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個人事業主は法人化すべき?メリットやデメリットから総合的な判断を

読了目安時間:約 6分

個人事業主として事業を営んでいる場合、ある程度、事業規模が大きくなったときなどは会社を設立し、法人化した方が税制面などでメリットを得られる場合があります。しかし、個人事業主が法人化するにあたってはメリットばかりではなく、デメリットが生じるケースもあるため、メリットとデメリットを総合的に判断し、慎重に決断する必要があります。

では、個人事業主の法人化ではどのようなメリットとデメリットがあるのでしょうか。

今回は、個人事業主が法人化するうえで得られるメリットや生じるデメリットについて詳しく解説します。

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個人事業主の法人化とは?

個人事業主が会社組織を設立し、個人で営んでいた事業の運営主体を法人に切り替えることを法人化といいます。法人化という言葉があるのは、単に会社を設立する場合と個人事業主が事業を法人に引き継ぐ場合とでは異なる意味をもつためです。法人化は法人成りと表現されることもあり、法人化後は、法人が個人事業主のビジネスはもちろん、資産や負債を引き継ぐこととなります。

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個人事業主が法人化するメリット

個人事業主と法人ではさまざまな面で違いがあり、法人化した場合には主に以下のようなメリットを得ることができます。

  • 税負担を軽減できる
  • 社会的な信用を高められる
  • 退職時には退職金の支給を受けられる
  • 赤字を最大10年繰り越せる
  • 社会保険への加入が認められる
  • 決算期を自由に設定できる
  • 倒産時のリスクを限定できる

それぞれについて詳しくご説明します。

税負担を軽減できる

個人事業主と法人では、事業で得られる所得に課される税金が変わります。個人事業主の場合は、事業所得に対して所得税が課されますが、法人化すると法人には法人税が課されます。

所得税は所得が高くなるほど適用される税率も高くなる、累進課税制度が用いられています。事業が順調で売上が伸び、利益が高くなってくると、その分負担する所得税の額は大きくなっていくのです。2026年現在、所得税の税率は最高で45%です。

一方、法人化すると課される法人税には累進課税制度は用いられていません。法人税は、原則として、資本金の違いや所得額によって15%と23.20%のいずれかの税率が適用されます。

また、法人化すると事業主は会社から役員報酬という形で給与を受け取ることとなります。役員報酬は一定のルールを満たしていれば、損金算入が可能です。自分に支払う給与を損金として計上できれば、課税対象となる所得額が低くなり、結果として法人税の負担は軽減します。

つまり、法人化すると納付する税金の種類が変わること、給与を損金として扱えることによって、税負担を軽減できる可能性があるのです。

社会的な信用を高められる

社会的な信用の向上も法人化のメリットです。法人化する場合は、法務局に住所や資本金、代表者名などの情報を登記しなければなりません。登記情報は誰でも閲覧できる状態となり、会社の実態が把握しやすくなります。

また、個人事業主の場合は、事業主に万が一のことがあった場合、事業の継続が難しくなる恐れがあります。そのため法人の中には個人事業主との取引を控えるケースもあるようです。しかし、法人化すると法人の代表者が変わっても法人は存続する確率が高くなるため、安心して取引を行えるようになり、事業拡大につながるケースもあります。

退職時には退職金の支給を受けられる

個人事業主では、会社員のように退職金制度はありません。事業の廃業が、実質的に個人事業主の退職に相当しますが、退職後の生活を見据えて貯蓄を進めても、その額を経費として扱うことはできません。

しかし、法人化すると退職金制度を活用できます。経営者に対しても退職金を支給でき、退職金は給与と同様、損金として扱うことが認められています。したがって、退職金の支給によって法人税の負担も軽減することが可能です。

さらに、退職金を受け取るときにも税制上の優遇措置が用意されていることから、法人だけでなく、個人の節税にもつながるといったメリットがあります。

赤字を最大10年繰り越せる

個人事業主の場合でも、青色申告をしていれば、最大3年にわたって赤字を繰り越すことができます。一方、法人化すると控除できる期間は最大10年間と大幅に長くなります。

赤字の繰り越しが認められれば、黒字化した年の課税所得を圧縮でき、法人税の負担を大幅に軽減できます。大規模な設備投資などで支出が増えた場合には赤字になるケースも出てくるでしょう。そのような場合でも、黒字に転換した後の税負担を軽減できれば、大きなメリットを得られます。

社会保険への加入が認められる

法人化すると、たとえ従業員を雇用していない場合であっても社会保険への加入義務が生じます。社会保険料は、事業主と加入者で折半する仕組みです。そのため、法人が負担する支出額は大きくなるものの、厚生年金にも加入するため、将来受け取れる年金額が増加します。また、万が一の事態が発生した場合には、傷病手当金、遺族厚生年金、障害厚生年金などの手厚い保障を受けられます。

さらに、従業員の雇用にあたっては社会保険を完備している点が安心感につながり、優秀な人材を採用できる可能性も高められるでしょう。

決算期を自由に設定できる

個人事業主の場合、1月1日から12月31日までの1年間に得た所得を翌年2月16日から3月15日までに申告し、所得税を納付するルールであり、決算期を自由に設定することはできません。確定申告期間も決められているため、営む事業の内容によっては、確定申告のタイミングと事業の繁忙期が重なるケースがあります。本業が忙しい中で確定申告の準備を行う場合には心身のストレスも大きくなるものです。

しかし、法人化すると決算期は自由に設定できます。法人の申告期限は事業年度終了日の翌日から2ヶ月以内です。繁忙期を避け、決算処理に時間をかけやすい時期に決算期を設定すれば、余裕をもって決算業務に取り組めるようになり、本業への影響も最小限に抑えられます。

消費税の納税義務が最大2年免除される

個人事業主の場合は、課税売上高が年間1,000万円以上となる場合、翌々年から消費税の課税事業者となり、消費税を納付する義務が生じます。しかし、法人化すると、法人と個人はまったく別の人格として扱われます。そのため、たとえ2年前に課税売上高が年間1,000万円を超えていても、法人化すればまた初めからカウントが始まるため、最大で2年間、消費税の納税義務を免除できる場合があります。

ただし、インボイス制度のスタートにともない、課税売上高にかかわらずインボイスの発行事業者として登録した場合は、法人化した年度から消費税の納税義務が生じます。また、法人化の際に資本金を1,000万円以上とした場合も設立初年度から課税事業者となる点に注意が必要です。

そのほか、資本金1,000万円未満の法人を立ち上げた場合でも、1期目の前半6ヶ月で売上高または人件費が1,000万円を超過した際には、2期目から消費税を納税しなければなりません。

倒産時のリスクを限定できる

個人事業主の場合、事業の責任はすべて事業主が負うルールであり、万が一、事業が暗礁に乗り上げ、仕入先への支払いや金融機関から借り入れた融資の返済が滞った場合は、個人の財産から弁済をしなければなりません。

一方で、法人化すると会社の設立形態によっては、会社が倒産した際の負担責任が限定されます。株式会社または合同会社の場合、出資者が負う責任は、出資額が上限となり、会社が倒産してもそれ以上の債務を個人が背負うことはありません。したがって、法人化の際、株式会社または合同会社の形態を選択すれば、万が一、事業の継続が難しくなっても個人の生活を守ることができます。

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個人事業主が法人化するデメリット

個人事業主が法人化する際にはメリットばかりではなくデメリットもあります。法人化の手続きを進めるうえでは、デメリットによって生じるリスクについても十分確認しておくことが大切です。

個人事業主の法人化によって生じ得るデメリットは次のようなものです。

  • 法人化に手間とコストがかかる
  • 会計処理が複雑化し、事務処理の負担が増加する
  • 赤字でも負担義務が生じる税金がある

それぞれについて解説します。

法人化に手間とコストがかかる

個人事業主が開業する際は、税務署に個人事業主の開業届を提出するだけで手続きが完了します。手数料なども発生しません。しかし、法人化し、会社を設立するにあたっては、より複雑な作業が必要となるうえ、コストも発生します。

会社の設立時には、資本金の額を決定し、定款を作成します。株式会社の場合は、公証役場での定款の認証を受けなければなりません。また、定款完成後は発起人の口座に資本金を振り込み、登記申請書や印鑑届出書、定款などとともに法務局で登記を申請します。

法人登記の際には登録免許税の支払いが必要となり、登録免許税の額は、株式会社では最低15万円、合同会社では最低6万円です。登録免許税の金額は資本金の額の0.7%であるため、資本金の額が増えれば、登録免許税の額も増加します。さらに、公証役場で定款の認証を受ける場合には、資本金の額に応じて、3万円~5万円の手数料の支払いが必要です。

定款の作成や法務局での手続きを専門家に依頼する場合は、専門家に支払う報酬の負担も発生します。

会計処理が複雑化し、事務処理の負担も増加する

個人事業主に比べて、法人の会計処理は非常に複雑です。決算書の作成や申告書の作成には専門的な知識が求められるため、作業には多くの時間がかかります。一般的には税理士に依頼するケースがほとんどですが、税理士に依頼する場合には税理士報酬の負担が発生します。

また、個人事業主のときには不要だった社会保険に関する手続きや給与計算、源泉徴収所得税の納付といった手続きも必要になるため、事務処理の負担が大きくなる点も法人化のデメリットといえるかもしれません。

赤字でも納付義務が生じる税金がある

個人事業主では、事業が赤字になった場合、個人の所得も0円になるため所得税の負担は発生しません。また、課税所得をもとに計算される住民税も非課税となります。

しかし、法人化すると、赤字であっても法人住民税の均等割の納付が必要です。法人住民税は法人税割と均等割で構成されます。法人税割については赤字の場合は課税されませんが、均等割は赤字であるかどうかにかかわらず、必ず納付しなければなりません。均等割の額は、従業員の数と資本金の額に応じて決定され、資本金が1,000万円以下で従業員が50人以下であれば7万円です。それほど大きな額ではないものの、利益が出ていない状況でも必ず納税しなければならない点はデメリットになると考えられます。

法人化後の注意点についてはこちらの記事でも詳しく解説しています。

<関連記事>法人化前に知っておきたい!無申告や脱税につながる危険な行為とは?

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法人化に迷った場合の判断のポイント

法人化にはメリットもあればデメリットもあります。そのため、法人化をすべきか悩むことも少なくありません。そのような場合、判断の決め手となるのは次のポイントです。

  • 所得が800万円~900万円を超えている
  • 課税売上高が1,000万円を超えている
  • 事業の拡大フェーズにある

所得額が800万円~900万円を超えると、一般的には法人化した方が税負担を軽減できるといわれています。ただし、所得額が安定していない場合は、かえって法人税率の方が高くなる可能性もあるため、安定的にこのライン以上を維持できる場合は法人化を検討してみるとよいでしょう。

また、課税売上高が年間1,000万円を超えると翌々年から消費税の課税事業者になります。したがって、課税売上高が年間1,000万円を超えたら法人化を検討すべきでしょう。消費税の課税事業者となるタイミングに合わせて法人を設立すると、最大で2年間、消費税の納税義務を遅らせることができます。

また、事業を拡大するうえでは、個人事業主という事業形態が足かせになる場合もあります。今後、さらに事業を拡大していきたいというフェーズに入った場合は、取引先を広げやすい法人格を取得した方がよいでしょう。

いずれにせよ、法人化には手間もコストもかかるため、法人化のメリットとデメリットをあわせて、総合的に判断することが大切です。

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まとめ

個人事業主が法人化することのメリットと、法人化によって生じる可能性があるデメリットについてご紹介してきました。法人化を検討するうえでは、所得額や課税売上高が一つの判断ポイントとなります。しかし、節税面でのメリットを重視する場合には役員報酬として設定する額によって、法人税、個人が負担する所得税、社会保険料のバランスも変わってきます。法人化による税負担のメリットを正確に把握するためには、複雑なシミュレーションが必要です。法人化によって節税効果を最大化したいと考えている場合は、税理士への相談をおすすめします。


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この記事の監修者

松本 崇宏

税理士法人松本 代表税理士

松本 崇宏(まつもと たかひろ)

登録者20万人以上のYouTubeチャンネル「税理士法人松本〜税金の裏のウラ〜」を運営。 代表を務める税理士法人松本では、これまでに累計5,000件を超える税務調査のご相談・対応実績があり、国税局査察部、税務署長歴任者・税務調査一筋の現場に強い国税出身のOB税理士が現在14名常駐。
国税当局側の視点を踏まえて、お客様の立場を尊重し、税務調査でお悩みのお客様に適切かつ迅速に対応。また、調査前・調査中に関わらず、あらゆる状況から最善のサポートが可能。
なお、調査結果が追徴税額なしとなる実績も多数取得。税務調査における専門性・経験則・折衝力から最善の結果を導き、お客様の笑顔とありがとうを励みに成長し続けている。

税理士法人松本は国税OB・元税務署長が所属する税理士法人です。

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