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事業主借って何?税務調査対策として理解しておきたい事業主勘定とは

読了目安時間:約 6分

個人事業主の場合、事業の所得とプライベートな支出が密接に関わっていますが、事業所得と生活費は明確に区分しなければなりません。事業の資金とプライベートの資金を区分するために用いられるのが「事業主借」や「事業主貸」です。

個人事業主は、法人のように役員報酬という形で給与を受け取っているわけではありません。そのため、個人事業主の場合、事業に関係する支出やプライベート分の支出などを明確に区分しなければ、税務調査で申告漏れや私費の経費計上などを疑われる恐れがあります。

そこで今回は、個人事業主が税務調査対策として知っておきたい事業主借を含めた事業主勘定の概要やルールについて解説します。

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事業主借って何?

事業主借とはどういう意味なのでしょうか?対になる用語である事業主貸と合わせてご説明します。

事業主借とは

事業主借とは、個人のお金を事業に投入した場合に使用する勘定科目です。

事業の視点で見た場合、事業主が事業に対してプライベートなお金を投入することは、事業主からお金を借りることとなるため、事業主借と表されます。また、事業主借は、経費には影響しないため損益計算書に影響することはありません。

事業主借の具体的な事例としては次のようなケースが考えられます。

  • 個人の現金を使って事業で使用する文房具を購入した
  • クライアントとの打ち合わせの飲食費用を個人のクレジットカードで支払った
  • 事業用資金が少なくなったため、個人の銀行口座から事業用口座にお金を移した
  • 事業用の口座に預金利息が付いた

それぞれのケースについて詳しく解説します。

個人の現金を使って事業で使用する文房具を購入した

事業で使用するため、1,000円のコピー用紙を個人の財布から現金で支払った場合は、事業主が事業のためにお金を支払っているため、帳簿上では事業主借として処理します。仕訳の例は以下のとおりです。

借方 貸方
消耗品費 1,000 事業主借 1,000

クライアントとの打ち合わせの飲食費用を個人のクレジットカードで支払った

カフェなどでクライアントとの打ち合わせをした場合に発生する飲食費用は、会議費として処理することができます。また、事務所で打ち合わせをした場合に用意したドリンク代やお弁当代なども会議費として処理することが可能です。この際、個人のクレジットカードで支払いをした場合も、プライベートなお金を使用することとなるため事業主借に該当します。

個人のクレジットカードで3,000円分の会議費を支払った場合の仕訳の例は以下のとおりです。

借方 貸方
会議費 3,000 事業主借 3,000

事業用資金が少なくなったため、個人の銀行口座から事業用口座にお金を移した

事業は必ずしも安定的に成長を続けるわけではなく、経費が売上を上回る事態が発生することもあるでしょう。仕入れなどが必要な事業を営んでいる場合、事業資金が不足すると事業を継続することができません。また、オフィスや店舗を借りている場合なども、事業資金が不足すると家賃の支払いが滞る恐れがあります。

そのような場合、個人の預金から事業用の口座にお金を移すケースは少なくないでしょう。個人の銀行口座から事業用の個人口座にお金を移す行為も、事業の視点で見れば、事業主からお金を借りることとなるため、事業主借を使って処理することとなります。

個人の銀行口座から500,000円を事業用口座に振り込んだ場合の仕訳は以下のようになります。

借方 貸方
普通預金 500,000 事業主借 500,000

 

事業用の口座に預金利息が付いた

実は、個人のお金を事業のために使用するケースだけでなく、事業主借の仕訳が必要になるケースがあります。その一つが、事業用口座の預金利息です。

事業用口座に預金がある場合、預金の利息が付きます。この利息は、事業の売上ではなく、個人の利子所得とみなされるため、事業主借で処理をすることとなります。ただし利息は、すでに所得税の源泉徴収がなされており、納税は完了している状態となっているため、確定申告時に利子所得として申告をする必要はありません。

事業用口座に100円の利息が付いた場合の仕訳例は以下のとおりです。

借方 貸方
普通預金 100 事業主借 100

事業主借と事業主貸の違い

事業主借は、事業主が事業のために個人のお金を投入した場合に利用する勘定科目です。一方、事業のお金を個人のために使用した場合に用いる勘定科目が事業主貸となります。事業の視点でお金の動きを見た場合は、事業のお金を事業主個人のプライベートな支出に充てることは、事業主にお金を貸すことにあたるため、事業主貸となるのです。

事業主貸の具体例としては次のようなケースが考えられます。

  • 事業用の口座から生活費を個人の銀行口座に移した
  • 事業用の口座から所得税や社会保険料を支払った
  • 事業用の口座から生活資金を引き出した
  • 事務所兼自宅の家賃を事業用口座から引き落とした

それぞれのケースについて詳しくご説明します。

事業用の口座から生活費を個人の銀行口座に移した

個人事業主の場合、事業所得のほかに所得がない限り、事業の収入が生活費となります。生活費として、20万円を事業用口座から個人の銀行口座に移した場合は、以下のように仕訳をします。

借方 貸方
事業主貸 200,000 普通預金 200,000

事業用の口座から所得税や社会保険料を支払った

個人事業主として事業を営む場合、事業主個人に課される所得税や住民税などは、経費として扱うことはできません。また、事業主が加入する社会保険の保険料は、所得控除の対象にはなるものの、経費として扱うことはないため、税金や社会保険料を事業用口座から支払った場合なども事業主貸として処理をします。

所得税300,000円を事業用口座から引き落とした場合の仕訳は以下のとおりです。

借方 貸方
事業主貸 300,000 普通預金 300,000

事業用の口座から生活資金を引き出した

事業用の口座から、個人の銀行口座に生活費を振り込むだけでなく、事業用の口座から生活費を直接引き出すケースもあるでしょう。この場合も事業主貸として処理をします。

事業用の口座から生活資金として50,000円を引き出した場合の仕訳は以下のとおりです。

借方 貸方
事業主貸 50,000 普通預金 50,000

事務所兼自宅の家賃を事業用口座から引き落とした

個人事業主の場合、事務所と自宅を兼ねているケースも少なくありません。その場合、家賃は事業に使用している分のみ、経費として計上することが可能です。また、事務所兼自宅の場合は光熱費や通信費なども家事按分をし、事業使用分のみを経費として扱わなければなりません。

例えば、家賃10万円の事務所兼自宅の場合、事業使用分が50%だとすると、経費に計上できるのは5万円分となります。この家賃を事業用口座から引き落とす設定にしている場合は、プライベート使用分の5万円については、事業主貸という形で処理をしなければなりません。

具体的な仕訳例は次のようになります。

借方 貸方
事業主貸 50,000 普通預金 100,000
地代家賃 50,000
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税務調査対策として個人事業主が事業主勘定を理解すべき理由

個人事業主が事業の資金とプライベートなお金を区別するために使用する事業主借と事業主貸の勘定科目をまとめて「事業主勘定」といいます。

個人事業主の場合、事業の利益はそのまま個人の利益となります。そのため事業の利益を生活費に充てること自体は、何ら問題のない行為です。では、税務調査対策としてなぜ事業主勘定を理解しておく必要があるのでしょうか。

税務調査対策として事業主勘定を理解しておくべき主な理由は以下の3点です。

  • 正しく記帳を行うため
  • 個人の支出と事業の経費を明確に区分するため
  • 税務調査では事業主勘定と所得のバランスがチェックされるため

それぞれについて解説します。

正しく記帳を行うため

繰り返しになりますが、個人事業主の場合、事業の収入がそのまま個人の収入となるため、事業用の資金と個人のお金は密接に関係しています。しかし、事業資金と生活費は明確に区分しなければなりません。

プライベートな口座から事業用口座に資金を移し替えたり、ポケットマネーで事業用の備品を購入したりといった行為は珍しいことではないでしょう。しかし、これらの行為においても、事業用とプライベートの資金は明確に区別しなければなりません。

税務調査時に、事業主借と事業主貸についての記帳がなければ、調査官に正確な記帳ができていないと認識される恐れがあります。記帳が正しくなければ、確定申告書も正確でない可能性が高くなり、税務調査では杜撰な管理体制が露呈し、厳しいチェックにつながる可能性が出てきます。正しく記帳を行うためには、事業主勘定の理解が不可欠です。

個人の支出と事業の経費を明確に区分するため

経費と個人支出の混同は、個人事業主に対する税務調査で、最も指摘を受けやすいポイントの一つです。個人事業主が負担する所得税は、課税所得額によって変わります。課税所得額は、売上から経費を差し引いた額で算出されるため、売上を過少に申告するか、経費を過大に申告すると所得額が圧縮され、税負担の軽減につながります。そのため、プライベートの支出を事業の経費として計上し、税務調査で指摘を受ける事例は少なくありません。

経費として処理できる事業上の支出と経費としては扱えないプライベートな支出は明確に区分する必要があるのです。

事業主勘定を正確に理解し、正しい申告書を作成していれば、個人と事業の資金の区別について十分に理解しているという判断につながる可能性があります。そのため、税務調査時に、個人支出と事業経費の混同といった疑いも抱かれにくくなります。

税務調査では事業主勘定と所得のバランスがチェックされるため

税務調査では、事業主借があることや、事業主貸があること自体が問題になることはありません。しかし、事業主勘定と所得のバランスについてはチェックされる傾向にあります。

個人事業主の収入は、通常、事業の収入となります。したがって、申告されている所得額よりも事業主貸として記載されている金額が大きすぎる場合、申告されている所得では賄いきれない生活費をどこから捻出しているのかという疑問を抱かれやすくなります。反対に、売上の額が低く、事業主借が頻繁に用いられているにもかかわらず、事業が継続されている場合なども何らかの不正を疑われるケースが少なくありません。

税務調査では、事業主勘定の多用も問題視される可能性がある点を理解しておくことが大切です。

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税務調査で事業主借について指摘されるケース

最後に、税務調査時に、事業主借について具体的に指摘を受けやすいのは、事業主借が多すぎる場合です。この際に疑われるのは以下の2点です。

  • 売上の隠蔽疑い
  • 贈与の疑い

売上の隠蔽疑い

事業主借とは、個人のお金を事業のために投入している状態です。一般的に、個人事業は、収益を上げることを目的に行われるものであり、事業のために個人のお金をそれほど頻繁に費やすケースは多くはないと考えられるでしょう。そのため、本来は売上として計上すべき金額を事業主借として処理し、税の負担を不正に軽減しようとしているのではと疑われる可能性があります。

万が一、売上に該当する金額を事業主借として処理していた場合、税務調査時に売上の過少申告とみなされ、過少申告加算税などの追徴課税がなされる恐れがあります。過少申告加算税が課された場合、事業主借として処理していた売上も加えたうえで算出した正確な所得税と納付済みの所得税の差額に加え、過少申告加算税分の納付も求められます。

贈与や相続の疑い

事業主借が多すぎる場合、事業に投入しているプライベート資金の出どころが問題になるケースがあります。事業主借が増えている状況は、事業の利益が少ない場合です。また、個人事業主の収入源は事業所得であることが一般的であるにもかかわらず、頻繁に個人のお金が費やされている場合、事業主は、事業所得に由来しないお金を保有していると考えられます。つまり、贈与や相続などを受けており、その資金を事業に費やしているのではと疑われるケースがあるのです。贈与や相続が発生しても、しっかり贈与税と相続税の納付をしていれば問題ありません。しかし、税務調査で事業主借が多いことをきっかけに、贈与税や相続税の申告漏れが指摘される恐れがあることも覚えておく必要があるでしょう。

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まとめ

事業主借とは、個人事業主が事業のためにプライベートなお金を投入した場合に用いる勘定科目です。個人のお金を事業に使用するケースは珍しくはありません。そのため、事業主借が用いられていることが税務調査で問題になるケースはありませんが、事業主借が多すぎる場合などは、お金の出どころなどについて疑われる可能性があります。また、事業主借を使用して売上を隠蔽しているのではという疑いを抱かれる恐れもある点に注意しなければなりません。

事業主借などの事業主勘定の用い方に不安がある場合は、税務調査リスクを軽減するためにも税理士に相談をしてみることをおすすめします。


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この記事の監修者

松本 崇宏

税理士法人松本 代表税理士

松本 崇宏(まつもと たかひろ)

登録者20万人以上のYouTubeチャンネル「税理士法人松本〜税金の裏のウラ〜」を運営。 代表を務める税理士法人松本では、これまでに累計5,000件を超える税務調査のご相談・対応実績があり、国税局査察部、税務署長歴任者・税務調査一筋の現場に強い国税出身のOB税理士が現在14名常駐。
国税当局側の視点を踏まえて、お客様の立場を尊重し、税務調査でお悩みのお客様に適切かつ迅速に対応。また、調査前・調査中に関わらず、あらゆる状況から最善のサポートが可能。
なお、調査結果が追徴税額なしとなる実績も多数取得。税務調査における専門性・経験則・折衝力から最善の結果を導き、お客様の笑顔とありがとうを励みに成長し続けている。

税理士法人松本は国税OB・元税務署長が所属する税理士法人です。

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