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農業の確定申告では、農産物の販売収入だけでなく、自家消費や補助金、種苗費・肥料費などの経費、棚卸、農機具の減価償却など、農業特有の処理が必要です。
そのため、会計ソフトを選ぶ際は、農業所得や農業所得用の青色申告決算書・収支内訳書、e-Taxへの対応状況などを確認することが大切です。
この記事では、農業の確定申告に使える主なソフトを比較し、選び方や税務上の注意点をわかりやすく解説します。
目次
農業ソフトとは、農業経営における日々の収入や支出を記帳し、確定申告に必要な帳簿や決算書などの作成をサポートするソフトです。
農業による所得は事業所得に含まれますが、確定申告書では「営業等」と「農業」を区分して記載します。
また、青色申告の場合は「所得税青色申告決算書(農業所得用)」、白色申告の場合は「収支内訳書(農業所得用)」を使用します。
そのため、一般的な会計機能だけでなく、農業所得特有の処理に対応しているかを確認することが大切です。
農業の確定申告に利用できるソフトには、大きく分けて「農業専用ソフト」と「一般的な会計ソフト」があります。
農業専用ソフトは、種苗費や肥料費、農薬衛生費など農業で使用する勘定科目があらかじめ設定されていることが多く、農業特有の取引を入力しやすい点が特徴です。
一方、一般的な会計ソフトでも、農業用の勘定科目を設定したり、農業所得用の決算書を作成したりできる製品があります。
しかし、一般的な会計ソフトであればすべて農業所得の確定申告に対応できるわけではありません。
ソフトを選ぶ際には「農業所得を確定申告書に入力できるか」だけでなく、「農業所得用の青色申告決算書または収支内訳書まで作成できるか」を確認しましょう。
農業では、一般的な事業とは異なる勘定科目を使用します。
代表的なものは次のとおりです。
こうした農業用の勘定科目があらかじめ設定されているソフトであれば、日々の記帳を行いやすくなります。
また、確定申告時には青色申告決算書や収支内訳書についても農業所得用の様式が使用されます。
国税庁も農業所得者向けに、農業所得用の収支内訳書や青色申告決算書を用意しています。
農業向けの確定申告ソフトにはさまざまな種類があるため、価格だけで決めるのではなく、自分の申告方法や経理方法に合っているかを確認することが大切です。
特に確認したいポイントは次の3つです。
最初に確認したいのが、農業所得への対応状況です。
「確定申告に対応」と記載されているソフトでも、農業所得用の青色申告決算書や収支内訳書を作成できるとは限りません。
農業専業の場合はもちろん、会社員をしながら農業を営んでいる場合なども、農業所得を適切に区分して申告する必要があります。
農業用の科目設定が用意されているか、農業所得用の決算書まで作成できるかを確認しておきましょう。
確定申告をオンラインで完結させたい場合には、e-Taxへの対応状況も重要です。
65万円の青色申告特別控除を受けるには、まず55万円控除の要件を満たしたうえで、追加要件として「e-Taxを利用して期限内に確定申告書や貸借対照表、損益計算書などを送信する」または「仕訳帳・総勘定元帳を優良な電子帳簿の要件を満たす形で電子保存する」のいずれかを満たす必要があります。
後者を利用する場合は、単に会計ソフト上で帳簿を電子保存するだけでは足りません。仕訳帳・総勘定元帳について優良な電子帳簿の要件を満たして電子データで備付け・保存し、原則として確定申告期限までに一定の事項を記載した届出書を提出する必要があります。
ただし、「e-Tax対応」と表示されていても、農業所得用の決算書についてはソフトから直接電子申告できないケースがあります。
また、電子メールやWebサイトなどを通じてPDF等で受け取った請求書・領収書などの電子取引データについては、一定のルールに従って電子データのまま保存する必要があります。
ソフトを選ぶ際には、申告機能だけでなく証憑保存機能も確認するとよいでしょう。
【出典元】
国税庁|No.2072 青色申告特別控除
国税庁|国税関係帳簿の電磁的記録等による保存等に係る65万円の青色申告特別控除・過少申告加算税の特例の適用を受ける旨の届出手続
確定申告ソフトには、主にクラウド型とインストール型があります。
それぞれの特徴を比較すると次のとおりです。
金融機関との自動連携などを利用したい場合はクラウド型が便利です。
一方、農業専用の機能を重視する場合にはインストール型が候補になることもあります。
ここからは、農業の確定申告に利用できる主なソフトについて紹介します。
ただし、対応機能や料金プランなどは変更される場合があるため、導入前に公式サイトで最新情報を確認してください。
「農業簿記」はソリマチが提供している農業者向けの会計ソフトです。
2026年時点では「農業簿記13」が提供されており、農業用の勘定科目があらかじめ用意されています。
青色申告決算書だけでなく白色申告の収支内訳書にも対応しており、農業専業だけでなく一般事業や不動産所得などとの兼業にも対応しています。
また、銀行やクレジットカードなどの明細を取り込む機能や、領収書・請求書の画像から仕訳を作成する機能なども用意されています。
保守サービスの対象者は「みんなの確定申告クラウド」を利用したe-Taxにも対応しています。農業特有の経理処理を重視したい場合に検討しやすいソフトといえるでしょう。
「らくらく青色申告農業版」は、個人農家向けに作られた青色申告ソフトです。
農業用の勘定科目や仕訳があらかじめ用意されているため、一般的な会計ソフトを農業向けに設定する手間を減らせます。
入力した内容から損益計算書や貸借対照表などを作成でき、e-Taxや消費税にも対応しています。
Windows向けのインストール型ソフトとなっているため、クラウド型ではなく、決まったパソコンで経理を行いたい農業者などが選択肢に入れやすいでしょう。
弥生会計は、幅広い業種で利用されているインストール型の会計ソフトです。
「弥生会計 26」では、個人の青色申告について一般用・不動産所得用に加え、農業所得用の青色申告決算書にも対応しています。
青色申告特別控除65万円の適用要件にも対応しています。
しかし、公式サイトで案内されている白色申告への対応は一般用・不動産所得用となっているため、農業所得を白色申告する場合は、必要な帳票への対応状況をあらかじめ確認することが重要です。
freee会計は、銀行口座やクレジットカードなどとの連携機能を備えたクラウド会計ソフトです。
農業用の特殊な勘定科目を登録できるほか、農業所得用の青色申告決算書と収支内訳書の作成にも対応しています。
一方で、2026年時点では農業所得用の決算書作成機能について、freee会計内から直接電子申告することはできません。
また、65万円の青色申告特別控除を利用する場合などには、e-Tax側で必要な入力を行う必要があります。
クラウドで日々の経理を行いたい場合は便利ですが、農業所得の申告手順まで含めて導入前に確認しましょう。
マネーフォワード クラウド確定申告は、銀行口座やクレジットカードなどと連携できるクラウド型の会計ソフトです。
しかし、2026年9月時点では「青色申告決算書(農業所得用)」と「収支内訳書(農業所得用)」の作成には対応していません。
確定申告書第一表に農業所得の収入金額や所得金額を反映することはできますが、農業所得用の決算書や収支内訳書は別の方法で作成する必要があります。
そのため、農業所得の確定申告を一つのソフトだけで完結させたい場合には注意が必要です。
会計ソフトを導入しても、入力する内容が間違っていれば正しい確定申告はできません。
農業では、一般的な売上や経費だけでなく、農業特有の収入や決算処理にも注意する必要があります。
農業所得の収入には、米や野菜、果物などを販売して受け取った代金を計上します。
注意したいのが、実際にお金を受け取ったものだけが収入になるわけではないことです。
たとえば、収穫した農産物を自宅で食べた場合などの自家消費についても、一定の金額を収入として計上する必要があります。
国税庁でも、商品を自家用に消費した場合の価額などは事業所得の総収入金額に含まれるとしています。
また、農業に関連して受け取った補助金や助成金、共済金などについても、その内容によって収入として処理する必要があります。
「銀行口座に入金された売上だけ」をソフトへ入力すると計上漏れが起こる可能性があるため注意しましょう。
農業所得は、基本的に収入から必要経費を差し引いて計算します。
農業で代表的な経費には次のようなものがあります。
必要経費として認められるのは、原則として農業収入を得るために必要な支出です。
自家用車や自宅の電気などを農業にも使用している場合には、事業分と私用分を合理的な基準で分ける必要があります。
確定申告では、年末時点で残っている農産物などについて棚卸が必要になる場合があります。
単純に一年間の売上と支出だけを入力すればよいわけではないため注意が必要です。
また、トラクターやコンバインなど長期間使用する農機具については、購入した年に購入代金の全額を経費にできるとは限りません。
減価償却の対象となる資産は、原則として法定耐用年数に応じて取得価額を各年の必要経費に配分します。会計ソフトの固定資産台帳を利用すると、減価償却費を管理しやすくなります。
確定申告ソフトは便利ですが、入力しただけで税務処理がすべて正しくなるわけではありません。
ソフトを利用する場合でも、税務上のルールを確認しながら処理することが大切です。
青色申告を選択しているだけでは、65万円の青色申告特別控除が自動的に適用されるわけではありません。
まず、事業所得などについて正規の簿記の原則により記帳し、その記帳内容をもとに作成した貸借対照表や損益計算書などを確定申告書に添付して、期限内に申告するなど、55万円控除の要件を満たす必要があります。
そのうえで65万円控除を受けるには、確定申告書や貸借対照表、損益計算書などを期限までにe-Taxで送信する方法、または仕訳帳・総勘定元帳を「優良な電子帳簿」の要件に沿って電子保存する方法のいずれかを選択します。
優良な電子帳簿による方法では、訂正・削除の履歴が確認できることや帳簿間の相互関連性、検索機能など所定の要件を満たしたうえで、原則として確定申告期限までに必要な届出書を提出します。
したがって、単に会計ソフトへ仕訳を入力したり、帳簿をデータ形式で保存したりするだけで65万円控除の要件を満たすわけではありません。
金融機関と会計ソフトを連携すると、入出金データを自動取得できるため入力作業を減らせます。
しかし、すべての取引が自動的に正しい勘定科目へ登録されるとは限りません。特に農業では、自家消費や現金販売など銀行口座を通らない取引があります。
また、補助金や共済金などを受け取った場合に、通常の売上と同じ処理をしてよいとは限りません。自動仕訳を利用する場合でも、確定申告前には取引内容を一つずつ確認することが重要です。
会計ソフトに経費を入力したからといって、領収書や請求書を処分してよいわけではありません。
事業所得がある方には帳簿や書類の保存義務があります。
紙で受け取った領収書や請求書だけでなく、メールやWebサイトから受け取った電子データについても保存方法に注意が必要です。
確定申告ソフトの証憑保存機能を利用する場合には、電子帳簿等保存制度の要件に対応しているかも確認しておきましょう。
確定申告ソフトを利用していても、申告内容について最終的に責任を負うのは納税者です。
税務調査では帳簿だけでなく、その数字の根拠となる通帳や領収書、請求書などを確認されることがあります。
そのため、日頃から帳簿と証拠書類を整理しておくことが重要です。
農業ではJAや市場への出荷、直売所での販売、個人への直接販売など複数の販売経路を利用することがあります。
販売先が複数ある場合には、一部の売上を帳簿へ入力し忘れないよう注意しましょう。
また、自家消費した農産物など、実際の入金を伴わなくても収入計上が必要となるものがあります。
補助金や共済金についても、それぞれの制度や支給理由を確認したうえで適切に処理する必要があります。
農産物の棚卸や農機具の減価償却は、農業所得の金額に影響します。
たとえば、年末時点の棚卸を適切に行わなかった場合、本来とは異なる所得金額が計算される可能性があります。
農機具についても、購入代金を誤って全額経費にしてしまうなどの処理には注意が必要です。固定資産台帳や棚卸表などを作成し、計算の根拠を残しておきましょう。
税務調査への備えとして特に大切なのが、帳簿と実際の取引を一致させておくことです。
具体的には、次のような資料を整理しておきましょう。
ソフトに入力されている金額について「なぜこの金額になっているのか」を説明できる状態にしておくことが重要です。
税制は毎年改正される可能性があります。
会計ソフトを利用していても、古いバージョンや古い情報をもとに確定申告をすると、控除額などを誤る可能性があります。
2025年分・2026年分の確定申告では、所得税の基礎控除に関する改正内容も確認しておきましょう。
所得税の基礎控除は、2025年分から見直されています。また、2026年分についても控除額が変更されるため、申告する年分と合計所得金額に応じた金額を確認する必要があります。
なお、2026年分の改正規定は2026年12月1日に施行されます。国税庁では、施行日前に2026年分の所得税について死亡または出国に伴う準確定申告を行う場合などについて、経過的な取扱いを案内しています。
農業所得のほかに給与所得や不動産所得などがある場合は、それらを含めた合計所得金額をもとに、自分に適用される基礎控除額を確認しましょう。
確定申告ソフトを使用する際も、対象となる年分の税制改正が反映されたバージョンであるかを確認することが大切です。
国税庁|No.1199 基礎控除
電子帳簿等保存制度では、帳簿や書類を一定の要件を満たして電子保存する制度のほか、電子取引データの保存についてもルールが定められています。
たとえば、メールに添付されたPDFの請求書やインターネット上からダウンロードした領収書などを電子データで受け取った場合には、原則として電子データの保存が必要です。
農業でも、農業資材や農機具をインターネットで購入したり、電子メールで請求書を受け取ったりするケースが増えています。
会計ソフトを選ぶ際には、日々の記帳だけでなく、領収書や請求書などの電子保存まで含めて管理できるか確認するとよいでしょう。
農業の確定申告では、農産物の販売収入や自家消費、補助金、種苗費・肥料費などの経費、棚卸、農機具の減価償却など、さまざまな処理が必要です。
確定申告ソフトを活用すれば、日々の記帳や集計、決算書の作成にかかる負担を軽減できます。
しかし、農業所得用の青色申告決算書や収支内訳書、e-Taxへの対応状況はソフトによって異なるため、必要な機能を確認して選ぶことが大切です。また、売上の計上漏れや経費の入力ミスがあると、申告内容にも影響します。
農業所得の処理や補助金、農機具などの税務処理に不安がある場合は、税理士に相談すると安心です。
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この記事の監修者
税理士法人松本 代表税理士
松本 崇宏(まつもと たかひろ)
登録者30万人以上のYouTubeチャンネル「税理士法人松本〜税金の裏のウラ〜」を運営。 代表を務める税理士法人松本では、これまでに累計5,000件を超える税務調査のご相談・対応実績があり、国税局査察部、税務署長歴任者・税務調査一筋の現場に強い国税出身のOB税理士が現在15名常駐。国税当局側の視点を踏まえて、お客様の立場を尊重し、税務調査でお悩みのお客様に適切かつ迅速に対応。また、調査前・調査中に関わらず、あらゆる状況から最善のサポートが可能。なお、調査結果が追徴税額なしとなる実績も多数取得。税務調査における専門性・経験則・折衝力から最善の結果を導き、お客様の笑顔とありがとうを励みに成長し続けている。
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