行われ、申請の可否が通知されます。承認された場合は新たな予定納税額の通知書が届きます。
承認後に届く新たな通知書は、第1期分・第2期分の納期や金額が記載されているため、納付書も併せて届くケースが一般的です。不承認となった場合は当初の予定納税額が変わらないため、納期までに準備した資金で納付するのが基本となります。
予定納税の納期に納付が間に合わない、あるいは一括での納付が困難という場面では、申請による猶予制度や延滞税の発生を踏まえた対応が必要となります。
予定納税が納期までに払えない見込みのときは、申請により換価の猶予や納税の猶予が認められる可能性があります。滞納処分で差押えを受けてから動くよりも、納期前後の段階で相談したほうが選択肢が広がります。
予定納税は所得税の前払いのため、換価の猶予の対象としても認められます。担保提供は原則必要ですが、猶予対象の税額が100万円以下、または期間3ヶ月以内であれば担保不要となるため、6ヶ月以内に申請という期限を念頭に、納付が困難と気づいた段階で所轄税務署の徴収担当窓口に相談するのが望ましい進め方です。
参考:納期限までに納付することが困難な方へ|国税庁
猶予の申請には所定の書類提出が必要となり、税務署窓口またはe-Taxで対応できます。手続きの流れは概ね次のとおりです。
申請後は税務署が書類審査を行い、必要に応じて聴取が行われます。承認されると分割納付計画に沿って分割納付が始まり、計画を守れない場合は猶予が取り消される可能性があります。納付計画は無理のない範囲で組むようにしましょう。
関連記事:税務署からのお尋ねって何?来たときにはどう対応すればよい?
猶予制度を使わずに納期を過ぎてしまった場合、本税に加えて延滞税が課されます。税率は納期遅延の期間に応じて2段階に分かれており、令和7年分の税率は次のとおりです。
例えば予定納税本税15万円を1ヶ月(30日)遅れた場合、延滞税は15万円×2.4%×30日÷365日で約295円となる日割り計算が目安です。3ヶ月(90日)まで遅れると、2ヶ月超部分に年8.7%が適用されて延滞税は数千円規模に膨らみます。本税の規模に比べて延滞税自体は小さい金額で済むケースが多いものの、振替納税の残高不足など意図しない遅延を避けるための事前準備が望まれるところです。
参考:No.9205 延滞税について|国税庁
所得税の予定納税は、前年の所得をもとに年2回の前払いで納める仕組みであり、初めて通知を受け取った段階では制度の全体像を押さえておくことがポイントとなります。所得が下がる年や事業の状況が変わった年には減額申請が用意されており、納付が難しいときには猶予制度に申請する道もあるため、自分の状況に合わせて選択肢を検討することが望まれます。納期を過ぎると延滞税が日数に応じて発生するため、事前の納付方法の選定と資金繰りの準備が重要です。
税理士法人松本では、確定申告の実務支援から税務調査対応まで、個人事業主・法人のお客さまをきめ細かくサポートしています。申告の進め方だけでなく、将来のリスクを減らす帳簿づくりや、税務署とのやり取りの考え方までご案内可能です。「申告が不安」「過去の処理が正しかったか心配」という段階でもお声掛けください。
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この記事の監修者
税理士法人松本 代表税理士
松本 崇宏(まつもと たかひろ)
登録者20万人以上のYouTubeチャンネル「税理士法人松本〜税金の裏のウラ〜」を運営。 代表を務める税理士法人松本では、これまでに累計5,000件を超える税務調査のご相談・対応実績があり、国税局査察部、税務署長歴任者・税務調査一筋の現場に強い国税出身のOB税理士が現在14名常駐。国税当局側の視点を踏まえて、お客様の立場を尊重し、税務調査でお悩みのお客様に適切かつ迅速に対応。また、調査前・調査中に関わらず、あらゆる状況から最善のサポートが可能。なお、調査結果が追徴税額なしとなる実績も多数取得。税務調査における専門性・経験則・折衝力から最善の結果を導き、お客様の笑顔とありがとうを励みに成長し続けている。
税理士法人松本は国税OB・元税務署長が所属する税理士法人です。
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