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法人成りした個人事業主の税務調査はどうなる?
この記事の監修
税理士法人松本 代表税理士
松本 崇宏
(まつもと たかひろ)
お客様からの税務調査相談実績は、累計1,000件以上。
国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。
多数の追徴税額ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。
個人事業主の方の中には、さまざまなメリットを考えて法人成りを検討しているものの、どのタイミングで法人成りするとメリットが大きいのか、法人成りのタイミングについて悩んでいる方もいらっしゃるのではないでしょうか。 そこで今回は、個人事業主が法人成りする場合の手続きやメリット、ベストな法人化のタイミングなどについてご説明します。 個人事業主から法人成りのご相談をご希望の方は税理士法人松本までお気軽にご相談ください。
目次
法人成りと必要な手続き
法人成りとは、個人事業主として事業をしていた人が株式会社等の法人を設立して、個人事業主から法人に変更することを言います。法人成りをするためには、まず法人を設立しなければなりません。
法人は次のような手順で設立します。
1.会社名、資本金、事業目的、事業年度など会社の概要を決定する
会社の基本事項は、定款を作成する際にも必要となる事項です。
2.法人の実印を作成する
印鑑は、法務局に設立登記を申請する際に必要となります。ただし、設立登記をオンラインで行う場合は、印鑑は任意となります。
3.定款を作成して、公証役場で認証を受ける
定款は、会社を運営する原則をまとめたものです。株式会社の場合は、定款を作成したら公証役場に提出し、認証の手続きを行います。
4.出資金を払い込む
会社の設立登記が完了するまで法人の銀行口座は作れないため、発起人の個人口座に出資金を払い込みます。
5.法務局に登記申請書類を申請し、登記完了
登記申請書を作成して法務局に申請し、不備がなければ約10日で登記が完了し、会社設立手続きが終了します。(※法務局により手続き日数は異なります。)
6.資産の移行手続きをし、個人事業の廃業手続きを行う
契約名義を法人に変更して事業に関わる資産の移行をし、個人事業の廃業手続きも行います。
法人化には税制上のメリットがある
法人成りするとさまざまなメリットがありますが、その一つに法人は個人事業主よりも高い節税効果を得られるというものがあります。
法人成りをして経営者となった場合、自分に役員報酬を支払うと、一定の手続きに沿って決められた役員報酬は経費として扱うことができます。さらに役員報酬自体に給与所得控除を適用できるため、課税対象となる所得額を抑えることができます。
また、所得税の場合は、累進課税制度により所得が高くなるほど税率は上がります。個人事業主としての所得が増えると、法人成りして法人税等を収めた場合に比べて、所得税の納税額の方が大きくなってしまう可能性があります。
法人成りするタイミングはいつがベスト?
個人事業主が法人化するには、どのタイミングが最適なのでしょうか。
節税のメリットが大きくなる時が法人成りのタイミング
個人事業主が法人成りするタイミングには、さまざまな考え方がありますが、節税のメリットが大きくなるタイミングで法人成りを検討するのも一つの手段です。法人成りすることで節税のメリットが大きくなるのは次のタイミングです。
・課税所得額が800万円~900万円になった時
課税所得が900万円を超えると所得税の税率は33%となります。法人所得に対する税率は、30%程度だと言われており、課税所得が900万円を超えてしまうと所得税額の方が高くなると考えられます。そのため、課税所得が900万円を超える前のタイミングで法人成りを検討するとよいとされています。
・2年前の売り上げが1000万円を超えた時
法人であっても個人事業主であっても2年前の売上高が1000万円を超えると、消費税の納税義務者になります。
しかし、個人事業主は法人成りすると、個人事業主と法人は別人格として扱われるため、課税事業者になるタイミングを2年遅らせることができるのです。したがって、年間の売上高が1000万円を超えたタイミングも法人成りを検討するタイミングとなるでしょう。ただし、資本金が1000万円以上の法人の場合は、設立事業年度から課税事業者となるため注意が必要です。
個人事業主が法人成りをしたら税務調査はどうなる?
個人事業主が個人事業主の廃業届を行い、法人成りした場合、個人事業主として申告していた分についての税務調査は行われないのでしょうか。
個人事業主が法人成りをしても、税務調査の対象者となる
まず、税務調査は、納税者が正しく申告を行っているかどうかの調査になるため、個人事業主が法人成りをしても、法人に対して税務調査が行われる可能性があります。また、所得税の場合、法定納付期限から5年間、国は税金の徴収を行うことができます。さらに不正行為などがあった場合は7年まで時効が延びます。
したがって、個人事業主を廃業して法人成りをしても、過去の個人事業主としての申告内容についてもさかのぼって税務調査の対象になる可能性があります。
法人の方が税務調査を受ける可能性は高くなる
一般に、個人事業主が税務調査を受ける確率は1%だと言われています。一方、法人が税務調査を受ける確率は約2.6%程度だとされています。したがって、個人事業主が法人成りをすると、税務調査を受ける確率は高くなるのです。
法人成りする個人事業主が税務調査に備えて注意すべきポイント
前述のように法人成りしたと言っても、個人事業主時代に行った確定申告の内容について税務調査が行われなくなったわけではありません。個人事業主時代の帳簿や請求書、領収書などもしっかり、保存義務のある7年間は保管しておくようにしましょう。 また、法人成りする時は個人事業主の時と同じ事業で法人化するケースがほとんどです。法人成りしたことで急に経費を増やしたりすると、税務調査時に不審に思われる可能性があります。 加えて、法人成りした場合、個人事業主側と法人側の両方で処理を行い、資産の引き継ぎを行わなければならないことも覚えておきましょう。
まとめ
個人事業主が法人成りをするタイミングの一つとして、節税のメリットが大きくなる時を検討する方も多いでしょう。どのタイミングで法人化すれば、より節税のメリットが大きくなるのかを判断するためには、個人事業主のまま事業を続ける場合と法人成りして事業を進める場合の差をシミュレーションによって導き出す必要があります。役員報酬をいくらに設定するかによっても法人税の額や役員としての個人の所得税の額が変わってきます。
また、法人成りをする時には資産の引き継ぎ等の作業も不可欠です。
このように、法人成りには複雑な手続きや精度の高いシミュレーションが必要となるため、法人成りを検討する際には、ベストなタイミングや資産の引き継ぎの方法などについて税理士に相談することをおすすめします。税理士法人松本では、初回のご相談は無料で承っております。個人事業主の法人成りについてのお悩みでしたら、是非お気軽にご相談ください。
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